陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

英米のイラン攻撃はあるのか

2007-04-03 03:30:06 | 中東問題
 3月23日、英国海軍兵士15名がイラン防衛隊に捕らえられ、テヘランに拘束されて12日が過ぎた。イランは、領海内に英軍が侵入したのだから謝罪せよと強硬であり、英国は逆にイラク領海内にイラン軍が進入したのだと主張する。ブッシュ大統領はイランを強く非難し、英国への支持を述べた。安保理も懸念を表明している。どちらも外交交渉では折れようとしない状況だが、さて、英米はこれを機会にイラン攻撃を行うのであろうか。

 揉めていた「イラン核問題」に対する安保理追加制裁が3月24日に全会一致で採択され、イランへの武器輸出が禁止された。イランは、受け入れ難いと反発した。国際的なイラン包囲網はかなり強固になった。

 一方、米国は3月27日から2日間、ペルシャ湾で二隻の空母(ジョン・ステニスとドワイト・アイゼンハワー)を含む大規模戦闘軍演習(戦闘機100機、人員1万人)を行って、イランをけん制した。いつでも空爆とトマホーク攻撃が出来るぞと威嚇したに等しい。

 昨年暮れから今年に掛けて、米国が対イラン攻撃をするとの話が流れていたが、私は米国のイラク治安体制の不安定化、米国内に高まる厭戦気分、既にイラクへは45兆円以上の出費を行っていること、米国高級将官がイラン戦に強く反対していることなどから、威嚇はしても直接攻撃はしまいと推察した。だが、突然の英国兵士拘束事件勃発によって、英米がイラン攻撃をする可能性は一気に高まった。

 この英国兵士の拘束は、英海軍による商業船海上臨検中にイラン防衛隊が取り囲んで行われたと言う。二隻のボートに乗っていたわけだが、武器を持っていたであろうに、何故無傷で捕虜となったのであろうか。それが不思議である。捕虜兵士の中には大佐級の高官が含まれ、普通は海上臨検にそうした高級将校は参加しないから、何かのタスクフォースであったとも考えられる。

 つまり、捕虜となるように始めから計画された可能性を否定出来ない。勿論、英国の背後には米国がいる。英米共同して、国際世論をなるほどと思わせ、海上戦力中心のイラン空爆開始を狙っているのかも知れぬ。

 テヘランからは、外国公館員が退去中との情報もある。だが、日本のイラン駐在員もいるはずなのに、マスコミはテヘラン情勢を伝えてくれない。仮に英米による空爆が始まれば、当然イスラエル強硬派はイラン攻撃に参加するであろう。イスラエル政府は、昨年春以来内紛続きで対外戦開始による意思統一を待ち焦がれている。それでも、サウジアラビアなどアラブ諸国は、自国からの米軍機発進を拒否しており、これらの国々から理解が得られなければ、英米と言えども長期戦には耐えられないはずだ。

 もし、英米対イラン戦争が始まれば、短期終結は不可能で中東全体を巻き込む大戦争に発展する可能性がある。それによって、石油の暴騰が起こるだろうし、イスラム対欧米の戦いは国際的に拡大する危険もある。我が国へは、自衛隊派遣強化の要請も行われるかも知れないのである。
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1 コメント

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Unknown (ろろ)
2007-04-04 01:17:58
  ここでの議論が面白いです。私も参加しています。

世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略号外
http://klingon.blog87.fc2.com/blog-entry-179.html
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