児童文学同人誌の合評会に作品を出す場合の注意点を、以下にランダムにあげてみます。
これは児童文学を書く上で共通することですが、読み手のグレードに合わせた言葉づかいが必要です。
また、現代の子どもたちにあった表現をしないと、古めかしく感じられてしまいます。
さらに、児童文学の特徴として、その作品が描写で勝負するのか(小説指向)、それともアクションとダイアローグでストーリーを展開していくのか(物語指向)を意識した方がいいでしょう。
どちらの場合も、モノローグや説明的な文章はできるだけ避けた方が無難でしょう。
新しい物や事柄の名前は正確に調べて書く必要があります。
また、子どもの名前も時代とともに変わってきているので、適切なものを使わないと古く感じられてしまいます。
特に、女の子で「子」の付いた名前や、男の子で「男」などの付いた名前は、現代では少数派になっていますので、一つの作品の中で多用しない方が無難でしょう。
もっとも、登場人物の名前がキラキラネームばかりなのも困りますが。
作品に登場する小道具も、時代に即したものを使わなければならないでしょう(スマホ、インターネットなど)。
また、七十年代までの作品によく描かれた「金持ちは悪い」、「貧乏人はいいと」いうパターン化は、現代では使えません。
作品を一人称で書くときには、大人の視線で説明してしまわないように注意が必要です。
もしそれをしたかったら、三人称で書きましょう。
また、途中から現れた登場人物のキャラクターをどのように表現するかには、特に注意しなければなりません。
難しい言葉を唐突に使わないようにした注意した方がいいです。
また、モノローグだけで状況説明してはいけません。
作品のおもしろさを支えるものの一つに、書き手の想像力があります。
妄想のような作者の空想がどんどん広がって取り返しがつかなくなるようでないと、作品はおもしくありません。
これは、ファンタジー作品だけでなくリアリズムの作品でも同様のことがいえます。
同人誌に作品を提出する基本的なマナーとして、作品の一部だけを提出してはいけません。
読み手である同人は、全体の構想がわからないので、的確な批評ができません。
たとえ完成度が低くても、全体像を示した方がよいアドバイスを受けられます。
特に、児童文学では、作品において相手を傷つけると、読み味が良くありません。
一般に、作品の時代設定が、現代なのか、作者が子どもの頃なのか、はっきりさせた方がいいと思います。
もしはっきりさせないのなら、子どもたちの普遍的な部分だけを描いて安易に特定の時代の風俗を出さないように注意する必要があります。
一般的は分かりやすい文章を心がけるべきですが、凝った表現を使いたい場合にはねらいをはっきりさせてその効果を最大限に発揮できるよう配慮するべきです。
そして、説明的な文章はできるだけ排除する必要があります。
同人誌の合評会に、長編の冒頭部分だけを出す場合は、全体の構想が説明できるようになってからにしましょう。
児童文学作品にはスピードが必要です。
状況設定などはできるだけ手短に済ませて、なるべく書きたい中心に移った方がいいでしょう。
読者に作品を読んでもらうには、文章の質が安定していることが重要です。
エブリデイマジックのファンタジー作品を書く場合には、不思議なことが起こっているのにそれを不思議がらないのを徹底させるべきでしょう。
また、その世界の時代設定をいつにするのか明確にした方がいいでしょう。
合評会に依頼原稿の草稿を出すときには、原稿の条件(枚数、グレード、テーマ、題材など)を事前に明確にした方が、的確なアドバイスが得られます。
作品に登場人物や動物などへの愛情が感じられると、読み味が良くなります。
大人の視点で書いた作品でも、子どもの頃の回想シーンを子どもの視点で描けば、児童文学になるでしょう。
また、二重視点の効果で、対象がより立体的にとらえられます。
自分の体験だけを書いたのでは、よくあるエピソードでは、作品として弱くなります。三十年前には評価されていた児童文学のタブー(死、離婚、性など)を破った作品も、現代ではそれらが日常化しているので、新しい視点(たんに離婚だけでなくシングルマザーの問題を取り上げるなど)を取り入れないと古く感じられてしまいます。
通信系の風俗はどんどん変わっているので、作品に取り入れるのは要注意です。
たとえば現代の都会の小学生(特に高学年の女子)は、大半が携帯を持っていますが、それはすべてスマホに変わってしまうでしょう。
また、公衆電話はひところはすっかり姿を消しましたが、震災時の携帯電話の脆弱性により、緊急時の通信手段として復活しつつあります。
児童文学もやはり文学作品なので、基本的には文章や描写の美しさは、大きな魅力です。
イメージが鮮明であれば、短い作品でも強く印象に残ります。
また、短編ではラストがわかりやすいと、読んだ後の余韻が残ります。