現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

井出ひすい「一馬くんがやってきた」あける28号所収

2017-04-30 09:16:55 | 同人誌
 作者が、児童文学の同人誌の例会に断続的に発表している「老年」児童文学です。
 主人公のウマばあさんを中心に、マコ兄、善吉さんの老人トリオが活躍する、ユーモアたっぷりの人情話です。
 今回は、母親の病気で善吉さんが預かっていた孫の一馬くんと、彼のために役場に掛け合って作ってもらったブランコをめぐるお話です。
 ブランコ設置を担当した役場のカマキリ係長(マコ兄によると、女房が子どもを連れて出てってしまっているそうです)を含めて、泣いたり笑ったりでホロリとさせてくれます。
 他の記事にも書きましたが、お年寄りに届ける流通の問題を解決すれば、「老年」児童文学は高齢化時代の児童文学のフロンティアになる可能性があります。

老年文学傑作選 (ちくまライブラリー)
クリエーター情報なし
筑摩書房
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4月29日(土)のつぶやき

2017-04-30 05:10:25 | ツイッター
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ばんひろこ「ひめおどりこそうが ゆれたよ」あける28号所収

2017-04-29 09:52:14 | 同人誌
 女の子のグループの秘密基地(神社の裏の細長い公園)をめぐる話です。
 リーダーの女の子の指令で、その時いなかった女の子の仲間外れ(ごっこ?)が始まり、メンバーは次々とその子の悪口を言わされます。
 でも、その子と仲のいい主人公だけは、なかなか悪口を言えません。
 とうとう、ひめおどりこそうの精(?)に励まされて、主人公はその子が好きなことをみんなに告白します。
 そのために、主人公はグループ内で微妙な立場に置かれます。
 しかし、ひめおどりこそうの蜜を吸う遊びをきっかけに、またみんなとつながれます。
 低学年の女の子たちの微妙な人間関係が、丹念に描かれています。
 特に、ラストでリーダーの女の子を悪者のままにしなかったことが、読み味を良くしています。 

天馬のゆめ
クリエーター情報なし
新日本出版社
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高山榮香「ひまわりの里」あける28号所収

2017-04-29 09:34:23 | 同人誌
 人付き合いが苦手で、生涯独身だった地方公務員の男性が、母親の影響でひまわりを育て、退職後は野球場ほどの広さのひまわり畑に育て上げる話です。
 初めは地元の人たちにも馬鹿にされながら、数少ない理解者と共にひまわり作りに丹精していく姿が感動的です。
 彼のひまわり畑はやがては観光名所になり、鉄道の廃線で寂れていた地元をよみがえらせます。
 人にほめられることを期待せずに、自分の信念を貫き通す主人公は、児童文学にとって大切な人物像(キンセルの「シューレス・ジョー」(フィールド・オボ・ドリームスの原作)など)のひとつでしょう。
 特に、ひまわりの迷路を子どもたちが歓声をあげて走り回る姿は、宮沢賢治の「虔十公園林」の杉林やサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(その記事を参照してください)のライ麦畑を子どもたちが走り回るシーンを彷彿とさせます。

横丁のさんたじいさん (鈴の音童話)
クリエーター情報なし
銀の鈴社
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小川洋子「カタツムリの結婚式」不時着する流星たち所収

2017-04-29 09:05:55 | 参考文献
 「偉大な何ものかが立案した計画の実行者に密かに選ばれ、本人にも分からない任務を与えられながら、お互いをどうやって認め合ったらいいのか見当もつかず、秘密を守る重みに一人耐えている同志たち」を探す、主人公の女の子の、八つか九つのころの思い出を描いています。
 同志たちは、「演奏しているふりをしているオーケストラの楽団員」かもしれませんし、「試合に参加しているふりをしているサッカー選手かラグビー選手」かもしれません。
 しかし、少なくとも、女の子の通う学校にはいません。
 ある日、家族で時々遊びに行く空港(女の子の弟は、離陸したり着陸したりする飛行機の機種や航空会社を正確に言える才能を持ち、両親はそれを誇りに思っています)の片隅で、とうとう同志を発見します。
 それは、飛行機の待ち時間に暇を持て余している乗客たちに、カタツムリの競走を見せている(あるいは競走の結果に金を賭けさせている?)少年とも老人とも見える不思議な男です。
 作者の精密な観察眼と、熟達の描写力が、いかんなく発揮された作品です。
 特に、ラストのカタツムリの結婚式(交尾)を眺める(これが与えられた秘密の任務だと、女の子は確信します)二人の様子には、神々しささえ感じられます。
 なお、「カタツムリを偏愛し、自宅の庭で繁殖させ、ついには300匹にも達した」パトリシア・ハイスミスという作家に触発されて書かれた作品のようなのですが、彼女の作品を未読のため、関連についてはコメントできません。

不時着する流星たち
クリエーター情報なし
KADOKAWA
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4月28日(金)のつぶやき

2017-04-29 05:07:21 | ツイッター
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倉本 采「三月のお話 友へ」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-28 09:38:07 | 作品論
 一年間、「子どものしあわせ」という月刊誌に連載された連作短編の最後のお話です。
 主人公のポーとコロンタを初めとして、ウーリー、フルフル、ゾンキーの妖精たちに、春の訪れを告げるしあわせのタネが届けられます。
 これからも、パックル森が楽しい場所であることを読者に約束して、お話は終わります。

パックル森のゆかいな仲間 ポーとコロンタ (子どものしあわせ童話セレクション3)
クリエーター情報なし
本の泉社
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最上一平「ぴょこぴょこぴょこちゃん」あける28号所収

2017-04-28 09:37:08 | 同人誌
 いつもは目立たないおとなしい女の子が、突拍子もないころびかたをしたのをきっかけに、主人公のこれもまたおとなしい男の子は、その子が気になってたまりません。
 思いきって声をかけてから、男の子は、その子と自分自身に今まで知らなかった別の面があることに気づいていきます。
 小学校低学年の男の子と女の子が仲良しになっていく過程が、ほほえましく描かれています。
 ぴょこぴょこぴょこちゃんというのは、靴下が破けていてとび出していた親指を、女の子が自分で名づけたものです。
 主人公は、そのぴょこぴょこぴょこちゃんに強く惹かれて、ラストで思いきった行動をします。

銀のうさぎ (新日本少年少女の文学 23)
クリエーター情報なし
新日本出版社
 
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4月27日(木)のつぶやき

2017-04-28 05:09:36 | ツイッター
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若者のすべて

2017-04-27 16:16:30 | 映画
 1960年公開の、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品です。
 ヴィスコンティと言えば、「ベニスに死す」や「ルードヴィヒ」などの重厚で耽美的な作風で知られている監督ですが、もとをただせば戦後のイタリアの映画運動であるネオレアリズモ(この運動と現代児童文学の共通性は他の記事に書きました)の一翼を担っていました(その時代の彼の代表作は、1948年公開の「揺れる大地」でしょう)。
 この「若者のすべて」は、彼のネオレアリズモ時代の集大成と言われる作品です。
 イタリア南部の貧しい農村地帯から、長男の住む北部の大都会ミラノへ、母親と四人の弟たちが列車で移ってくるところから話は始まります。
 長男は、ミラノで知り合った女性(チョイ役ですが、後の大女優のクラウディア・カルディナーレが若々しい美しさを見せています)と婚約しますが、駅から直接婚約パーティに乗り込んできた母親が、女性の家族と大喧嘩してぶち壊してしまいます。
 その後、その女性と結婚して子どもも生まれますが、三人の生活を支えるのに追われていて、両方の家庭からは距離を置くようになります。
 次男は、ボクサーとしての才能を認められますが、魅力的な娼婦(アニー・ジラルドが演じています)におぼれて身を持ち崩し、最後には彼女を殺してしまいます。
 主役の三男は、すべてを許してしまうやさしすぎる神のような人間で、二男の借金の肩代わりのために、才能はあるけれど大嫌いなボクシングを続けることになってしまいます。
 四男は、一番堅実で、夜学を卒業して自動車会社に勤め、美人のガールフレンドもいます。
 五男は、まだ幼いけれど、そんな兄たちを見ながら、みんなを受け入れようとします。
 公開当時、極端な貧富の差がある、当時のイタリアの南北問題を批判した映画として高く評価されました。
 しかし、ネオレアリズモの代表作(例えば、ロベルト・ロッセリーニの「無防備都市」や「戦火のかなた」、ヴィットリオ・デ・シーカの「靴みがき」や「自転車泥棒」、フェデリコ・フェリーニの「道」(その記事を参照してください)や「カビリアの夜」(その記事を参照してください)、ピエトロ・ジェルミの「鉄道員」などと比較すると、問題を男女の関係に収斂させすぎていて、その分社会性が弱まっているような気がします。
 ただし、主役の三男を演じた若かりし頃のアラン・ドロンの美貌を見るだけでも、この映画を一見する価値はあります。


若者のすべて Blu-ray
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IVC,Ltd.(VC)(D)





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小川洋子「誘拐の女王」不時着する流星たち所収

2017-04-27 11:54:18 | 参考文献
 わずか半年たらずだけ一緒に暮らした、血の繋がっていない姉(母の再婚相手の娘で17歳年上)との思い出を綴った作品です。
 誘拐に関して強迫観念を持つと思われる姉の奇行を、愛情深い少女の視点で描いています。
 二人の交流と、「子どもたちを守護する会」という設定には興味を覚えるのですが、ほとんどが説明に終始していて、読者が物語に入っていくのを阻害しています。
 なお、ヘンリー・ダーガーの「子どもをさらう悪と戦う、少女戦士たちの長大な絵物語『非現実の王国で』に触発されて書かれた作品のようなのですが、この作品を未読のため、関連についてはコメントできません。

不時着する流星たち
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小川洋子「散歩同盟会長への手紙」不時着する流星たち所収

2017-04-27 11:50:09 | 参考文献
 散歩をこよなく愛する出版社の元梱包係の話です。
 おそらく、今は精神を病んで療養所にいるようです。
 そんな変化のない日常の中で、毎日の散歩の中に発見するささやかな喜びが綴られています。
 特に、散歩中に拾った字の形をした石で、かつて好きだった(もちろん打ち明けることもありませんでした)女性に、いつの日か手紙を書くというイメージが、心に残りました。
 「ことり」の記事にも書きましたが、こうした名もない市井の人々に向ける作者のまなざしは限りなく優しいものです。
 なお、「生涯、散歩を愛し、散歩者の視点で世界を見つめ続けた」ローベルト・ヴァルザーという作家に触発されて書かれた作品のようなのですが、彼の作品を未読のため、関連についてはコメントできません。

不時着する流星たち
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倉本 采「二月のお話 おねぼう鬼と空とぶパン」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-27 10:43:42 | 作品論
 今回は、節分にちなんで、人間の世界を追い出されたおねぼう鬼のネムールのお話です。
 このお話では、不思議なものが満載で、おねぼう鬼のネムール以外にも、ネムールを乗せてきた流れ星、空とぶまくら、ふりかけるとなんでも飛べるようになる流れ星のしっぽの金色の粉などが出てきます。
 もちろん、みんなにパンを焼いてくれるウーリー(女の子のようです)を初めとして、主人公のポーとコロンタ、それにこわがりやのフルフル、ひねくれ者のゾンキーといった妖精オールスターも総登場です。
 お約束のおいしい食べ物は、ネムールの魔法の粉を振りかけた、クルミやラズベリーを混ぜ込んだ空とぶパンです。

パックル森のゆかいな仲間 ポーとコロンタ (子どものしあわせ童話セレクション3)
クリエーター情報なし
本の泉社
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倉本 采「スルスルスルッ!」あける28号所収

2017-04-27 10:22:51 | 同人誌
 けんばんハーモニカが苦手な男の子が、楽譜から抜け出した音符たちの頼みをきいて、「心が歌いたくなるとおりに、指を動かして」いるうちに、テストの課題曲を、初めて最後までひくことができるようになります。
 音楽の先生でもある作者ならではの発想や観察がいかされていて、楽しい作品になっています。
 ラストでは、このお話が主人公の夢なのか本当にあったのかは、読者にゆだねられます。

パックル森のゆかいな仲間 ポーとコロンタ (子どものしあわせ童話セレクション3)
クリエーター情報なし
本の泉社
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4月26日(水)のつぶやき

2017-04-27 05:08:09 | ツイッター
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