テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 黄金のひと ~

2019-05-14 23:10:30 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 さみしくッてェ、かなしィでスゥ~…」
「がるる!ぐぅるるるがる……」(←訳:虎です!しょんぼりです……)

 こんにちは、ネーさです。
 京マチ子さんの訃報に接して、つい先日、
 『美と破壊の女優 京マチ子』を御紹介したばかりの私たちは
 寂しい思いを押さえ切れません。
 けれど、別れの涙よりも心からの拍手と喝采を送りながら、
 本日の読書タイムは
 “美しいひと”に捧げるこちらのノンフィクション作品を、
 さあ、どうぞ~!

  


  
         ―― 奪われたクリムト ――



 著者はエリザベート・ザントマンさん、
 原著は2015年に、画像の日本語版は2018年12月に発行されました。
 独語原題は『DER GESTOHLENE KLIMT』、
 『――マリアが《黄金のアデーレ》を取り戻すまで』と
 日本語副題が付されています。

「うむむゥ? このォ、おはなしィはァ~…」
「ぐるるがっるるる?」(←訳:映画になったよね?)

 そうね、映画好きな方々は
 『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015年)を
 連想するかもしれません。

 この御本は、
 ヘレン・ミレンさん主演の長編映画で描かれたのと同じに、
 グスタフ・クリムトさんが描いた肖像画
 『アデーレ・ブロッホ=バウアーⅠ』(1907年)が
 ナチ政権によって不当に奪われ、
 “本来の持ち主”のもとに
 返還されるまでを追ったものですが、
 映画とは全く別に執筆、刊行された作品です。

 著者・ザントマンさんは2014年に本作を書き上げており、
 映画は2015年に公開されていますから、
 偶然の一致ということになるのでしょうが、
 それにしても――

「はらがァたつゥ~!!」
「がるぐる!」(←訳:怒り沸騰!)

 いったいどれほどの美術品が
 ナチスドイツの手によって略奪され、
 現在も行方不明になっているのか、
 考えるたび心が波立つ――という御方は
 少なくないようです。

 ザントマンさんは
 ナチの略奪美術をテーマとする研究著作を
 この御本以外にも刊行していますが、
 研究のきっかけとなったのは、
 2006年、ニューヨークタイムズを読んだこと。

「きじィがァ、のッてたのでス!」
「ぐるるがるるがる!」(←訳:絵画が高額で落札!)

 クリムトさん作『アデーレ・ブロッホ=バウアーⅠ』を、
 米国の美術収集家ロナルド・ローダー氏が
 1億3500万ドル(およそ135億円)で購入した、と。

 ザントマンさんは、その金額の高さよりも、
 絵画が辿ってきた“道”に想いを巡らせます。

 『アデーレ』は、
 もともと誰のものだったのだろう?
 どうして米国のコレクター氏が
 手に入れることになったのだろう?

「ふくざつゥきわまるゥ~みちのりィ!」
「がるるるぐるる~…」(←訳:流浪の旅だねえ~…)

 この御本には多数の図版が収録されていて、
 冒頭部分には、ああ、この人が!

 クリムトさんの作品のモデルとなった
 アデーレ・ボロッホ=バウアーさんその人の、
 肖像写真が掲載されています。

「わァ~おッ! このォひとみィ!」
「ぐるがるる!」(←訳:眉も輪郭も!)

 クリムトさんが描いた実在のアデーレさんと家族、
 そして、
 彼女の肖像画が
 20世紀の狂気と混沌の嵐の中を漂い、
 ついには“家族”のもとへ帰り着いたのか、
 ザントマンさんは手を抜かず、
 細部にまで光を当てます。

 ちょうどいま開催中の『クリムト展』には
 残念ながら『アデーレ』は来日していないのですけれど、
 アート好きさん&歴史好きな活字マニアさんに
 おすすめしたい一冊です。
 本屋さんで、図書館で、探してみてくださいね♪
 

 
コメント
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