陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

メタンハイドレード採集実験が東部南海海域で始まった

2012-02-17 17:05:40 | 教育と研究
 「燃える水」と呼ばれるメタンハイドレードは、水とメタンの混和物で、固体状態である。我が国の周辺海底に多量のメタンハイドレード層があることが確認されているが、如何にしてメタンガスを補集するかは、まだ研究段階にある。独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を始め、各大学で次世代エネルギー源として捕集方法の基礎研究を行って来た。

 JOGMECは、平成20年(2008)3月10日にカナダの凍土地帯で、地下1100mに存在するメタンハイドレード層からメタンガスを連続的に採取する試験に成功している。これは、カナダ政府との共同研究であった。

メタンハイドレートからの天然ガス連続生産に成功
-メタンハイドレート資源化新手法で世界初の実証-
http://www.jogmec.go.jp/news/release/docs/2007/pressrelease_080328.pdf

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC 理事長:掛札 勲)は、カナダ北西部のボーフォート海沿岸陸上地域(北極圏に位置し、冬季には日中でも氷点下30度以下となる極寒地)において、永久凍土の地下約1100mに存在するメタンハイドレート層からメタンガスを産出する試験を3月10日~16日にかけて実施した。

この試験は、経済産業省が実施しているメタンハイドレート開発促進事業*1の一環として行われているもので、JOGMECはこの産出試験に係る事業を経済産業省から受託し、カナダの天然資源省(NRCan)と共同研究の形で、カナダ北西準州のオーロラ・カレッジをオペレータとして実施している。

メタンハイドレート開発促進事業では、現在、地中の固体のメタンハイドレートからメタンガスを効率的に生産する方法を研究中であり、JOGMECの前身である石油公団がNRCanを含む5カ国の共同研究として同地区で「温水循環法」*2によるメタンガス生産を2002年に世界で初めて成功させている。 今回の産出試験は、より効率的な生産が期待できる「減圧法」*3を2007年4月の産出試験に引き続き適用し、その効果を検証するのが目的である。

本試験では、約6日間の産出試験を行い、世界で初めて減圧法によりメタンハイドレートからメタンガスを連続的に生産することに成功した。これにより、生産手法として減圧法の有効性が確認でき、メタンハイドレート資源化への第1歩を印した。今後、得られたデータを解析し、詳細な評価を行う予定。

メタンハイドレートは、メタンガスと水が結びついた固体状の物質で、我が国周辺海域の大水深海底下に存在が確認されており、太平洋沖の東部南海トラフにおける原始資源量について約40TCF(約1.1兆m3)と試算*4され、将来の非在来型国産エネルギーとして期待されている。

*1 JOGMEC、独立行政法人 産業技術総合研究所、財団法人 エンジニアリング振興協会がメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(プロジェクトリーダー:田中彰一東京大学名誉教授)を組織し、メタンハイドレート開発促進事業を推進している。
*2 温水循環法:坑井内に温水を循環させ、メタンハイドレートを加温することにより、固体であるメタンハイドレートを分解し、メタンガスを生産する方法。石油公団(日本)、NRCan(カナダ)の他米国、ドイツ、インドの計5カ国の共同研究として2002年に同手法を実施。
*3 減圧法:坑井内の圧力を減少させることにより、固体であるメタンハイドレートを分解し、メタンガスを生産す方法。今回の試験実施に先立ち、(独)産業技術総合研究所とJOGMECは共同でその有効性を検討していた。
*4 2007年3月5日 経済産業省News Release


 JOGMECは、愈々日本近海で本格的な採集実用化実験を行うことになった。場所は、愛知県/和歌山県沖の海底である。よい成果を収めて、次世代エネルギー源実用化に目途を付けて欲しいものだ。


“燃える氷”採掘開始 夢のエネルギー採掘技術手探り、コストに課題
2012.2.15 23:12

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が15日に愛知県渥美半島沖で世界初となる海底掘削を始めた「メタンハイドレート」は、日本を囲む近海に豊富に埋蔵されている。安定的な供給が実現すれば、資源小国ニッポンにとっては、“夢のエネルギー”となる。ただ、採掘技術が確立されていないうえ、大幅なコスト削減による採算性アップが不可欠だ。環境への影響も未知数で、乗り越えるべき課題は多い。

 メタンハイドレートは、都市ガスなどに使われるメタンが低温高圧状態で水分と結び付き、結晶化した氷のような物質。火を付けると結晶内のメタンが燃焼することから「燃える氷」とも呼ばれる。永久凍土の地下深くや深海に埋蔵が確認されており、採掘して結晶からメタンガスを取り出せば、都市ガスのほか、火力発電向け燃料として使用することができる。

 日本では平成13年から本格的な採掘計画に着手。JOGMECなどが20年にカナダで凍土からの採掘に成功。今回は愛知県沖から和歌山県沖にかけての東部南海海域で海底採掘の試験を開始。政府は平成30年度の商業生産を目指している。

 経済産業省によると、東部南海海域のメタンハイドレートの埋蔵量は、国内の天然ガス使用量の十数年分にあたる約1兆立方メートル。北海道周辺や新潟沖も合わせると、日本近海の総埋蔵量はガス使用量の約100年分に相当する計7・4兆立方メートルに上ると推計されており、日本の新たなエネルギー源として「大きな可能性を持つ」(枝野幸男経産相)と期待されている。

 ただ、深海に眠るメタンハイドレートを効率的に掘削する技術の確立は手探り状態だ。、採掘コストは同量の天然ガスを輸入する場合の「5倍近くに達する」(経産省関係者)との見方もある。開発事業者の利益や輸送費を含めれば、他のエネルギーに比べさらに割高となる。

 また、メタンガスは二酸化炭素(CO2)に比べ地球温暖化の効果が20倍近いとされており、採掘中に漏れ出せば、地球環境に大きな負荷をかけることになる。
 石油や天然ガスなどエネルギー資源のほとんどを海外に頼る日本にとって、メタンハイドレートへの期待は大きいが、確実に商業生産が見通せる段階にはなっていないのが実情だ。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120215/trd12021523140015-n1.htm
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