現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

クラスになじめない子どもたちに児童文学ができること

2021-12-29 10:38:25 | 考察

 最近の学校では、普通学級では問題を起こしてなかなかクラスに受け入れられないが、支援学級で学ぶような障害はない子どもたちが増えているそうです。
 障害がはっきりしている子どもたちには、いろいろな支援制度がありますが、障害があるかどうかはっきりしない境界線上の子どもたちには行き場がありません。
 そういった子どもたちに遊び場と友だち(大人も含めて)を提供するボランティア活動も各地でなされているようですが、まだまだ十分ではないでしょう。
 そうした子どもたちに、本の中の遊び場や友だちを提供することも、児童文学の重要な役目だと思います。
 私自身、低学年のころは病気のために学校を休みがちだったので、友だちもあまりいませんでした。
 そんな時に、エーリヒ・ケストナーの「エーミールと探偵たち」のエーミール・ティッシュバインや教授くんたち、「飛ぶ教室」のマルチン・ターラーやヨナタン・トロッツたちと知り合ったことで、どんなに励まされたか計り知れません。
 また、そういったクラスになじめない子どもたちを児童文学で描くことによって、そうした子どもたちの周辺にいるクラスメートなどに、彼らを見直すきっかけになることも期待できます。
 そうした作品がもっともっと書かれることを願っています。

 

 

 

 

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プルートで朝食を

2021-12-25 10:50:56 | 映画

 2005年公開のアイルランド/イギリス合作映画です。

 女装の男性を主人公にしたコメディ映画です。

 といっても、LGBTQの問題を正面から取り上げた作品ではなく、性別を超えた自由人の青年の奔放な生き方を通して、1970年代のアイルランドやイギリスの世相(IRAとイギリス軍の抗争やグラムロックなどの新しい風俗など)を断片的な構成で、鮮やかに切り取っています。

 バックに流れるルベッツの「シュガー・ベイビー・ラブ」などの当時のポップスが、1970年代の雰囲気を醸し出すのに効果的です。

 難役の主人公パトリックを演じているキリアン・マーフィーの好演が光っています。

 

 

 

 

 

 

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セント・オブ・ウーマン 夢の香り

2021-12-25 09:58:47 | 映画

 1992年公開のアメリカ映画です。
 目が不自由で孤独な気難しい退役軍人の老人と、寄宿制の名門の進学高校(サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(その記事を参照してください)で、主人公のホールデン・コールフィールドが通っていた学校を思い出しますね)に奨学金とアルバイトでなんとか学資を工面している17歳の高校生が、感謝祭期間のアルバイト(面倒を見ている姪家族が、感謝祭で夫の実家へ帰っている間、高校生が老人の世話をします)で知り合い、ニューヨークに出かけて(老人は最後の贅沢をした後で、拳銃自殺するつもりでした)、いろいろな贅沢(豪華なホテル、豪華なレストラン、若い美人とのダンス(タンゴ)、高級娼婦との一夜、高級イタリアスポーツカーでの疾走)を通して繋がりを深め、高校生が老人の自殺をなんとかおもいとどめさせます。
 そのお返しと言ってはなんですが、高校生が卑劣な同級生たち(金持ちのドラ息子たち)や俗物の校長に陥れられそうになった時に、老人は胸のすくような率直なスピーチで彼らの欺瞞を暴いて、高校生のピンチを救います。
 老人役の名優アル・パチーノが、渾身の演技で、ついに念願のアカデミー主演男優賞を受賞しました。

 

 

 

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児童文学に社会性をどのよう持たせるか

2021-12-24 17:25:34 | 考察

 1990年代以降、児童文学には大きな変化が起きています。
 作品から、文学性や社会性が失われ、女性を中心とした読者に対するエンターテインメントになっています。
 しかし、そうした変化も、ゲーム(現在ではスマホゲームが中心です)やアニメやマンガ(かつてほどではありませんが)に比べれば、児童文学はごく小さなマーケットでじり貧傾向にあります。
 そんな時に文学としての存在意義を考えると、再び作品に社会性を持たせることも一つの可能性だと思われます。
 社会性といっても、かつてのような政治的なものではなく、もっと身近なテーマを描いてはどうでしょうか。
 格差社会、少子化、高齢化、差別、ネグレクト、貧困、特殊詐欺、催眠商法、災害、感染症など、いろいろなテーマが考えられます。
 それをリアリズムの手法で深刻に描かずに、ファンタジー、ミステリー、コメディといったエンターテインメントで培った手法で描けば、それらを子どもたちにも理解でき、先ほどあげたゲームなどの他のメディアとの差別化が図られるのではないでしょうか。

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病院

2021-12-24 17:19:31 | 作品

 ガチャン。
 ぼくは、アパートの部屋の鍵を開けた。
「ただいま」
 ドアを開いて中に入る。
でも、なんの返事もない。家に帰っても、そこには誰もいない。おかあさんはいないのだ。
ぼくは、学童からの帰りを、いつも少し早くしてもらって、暗くならないうちに一人でアパートへ帰っていた。ぼくの通っている学童では、本当は迎えの人がいないといけない。
でも、日没前に帰るのだったら、特別に迎えなしに一人で帰るのも許されている。
アパートに着いた時に部屋に誰もいないのは、いつものことだ。明かりのついていない暗い部屋に一人で入るのも慣れていた。
今までは、全然平気だったのだ。
でも、おかあさんが入院してからは、それがだめになった。
今までも、おかあさんは七時ごろにならないと、仕事から帰らなかった。それまでの間は、いつも一人で待っていた。
だけど、それはそれで大丈夫だったのだ。おかあさんがもう少しで帰ってくると思うと、部屋に一人でいても平気だった。
それが、今はすっかりだめになっている。一人きりで一晩中すごさなければならないと思うと、たまらない気持だった。
アパートに着くと、まだ薄明るいのに、すぐに部屋中の灯りをつけた。そうしないと、不安でとても耐えられなかった。

おかあさんは、先月から内臓の病気で入院している。仕事と家事におわれて、働きすぎたったのが原因のようだった。
ぼくの家にはおとうさんがいなかったから、おかあさんが一人でがんばりすぎたのかもしれない。
世田谷のおばさん(おかあさんのお姉さんだ)は、入院中はこちらで一緒に暮らそうと言ってくれた。
でも、それだと、学校を一時転校しなければならない。
だから、ぼくは一人暮らしを選んだ。
そんなぼくを助けるために、おばさんは、毎週水曜日と土曜日に、大きな保冷バッグをいくつも抱えてやってくる。
おばさんは、持ってきた電子レンジでチンすればすぐに食べられるようにパックしたおかずで、うちの冷蔵庫の中を満杯にしてくれた。そして、それと入れ替わりに、ぼくが洗っておいた食べ終わった容器などは持ち帰ってくれる。
土曜日に来た時には、一緒に病院へお見舞いにも連れていってくれた。その時には、おかあさんの着替えを持って行って、一週間分の洗濯物を持って帰る。
水曜日には、何回も洗濯機を回して、一週間でたまった洗濯もしてくれて、家の中に干してくれる。狭いアパートの中は、洗濯物でいっぱいだ、
その中には、土曜日に病院から持ち帰ったおかあさんの洗濯物も交じっている。それを見ると、おかあさんが恋しくなってしまった。
おばさんは、洗濯機を回す間に部屋の掃除もしてくれた。
こうして、おばさんが家事のほとんどをやってくれるので、ぼくがやらなくていけないのは、お風呂を沸かすのと、おばさんが分別しておいてくれたゴミを出すことぐらいだった。
それに、郵便物をおかあさんに持っていったり、回覧板を回したりもしている。

 ある日、学童の帰りに、家に寄ってから、おかあさんのお見舞いに病院へ行くことにした。
 土曜日におばさんと一緒に行った時に、持っていくのを忘れた着替えがあることに気がついたからだった。持っていかないと、きっとおかあさんが困るだろう。
いつもはおばさんと一緒だったので、一人で病院へ行くのは初めてだった。
病院の平日の面会時間は、5時からだった。病院までは歩いていくと、ぼくの家からは二十分はかかる。ぼくは、それに合わせて家を出た。

 病院は、通学路から外れて大通りを越えたところにある。大通りが危ないから、一人では来ないように言われていた。
 でも、今日はそんなことはかまっていられない。大通りを渡る時、ぼくは信号が青になっても、用心して左右を十分に確認してからダッシュした。
 病院の建物は、古い木造だった。廊下も階段も、歩くたびにギシギシなった。階段の真ん中あたりは、すりへってへこんでいる。
 二階の一番奥が、おかあさんの病室だった。
部屋には、ベッドが四つあった。おかあさんのベッドは、窓際の左側だった。
病室の中はシーンと静まり返っていた。病人たちはみんな眠っているようだった。
 ぼくは、まわりの人に迷惑がかからないように、忍び足で近づいていった。
 おかあさんは、じっと目をつむって眠っていた。顔色が真っ黄色で、何だかしなびてしまったように見える。ぼくは、おかあさんの髪の毛にずいぶん白髪がまじっていることに、初めて気がついた。
(どうしようか?)
と、ぼくは困ってしまった。
 せっかく良く寝ているのに、おかあさんを起こしてしまうのは悪いと思う。
 でも、そばで目を覚ますのを待つのも、なんだか恐ろしいような気がした。
迷った末に、ぼくは、一階の待合室で、おかあさんが目覚めるのを待つことにした。家からランドセルに入れて持ってきた着替えの包みを、ベッドに作り付けになっているテーブルの上に置いて、また忍び足で病室を出ていった。 

 待合室には、いろいろな人たちがいた。
 頭に包帯をグルグルまきにしたおじさん。移動式の点滴を付けたままのおばさん。
 この病院は全館禁煙なので、タバコを吸っている人はいない。タバコを吸うには、建物の外まで出なければならなかった。おかげで、ぼくの嫌いなタバコの煙に悩まされることはなかった。
 みんなは、ぼんやりとテレビを眺めていた。テレビでは、ドラマの再放送をやっている。古いテレビのせいか、画面の色がにじんでいる。画面も上下が黒くなっていてその分小さかった。
 ぼくは、ソファーの端に腰を下ろした。ドラマには興味がないので、ランドセルからコミックスを出して読み始めることにした。
 ウーーン、ウーーン。
 突然、どこからかうめき声が聞こえてきた。ぼくは、コミックスから顔を上げた。どうやら近くの病室からのようだ。
「かわいそうにねえ。まだ若いのに」
 点滴のおばさんがいった。
「頭に水がたまって苦しいんだってよ」
 包帯のおじさんが答える。
 ぼくは体を縮めるようにして、またコミックスを読み始めた。
「ねえ、ぼく、何年生?」
 点滴のおばさんが話しかけてきた。
「三年です」
「そうかい。誰か入院してるの?」
「おかあさんが」
「そうかい、そうかい。大変だねえ」
 おばさんは、一人でうなずいていた。

 ピーポ、ピーポ。……。
 救急車のサイレンが鳴り響いてきた。
「急患でーす」
お医者さんや看護士さんたちが、あわただしく走りまわっている。
「交通事故です!」
 誰かが叫んだ。
「ストレッチャー!」
 ガチャーン。
 非常ドアが力いっぱい開けられて、救急隊員たちが入ってくる。移動式のベッドのような物の上には、患者さんが乗っているようだが、ぼくは怖くてそちらが見られなかった。
「ECU(緊急治療室)へ!」
 看護士さんが叫んでいる。みんなはすごい勢いで、ぼくのそばを駆け抜けていった。
「ぶっそうだねえ」
 包帯のおじさんがいった。
「おお、やだやだ」
 点滴のおばさんは、肩をすくめている。
 ぼくはそんな騒ぎの中で、みんなから隠れるように首を縮めて、じっとコミックスを見つめていた。
 でも、なかなかキャラクターもストーリーも頭に入ってこなかった。

「たけちゃん、やっぱり来てたのね。」
 顔を上げると、おかあさんが立っていた。ピンクのガウンをはおって、水色のスリッパをはいている。
「おかあさん!」
 ぼくは、ソファーから飛び上がるようにして立ち上がった。
 かあさんの顔色は、やっぱり黄色っぽかった。
 でも、いつものやさしい笑顔を浮かべていた。
 ぼくもけんめいに笑顔を見せようとしたが、うまくいかなかった。
「どうしたの? 何か怖いことでもあったの?」
 おかあさんが心配そうにたずねた。ぼくの顔が、こわばっていたからかもしれない 
「ううん」
 ぼくは、首を横に振った。さっきまでの恐ろしかった事は、おかあさんには言いたくなかった。
「一人では来なくてもいいよ。着替えも大丈夫。土曜日に、世田谷のおばさんと一緒に来ればいいんだから」
「うん、わかった」
 ぼくはコクリとうなずくと、一番聞きたかったことをおかあさんにたずねた。
「おかあさん、おかあさんは絶対に死なないよね」
「うんうん、たけちゃんを残して死んだりしないよ」
 おかあさんは、笑いながら答えてくれた。ぼくは、そんなおかあさんの顔をじっと見つめた。

       

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マネキン

2021-12-22 18:06:02 | 映画

 1987年公開のアメリカ映画です。

 自分で作ったマネキンに恋した男性と、彼のおかげで命を得たマネキンとの恋愛を描いた、ロマンチック・ファンタジーです。

 全体的には他愛のないドタバタ・コメディなのですが、主役を演じている二人がとてもかわいいのでついつい最後まで見てしまいます。

 マネキンは男性と二人きりの時にしか生きた女性にならなかったのですが、ラストで彼に命を救われて完全な女性になることができて、めでたしめでたしです。

 また、挿入されているダンスシーンや音楽も魅力的です。

 特に、主題歌のスターシップ「愛はとまらない」は全米No.1ヒットになったので、映画よりもこちらの方が有名でしょう。

 実際、「愛はとまらない」のミュージックビデオはこの映画の名場面集なので、それだけ見れば映画は見なくてもいいかもしれません。

 これと同じことが、「フットルース」や「フラッシュダンス」でも言えます。

 

 

 

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地下室のメロディ

2021-12-20 18:17:09 | 映画

 1963年のフランス映画です。
 老ギャングが引退する最後の仕事に、若い相棒と組んでカジノの金庫を狙います。
 白黒映画ですし特撮の手法も非常に古いのですが、バックに流れるしゃれた音楽と粋な会話やテンポのいい演出は、今見ても少しも古びていません。
 当時もフランスの新旧二大映画スターの共演が話題になりましたが、ジャン・ギャバンの渋い演技とアラン・ドロンの若々しい魅力が全編に溢れています。
 特に、プールの中に隠したカバンが開いてしまい、中のお札が次々に浮き上がってプール一面に広がる有名なラストシーンは、一攫千金を狙った二人のはかなさを象徴していて鮮やかです。

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シング・ストリート 未来へのうた

2021-12-20 18:12:28 | 映画

 1985年のアイルランドのダブリンを舞台に、バンド活動にのめり込んでいく少年たち(14、5歳)を描いてます。
 女の子にもてたいために、男の子がバンドを始めるのは万国共通なようです。
 でも、この映画は単なる「ア・ボーイ・ミーツ・ア・ガール」ではなく、その時代の背景も描いていて作品に深みを与えています。
 取り巻いている閉塞的な状況(両親の不仲と別居(カソリック教徒なので離婚できません)、経済的な理由で転校させられた学校(強圧的な校長、落ちこぼればかりで暴力的な生徒たち)、失業者が街にあふれ若者たちが英国へ渡っていってしまう故郷など)に抵抗するように、主人公たちはバンドにうち込んでいきます。
 音楽に関するメンターである兄(大学中退で家に引きこもっています)やミューズである年上の少女(児童養護施設で暮らしています)などに導かれながら、主人公たちは音楽の腕前をあげていきます。
 デュラン・デュランやAーhaなどの80年代のヒット曲が懐かしいし、少年たちのオリジナル・ソングも素晴らしい(主題歌はマルーン5のアダム・レヴィーンが担当しています)ので音楽映画としてもよくできています。
 また、少年たちが化粧をして自分たちのミュージックビデオを撮影するというのも、MTVが世界中を席巻していた当時を彷彿とさせます。
 学校のダンスパーティで演奏する(ギグ)のシーンは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「青春デンデケデケデケ」を、主人公が彼女と二人で小さなモーターボートで50キロ離れたイギリスへ向かうラストシーンは「小さな恋のメロディ」を思い起こさせて、映画ファンにとっても懐かしさを感じさせてくれます。

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がんばれ!ベアーズ

2021-12-20 13:51:57 | 映画

 1976年に製作されたリトルリーグを題材にしたコメディ映画です。
 飲んだくれの元マイナーリーグ選手が、お金のために問題児ばかりのポンコツチームの監督を引き受け、次第に熱中していって、元同棲相手の娘の女性ピッチャーや運動神経抜群だが不良(日本なら小学生の年齢で改造バイクを乗り回して、いつも煙草をふかして、大人の女性もナンパしています)のホームランバッターの助けも借りて、リーグの優勝決定戦に進出するという、ありがちなストーリーです。
 今だったら、日本でも上映できないようなシーン(子どもへの暴言や体罰、子どもたちの飲酒や喫煙など)が多発しますが、監督と女の子投手の擬似親子関係や、不良少年と他のチームメイトたちの和解、ライバルチームの監督親子の問題も絡めてうまくストーリーを展開しているので、特に日本ではヒットしました。
 1973年の「ペーパームーン」で史上最年少でアカデミー助演女優賞を獲得して、当時人気があった天才子役テイタム・オニールのアイドル映画という側面もあるのですが、「おかしな二人」のウォルター・マッソーや「コンバット」のヴィック・モローなどの芸達者が大人のドラマの部分を演じて全体を支えています。

 

 

 

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イン・ハー・シューズ

2021-12-19 15:24:06 | 映画

 2005年公開のアメリカ映画です。

 外見も性格も対照的な姉妹が、破滅的なトラブルも乗り越えて、題名通り(「彼女の立場に立って」という意味です)にお互いを理解しあって再びかたく結び付くまでを描いています。

 トニ・コレットが優秀な弁護士だが外見には自信がない(やや太っている、地味など)姉を、キャメロン・ディアスがスタイルもルックスも魅力的だけど性格や生活面で問題の多い(ふしだら、盗癖、だらしがない、仕事が続かない、学習障害(文字を読んだり計算するのが苦手)など)妹を熱演しています。

 二人には、幼い頃に母が死んで以来音信不通だった(父親と継母が手紙などをブロックしていました)祖母(シャーリー・マックレーンがチャーミングなおばあちゃんを演じています)がいることが判明して、彼女たちの再生に力を貸してくれます。

 かなり御都合主義(姉には彼女を理解してくれる結婚相手が登場します。妹には祖母の物心両面の援助に加えて、彼女が学習障害を克服することを手助けしてくれる元教授の老人が現れます)なハッピーエンドの映画ですが、出演者が演技達者ばかりなので、安心して見られます。

 

 

 

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お名前はアドルフ?

2021-12-18 09:19:35 | 映画

 2018年公開のドイツ映画です。

 大学教授夫妻の自宅で開かれた家族(妻の弟夫婦、妻が兄弟同然に育った男性)の食事会で、弟が生まれてくる子供にアドルフ(もちろん、ヒトラーのファースト・ネームでドイツでは禁句のようです)と名付けると宣言したことから、一見仲良いと思われた一族に大騒動が巻き起こります。

 発端はジョークだったのですが、そこから本気での罵りあいや暴力が始まり、それぞれが持っていた本音や偏見(ゲイ、マザコン、ジェンダー、家事の分担、学歴、インテリ、大学教授夫妻の子供たちの名前、吝嗇、過去のペット殺し、年の差恋愛、妊娠、喫煙、飲酒、親の偏愛、タブーなど)が暴露されていきます。

 かなりきわどいブラック・コメディなのですが、現代のドイツの一端が窺い知れて興味深いです。

 

 

 

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ブラス!

2021-12-15 17:31:40 | 映画

 1996年公開のイギリス・アメリカ合同映画です。

 サッチャー政権下のイギリスを舞台に、合理化のために閉山される炭鉱の坑夫たちによるプラスバンドを描いています。

 閉山をめぐる労働闘争、貧困、失業、坑夫特有の肺病、冷酷な会社の対応、政府批判などの社会問題が、これでもかというぐらいに盛り込まれた社会派ドラマです。

 しかし、その一方で、ブラスバンドへの情熱も豊富な演奏シーンとともに、しっかりと描かれています。

 最後は、数々の困難を乗り越えてロンドンのアルバート・ホールにおける全国大会で優勝し、観衆にむかって堂々と自分たちの主張を述べるシーンが感動的です。

 それにしても、出演者たちが、まるで坑夫そのものように猥雑でたくましいのには感心させられました。

 

 

 

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ハート・ロッカー

2021-12-12 20:28:16 | 映画

 2009年のアカデミー賞で、俳優関連を除いた主要部門を独占した作品です。
 イラク戦争における爆弾処理班を描いていて、人間ドラマよりも戦場シーンの迫真性を追求しています。
 ハンディカメラを多用して画面も粗く、ドキュメンタリータッチで撮影されています。
 アカデミー賞受賞後に、戦場のシーンの正確さに欠けていると批判されましたが、それもこの作品がリアリティを追及しているが故であって、例えば「地獄の黙示録」の様にドラマを重視した作品だったら、そこまで要求されなかったでしょう。
 児童文学の世界でも、描写を重視するか物語を重視するかで書き方は異なってくるので、前者の場合はよりリアリティを要求されるでしょう。

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アイ・アム・サム

2021-12-12 17:40:31 | 映画

 知的障害のある主人公の、七歳になった娘の親権をめぐる物語です。
 主人公と娘、ひょんなことから弁護を引き受けることになった有能な女性弁護士と息子の関係を通して、親子とは何かを考えさせられます。
 女の子に対する愛情を持ち主人公にも理解のある里親の設定など、ご都合主義な点はありますが、芸術映画ではないのでそれもOKでしょう。
 深刻になりそうなテーマを、ユーモアあふれるエンターテインメントまとめ上げた監督の手腕と、主人公やその友達の知的障碍者を見事に演じた俳優陣に感心させられました。

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ワーナー・ホーム・ビデオ
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ヒトラーに盗られたうさぎ

2021-12-12 13:53:40 | 映画

 2019年のドイツ映画です。

 ドイツの絵本作家のジュデュス・カーの自伝的小説を映画化したものです。

 ナチスドイツ下におけるユダヤ人家族の物語というと、戦争中の弾圧や収容所の問題がよく映画化されますが、この映画はそれよりも前のナチスが政権を奪取した1933年から1934年にかけての物語です(児童文学的に言うと、ケストナーの「飛ぶ教室」(関連する記事を参照してください)が書かれた頃です)。

 生まれ育ったドイツ(ベルリン)からスイス、フランス(パリ)、イギリス(ロンドン)と、迫害や貧困を逃れるために流転するユダヤ人家族の生活を、10才ぐらいの主人公の女の子の目を通して描かれています。

 ナチスに批判的だった演劇評論家の父は、逮捕されるのを避けて(実際にその後指名手配されて懸賞金がかけられます)スイスに亡命し、ひそかに家族(母、中学生ぐらいの兄、主人公)を呼び寄せます。

 しかし、そこでは収入を得る道がなくて、家族はパリへ移住します。

 そこでの主人公たちの困難な生活(スイスではドイツ語が通じましたが、パリでは子供たちは全く知らないフランス語を使わなければなりません)が、この作品ではメインに描かれています(主人公はフランス語のハンディキャップに負けずに、作文で賞金を得るまでになりますし、兄は成績で一番になります)。

 しかし、ここでも父が十分な収入を得られなかったために、父が書いた戯曲が売れたロンドンへ引っ越すところでこの物語は終わります(今度は、英語を覚えなければなりません)。

 いろいろな困難の中で、時にはぶつかり合いながらも、たくましく生きていく主人公や家族の姿が、過度に感傷的にならずに淡々と描かれているのが好感が持てました。

 また、当時の風物を再現した映像が素晴らしく、作品にリアリティを与えています。

 変わったタイトルは、ベルリンの実家から逃れるときに荷物が制限されたために、主人公が一緒に連れて来られず、その後、当局に没収されてしまった愛するピンクのうさぎのぬいぐるみからきています。

 

 

 

 

 

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