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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

地球へ二千万マイル

2019-01-18 17:41:26 | 映画
 1957年に封切られた、レイ・ハリーハウゼンによるストップ・モーション(模型などを少しずつ動かしてコマ撮りして動いているように見せる手法)を使った特撮怪獣映画です。
 日本の「ゴジラ」などとほぼ同時期の作品ですが、着ぐるみとミニチュアによる「ゴジラ」に比べて、怪獣の造形にはリアリティがあるのですが、コマ撮りのために動きに滑らかさが欠けているようです。
 人間の身勝手さにより怪獣が殺されるという展開は、「キングコング」以来の伝統のようで、一種の文明や科学万能に対する批判になっています。
 最近の娯楽一辺倒の特撮映画よりも、技術的には稚拙でも作品価値は高いようです。

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石井桃子「ノンちゃん 雲に乗る」

2019-01-18 17:38:40 | 作品論
 1951年に出版され、1955年に、当時天才少女バイオリニストとして有名だった鰐淵晴子を主役に、おかあさん役の原節子などの豪華俳優陣で映画化されて、ベストセラーになった児童文学作品です。
 一般的には、1959年にスタートしたと言われている「現代児童文学」以前の作品として扱われています。
 戦前戦中を舞台にしている戦争に対する立場があいまいな点などから、社会主義リアリズムの立場をとる「現代児童文学者」たちからは、批判ないし黙殺されることが多かった作品ですが、戦前の中流家庭とそこで暮らす子どもたち(特に主人公のにいちゃん)を生き生きと描いた点は、もっと評価されるべきだと思われます。
 ただし、現時点で読むと、雲のおじいさんの教訓めいた話と主人公が優等生すぎる点が鼻につく読者が多いでしょう。

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ラウンド・ミッドナイト

2019-01-18 17:37:20 | 映画
 1950年代のパリを舞台に、黒人のジャズのサックス奏者と、その熱烈なファンであるフランス人の青年の奇妙な友情を描いています。
 ジャズに限らずポピュラー音楽が、まだビッグビジネス化していない時代の雰囲気が、ふんだんに演奏されるジャズと紫煙とアルコールとドラッグとともに、情緒たっぷりに再現されています。
 映画のモデルになったのは、ジャズ・ピアニストのバド・パウエルのパリ時代だそうで、彼のファンである私にとってはその点でもたまらない魅力があります。
 音楽も文学も、過度にビジネス化が進んでいなかったころの方が、演奏者や作者の「作家性」が息づいていて、聴き手や読者に強くアピールします。

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尾崎翠「第七官界彷徨」第七官界彷徨・瑠璃玉の指輪他四篇所収

2019-01-18 17:36:05 | 参考文献
 1931年に発表された中編です。
 90年近く前に年も前に書かれたとは思われない、みずみずしい感性と精密な描写力を備えた佳品です。
 今で言えばシェアハウスのような住まいに暮らす若い男女四人(ただし、姻戚関係にあります)とその隣人たちを描いて、一番年少である主人公の女性の繊細な感情の起伏を鮮やかに描いています。
 風俗を現代に置き換えれば、現在の芥川賞候補に入っていてもおかしくありません。
 いや、文学性という点では、こちらの方がはるかに上でしょう。
 尾崎翠は早くに筆を折ったため、文壇ではあまり取り上げられることがなかった作家ですが、近年また注目されはじめているのにも納得させられました。
 題名の第七官(感)とは、五感以外のいわゆる第六感のさらに外側にある神秘的な領域のことで、作者が影響を受けた1920年代の日本ないしは世界文学の世界に通ずるものと考えられます。

第七官界彷徨・琉璃玉の耳輪 他四篇 (岩波文庫)
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岩波書店
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神沢利子「ハンカチのねずみ」いないいないばあや所収

2019-01-18 17:34:34 | 作品論
 幼い子どもたちにはわからない大人の世界。
 それを垣間見る主人公の様子が描かれています。
 同じような雰囲気の短編は、芥川賞作家の柏原兵三の「メンコの王さま」でも読んだことがあります。
 また、それ以外の一般文学者が幼少のころを描いた作品でも、同じような味わいの短編がありました。
 そういった意味では、神沢のこの短編集は児童文学と一般文学のボーダーにある作品なのかもしれません。
 児童文学と一般文学の越境化が注目され始めたのは、ちょうどこの作品が発表された1970年代後半で、その後は児童文学の世界で急速に一般化されていきました(例えば、江國香織や湯本香樹実や荻原規子の作品など)。
 しかし、それ以前にも、前述したように一般文学者が幼少の読者を意識して書いた作品などにそういったものはあり、この越境化という現象は、たんに児童文学者側からの意識変化にすぎないように思えます。
 それは、1950年代に形成された「現代児童文学」が行き詰まりを見せて、その枠組みから外れる作品が生み出されたということなのかもしれません。

いないいないばあや (岩波少年少女の本)
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岩波書店
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木下古栗「IT業界 心の闇」金を払うから素手で殴らせてくれないか?所収

2019-01-18 17:31:38 | 参考文献
 ストーリーはこれといってなく、三人の若い女性(IT技術者、看護師、OL(実は男?))のグダグダした関係と、週刊誌のゴシップ(本物?)をちりばめた作品です。
 こういった作品は、そのストーリー性や社会性をうんぬんするのではなく、純粋に文芸論的に評すべきでしょう。
 そういった意味では、擬古的な文章とポップな感覚が混じり合った不思議な魅力があるのは認められます。
 ただ、児童文学の世界では、絵本やナンセンス童話にもっと刺激的なものがたくさんあるので、作品世界自体にはそれほど驚きませんでした。

金を払うから素手で殴らせてくれないか?
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講談社
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黒川博行「泥濘」

2019-01-18 09:45:23 | 参考文献
 人気エンターテインメントの疫病神シリーズ(それぞれの記事を参照してください)の第七作です。
 例によって、イケイケやくざの桑原と半カタギでヘタレキャラの二宮の、デコボココンビが大暴れします。
 このシリーズは、四、五年かけてゆっくり書かれていたのですが、第五作の「破門」(その記事を参照してください)が直木賞を取って、テレビドラマや映画になって人気が出てからは、二年に一作のペースで出版されるようになり(一番売れるので)、粗製乱造が目立つようになりました。
 特に致命的なのは、二人を取り巻くお馴染みのメンバー(嶋田(二人の理解者のヤクザで、第六作からは組長になっているので、二人の不始末をなんでも尻拭いしてくれる)、悠紀(二宮の従妹のバレエインストラクター)と眞由美(桑原の内縁の妻)という二人のタイプの違う美人、中川(悪徳警官だがいつのまにか二人の後ろ盾になっている)など)がだんだんいい人キャラになっていって、敵対する悪徳集団(この作品の場合は、大阪府警のOBたちや敵対するやくざやおれ詐欺グループなど)と白黒がはっきりしすぎている点でしょう。

泥濘 疫病神シリーズ
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文藝春秋
 
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大塚英志「本当は誰にでも小説は書けるということ」物語の体操所収

2019-01-17 09:33:59 | 参考文献
 オタク評論家の大塚による、小説家養成の専門学校での講義をまとめたものです。
 大塚は、「小説には特別な才能は不要で誰にでも書ける」とし、その訓練で大事なのは文章を磨くことではなく、「おはなし」を作ることだとしています。
 そして、その「おはなし」も訓練すれば誰でも作れるとして、その証拠として五才の子が作った「おはなし」を紹介しています。
 誰でも「おはなし」が作れるのはその通りですが、訓練して習得したレベルでの「おはなし」などたかがしれています。
 本物のストーリーテラーは、幼いころからほとんど無意識に「おはなし」(それを実際に文章にして書くかは別問題です)を作る習慣があるので、それこそ無数に「おはなし」体験を持っているのです。
 そういう人たちに対して、講義で習って「おはなし」作りを始めたのではあまりにも遅すぎます。
 大塚はキーワードを書いたカードをシャッフルしてプロットを作る方法を得々として紹介していますが、こんなことは、小説を書いたことのある人ならば、実行するかどうかは別として誰でも思いつくことです。
 例えば、五十年以上も前に書かれた北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」において、友人の劇の研究者が北に同様のアイデアを説明するシーンがあります。
 これを使っていくらトレーニングしても、できあがる「おはなし」はたかがしれています。
 そして、この講義のタイトルは「本当は誰にでも小説は書けるということ」でしたが、いつのまにか「「おはなし」は誰にでも作れる」にすり替わってしまいました。
 「小説」と「おはなし」の間には、大きなギャップがあります。
 これでは「羊頭を掲げて狗肉を売る」のたぐいで、大塚が批判している「小説家志望者」を食い物にする業者(自費出版会社、専門学校など)と大差はないでしょう。

物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン (朝日文庫)
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朝日新聞社
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2050年の世界

2019-01-17 09:30:57 | 参考文献
 イギリスの経済雑誌である「エコノミスト」誌が、2012年に予測した38年後の世界です。
 以下のように刺激的な目次が並んでいます。

第一部 人間とその相互関係
 第一章 人口の配当を受ける成長地域はここだ
 第二章 人間と病気の将来
 第三章 経済成長がもたらす女性の機会
 第四章 ソーシャル・ネットワークの可能性
 第五章 言語と文化の未来
第二部 環境、信仰、政府
 第六章 宗教はゆっくり後退する
 第七章 地球は本当に温暖化するか
 第八章 弱者が強者となる戦争の未来
 第九章 おぼつかない自由の足取り
 第十章 高齢化社会による国家財政の悪化をどうするか
第三部 経済とビジネス
 第十一章 新興市場の時代
 第十二章 グローバリゼーションとアジアの世紀
 第十三章 貧富の格差は収斂していく
 第十四章 現実となるシュンペーターの理論
 第十五章 バブルと景気循環のサイクル

第四部 知識と科学
 第十六章 次なる科学
 第十七章 苦難を超え宇宙に進路を
 第十八章 情報技術はどこまで進歩するか
 第十九章 距離は死に、位置が重要になる
 第二十章 予言はなぜ当たらないのか

 正直言って、次のような広告の惹句(本の扉にも掲げられています)に惹かれて読みました。
「一九六二年に日本の経済大国化を予測し、見事に的中させたグローバルエリート誌が、今後四〇年を大胆に予測」
・日本は、人類がまだ見たことのない老人の国へとつき進んでいる。二〇五〇年における日本の平均年齢は、52.7歳。米国のそれは40歳。
・しかし、中国も同じ少子高齢化に悩み、二〇二五年に人口減少が始まり、経済成長は止まり、インドに逆転される。
・豊かさの指標であるGNPで、日本は韓国の約半分になる。
・今後もっとも進歩をとげる科学分野は、生物学である。
・英語は、タイプライターのキー配列のように、いったん得たグローバル言語の座を維持する。
・人口の配当をうけるタンザニアなどアフリカ諸国が新興国として台頭。
「ビジネスに、教育に、あなたの未来に関するヒントが満載!」

 しかし読んでみると、たいして感心しませんでした。
 まず日本に関してですが、上記に書いた内容がほとんどすべてで、著者たちは超高齢者国家の日本に興味はないようで、まったく無視されています。
 次に、ほとんどの予測が過去のトレンドの延長にすぎず、全然大胆ではありません。
 また、おおむね楽観的(地域限定ではあるが核戦争の危険と温暖化については悲観的あるいは自信がないようです)すぎます(最後の章で自分たちで弁解していますが)。
 西欧人の観点が強すぎて、世界中が西欧化するという前提で予測しています。
 ビジネスマンや雑誌の編集者(つまり自分たち)にとって都合のいい予測が散見されて、その部分は苦笑を禁じ得ませんでした。
 子どもたちや若い人たちの未来の方向性について何かヒントが得られればと思っていましたが、残念ながらほとんど得られませんでした。

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する
クリエーター情報なし
文藝春秋


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宮内悠介「盤上の夜」盤上の夜所収

2019-01-17 09:00:42 | 参考文献
 この作品は、架空の囲碁棋士の人生を描いた一種の名人伝であり、また、四肢を失った美少女という設定のキャラクター小説でもあります。
 四肢を失い、囲碁盤を感覚器とするようになった若き女流棋士の短い栄光の日々といったゲーマーにはたまらない設定と、ちりばめられたマニアックな「名言集」が、オタクたちの心をくすぐります。
 私も、かつてゲーマー(といってもプレイをしたのは将棋、モノポリー、カタンなどのボードゲームで、電子ゲームは七十年代に自分でプログラムを組むのに熱中したことはありますが、今はプレイもほとんどしません)だったので、こうしたストーリーは大好きです。
 現代では、ゲームと文学は物語消費という点で密接な関係にありますが、私の体験でも児童文学に熱中している時にはゲーム熱が冷め、児童文学から距離を置くとゲームへの関心がわいてきます。
 そういった意味では、この作品はゲームと文学を両立させた絶妙のポジショニングにあると言えます。

盤上の夜 (創元日本SF叢書)
クリエーター情報なし
東京創元社
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沢木耕太郎「ガリヴァ―漂流記」王の闇所収

2019-01-16 18:10:56 | 参考文献
 戦後のプロスポーツ創成期に、相撲(幕下上位まであがり、関取になる寸前だった)を皮切りに、野球(ただしテスト生)、ボクシング(日本ミドル級チャンピオンにまでなった)、ボーリング(ただしインストラクター)、プロレス(ただしレフリー)を転々として、それぞれの分野でそこそこまでいきながらもうひとつがんばりきれなかった前溝隆男の半生を描いています。
 作者のノンフィクションは、「一瞬の夏」などの作者自身が主要登場人物として登場するいわゆる私ノンフィクション物よりも、黒子に徹してニューリアリズムの手法(主人公の視点を取り入れたりして、あえて客観性を捨てて、より作者の主観を前面に出して対象に迫るノンフィクション)で描いた作品(特に作者自身が有名人になる前)の方が優れていると思われますが、特に取材対象が有名人(例えば、同じボクシングならば、カシアス内藤や輪島功一など)よりも一般的には無名(私は小さいころからボクシングに関心があったのですが、前溝の名前はかすかに覚えている程度です)な方が、作者の対象への愛着がより深く感じられて印象に残ります。
 この作品でも、あと一歩のところで歴史に名を刻めなかった(ボクシングがもっと人気があった時代のミドル級の日本チャンピオンですから、それだけでも十分価値はあるかもしれませんが)ものの、どの業界でもみんなから好かれ、家族にも恵まれた、いつも楽天的で明るい前溝を、好意的な筆致で描いていて読後感がいいです。
 ただ、彼ががんばり切れなかった原因として、好意的にとはいえ彼に流れるトンガの血(日本人の父親とトンガ人の母親の間に生まれた)に求めたのはステレオタイプな感もしますし、トンガがガリヴァ―旅行記の巨人国のモデルだという説(タイトルはここから来ています)に強引に結びつけた印象も否めません。

王の闇 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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中沢明子・古市憲寿「遠足型消費の時代」

2019-01-15 09:39:43 | 参考文献
 女性誌ライターの中沢が女性誌の提灯記事のような文章を書いて、それに古市がもっともらしいアカデミック寄りの味付けをしたデフレ時代といわれる現代の消費動向を述べた本です。
 一言でいえば、「「お手軽な非日常」をリーズナブルな価格で」ということのようですが、特定のショップやブランドや雑誌など(H&M、コストコ、イケア、LEE、Mart、ディーン&ディルーカなど)をかなり持ち上げているので、今はやりのステマ(ステルス・マーケティング)の匂いもします。
 しかし、彼らがやたら繰り返している「女子ども」中心の社会というのは、児童文学の世界にもぴったりとあてはまります。
 児童文学を買うのは圧倒的に女性(大人も含めて)ですし、そこではもう重厚なトールキンの「指輪物語」はあまり読まれませんが、その世界観をちゃっかり拝借したお手軽なファンタジーやライトノベルは花盛りです。
 そういった意味では、今の児童文学も、「「お手軽な非日常」をリーズナブルな価格で」味わう「「遠足型消費」の時代」なのでしょう。

遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか? (朝日新書)
クリエーター情報なし
朝日新聞出版
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高田知二「精神鑑定例からみた双極Ⅱ型障害」うつ病論 双極Ⅱ型障害とその周辺所収

2019-01-15 09:36:03 | 参考文献
 従来、犯罪を起こす者は多くないと見られていた双極性障害とは異なり、双極Ⅱ型障害はそれよりも多いと述べています。
 でも、その根拠は筆者個人の鑑定経験に限られていて、母集団があまりにも小さいので説得力に欠けています。
 この論文では、四つの事例をあげていますが、前の二例では患者は自殺関連行動を起こしているので、パーソナリティ障害との合併が疑われます(林 直樹「症例から考える双極Ⅱ型障害とパーソナリティ障害」の記事を参照してください)。
 また、四つとも旧来のメランコリー親和型の単極うつ病と誤診されて、抗うつ薬が処方されていて、それらが犯罪を起こした時の(軽)躁状態を引き起こした「人災」の可能性が高いと思われます。
 単独の双極Ⅱ型障害は、「軽症化」を一つの特徴としていますので、正しく診断されて気分調整薬などが処方されていれば、患者が犯罪を引き起こす可能性は従来の双極性障害と同様に低いと思われます。
 そのため、作品に双極Ⅱ型障害の人物を描く際には、短絡的に彼らと犯罪と結びつけることは、強く戒めなければなりません。

 
うつ病論―双極2型障害とその周辺 (メンタルヘルス・ライブラリー)
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批評社
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グードルン・パウゼヴァング「お手本」そこに僕らは居合わせた所収

2019-01-15 09:33:36 | 作品論
 主人公の女の子は、宿題の「お手本とする人」のネタに困って、祖母に尋ねます。
 すると、祖母の少女時代のお手本は、意外にもアドルフ・ヒトラーだったと言われます。
 ヒトラーが死んだときには涙を流したほどだといい、当時の少女団に入っていた人たちはみんなそうだったと証言します。
 さらにもう一人のお手本は、父親の親友のナチス党の管区指導者だった男だとも言います。
 しかし、このお手本には祖母は裏切られています。
 ロシア軍が攻めてきた時に、みんなには逃げるなと言いながら、自分は家族と村を脱出したのです。
 そして、祖母の真のお手本は、貧しい名もない農婦だと教えてくれます。
 この農婦は、戦争中に近くの捕虜収容所から労働の割り当てとして農場に来ていたフランス人にも、夕方に彼を迎えにきた収容所のドイツ兵にも、分け隔てなく夕食のジャガイモをふるまったのだと説明します。
 この作品の語り手が述べてるように、敵味方なく同じ人間として接することの大切さは、洋の東西も時代も問わず、世界平和のためには一番重要なことでしょう。

そこに僕らは居合わせた―― 語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶
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みすず書房
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火の鳥 異形編

2019-01-13 10:45:11 | コミックス
 1981年に「マンガ少年」に連載された短編です。
 「ループ物」といわれる時間SFの1ジャンルに属する作品で、繰り返される時間(この作品の場合は約三十年間)における主人公の苦悩(自分で自分を殺し続ける、凶暴な父親との葛藤、男性として育てられた女性の苦しみ、戦国武将である父親による被害者たちの救済(火の鳥の羽を使って怪我を直す)など)を描いています。
 こうした「ループ物」のテーマは、いかにしてこの時間ループを抜け出すかなのですが、この作品では永遠の生命を持つ「火の鳥」らしく最後まで抜け出しません。
 ただ、火の鳥の羽による救済の対象が、だんだんに妖怪(人間に虐げられている物の象徴でしょう)になって、有名な土佐光信の「百鬼夜行絵巻」に結び付けています。
 「百鬼夜行」と言えば、中学三年になる前の春休みに、友人たちと四人で「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」を見にいった時の併映作品だった「妖怪百物語」のことを、今でも思い出します。
 一回目の上映が「妖怪百物語」で、早朝のせいか、観客は私たち四人だけで、わざわざ最前列の真ん中に並んで腰かけて見た妖怪映画は、あたりに誰もいないせいか格別の怖さでした。
 そのラストシーンが、登場した妖怪たちが深夜の町を練り歩く「百鬼夜行」のシーンでした。
 上映が終わって場内に明かりがついいた瞬間、私たちは映画以上にびっくりして飛び上がってしまった。
 いつのまにか、私たち四人はたくさんの観客に囲まれていたからです。
 メインの「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」をいい席で見ようと、いつの間に他の観客たちが入ってきていたのでした(当時は、場末の映画館では全席自由席で途中入場もOKだったので、席を確保するためにこのようなことは日常的に行われていました)。
 「百鬼夜行」に夢中になっていて、私たちは他の人たちが入ってきていることに、全く気付かなかったのです。



火の鳥3 ヤマト・異形編 (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA
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