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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

中沢明子・古市憲寿「遠足型消費の時代」

2019-01-15 09:39:43 | 参考文献
 女性誌ライターの中沢が女性誌の提灯記事のような文章を書いて、それに古市がもっともらしいアカデミック寄りの味付けをしたデフレ時代といわれる現代の消費動向を述べた本です。
 一言でいえば、「「お手軽な非日常」をリーズナブルな価格で」ということのようですが、特定のショップやブランドや雑誌など(H&M、コストコ、イケア、LEE、Mart、ディーン&ディルーカなど)をかなり持ち上げているので、今はやりのステマ(ステルス・マーケティング)の匂いもします。
 しかし、彼らがやたら繰り返している「女子ども」中心の社会というのは、児童文学の世界にもぴったりとあてはまります。
 児童文学を買うのは圧倒的に女性(大人も含めて)ですし、そこではもう重厚なトールキンの「指輪物語」はあまり読まれませんが、その世界観をちゃっかり拝借したお手軽なファンタジーやライトノベルは花盛りです。
 そういった意味では、今の児童文学も、「「お手軽な非日常」をリーズナブルな価格で」味わう「「遠足型消費」の時代」なのでしょう。

遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか? (朝日新書)
クリエーター情報なし
朝日新聞出版
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高田知二「精神鑑定例からみた双極Ⅱ型障害」うつ病論 双極Ⅱ型障害とその周辺所収

2019-01-15 09:36:03 | 参考文献
 従来、犯罪を起こす者は多くないと見られていた双極性障害とは異なり、双極Ⅱ型障害はそれよりも多いと述べています。
 でも、その根拠は筆者個人の鑑定経験に限られていて、母集団があまりにも小さいので説得力に欠けています。
 この論文では、四つの事例をあげていますが、前の二例では患者は自殺関連行動を起こしているので、パーソナリティ障害との合併が疑われます(林 直樹「症例から考える双極Ⅱ型障害とパーソナリティ障害」の記事を参照してください)。
 また、四つとも旧来のメランコリー親和型の単極うつ病と誤診されて、抗うつ薬が処方されていて、それらが犯罪を起こした時の(軽)躁状態を引き起こした「人災」の可能性が高いと思われます。
 単独の双極Ⅱ型障害は、「軽症化」を一つの特徴としていますので、正しく診断されて気分調整薬などが処方されていれば、患者が犯罪を引き起こす可能性は従来の双極性障害と同様に低いと思われます。
 そのため、作品に双極Ⅱ型障害の人物を描く際には、短絡的に彼らと犯罪と結びつけることは、強く戒めなければなりません。

 
うつ病論―双極2型障害とその周辺 (メンタルヘルス・ライブラリー)
クリエーター情報なし
批評社
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グードルン・パウゼヴァング「お手本」そこに僕らは居合わせた所収

2019-01-15 09:33:36 | 作品論
 主人公の女の子は、宿題の「お手本とする人」のネタに困って、祖母に尋ねます。
 すると、祖母の少女時代のお手本は、意外にもアドルフ・ヒトラーだったと言われます。
 ヒトラーが死んだときには涙を流したほどだといい、当時の少女団に入っていた人たちはみんなそうだったと証言します。
 さらにもう一人のお手本は、父親の親友のナチス党の管区指導者だった男だとも言います。
 しかし、このお手本には祖母は裏切られています。
 ロシア軍が攻めてきた時に、みんなには逃げるなと言いながら、自分は家族と村を脱出したのです。
 そして、祖母の真のお手本は、貧しい名もない農婦だと教えてくれます。
 この農婦は、戦争中に近くの捕虜収容所から労働の割り当てとして農場に来ていたフランス人にも、夕方に彼を迎えにきた収容所のドイツ兵にも、分け隔てなく夕食のジャガイモをふるまったのだと説明します。
 この作品の語り手が述べてるように、敵味方なく同じ人間として接することの大切さは、洋の東西も時代も問わず、世界平和のためには一番重要なことでしょう。

そこに僕らは居合わせた―― 語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶
クリエーター情報なし
みすず書房
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