現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

熊木徹夫「向精神薬の意味論」うつ病論 双極Ⅱ型障害とその周辺所収

2019-01-07 10:15:33 | 参考文献
 インターネット時代の患者と医師の向精神薬に対するスタンスについて述べた論文(エッセイ?)です。
 この本の執筆者の中では飛びぬけて若く(1969年生まれ)、しかも開業医なので、向精神薬や患者に他するスタンスもかなり違っていて、時にシニカルに感じる部分もあります。
 高度成長時代のメランコリー親和型の単極うつ病から、現代の双極Ⅱ型障害までの向精神薬の推移や、患者や医師の向精神薬へのスタンスの変化について概観しようとしていますが、構成がうまくなく尻切れとんぼな感じです。
 特に、筆者が思い入れのある向精神薬の「官能的評価」(文中には筆者の定義も書いてありますが、かえって誤解を招く恐れがありますので、あえてここには書きません)にこだわりすぎて、いたずらに紙数を浪費した感はぬぐいきれません。
 特に、インターネットで入手した向精神薬の自己処方の危険性については、具体例も挙げてもっと述べるべきだったと思います。

 
うつ病論―双極2型障害とその周辺 (メンタルヘルス・ライブラリー)
クリエーター情報なし
批評社
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手塚治虫「火の鳥 ヤマト編」

2019-01-07 09:37:54 | コミックス
 1968年から1969年にかけて「COM」に連載された、黎明編(その記事を参照してください)の続きで、「古事記」や「日本書紀」のヤマトタケルの神話やクマソ征伐(実際は侵略)をベースに描かれています。
 ここでも、永遠の生命を持ち、その生き血を飲むと不老不死になるという火の鳥のモチーフを生かして、為政者による歴史改竄(「古事記や「日本書紀」)、為政者(ここでは天皇)の死を弔うための大規模な墳墓の造成や殉死(実際はいけにえ)などを批判することによって、間接的に為政者(この場合は天皇を利用している政府)を風刺しています。
 この作品でも、アクション、ユーモア、恋愛などのエンターテインメント的な要素は満載ですが、生贄が火の鳥の血の付いた布をなめたので生き埋めにされてから一年間も生きていた(そういう言い伝えがあるそうです)ことが、後の埴輪の誕生につながったというアイデアに固執したために、物語の面白さとしては、他の編よりもややスケールダウンしています。
 ところで、ヤマトタケルノミコトについては、高校三年生の時の日本史の研究発表(その時の日本史の教師はユニークで、各学期の最初に、幾つかの研究テーマを出して、希望者が日本史の授業のヒトコマ全部を使って発表するということをやっていました)で、「記紀のヤマトタケルノミコト」というテーマで研究発表したので、ヤナトタケルノミコトに限っても、いかに「古事記」と「日本書紀」に違いや矛盾があるかを実感できました。
 この授業では、毎学期、自ら希望して研究発表(他の学期は、「憶良(山上憶良)と旅人(大伴旅人)」と「江戸の遊里」)をしたのですが、発表をまとめるために、関連する本をそれぞれ数十冊読んで、自分なりの考え(もちろん稚拙な物でしたが)をまとめる喜びを知りました。
 こんなことを体験できたのも、大学受験のない付属高校で学べた特権かもしれません。

火の鳥3 ヤマト・異形編 (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA
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手塚治虫「火の鳥 未来編」

2019-01-07 08:55:13 | コミックス
 1967年から1968年にかけて発表された、西暦3404年の地球を舞台にしたSF篇です。
 核戦争による人類の破滅と、新しい生命の再生の繰り返しを、壮大なスケールで描いています。
 すべての生命はやがては宇宙生命になり、火の鳥はその集合体であるという発想は、当時としては(今でもそうかもしれませんが)画期的な物でした。
 また、地球もまた一つの生命体であるというラブロックのガイア理論も、1960年代に発表されたものであり、それをいち早く作品に取り込んだ作者の先進性は驚くべきものがあります。
 しかも、堅苦しいお話にするのではなく、この作品でもアクション、ユーモア、男女の恋愛(一人はウーピーという異星から連れてこられたなんにでも変身できる生物で、ここではタマミという美しい女性に変身していて、主人公の男性と恋愛関係にありました)なども満載で、エンターテインメントとして成立させているのですから、驚くばかりです。
 特に、タマミが主人公になんでもリアルに見せてくれる、ムーピー・ゲームという催眠ゲームは、VR(仮想現実)を驚くほどリアルに先取りしています。
 「プレードランナー2049(その記事を参照してください)」に登場する主人公のレプリカント(人造人間)のAIを持ったVRの恋人と同様、タマミは容姿も性格もすごく魅力的で、現実の女性よりもこうした二次元や三次元の仮想現実の恋人を持ちたいと思う若い男性は、50年前も今も全く変わらないのでしょう。
 それにしても、こうした過去のSF作品を見ると、現実の技術進歩は明らかに違う方向へ進んでいることがわかって、非常に興味深いです。
 例によって、空飛ぶ自動車や宇宙移住は当たり前のように実現しているのですが、コンピューターは超大型ですし、テレビ電話も大型スクリーンです。
 あらためて、半導体とインターネットはすごい発明だなと思い、それらの進歩に間接的ながら関われた自分は、超ラッキーだったんだなと思わされます。
 そして、それらの一番の成果であるパソコンとスマホを実用化(発明とか開発とかいうと、厳密にはもう少しややこしい話になります)したスティーブ・ジョブスは、やっぱり偉大だったんだなと思い知らされます。

火の鳥 2・未来編
クリエーター情報なし
朝日新聞出版


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