陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

中共が南シナ海を支配することは可能か ; <ホラ吹き>主席と<口先き>大統領の鍔迫り合い

2015-10-29 11:52:43 | シナ・中共関係
 中華人民共和国(中共)は、3年前から南シナ海の岩礁を24時間体制でシナ大陸から土砂を運び、せっせと埋め立て工事を敢行、7箇所の人工島を作った。これは、胡錦濤政権時代から続けられていた工事だが、習近平政権になって急速に埋め立てが進み、人工島の形態が明確になった。その内、3島には3000m級滑走路を設置し、港湾施設や兵員居住用建造物も完成させた。岩礁周辺のサンゴなどは完全に破壊され、海洋生態系にも多大の影響が及ぶことなどお構いなしである。

 これらの岩礁は、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどと領有権を争ってきた経緯がある。それにもか係わらず、オバマ大統領の「米国は最早世界の警察ではない」との宣言を聞いて、習主席が人民解放軍を督励して進めた暴挙である。

 今年(2015)9月25日のオバマ/習トップ会談では、オバマ大統領が南シナ海の埋め立てに危惧の念を直接伝えたが、習主席は馬耳東風、それを一顧だにせず人工島の工事を継続した。オバマは、話し合いの段階は終わったと判断し、半年前から国防総省の立案した「航行の自由作戦」遂行を下令、米海軍・太平洋艦隊は西沙・南沙諸島の継続的監視業務を開始した。

 10月27日、第7艦隊のイージス駆逐艦<ラッセン>(9600トン)は、スプラトリー諸島の人工島周辺12海里域内を数時間威力偵察し、この海域が自由航行可能と実力を以って示した。2機の電子偵察・哨戒機も同行したようだが、おそらく海中には攻撃型ミサイル原潜を随伴させていたと想像される。中共人民解放軍所属の2隻の艦船は、<ラッセン>から離れて監視航行をしただけで、何ら手出しが出来ないままに推移した。

 毎日新聞が、その状況を詳しく伝えている。

<米艦南沙派遣>数時間の「航行の自由作戦」緊張高まる
2015.10.28  毎日新聞

 【ワシントン和田浩明、北京・工藤哲】米海軍のイージス駆逐艦が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で、中国が埋め立てた人工島から12カイリ(約22キロ)の海域内を航行したことに対し、中国政府は27日、軍艦2隻で追跡・警告したことを明らかにした。中国は「主権を脅かすものだ」と強く反発しているが、米国は同様の作戦を数週間から数カ月続ける方針を示し、米中間の軍事的緊張が高まっている。
 米海軍による「航行の自由」作戦で派遣されたのは横須賀基地配備のイージス駆逐艦「ラッセン」で、中国が岩礁を埋め立てて造成したスービ(中国名・渚碧)礁の12カイリ内を航行した。国防総省当局者はロイター通信に対し、作戦は2〜3時間に及び、中国が埋め立て工事を進めるミスチーフ(中国名・美済)礁周辺も含まれると明らかにした。
 中国外務省の陸慷(りく・こう)報道局長は27日の定例会見で「中国の主権と安全上の利益を脅かす」と米国を批判し、「中国の関係部門が米国の艦船に対して監視と追跡、警告を行った」と説明した。また、「あらゆる国の挑発を含む行為には海空の監視を継続し、一切の必要な措置を取る」と、譲歩しない姿勢を改めて示した。
 中国国防省の楊宇軍報道官は27日、ラッセンを追跡した艦船が中国版イージス艦とされるミサイル駆逐艦「蘭州」と巡視艦「台州」であると明らかにした。報道官は談話で、「双方の海と空の兵力を近距離で接触させることは直接の威嚇で、予想外の事件を容易に引き起こす。こうしたやり方は非常に無責任だ」と米国を強く批判。さらに、「相互信頼関係に重大な損害を与えるものであり、新型の大国関係を築こうとする努力に背くものだ」と主張し、再発の防止を要求した。
 国営中国中央テレビは27日、中国外務省の張業遂次官が同日夕、米国のボーカス駐中国大使を呼び出し、「中国側の度重なる申し入れにもかかわらず、軍艦を不法に南沙諸島や関連の海域に進入させた」として「厳正な申し入れと強烈な抗議」を行ったと伝えた。
 ロイター通信によると、米国防総省高官は27日、追跡してきた中国の艦船が安全な距離を保ったため、ラッセンの航行に支障がなかったことを明らかにした。高官はまた、ラッセンがスービ礁から12カイリの海域内を北から南西に向けて航行し、フィリピンやベトナムが領有権を主張する岩礁から12カイリの海域内も通過したと説明した。カーター米国防長官は27日、米上院軍事委員会の公聴会に出席し、南シナ海で今後も数週間から数カ月にわたって海軍の作戦を継続すると表明した。
 ラッセンは全長155メートルで、イージス防衛システムを装備する。同艦ホームページによると、マレーシアのコタキナバルを出航し、南シナ海を航行中だった。作戦には米海軍哨戒機も同行したとみられている。
 国連海洋法条約は、沿岸から12カイリまでを国家の主権が及ぶ領海と定めている。だが、スービ礁やミスチーフ礁は、中国が埋め立て工事をする前は満潮時に水没する「低潮高地(暗礁)」で、国際法上は領海の主張ができない。中国は南シナ海のほぼ全域を9本の破線で囲った「九段線」を設定し、その範囲内に主権と権益が及ぶと主張している。
 米国防総省報道担当のアーバン氏は毎日新聞の取材に、作戦の詳細な内容について説明を避けたが、「国際法に沿ったものだ」と強調。「航行の自由」という国際規範の維持が目的であると明かした。報道によると、中国が実効支配する南シナ海の岩礁から12カイリの海域内に米艦が進入したのは2012年以来となる。
 今回の作戦について、米下院軍事委員会のフォーブス議員(共和党)は「中国の不安定化行動に対抗する必要な措置で、より早期の実施が必要だった」との声明を発表した。
 南シナ海では中国やベトナム、フィリピンなどが領有権問題で対立。米国は特定の国を支持しないが、航行の自由などの国際規範が主要海上交通路を含む南シナ海で維持されることが「世界経済のために重要」(アーネスト米大統領報道官)との立場から関与を続けている。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/mainichi-20151028k0000m030151000c.html


 習近平主席が、自らの領土・領海であると獅子吼する南シナ海海域を米国艦艇に蹂躙されたのだから、何らかの報復を行うと想像される。だが、海上及び航空戦力において米国と中共では余りにもその差が大きく、おそらく口先だけで米国艦船を直接攻撃する可能性を述べるに留まるのではあるまいか。仮に米国艦船へ一発でもミサイルを発射すれば、米中熱戦の段階に入り、習主席には収拾の着かない状況も予想される。

 人民解放軍が、南シナ海上空に防空識別圏を設定する体制には未だ至っていない。人工島滑走路は完成しても、迎撃戦闘機の配備が遅れているのである。人工島の監視レーダー配備も出来ていないようであるから、西沙・南沙諸島の実効支配はかなり先の事になりそうだ。

 一方、オバマ大統領の任期は残す所1年と2ヶ月であり、彼の個性からして極東アジアで紛争の種になることを自ら引き起こすのは望まないはずだ。習近平主席が、南沙・西沙諸島の埋め立てと軍事施設化を凍結すれば、南シナ海に平穏が訪れる位にしか考えていないだろう。

 とは言え、イージス艦の派遣は国際的に話題を呼び、のんびりしていた日本人にも問題意識を喚起した効果は大きい。南シナ海は日本にとってエネルギー供給の重要なシーレーンである。これを中共の領海とされたら、我が国は存亡の危機に直面する。東シナ海における尖閣諸島の防衛と共に、国民一人ひとりが南シナ海の状況を真剣に考える必要がある。
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