現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

手塚治虫「火の鳥 鳳凰編」

2019-01-30 14:25:49 | コミックス
 不思議な運命で、人生において何度も交錯する二人の対照的な仏師を描いています。
 一人は都でも人気のイケメンの仏師。
 もう一人は、生まれながらにして障害を持ち大きな醜い鼻を持った男。
 旅の途中で、障害と醜さゆえに人から差別迫害されて強盗になっていた男に利き腕の右手を切られたことをきっかけに、イケメン仏師は発心して、左手一本ながらまた仏像を彫れるようになります。
 イケメン仏師は、彼の腕前のうわさを聞いた時の権力者から、誰も見たこともない鳳凰(中国などの古代アジアにおける火の鳥の呼び名)を彫るように命じられ、鳳凰の姿を求めて全国を彷徨います。
 一方で、強盗だった男も旅する高僧に弟子入りしたことをきっかけに、自然の中で仏師になります。
 その二人が、国家大事業である大仏建立をめぐって再び、出会った後にまた別れます。
 彼らや大仏建立を通して、生きるとは何か、死ぬとは何か、輪廻とは何か、人間とは何か、芸術とは何か、国家権力とは何か、宗教とは何かを問いかけます。
 今回の作品でも、二人の仏師のターニングポイントになる時に、魅力的な女性たち(イケメン仏師には14歳のかわいいあばずれ女、醜い鼻の仏師には透き通るように美しいテントウムシの精)が現れ、彼らがブレークスルーするのを助けます。

火の鳥 4・鳳凰編
クリエーター情報なし
朝日新聞出版
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尾崎 翠「こおろぎ嬢」第七官界彷徨・瑠璃玉の指輪他四篇所収

2019-01-30 09:32:23 | 参考文献
 古典的な文学少女が、現実と作品世界と空想世界(薬物中毒?)のはざまをさまよう作品です。
 私は、専門と仕事は理科系なのですが、四十年以上も文学関係のサークルや同人誌や学界に属してきました。
 学生の頃のサークルでは何人かの典型的な文学少女(そのうちの二人は、その後文学系の大学教授になりました)に出会いましたが、その後は本格的な文学少女(あるいは成人女性)にはほとんど出会っていません。
 児童文学の同人誌においても、コモンセンスのような有名作品(例えば、マーク・トウエンの「トム・ソーヤーの冒険」、トールキンの「指輪物語」、ケストナーの「飛ぶ教室」、ケネス・グレアムの「楽しい川辺」、ミルンの「クマのプーさん」、ローリングの「ハリー・ポッター」シリーズ、宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」、カニグズバーグの「クローディアの秘密」、ピアスの「トムは真夜中の庭で」、佐藤さとるの「だれも知らない小さな国」など)を読んだことがない人が大半なので、本当に児童文学が好きなのかと疑念がわいてきます。
 中には、こういった作品について話を合わせてくる人もいるのですが、そのほとんどが映画やアニメで見ただけのようで、次第に話のつじつまが合わなくなってがっかりさせられることが多いです。

第七官界彷徨・琉璃玉の耳輪 他四篇 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店
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