現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

カメラを止めるな!

2018-10-21 17:32:10 | 映画
 2017年公開ですが、国内外のいろいろなマイナーな映画祭で受賞を重ねて話題になり、2018年にメジャーな公開がされています。
 前半は、廃墟でソンビ映画を撮影していたチームが本当のゾンビに襲われるというB級ホラー映画で、その終了時には実際にエンドロールも流れます(ところどころ放送事故のようなおかしな場面があって、出来栄えはイマイチなのですが、それが後半の伏線になっています)。
 中盤は、その映画の監督一家(夫は再現シーンなどのマイナーなフィルム専用の妥協ばかりしている監督、妻は元女優、娘も監督志望だが一切妥協しないのでADとして問題ばかり起こしている)を中心に、この映画(実は、30分ノーカットで生中継もされる)に関わる、いずれも一癖あるプロデューサー、スタッフ、キャストなどの紹介(それぞれのキャラクターが後半の伏線になっていますが、ここが一番つまらない)。
 後半は、ノーカット生中継のゾンビ映画などという無茶苦茶な設定と、いろいろなアクシデント(何かと撮影で手抜き(ゲロはNG、涙の代わりの目薬など)を要求する主演女優のアイドル、やたらとリアリティにこだわる主演男優のイケメン俳優、監督役の男優とメイク役の女優が実は不倫中で一緒の車で撮影現場に来る途中に事故を起こし来れなくなり、実際の監督と元女優の妻が代役をすることになる。監督は、次第に夢中になって、日頃と違って妥協しなくなる。元女優の妻は、やたらと役にはまり込んでしまって、本番中に暴走する(もともとそのために女優を辞めさせられていた)。アルコール依存症のカメラマン役の男優が差し入れの日本酒を飲んでしまって、本番前に泥酔してしまう。硬水が飲めない体質の音声役の男優が誤って硬水を飲んで本番中に下痢を起こす。クレーンカメラが落下して壊れてしまい、代わりに人間ピラミッドを組んでその上で撮影するなど)を乗りこえて、生中継をなんとか最後まで乗り越えていく様子を、ノンフィクションタッチで描いています。
 前半のゾンビ映画でのおかしな場面や、中盤で紹介されたいずれも一癖あるメンバーなどのすべての伏線が、後半のドキュメンタリーですべて見事に回収されていく腕前には感心させられ、上映中の満員の館内のあちこちで絶え間なく爆笑が起きていました(私自身も抱腹絶倒でした)。
 なお、八月ごろにこの映画の原案になった舞台関係者と一時トラブル(原案ではなく原作で著作権を侵害しているといった内容のようでした)になりましたが、その後解決したようです(この作品の面白さはどう見ても映画的な所ですし、興業的に大ヒットして大手の配給会社も関係するようになったので、金銭的にも納得のいく線で保障できたのでしょう)。

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アスミック・エース
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バッド・ジーニアス 危険な天才たち

2018-10-18 17:46:06 | 映画
 非常に記憶力のいい主人公の少女が、しだいに大がかりなカンニング事件に巻き込まれていく姿を描いています。
 初めは、仲のいいクラスメイトの女の子が、成績が悪くて演劇部の芝居に出られないのに同情して、彼女にカンニングをさせて、芝居に出演できる成績レベルをクリアさせます。
 しかし、そのことを友だちの彼氏の、金持ちのぼんぼんに知られて、有料でカンニングを請け負う組織に発展してしまいます。
 背景としては、主人公があまり裕福ではなく、彼女たちが通う私立の名門校(校長へのわいろが横行していて、成績の悪い裕福な家庭の子女もたくさんいます)の授業料免除の特待生だということがあります(主人公の父親は教師なのですが、給料が安くてそれが原因なのか母親と離婚しています)。
 もう一人の特待生の男の子(彼もまた、母親一人でやっている洗濯屋を手伝っている苦学生です)も巻き込んで、ついには、全世界を対象としたアメリカの大学を受けるための資格試験を、世界で一番初めに実施されるシドニーとタイの時差(四時間)を利用して、事前に主人公たち特待生がシドニーで受験した答えをタイへ送って、高額な参加料を出させた大勢の受験生に伝えるという大がかりな犯罪にまで発展します。
 ピアノのコードやバーコードやスマホを利用した現代的なカンニング方法や、いろいろなハプニングに見舞われる資格試験当日をサスペンスタッチで描いたところが一番の見せ場です。
 また、背景として、日本以上に格差社会であるタイの現状や、貧しい子どもたちがそれを打破するためには、アメリカなどの海外の大学に留学するしかないことなどが描かれている点も、優れていると思いました。
 主役を演じた富永愛似の女の子(やはりモデルだそうです)を初めとして、タイの若い出演者たちがなかなか魅力的でした。
 ただ、ジーニアスとか、天才という惹句はかなり大げさで、特待生たちは記憶力の良い秀才にすぎませんし、年長者(ここでは主人公の父親)をたてるタイらしいモラーリッシュなラストにも不満が残りました。

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ザジフィルムズ
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マイ・インターン

2018-10-17 03:14:31 | 映画
 2015年のアメリカ映画です。
 70歳のやもめ暮らしの男性が、シニア・インターン制度を使って、ネット衣料販売で急成長している若者ばかりの会社(よくある話ですね)に勤めます。
 初めは、他の人たちとの世代間ギャップをコメディタッチで描いて面白かったのですが、彼がしだいにその人生経験(電話帳会社(このへんもやりすぎな設定ですね)の印刷部門の責任者を長い間やっていました)を生かして、みんなのメンターのようになってからは、正直うまくいき過ぎ(若い女性社長も含めてみんなに頼られ、会社のマッサージルーム(みんなパソコンを使いっぱなしなので、肩や腰が凝るのでしょう。こういった施設のある会社は、今では日本でも珍しくありません)に勤める、下世話な言葉で言うとセクシーな美熟女といい関係になります)で、まるでリアリティが感じられませんでした。
 特に、会社が急成長(一人で台所から初めて、一年半たった今は従業員が220人います)したためにコントロールできなくなった社長(主人公は彼女の個人付きインターンという設定です)に、まるで父(彼女は母親しかいないようです)のように慕われて、大きくなった会社を経営するために外部から経験のあるCEOを招こうとしたのを断ったり、彼女のために(すすんで)専業主夫になった夫がママ友と浮気したのを後悔して彼女とよりが戻ったりするのを、影からサポートする姿は、彼女はエディプス・コンプレックスかと思いたくなるような感じです。
 ご存じのように、起業することと、大きくなった会社を経営するためには、異なるスキルセットが必要です。
 この会社の場合まだそれほど大きくないので、この結末で一応ハッピーエンドですが、この先さらに成長した時には、彼女のメンタリティでは大きな破綻を迎えそうです。
 また、「女の敵は女」って感じでママ友たちを悪く描いたり、いまどきこんな感覚の経営者がいるの?と思えるような女性たちや新しいビジネスに対する古い感覚を持ったCEO候補たち(最後に選ばれた人は好さそうでしたが)を登場させたりするのは、エンターテインメント映画とはいってもあまりにパターン化している印象を受けました。
 ただ、全盛期はこわもての役が多かったロバート・デ・ニーロが、穏やかな紳士役をさすがの演技でこなしているのには、「タクシー・ドライバー」や「レイジング・ブル」などでの鬼気迫る演技を知るものとしては、なぜだか嬉しくなりました。
 日本でも、こうしたかつての人気スターを、年齢相応の役で活躍させる映画をもっともっと作って欲しいものです。


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ギルバート・グレイプ

2018-10-12 18:13:10 | 映画
 1993年のアメリカ映画です。
 アメリカのさびれた田舎町で暮らす閉塞した状況の青年を、若き日のジョニー・ディップが好演しています。
 主人公は、父の自殺をきっかけに過食症になって、鯨のように太ってしまって(何百キロもありそうです。アメリカなどではこうしたいろいろなタイプ(すごく太った、すごく痩せた、すごく背が低い、すごく背が高いなど)の俳優がいるようです)家から一歩も出ない母親、知的障害のある弟(レオナルド・ディカプリオが好演して、アカデミー助演男優賞にノミネートされました)、二人の妹をかかえて、小さな食料品店で働いて古い父親の手作りの家を修理しながら、懸命に生きています。
 そんな彼のせめてもの息抜きは、お得意さんの奥さんとの、配達の時の不倫です。
 二人の関係は夫に感づかれているようなのですが、ある日、その夫は変死(子どもプールでおぼれます)して、疑われた奥さんは子どもたちを連れて町を出ていきます。
 その一方で、主人公は、祖母と二人でアメリカ中をキャンピングカーで旅している、自由な生き方(それは主人公が一番望んでいるものです)をしている少女と知り合います(キャンピングカーを牽引している車が故障して、この町に足止めされています)。
 主人公は、彼女やその生き方に強く惹かれているのですが、やがて車がなおって町を出発する彼女を、自分の生き方を見つめ直しながらも知的障碍者の弟と二人で見送ります。
 急死した母の死体とともに古い家を燃やす(母の死体を運び出すのに軍隊やクレーンが必要になり、地域の人に笑われる(それは母親が一番恐れていたことでした)のを防ぐためです)ことが、主人公を拘束している現実から解き放つことを象徴しているようでした。
 そして、一年後、再びこの地を訪れた少女と再会するラストに、おおいなる救いを感じました。
 日本での公開後に、演劇をしていた若い友人(高校生でした)から見るのを勧められた映画の一つです(他には、「恋する惑星」(その記事を参照してください)などがありました)。
 困難な状況でもそれを投げ出さずに、その一方で自分の生き方を見つめ直している主人公の生き方は、格差社会の困難な状況にいる今の日本の若い世代にも共感を持たれると思います。

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旅情

2018-10-12 17:38:18 | 映画
 1955年のアメリカ映画で、メロドラマの古典(特に、ラストの駅のホームでの別れのシーン(女性を乗せて走り去っていく列車を、男性がホームを走って追いますが、わずかに届きません)が有名です)です。
 アメリカ人の中年独身女性(当時はハイミスと呼んでいました。彼女は38歳という設定なのですが、当時としては十分に中年でした)が、ヨーロッパ旅行の終わりのヴェネツィア(当時は、日本ではベニスと呼ばれていました)でイタリア人の中年男性(大きな子供が二人いますが、妻とは別居中)と恋に落ちます。
 物語としてはとっくに賞味期限が過ぎているのですが、監督のデヴィッド・リーンが鮮やかに切り取った60年以上のヴェネツィアの風景は、今でもとても魅力的(きっと実際のヴェネツィアも、当時の方が美しかったのでしょう)で、海外旅行なんか想像もできなかった当時の日本人には夢の中の世界ですし、アメリカ人を除くほとんど世界中のすべての人も同様で、アメリカ人にしても海外旅行できるのはごく一部の人だけだったので、甘いテーマ曲とともに世界中で大ヒットしました。
 
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男と女

2018-10-03 18:32:47 | 映画
 1966年のフランス映画で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールと、アカデミー賞の外国語映画賞を受賞しているメロドラマの傑作です。
 それぞれ幼い息子と娘を預けている寄宿学校で週末に出会った、おしゃれでかっこいい男(なにしろ人気カーレーサーです)とすごい美人の女(映画会社の重要な現場スタッフ(進行担当か?)が、それぞれの過去の傷(男の妻は、彼のレース中の事故をきっかけに精神を病んで自殺しています。女の夫はスタントマンで、撮影中の事故で死んでいます)を乗り越えて結ばれるまでを、監督のクロ-ド・ルルーシュ好みのスタイリッシュな映像(モノクロとカラー映像をうまく使い分けながら、寄宿学校のある有名な海辺のリゾート地のドーヴィルの美しい風景、二人がそれぞれ暮らしているパリのおしゃれな雰囲気、カーレース(有名なル・マン24時間耐久レースやモンテカルロ・ラリー(男が優勝して、それをきっかけに二人が結ばれます)などの実際の映像、彼女が働く映画の撮影現場などが、短いカットの連続で綴られています)とおしゃれなセリフ、そしてフランシス・レイの美しい音楽(有名なスキャットによる主題歌だけでなく、常にムーディな曲がバックに流れています。女の夫がブラジル人という設定なので、サンバやボサノバの有名な曲も効果的に使われています)で描いています。
 設定やストーリーは笑いたくなるような極端さとご都合主義なのですが、かわいい子役たちも含めてすべてがおしゃれで美しいので、まあこんなのも映画としてはありなのかと思わせる力があります。

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トゥルー・ロマンス

2018-09-30 17:33:58 | 映画
 暴力とセックスで描いた純愛物語って感じの、1993年のアメリカ映画です。 
 偶然知り合ったコールガールの女と結婚した、エルビスの熱烈ファンのビデオショップ店員の男が、ヒーロー気取りで女のヒモと話を付けに乗り込んで、成り行きでヒモとその相棒を殺してしまいます。
 男が、女の衣装と間違えて持ってきたスーツケースには、コカインがぎっしり詰まっていました(ヒモと相棒が仲間を殺して奪ったものです)。
 二人は、男の父親(元警官です)の家に寄って、自分たちが警察に疑われていないことを知ると、麻薬をさばきに男の幼なじみが住んでいるハリウッドへ向かいます。
 麻薬を売った金で、メキシコのカンクンへ逃げようというのです。
 その後を、麻薬の持ち主だったギャングの手下が、男の父親を殺して、さらにハリウッドへ追ってきます。
 幼なじみのつてで、大物映画プロデューサーに麻薬を売ることになった二人は、交渉場所のホテルへ行きますが、それをすでに聞きつけていた警察がホテルの部屋に乗り込んできます。
 警察とプロデューサーのボディーガードたちが、銃を構えながら睨み合っているところへ、ようやく追いついたギャングの手下たちが乗り込んできて、三すくみの激しい撃ち合いが始まり、ほとんどみんなが死んでしまいます(男の幼なじみだけが、運よくその場を逃げ出せます)。
 最後に生き残った刑事も、男も死んだと思って絶望した女に打ち殺されます。
 死んだと思った男は顔を撃たれたものの生きていて、二人はどさくさまぎれに金を持ってホテルを抜け出し、メキシコへ向かいます。
 ラストでは、メキシコのビーチ(おそらくカンクン)で幸せに過ごす二人(男は片目を失ったようですが)とエルビスと名付けられた息子が映し出されて終わります。
 まったくご都合主義な脚本を担当したタランティーノごのみの、やたらと血が出るヴァイオレンス映画なのですが、どこか滑稽で後味は悪くないです。
 特に、一番弱いはずの女が大活躍(途中でギャングの斥候役につかまって半殺しにされるのですが、すきを見つけて逆襲して殺します)して生き残り、全く軽薄極まりないこのカップルにハッピーエンドが訪れるラストには、アメリカ社会の底辺で苦しんでいる若い男女の観客はスカッとして喝采したことでしょう。

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緑の光線

2018-09-20 09:55:23 | 映画
 1986年のフランス映画です。
 ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。
 パリで秘書をしている主人公の若い女性は、ヴァカンスの二週間前に、女友達から一緒に行くはずだったギリシャ旅行をキャンセルされて途方にくれます。
 あわてて、周囲の人たちに一緒にヴァカンスに連れて行って欲しいと頼みます。
 周りの人はみんな優しくて、いろいろと提案してくれるのですが、彼女はどれも気に入りません。
 自分の家族は、アイルランドに一緒に行こうと誘ってくれたのですが、アイルランドは寒いし雨が降るし海がないからいやだと断ります。
 昔の恋人は、自分が持っている山の家(部屋?)を貸してあげると言ってくれますが、一人じゃいやだと断ります。
 女友達たちに相談すると、一人旅や団体旅行を勧めてくれますが、そんなのみじめだと言い張ります。
 とうとう泣き出してしまった彼女を、女友達の一人が同情して、自分も参加する彼女の家族のヴァカンスに誘ってくれます。
 そこは海辺で彼女が望む太陽もたっぷりある素敵な所ですし、女友達の家族もみんな親切なのですが、彼女は少しも打ち解けず(例えば、彼女はベジタリアンなのですが、他のみんなが子羊のローストを食べている最中に、空気も読まずに動物を食べる行為を公然と批判します)、女友達が仕事の都合で途中で帰ることになった時に一緒にパリへ戻ってしまいます。
 しかし、パリでの休暇にも満足できず(若い男にナンパされそうになって、あわてて逃げます)に、また昔の恋人に電話して、彼の山の部屋を借りてその場所まで行ったのですが、やはり一人旅と山間地(彼女は、ヴァカンスは海と太陽がある所でと決めつけています)は耐えられずに、部屋にも入らずにパリへ帰ってきてしまいます。
 パリでの休暇はやはり満足がいかないのですが、偶然出会った女友達に、今度は彼女の家族が所有している海辺の部屋を借りることができます。
 そこでのヴァカンスは、有名なビーチも太陽もたっぷりあって、やはり一人旅のスウェーデンの若い女性とも知り合って、楽しくなりそうでした。
 でも、若い二人連れの男たちにナンパされると、ノリノリの奔放なスウェーデンの女性(海辺ではトップレスですごして、夜は男漁りをしています)についていけずに、その場を逃げ出してしまいます。
 最期に、パリへ帰る列車を待つ間に待合所で知り合った、彼女と同じ読書好き(その時に彼女が読んでいて彼の方も知っていた本がドストエフスキーの「白痴」というのは、舞台が1986年のフランスだとしてもちょっと無理があるように思えます)の若い男(家具職人見習い)と知り合って、ようやくヴァカンスに満足します。
 「緑の光線」というのは、ジュール・ヴェルヌ(「海底二万マイル」や「八十日間世界一周」や「月世界旅行」で有名なフランスの小説家でSFの祖と言われていて、「十五少年漂流記(二年間の休暇)」などで児童文学作家としても知られています)の小説の題名で、自然現象としては太陽が海に沈む時に光の屈折や反射のために一番波長の短い緑色だけが一瞬見えることです。
 フランスでは、ヴェルヌの小説の影響もあって、それを見ると幸運が訪れると信じられているようです。
 映画では、浜辺で老人グループがヴェルヌの作品について話していて科学的な説明もしている場面に、主人公が偶然出くわす(ご都合主義ですね)のですが、そのころでもまだヴェルヌの作品が読まれていたのかは興味深いです。
 他の記事にも書きましたが、1945年のフランスで、主人公の視覚障碍者の少女が、ヴェルヌの「海底二万マイル」の点字本(当時では貴重品です)を熱心に読むシーンが出てくる小説(アンソニー・ドーア「すべての見えない光」(その記事を参照してください)もありました。
 フランス人(たぶんパリなどの大都市の住人に限られていると思いますが)のヴァカンスへの異常な情熱(他の記事で紹介した映画にもたくさん出てきます)やイージーゴーイングな男女の出会いにたいする風刺がヨーロッパで評価されたのでしょうが、日本人の目で見ると主人公がわがまますぎるように思えるし、最期は女友達たちが彼女を評して言ったいわゆる「「白馬の王子様」を待っている女性」に、実際に「白馬の王子」様(彼女の好みに合っているだけでそんなに魅力的ではありませんが、それまで彼女をナンパしようとした男たちがいかにも軽薄でひどいので、観客もそれよりはましに感じられます)が現れるラストも感心しませんでした(おまけに、実際に「緑の光線」を二人で見ます)。
 この作品でも、「木と市長と文化会館 または七つの偶然」(その記事を参照してください)と同様に、相手を論破しようとする議論好きなフランス人(攻撃的な人もいますが、穏やかな人もいます)がたくさん出てきますが、それは監督のエリック・ロメールの好みなだけなのかもしれません。
 

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木と市長と文化会館 または七つの偶然

2018-09-15 14:41:43 | 映画
 1992年のエスプリのきいたフランス映画です。
 村の活性化のために文化会館を作ろうとする市長(本当は村長の方が正しいのではないでしょうか?)と反対派のエコロジストの校長を中心に、みんなが議論を戦わせる姿を描いたドキュメンタリータッチの映画です。
 市長や校長(この二人は直接は議論しません)を中心に、市長の愛人の女流作家、この問題を取材に来た女性フリーライター、彼女が記事を載せた政治雑誌の編集長、文化会館建設のコンペに優勝した建築家、村の英語教師、牧畜を営む老人など、様々な人が、それぞれの立場で堂々と意見を述べ合います。
 私にはあまりフランス人の知人はいないのですが、みんなこんなに議論好きなのでしょうか?
 日本では日常会話ではタブーとされる政治がらみの話(社会党と緑の党が中心)でも、フランクに自分の意見を述べ合い、反対の立場の人の意見にも感情的にならずに尊重するので、かなり衝撃的でした。
 特に、校長の10歳の娘(校長の意見にも反対の立場)が市長を論破する場面では、今の日本の児童文学が忘れている「子どもの立場に立つ」が鮮やかに実現されていて感心しました。
 校長の娘の意見の通りに、文化会館の代わりに村の人たちがみんなで集まれる緑地が作られるラストは、ちょっとハッピーエンドすぎる(しかもそこだけミュージカル風)気もしますが、まあ一種の寓話と考えればいいのかもしれません。

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アントマン

2018-09-11 18:15:38 | 映画
 2015年公開のスーパーヒーロー映画です。
 他のスーパーヒーロー物と一番違う点は、ヒーロー自身だけでなくまわりの物まで自在に小さくしたり大きくできることです。
 そのため、SFXとの親和性が高く、いろいろと面白いシーンがあたかも実際に起こったように再現できます。
 この映画では、アントマン登場までの経緯を説明するのにかなり時間を使っているので、前半はやや退屈ですが、後半のアクションシーンは期待通りでなかなかのものです。
 特に、ラストの子ども部屋での鉄道模型を使った戦いは、子ども(特に男の子)なら一度は自分もやったことがあるようなシーンが実際に再現されているので楽しさ満点でした。
 中でも、きかんしゃトーマスが巨大化して家の壁を突き破ったシーンは、幼かった頃の息子たちが夢中になって遊んでいた物が実写化されたようで感慨深かったです。
 アクションシーンやこのシリーズの大きな特長であるユーモアは、続編の「アントマン&ワスプ」(その記事を参照してください)よりは足らないのですが、ラストで「アントマン&ワスプ」で使われるワスプ・スーツも登場して、アメコミ的な連続物の雰囲気は味わえます。

アントマン (吹替版)
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アントマン&ワスプ

2018-09-05 08:35:05 | 映画
 人気アニメ映画の「アントマン」の続編です。
 超人的な力を発揮するところは他のスーパーヒーロー物と一緒ですが、なんといっても、ヒーローだけでなく、動物も乗り物も、そして建物までが小さくなったり大きくなったりするところが、この作品の最大の魅力でしょう。
 自由自在に大きさを変化させるのはSFXではお手の物なので、アントマンシリーズはそうした技術がフルに使われています。
 また、全編がユーモアで統一されていて、悪人も警察もぜんぜんシリアスでなくて、アクションシーンを純粋に楽しめます。
 ラストも「続編に続く」と言う感じなので、アメコミの世界を堪能できます。
 ミシェル・ファイファーやマイケル・ダグラスといったかつてのスター俳優が脇を固めているのも、オールド・ファンとしてはうれしい限りです。

【映画パンフレット】アントマン&ワスプ 監督:ペイトン・リード 出演:ポール・ラッド エヴァンジェリン・リリー マイケル・ダグラスほか
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配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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アメリカン・ビューティー

2018-08-26 08:25:59 | 映画
 1999年に発表されて第72回アカデミー賞で、作品賞などの五部門を受賞した作品です。
 アメリカの中流家庭が崩壊する姿を、コミカルかつサスペンス・タッチで描いています。
 ドラッグ、不倫、リストラ、親子関係、性的マイノリティ、暴力、セックスなどの様々な現代の問題を盛り込みつつ、エンターテインメントの手法で観客をひきつけます。
 これは児童文学も同様で、シリアスな問題をそのままシリアスに描くのではなく、面白さを加えて読者に読んでもらう工夫が必要なのでしょう。

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ソニー・ピクチャーズ
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永遠の僕たち

2018-08-25 08:33:34 | 映画
 交通事故で両親を亡くし、自分も三か月間昏睡状態だった主人公の少年は、まわりの人々に心を閉ざして、彼にだけ見える幽霊(日本人の特攻隊員で、加瀬亮が演じています)とだけ交流しています。
 高校もドロップアウトし、見知らぬ人の告別式に参加して回っている彼は、ある日、脳腫瘍の再発で余命三か月と宣告されている少女に出会います。
 こんな設定の悲恋を、美少年(ヘンリー・ホッパー、「イージー・ライダー」のデニス・ホッパーの息子)と美少女(ミア・ワシコウスカ、「アリス・イン・ワンダーランド」のアリス役)が演じるのですから、日本のアニメや実写版でもゴマンとありそうな映画ですが、さすがにマイナー映画の巨匠であるガス・ヴァン・サント監督の作品だけあって、セリフが詩的で映像もシャレています。
 お約束の展開とラストですが、児童文学でいえばヤングアダルト物を書くときの参考にはなるでしょう。

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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ミッション:インポッシブル/フォールアウト

2018-08-20 17:52:20 | 映画
 トム・クルーズ主演の人気シリーズの第六作です。
 基本的には現在の映画の主流であるアクション映画なのですが、他の作品と大きく違う点はCGだけに頼らずに生身の俳優(特に主演のトム・クルーズ)のアクションにこだわっている点です。
 他の記事にも書きましたが、CGだけに頼った映画ではそれこそなんでもありで、どんなにすごいシーンでも「どうせCGだから」と少しもハラハラしないのですが、生身の俳優(もちろんスタントマンも含めて)の命がけの演技とCGをうまく合成すると、「どうやって撮影したのか?」と驚嘆させられるようなシーンを作ることができるようです。
 この映画では、私が高所恐怖症であることを差し引いても、思わず目を手で覆うようななスリルに富んだシーンがいくつもありました。
 それにしても、五十代も半ばを過ぎて、かつてのイケメン俳優(当時はまだハンサムと言う言葉が使われていました)のトム・クルーズの顔にも、隠しきれない年輪が感じられるのですが、相変わらず体を張ってがんばっている姿には感心させられました。
 このシリーズの第一作は1996年公開なのですが、今は日本に一つもなくなったドライブインシアター(屋外のスクリーンに映し出された映像を車の中から見て、音声はカーステレオで聴きます)のMOVIX多摩(京王相模原線の南大沢駅近くの、現在はアウトレットモールがある場所です。ちなみに同じ松竹系ですが、現在シネコンを展開しているMOVIXとは別会社だったそうです)で、妻や幼かった息子たちと一緒に見たことが懐かしく思い出されます。
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いつも心に太陽を(TO SIR, WITH LOVE)

2018-08-18 09:05:40 | 映画
 1966年のシドニー・ポアチエ主演のイギリス映画で、日本でもヒットしました。
 ロンドンのダウンタウンの学校に赴任してきた黒人の教師と、卒業してもうすぐ社会に出る生徒たち(イギリスの義務教育は11年制で、その最終学年なので16歳)との交流を描いています。
 初めは技師の仕事が得られるまでのつなぎの仕事だと思っていた主人公が、だんだん教師の仕事に熱中していって、ラストシーンではせっかく決まった技師としての採用通知を破り棄てます。
 荒れた不良少年少女のたまり場のようだったクラスを、愛情と情熱、そして何よりも彼らを一人前の大人として扱うことによって心を開かせていきます。
 背景として、貧困、人種差別、教育の荒廃などを描いている点も優れていると思います。
 主演のシドニー・ポアチエは、1955年のアメリカ映画「暴力教室」に生徒役で出演していますから、同種の映画に教師役と生徒役の両方で出演したことになります。
 日本でもヒットしたのは、当時の日本と英国の社会に共通点(階級闘争、反米感情、教育の荒廃、高度成長による格差の増大など)があったからでしょう。
 この映画には、以下のように「現代児童文学」と共通しています(カギカッコ内はいわゆる狭義の現代児童文学の理念です)。
「散文性の獲得」ロンドンのダウンタウンの様子を写実的に描写しています。
「子どもへの関心」ダウンタウンの子どもたち(16歳なのでグレードとしてはヤングアダルトになります)の風俗を的確にとらえています。
「変革の意志」ひとつのクラスを生き返らせただけでなく、ラストシーンで来年受け持つであろう男女の不良生徒たちを登場させ、それでも教師を続けることを選ばせて、主人公の変革の意志がこれからも続いていくことを暗示しています。
「おもしろく、はっきりわかりやすく」主題歌をはじめとしたポピュラーミュージックやダンスシーンを多用して、ともすればかたくなりがちなテーマを明るい娯楽作に仕立てています。
 ところで、今回は出演者の一人であるルルの歌う主題歌(映画以上に大ヒットしました)を60年代のヒット曲集の中で聞いて、むしょうに映画も観たくなったのですが、実際に見るまでに結構苦労しました。
 原因は、映画がディジタル化されていなくて(ハリウッド映画はかなりディジタル化の作業が進んでいるのですが、ヨーロッパ映画は立ち遅れているようです)DVDやブルーレイがないので、どこの宅配レンタルにも、レンタルショップにも在庫がなかったからです。
 また、CSやBSの映画チャンネルでも放送予定はありませんでした。
 けっきょく灯台元暗しで、いつも利用している図書館でVHSテープを借りることができました。
 せっかくメモリやいろいろな記憶媒体の大容量化が進んでいるのですから、過去のアナログの映像はどんどんディジタル化してほしいものです。
 このあたりにも商業主義がはびこっていて、ビジネスにならなければ民間ではディジタル化の作業をやらないのでしょう。
 そのため、国家レベルでこうした文化財の保護をしてもらいたいと思います。
 これは児童文学も同様で、今はまだ図書館でほとんどの本を借りることができますが、過去の作品の電子書籍化をもっと推進しないと、そのうちに散逸してしまうことでしょう。

いつも心に太陽を [VHS]
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ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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