陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

二人の独裁者の明暗

2007-12-10 08:19:18 | Weblog
 12月上旬、ベネズエラの憲法改正に関する国民投票、そして露西亜の下院議員選挙が殆ど時を同じくして行われた。前者は、チャべス大統領の終身大統領就任と共産党一党独裁の是非を国民に問いかけ、後者はプーチン大統領独裁体制の是非を問う内容であった。

 ウラジーミル・プーチン大統領(55歳)は、KGB出身、エリツイン元大統領の後継として48歳で大統領となる抜擢を受けた。強権的な政策で国際的に顰蹙を買う一方、露西亜国民の圧倒的な支持を得ていた。既に政権について7年、その業績の是非を問う下院議員選挙であったが、彼が率いる政党「統一ロシア」にとっては実に嬉しい結果になった。

プーチン大統領、改憲へ足場…下院315議席確実
12月4日3時3分配信 読売新聞

 【モスクワ=緒方賢一】ロシア下院選(定数450)は、3日午後(日本時間同日夜)までに投票総数の98%まで開票が進み、プーチン大統領の与党「統一ロシア」が得票率を64・1%まで伸ばし、315議席の獲得を確実にした。

 これで同党は、単独で憲法改正などを提起できる定数の3分の2を大きく上回ることになった。

 野党の共産党は11・6%(57議席)。極右の自由民主党は8・2%(40議席)、公正ロシアは7・8%(38議席)となった。これにより、共産党を除く与党勢力が合わせて393議席と9割近くを占めることになった。

 プーチン大統領は3日、モスクワ郊外で、「下院の正当性は高まった」と述べ、自身の強固な支持基盤を下院に確立したことに満足の意を表明した。またプーチン大統領を支持する翼賛青年団体は3日、モスクワ中心部で、大規模な祝勝集会を開いた。

最終更新:12月4日3時3分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071203-00000116-yom-int

 その後の報道では、プーチン与党勢力が395議席を確定した。これで、憲法を改正して大統領三選を可とする体制が出来た。内外から「不正選挙」との批判が起きているが、<プーチン皇帝>の権力維持に露西亜国民は異存が無いように見える。

 同大統領は若いし、あと10年は院政などを含めて思うように振舞うだろう。原油価格の高騰で、露西亜財政は90年代の借金を殆ど返し、軍事にも力を入れ始めた。今後の露西亜の行動には要注意と思う。

 一方、南米の石油資源国、ベネズエラでは、共産主義に傾倒するチャべス大統領の独裁を強めようとする憲法改正に国民が投票で待ったを掛けた。

 チャべス大統領は、原油価格上昇を背景に、米国に対し真っ向から反発、小ブッシュ大統領に対し鋭い批判を続ける一方、キューバのカストロ首相、中共の胡錦濤政権トップ、そして北朝鮮の金政権と深い関係を保っている。

 今回の憲法改正では、自らの終身大統領就任を認めさせながら、共産党独裁の政策支持を国民から得ようとする内容で、内外の注目を集めた。その結果、

チャベス大統領多選の憲法改正案、小差で否決…ベネズエラ
12月3日22時53分配信 読売新聞

 【カラカス=小寺以作】ベネズエラで2日、行われた大統領の連続再選を無制限に認める憲法改正案に対する国民投票で、同国中央選管は3日、改正案が「反対」約51%、「賛成」約49%で否決されたと発表した。

 チャベス大統領は3日、国営テレビに出演し、「結果に敬意を払い、受け入れる」と敗北を認めた。

 選管によると、投票率は55・89%。有権者数は約1600万人。同大統領は1999年に就任以来、大統領選や国民投票で常に勝利しており、投票による敗北は今回が初めて。社会主義的な体制作りを目指してきた同大統領は、結果判明後、「社会主義建設への戦いは続く」と強調したが、今後は政治的な求心力の低下が進む可能性が出てきた。

最終更新:12月3日22時53分http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071203-00000211-yom-int

 さすがにベネズエラの人々もこれでは拙いと感じたのだろう。僅差ながらもチャべス氏の方針にNOを突きつけた。この憲法改正が成立すると、ある水準以上の個人資産は没収になる可能性があり、もしそうなった場合は永久にベネズエラを離れると言う国民もいた。チャべス大統領の社会主義的な施策は、医療負担を軽減するなど貧しい人達には理解されているのだが、共産主義独裁化の行き過ぎを批判する声も根強い。

 米国を始め西欧各国とは様々に摩擦を起こしているチャべス大統領、今回の国民の審判を受け止めて、次はどのようなことをするのか、些か気懸かりである。原油価格の高騰で、ロシアから潜水艦を5隻買うなど元気の良いチャべス氏だが、間違っても北朝鮮から核兵器関連材料を持ち込まないように期待している。

 さて、チャべス氏は次にどのような手段で権力維持を確実にしようと企むのであろうか。
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