テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― 真実と嘘の鏡 ―

2013-05-30 21:56:38 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きょうのォごほんはァ、りきさくゥ!」
「がるる!ぐるるがるがる!」(←訳:虎です!超力作なのです!)

 こんにちは、ネーさです。
 力作、そして2013年の読書会を代表する書籍作品を御紹介できるのは無上の喜び!
 本日は、活字マニアさんはもう読んじゃったかしら?な、
 こちらを、どうぞ~!

  



              ―― キャパの十字架 ――



 著者は沢木耕太郎さん、2013年2月に発行されました。
 『Capa's cross』と英語題名が付されています。
 
 写真家ロバート・キャパさん――
 本名は、生国ハンガリー語の呼び方では
 エンドレ・エルネー・フリードマンさん。

「ふァいッ! テディちゃ、しッてるでスゥ!
 せんじょうゥのォ、しゃしんッ!」
「ぐるがるるるぐる!」(←訳:あの決定的な一枚!)

 そうですね、
 フリードマンさんことキャパさんの業績を代表する写真は?と訊かれたら、
 多くの人が即答するでしょう。

 『崩れ落ちる兵士』、
 もしくは『死の瞬間』とも題される、
 スペイン内戦下の兵士さんを撮影した写真は
 20世紀を象徴する写真/画像として、
 世界中に知れ渡っている名作です。

「しゃしんにィ、きょうみィないひともォ~」
「がるっるるぐる!」(←訳:見知ってる一枚!)

 けれど、見る者に余りにも強いインパクトを与えるその写真に対し、
 おや?あれ?と首を傾げる人も
 存在しておりました。

 この写真は、
 どこで、
 どんな状況を撮ったものなのだろう?
 崩れ落ちてゆかんとするこの兵士さんは、いったい誰なの?
 撮影日時は?
 戦闘の様子は?
 そして……兵士さんのその後は?

「むむゥ? どうなッたのでスか?!?」
「ぐるがるるる!」(←訳:分からないや!)

 ええ、不思議なことですが、
 これほどよく知られている写真なのに、
 背景はあまり判明していないのです。
 キャパさん御自身が語った“回想”は矛盾していて、
 万人を納得させ得るものではありません。

 というより、キャパさんは、
 『崩れ落ちる兵士』について詳しく話すことを
 避けていたかのような……。

「なぜッ??」
「がるがるる?」(←訳:何故だろう?)

 著者・沢木さんは
 キャパさんの伝記『キャパ その青春』『キャパ その死』、
 写真集『ロバート・キャパ写真集 フォトグラフス』の日本語訳者さんでもあります。
 その翻訳作業を続けるうち、
 沢木さんは『崩れ落ちる兵士』の真贋問題と
 正面から対峙することとなりました。

 写真は、真に死にゆく兵士を撮ったものなのか。
 死にゆく兵士を撮ったものではないとしたら、
 これは、いったい……“何”なのか。

 長い時間をかけ、
 多量の資料にあたり、
 スペイン、フランス、アメリカ、日本、と
 手掛かりを追って旅をする沢木さん。

 その手には、
 キャパさんが愛用していたのとほぼ同じ型のライカが。
 
「りかがァ、おしえてくれるのかなッ??」
「ぐるるるるがるる!」(←訳:ほんとうのことを!)

 TV放送などで、御本の内容を大まかに知っている、という方々も
 この御本をじっくりと読み進んでゆけば
 また新たな発見と出会うはず!
 
 『崩れ落ちる兵士』の背景だけではなく、
 当時の写真技術、
 さらに写真を現像し、プリントする作業の危うさ、脆さにも
 私たち読み手は打ちのめされます。
 そしてもちろん、キャパさんの生涯にも……。

「しゃしんのォ、むこうにィ!」
「がぅるるるぐるる!」(←訳:キャパさんがいる!)

 憶測から推測へ、
 そうしてやがて、終章『キャパへの道』では、
 熱く、静かな確信へ。

 キャパさんの写真を手に、
 ライカを携えての沢木さんの長い長い旅は、
 終わり、
 また始まります。

 『崩れ落ちる兵士』をめぐる物語は、きっと、まだまだ続く――

 そんな予感を抱かせる素晴らしいノンフィクション作品を、
 活字大好きな皆さま、ぜひとも一読を!




 

 
 
 

 
 
 
 
 
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