陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

パキスタンの軍事態勢と核管理

2007-11-12 02:52:55 | 中東問題
 ブット元首相の軟禁は、小ブッシュ大統領の勧告で解除になったが、なお不安定な政治情勢が続いている。ムシャラフ大統領は、陸軍参謀長を兼任しているから文民とは言えずパキスタンは一種の軍部統治体制下にあるが、彼の指揮する同国軍は一体どのような規模なのか。

平成19年版 <防衛白書>によると
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2007/w2007_00.html

 「パキスタン軍は、陸上戦力として9個軍団約55万人、海上戦力として1個艦隊約45隻約8万1,000トン、航空戦力として12個戦闘航空団などを含む作戦機約370機を有している。」

 それに米国は、05年にパキスタンへF16戦闘機の輸出を許可している。また、海軍はインド洋の対テロ警戒作戦に参加、海自から燃料補給を受けていた。

 パキスタンの軍事力は、陸軍主体であるゆえ、ムシャラフ大統領は彼自身も陸軍出身であることなどから陸軍参謀長の職を保持し、権力の源にしているものと見られる。また、インドとの対抗上、ミサイル技術展開に力を入れているが、同上白書によれば、

 「パキスタンは、05(同17)年11月、巡航ミサイル「バーブル」(ハトフ7)の初の発射実験を実施した5)。また、本年2月には、中距離弾道ミサイル「シャヒーン2」(ハトフ6)の発射実験を実施している。さらに、「陸軍戦略部隊コマンド(ASFC:Army Strategic Force Command)」による演習で、戦略ミサイルグループ(SMG:Strategic Missile Group)は、昨年11月から12月にかけて、同部隊が保有する中距離弾道ミサイル「ガウリ」(ハトフ5)、中距離弾道ミサイル「シャヒーン1」(ハトフ4)などの初の訓練発射を相次いで実施していることから6)、パキスタンは、弾道ミサイルの戦力化を着実に進めているとみられる。」

5)パキスタンは、本年3月にも巡航ミサイル「バーブル」(ハトフ7)の発射実験を実施している。
6)「ガウリ」の発射を視察したアジズ首相は「パキスタンは核抑止力の信頼性を誇りにできる」と発言した。

 ハトフ5は核弾頭搭載可能と言われる。対インド戦略のため、パキスタンは従来から中共から軍事援助を受けて来たし、それは現在も続いている。1998年の核実験で国際的な制裁を受けたが、911以降は米国に協力し、小ブッシュ政権と軍事的連携を深めた。それ故に、同国の軍備はかなり整っていると判断される。

 過大な軍事費のために、国民生活への経済的圧迫が大きく、タリバンなどイスラム原理主義者のテロ行為が頻発していることが理由となって、国民のムシャラフ批判は高まっているのだ。

 それで一気に政情不安を招いたパキスタンの核兵器の管理はどのようになっているのか、米国は頻りに気にしている。AFP電によれば

米政府、パキスタンの核兵器流出への懸念を強める

2007年11月11日 17:36 発信地:ワシントンD.C.(米国)

 【11月11日 AFP】パキスタンの核兵器がテロリストなどの手に渡ることを懸念する米国は、核兵器の確保を目的にした危機管理計画を導入する一方で、政府内にはパキスタンの核兵器の状況についての十分な情報が欠けていることを懸念する声もある。ワシントン・ポスト(Washington Post)が11日に報じた。

 米政府高官は同紙に対し「確信を持って(核兵器が)どこにあるかを知っているとは言い難い」と語り、米国が核兵器の流出を阻止しようとした場合、大きな混乱が生じる可能性を指摘した。

 同紙は2つの関係筋の話として、米情報機関はその危険性を重視し、パキスタンの核兵器流出を阻止するための危機管理計画をかなり以前から準備してきたという。

 最良のシナリオではパキスタン軍の協力が得られるが、協力が得られない場合も想定されている。

 米政府関係筋は、現在のところパキスタンの核兵器は安全だと考えているが、現在の政治的混乱が続いたり悪化したりした場合、危険性が増すと指摘、不安材料としてパキスタン軍や情報機関幹部の動向を挙げた。(c)AFP
http://www.afpbb.com/article/politics/2310399/2339186

 パキスタンの隣国、中共もインドも核保有国である。一朝有事あれば、両国共に核使用をためらわないであろう。更に、テログループとパキスタン軍が結びつくと、アフガンは勿論、イランへも飛び火する可能性がある。只今は、ブット元首相が帰国したことで、ムシャラフ大統領の思惑とは異なり、彼への国民的批判が激化し、非常に危険な事態と思う。
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