現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

アメリカン・グラフィティ

2023-02-18 11:48:06 | 映画

 1973年公開のアメリカ映画です。
 スター・ウォーズを作る前の、まだ二十代のジョージ・ルーカスが監督した青春映画の傑作です。
 オールナイトで、町を車で流すアメリカの高校生や短大生たちの、若いエネルギーに満ち溢れた一晩を、伝説のDJ、ウルフマン・ジャック(実際に出演しています)が流すオールディーズのヒット・ナンバーにのせて、鮮やかに描いています。
 西部の田舎町に住む優等生の男の子が、ハイ・スクールを卒業して、奨学金を得て東部の大学へ行く前夜で、彼は本当に出発するかどうか、一晩中悩みます。
 背景を説明すると、当時(今でもそうかもしれませんが)、アメリカの田舎町の高校生が地元の奨学金を得て、東部のアイビーリーグに代表されるエリート大学に進むことは、郷土の期待を一身に背負うことであり、全国から集まってきた秀才たちがしのぎを削る戦いの場へ参加することも意味します(実際に、半年で挫折して郷里へ戻ったハイ・スクールの教師が登場します)。
 「期待に応えられるか?」「競争に耐えられるか?」と、主役の少年が思い悩むのも当然ですし、一緒に行くはずだった生徒会長の少年は、大学よりガールフレンド(主役の少年の妹で来年のチアリーダー(美人で成績優秀を意味します)に選ばれています)を選んで、取り敢えず一年間は地元に残ることを選択します。
 主人公は、その晩町で見かけた絶世の美女(白いサンダーバードに乗っています)に別れを告げて、東部へ飛行機で旅立ちます。
 この美女は、主人公にとっては青春の象徴と思われますので、それに別れを告げたのは彼が大人になることを決意したことを意味します。
 さて、この作品では、多くの高校生や短大生が自分のアメ車(当たり前ですが)を持っていますが、これはファンタジーの世界ではなく現実の世界なのです。
 この映画の時代設定がいつなのかは明示されていませんが、ケネディ大統領の名前が出てくるので1962年前後と思われます。
 当時のアメリカは黄金の50年代と言われた好景気をうけて、なおかつベトナム戦争の泥沼に引き込まれる前(エンドロールで、主要な役の少年の一人が1965年にベトナムで戦死したことが示されます)なので、日本で言えばバブル期のようなもので、高校生が自分の車を持っていることは当たり前なのです(他の記事にも書きましたが、ボブ・グリーン「17歳」には、1964年の誕生プレゼントに車をもらうシーンが出てきます)。
 言ってみれば、この映画は、高校生たちの青春を描いただけでなく、古き佳きアメリカの「青春時代」を描いたことになります(題名は、それを意味しているのでしょう)
 主役の少年を演じたリチャード・ドレイファスは、当時25、6歳だったのでさすがの演技を見せていますが、他の少年たちも、後に監督として大成するロン・ハワードや「アンタッチャブル」で活躍したチャールズ・マーティン・スミスなどが演じています。
 また、無名時代のハリソン・フォードもチョイ役で出演しています。


















 

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仁義なき戦い

2023-02-17 08:27:04 | 映画

 1973年に封切られた実録やくざ映画の元祖です。
 映画雑誌のキネマ旬報が2009年に実施した日本映画ベストテンのオールタイムベストで第5位にランクインしています。
 もちろんバイオレンスを前面に出した娯楽作なのですが、菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫たちが若々しい演技を見せて、青春群像劇と捉えることもできます。
 ハンディカメラも多用したライヴ感、大胆な筋立て、実録映画ならではのリアリティ、スピーディな場面展開など、現在見ても少しも色あせていません。
 戦後の風俗の描写は最低限に抑えて、登場人物の行動と会話だけで、テンポよくストーリーが進みます。
 他の記事で書いた「現代児童文学」の特徴である「アクションとダイアローグ」がいかに物語を描くのに適しているかが、ここでも証明されています。
 児童文学の世界でも、かつては、柴田道子が疎開生活を描いた「谷間の底から」や鈴木実たちが基地問題を描いた「山が泣いている」などの実録物の作品がありましたが、社会主義リアリズムが退潮になるにつれて姿を消しました。
 現代の子どもたちの生活に肉薄した実録物の作品があってもいいと思われますが、現在の出版状況では本にするのは難しいでしょう。

 

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小説家を見つけたら

2023-02-13 17:24:38 | 映画

 2000年公開のアメリカ映画です。

 ブロンクスに住む16歳の文才のある黒人少年が、隠棲している老作家と、ひょんなことから知り合います。

 成績もよく、バスケットボールの才能もある少年は、学費免除で私立の名門校に通うことになります。

 しかし、あまりに文章がうますぎることに疑念を抱いた教師に、作文コンクールで剽窃の疑いをかけられてしまいます。

 退校の危機に瀕した少年を、外出の禁を破ってあらわれた老作家が、感動的なスピーチをして救います。

 故郷のスコットランドへ戻った老作家は癌のために亡くなりますが、少年に彼のアパートメントと新作の原稿を残します。

 年の離れた二人の友情が感動的で、老作家役のショーン・コネリーがさすがの演技を見せています。

 

 

 

 

 

 

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恋愛小説家

2023-02-12 16:59:13 | 映画

 1997年公開のアメリカ映画です。

 マンハッタンの広いアパートメントに住む変人の恋愛小説家が、周囲の人たちとの交流でだんだん人間性を回復していく話です。

 主人公は、隣人(ゲイの画家です)の飼い犬が共有スペースでおしっこをしただけで、ダストシュートに放り込むような偏屈な人間です。

 孤独な生活を送る彼が唯一人と交流するのは、行きつけの食堂のウエイトレスとだけです。

 彼女は母親と一人息子と三人で暮らすシングルマザーです。

 そんな彼女が病気がちな息子の看病のためにレストランを欠勤したために、主人公は食堂で問題を起こして追い出されてしまいます。

 早く彼女に復帰してもらいたい主人公は、彼女の家にまで押しかけ、さらに事情を知ると自分のお金で医師や看護師まで派遣します。

 そんなことで、彼女と知り合いますが、偏屈な主人公は、なかなか彼女とうまくいきません。

 一方、主人公は、ひょんなことから隣人の飼い犬を預かることになり、すっかり気に入ってしまいます。

 犬の方でも、飼い主より主人公になついています。

 その隣人の画家が、強盗傷害と個展の失敗のために破産してしまいます。

 ひょんなことから、画家が仲たがいしている両親に援助を求める小旅行に、主人公は付き添うことになります。

 その小旅行に、ウエイトレスも同行することになります。

 結果的に、その小旅行は成功し、画家はウエイトレスにミューズを見出して立ち直り、主人公とウエイトレスの間もぎこちないながらも進展します。

 最後に、二人が結ばれることを予感させながら、ハッピーエンドを迎えます。

 主演のジャック・ニコルソンと相手役のヘレン・ハントは、この演技でアカデミー賞の主演男優賞と主演女優賞を受賞しました。

 主人公がだんだんまともな人間になっていくとともに、決して美人とは言えないヘレン・ハントがだんだん魅力的な女性に感じられていくのは、二人の演技力もさることながら、監督のジェームズ・L・ブルックスの腕前でしょう。

 

 

 

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ストリート・オブ・ファイヤー

2023-02-10 11:25:25 | 映画

 1984年公開のアメリカ映画です。

 同じウォルター・ヒルが監督した「ウォリアーズ」(その記事を参照してください)と同様に、健全な(?)暴力映画です(銃撃戦や乱闘シーンの連続なのに、誰も死なないし、大怪我もしない)。

 そのころ人気のあったダイアン・レインが演ずる(歌はもちろん口パクです)歌姫が、故郷の六十年代を思わせる下町の劇場で凱旋公演中に、ストリート・ギャングの集団にさらわれます。

 姉からその知らせを聞いた、マイケル・パレ演ずる主人公(歌姫の元カレで、かっこいいスーパーヒーローです)が、二年ぶりに帰郷します。

 彼は、彼女のマネージャー(こうしたアメリカ映画に欠かせない眼鏡チビキャラです)と、酒場で知り合った女兵士と、三人で救出に向かいます。

 ストーリー自体は、白馬に乗った王子様が、さらわれたお姫様を助けに行くお伽話ですが、全編にかっこいいセリフと映像と音楽と衣装(アルマーニです)にあふれていて、魅力たっぷりです。

 特に音楽は、全米ヒットチャートの上位に入った曲が何曲もあって、そのステージシーンは迫力満点です。

 

 

 

 

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ニューヨークの恋人

2023-02-09 09:17:03 | 映画

 2001年公開のアメリカ映画です。

 現代のキャリアウーマンと、19世紀からタイムスリップしてきた英国貴族とのロマンチック・コメディです。

 主演のメグ・ライアンはかわいいし、相手役のヒュー・ジャックマンもかっこいいのですが、もうひとつ盛り上がりに欠けます。

 それは、二人の恋愛にこれといった障害がなく、ラストのハッピーエンドも予定調和だったからではないでしょうか。

 コメディだったら、もっとハッチャけた作りになっていた方が良かったかもしれません。

 

 

 

 

 

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シン・ゴジラ

2023-02-08 14:27:15 | 映画

 2016年公開のゴジラ映画です。
 1954年のオリジナルの「ゴジラ」が訴えた、核兵器の恐ろしさや人間の愚かさへの警告といった、原点に回帰しています。
 それを象徴するように、エンディング曲に伊福部昭作曲の重厚なオリジナルのゴジラのテーマ曲が使われています。
 最近の怪獣映画にありがちな家族や男女の愛情劇や子役の起用などを廃して、ゴジラ対人類の対決に的を絞って描いています。
 最新のCGなどの特撮映画の技術をフルに動員して、特撮映画ファン(特に男の子)には垂涎ものの作品に仕上がっています。
 その分マニア的過ぎて、一般の映画ファン、特に女性にはうけないかもしれないので、興業的には少し心配です。
 また、ゴジラに対して活躍するのが、政治家や官僚、自衛隊、米軍なので、一般庶民には共感が持ちにくいでしょう。
 また、官僚主義や省庁間の壁など、日本ならではの特殊事情がわかりにくく、海外での興業の成功も難しいかもしれません。
 ただ、特殊効果や撮影は素晴らしいので、そういった部門での受賞は期待できそうです。

 

 

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シン・ウルトラマン

2023-02-08 14:25:25 | 映画

 2022年公開の日本映画です。

 テレビ・シリーズなどで絶大なる人気を誇るウルトラマンを、新しい解釈で映画化したことが売りになっていますが、はっきり言って「シン・ゴジラ」(その記事を参照してください)ほどのインパクトはありませんでした。

 今回ウルトラマンと戦うことになる外星人も、やたら観念的で理屈っぽく、それらをウルトラマンが倒す爽快感もありませんでした。

 「シン・ゴジラ」の時にあった日本の政治家や官僚組織に対する批判も今回は弱く、最後にウルトラマンによって地球は救われるわけですが、あっけなくて「これで終わり?」って感じがしてしまいました。

 

 

 

 

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ツインズ

2023-02-05 11:32:22 | 映画

 1988年公開のアメリカ映画です。

 アーノルド・シュワルツェネッガーとダニー・デヴィートが演ずる、見かけも性格もまったく似ても似つかない双子が繰り広げるドタバタコメディです。

 コメディアンのデヴィートはもちろんですが、筋骨隆々としたシュワちゃんがなかなかのコメディアンの才能を発揮しています。

 いやむしろアクションものより、こうしたコメディの方が、彼には合っているのかもしれません。

 ストーリー自体は他愛のない軽いアクションもの仕立てなのですが、しゃれたハッピーエンドになっていて、楽しめます。

 

 

 

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