陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ミューニュートリノの速度は光速以上と言う実験結果

2011-09-23 23:13:43 | 教育と研究
 <特殊相対性理論>から、「質量を持った物体は光速度cを越えることは無い」との結論が示される。<特殊相対性理論>は、

(1)光速度不変の原理(真空中のc= 2.998 x 10*10 [cm/sec] は定数)
(2)特殊相対性原理(ローレンツ変換)

から構成され、慣性系の物理法則を説明する。これは、1905年にアルバート・アインシュタインが25歳の時に提唱した理論であり、その後<一般相対性理論>に拡張された(1915)。

 ニュートリノ(中性微子)は、中性子がβ崩壊する時に現れる素粒子で、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類と、それぞれの反粒子を併せ、6種類がある。質量が極めて小さく、物質の透過性が高い特色がある。

 最近、ミューニュートリノの速度を厳密に測定した所、光速度よりも速いことが分かった。

光より速いニュートリノ観測=相対性理論と矛盾-名古屋大など国際研究グループ

 名古屋大や宇都宮大、神戸大などが参加する日欧の国際研究グループは23日、質量を持つ素粒子のニュートリノが光よりも速く移動するとの測定結果が得られたと発表した。

 アインシュタインの相対性理論は、質量を持つものは光より速く移動することができないとしており、今回の測定結果は相対性理論と矛盾する。結果が正しければ、科学全般に与える衝撃は計り知れない。

 研究グループは、2009年に実験を開始した。スイス・ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究所(CERN)から約730キロ離れたイタリア中部の研究施設にニュートリノのうちミュー型と呼ばれるものを飛ばし、到達するまでの時間を最新の全地球測位システム(GPS)技術などを使って精密に測定。光速(秒速約30万キロ)よりもニュートリノが60ナノ秒(1億分の6秒)早く到達し、光速より約0.0025%速かった。

 測定は過去3年間にわたり約1万5000回実施しており、観測ミスや誤差があるとは考えにくいという。(2011/09/23-21:26)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2011092300564


 これが事実とすれば、<特殊相対性理論>がニュートリノに対して成立しないことになり、新たな理論構築が必要になるかも知れぬ。ニュートリノの実態が、まだ良く分かっていないこともあるので、その方面からの研究も重要だろう。

 我が国の研究者によるニュートリノの研究は、高エネルギー加速器研究機構で着実に行われている。今年6月には、ニュートリノ変換に関する研究成果が公表された。

見えた!ニュートリノの変身新パターン 高エネ機構
2011年6月15日22時18分

 高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)を中心とする国際研究グループは15日、素粒子ニュートリノが変身する新しいパターンの兆候を世界で初めて観測したと発表した。変身は「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象で、これが解明されると、宇宙誕生の秘密に迫れると期待される。

 素粒子ニュートリノは地球も突き抜ける謎の粒子。電子型とミュー型、タウ型の3種類あり、一つの型から別の型へ「変身」が起こる。これまでミュー型とタウ型、タウ型と電子型の間の変身は捉えられていたが、ミュー型から電子型への変身は捉えられていなかった。

 グループは2010年1月から、茨城県東海村のJ―PARC(大強度陽子加速器施設)から約300キロ離れた岐阜県・神岡鉱山の大型観測装置「スーパーカミオカンデ」に向けてミュー型ニュートリノを打ち出し、振動を調べた。データを解析したところ、電子型へ変身したらしい事象を6例検出したという。
http://www.asahi.com/science/update/0615/TKY201106150551.html?ref=reca


 上記の研究に類似した研究が、米国でも行われた。

素粒子ニュートリノ「電子型」に変身 米研究所でも観測
2011年6月25日20時36分

 米フェルミ国立加速器研究所(イリノイ州)は24日、素粒子ニュートリノが「変身」する新しいパターンの兆候を観測したと発表した。3種類あるニュートリノの型のうち、「ミュー型」から「電子型」に変身したもので、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)などが15日に初観測と発表した「変身」と同じ。高エネ研の成果の確認に弾みがつきそうだ。

 同研究所は、約735キロ離れたミネソタ州の地下にある装置に向け、ミュー型と呼ばれるニュートリノを照射する実験をしている。実験では、変身とは別の反応から電子型ができるため、その数を49例と予測していた。だが、実際にはそれより多い62例が検出された。これはミュー型から電子型への変身があった結果とみられるという。

 宇宙誕生時にはあったと考えられる反物質がほとんどなくなり、現在は物質だけが残ったとされる。ニュートリノの変身はこのなぞの解明に役立つとともに、宇宙誕生の秘密に迫れる可能性がある。欧州中心のチームなども実験を進めている。(ワシントン=勝田敏彦)
http://www.asahi.com/science/update/0625/TKY201106250359.html?ref=reca


(追記:9/26)

 表題のニュートリノ速度評価は、ニュートリノ変換に関する実験から生まれた「副産物」であったようだ。メイン・テーマよりも、サブ・テーマから得られた結果が本質的な内容を含んでいることは、往々にして基礎研究では見られる場合がある。

光より速いニュートリノ「成果は副産物」 名古屋大チームが報告 
2011.9.26 11:48

 素粒子ニュートリノが光よりも速く飛ぶとする観測について、実験に参加する名古屋大チームが26日、同大で開かれたセミナーで実験結果を報告した。小松雅宏准教授は「実験の目的は別にあり、今回の成果は副産物だった」と、結果が得られたまでの経緯を明らかにした。

 実験はもともと「ミュー型」のニュートリノが飛行中に「タウ型」になってしまう“変身”を捉えるのが目的。データを解析していたフランスのチームが「何か結果がおかしい」と言い出し、速度を測ることにした。速度の測定は想定していなかったため、距離の測量はイタリア、時計合わせはスイスの専門家の力を借りた。小松准教授は「単純な実験だが、測定精度を上げるのが難しかった」と振り返った。

 チームは、スイス・フランス国境にある欧州合同原子核研究所の加速器から、ニュートリノを約730キロ離れたイタリアの研究所に設けた検出器に向けて発射、速度を算出した。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110926/scn11092611480003-n1.htm
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