現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

インディ・ジョーンズ 最後の聖戦

2020-01-31 08:46:14 | テレビドラマ
 1989年に公開された、考古学者インディ・ジョーンズの冒険活劇の第三作です。
 ノンストップのジェットコースター・ムービーは健在なのですが、さすがに第三作(それまでの二作についてはそれぞれの記事を参照してください)となるとマンネリ感は否めず、それを補うために、少年時代(「スタンド・バイ・ミー」で当時日本でも人気のあったリヴァー・フェニックスが演じてます)や父親(ジェームス・ボンドで活劇映画の大先輩のショーン・コネリーが、当時でもハリソン・フォードに負けないたくましい肉体で貫禄の演技を見せています)に有名俳優を登場させてカバーしています。


インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 [Blu-ray]
ハリソン・フォード,ショーン・コネリー,デンホルム・エリオット,アリソン・ドゥーディ,ジョン・リス=デイビス
パラマウント
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「ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年」国立新美術館

2020-01-30 17:28:35 | 展覧会
 展示でも説明されていたように、ハンガリーは長年ハプスブルグ家やオスマン帝国の支配下にあり、ハンガリーとしての統一された美術と言うよりは、その時その時に影響の強かったヨーロッパ(イタリア、フランス、スペイン、オランダなど)の美術品を購入したり国内の芸術家もその影響下にあって創作していたりしていた、言わばヨーロッパ美術全体の映し鏡のような存在だったことが、年度別に区分された展示によってよくわかりました。
 その中には、グレコやティツィアーノやルノワールなどの優れた小品も含まれていて、スケールは小さいものの良質な展覧会でした。
 個人的には、児童文学の古典であるモルナールの「パール街の少年たち」は、私にとっては子どもの頃からの愛読書なので、その舞台のであるブダペストは「エーミールと探偵たち」のベルリンや「クローディアの秘密」のメトロポリタン美術館や「くまのパディントン」のパディントン駅などとならんで、いつか訪れてみたい場所のひとつですし、最近ハプスブルグ家の展覧会(その記事を参照してください)を見たばかりなので、非常に興味深い展覧会でした。
 近々、ハプスブルグ家ゆかりの地やブダペストを訪れる機会がありそうなので、楽しみにしています。


パール街の少年たち (偕成社文庫 3011)
桜井 誠,宇野 利泰
偕成社
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巴里の屋根の下

2020-01-27 08:40:27 | 映画
 「巴里祭」で有名なルネ・クレールの1930年公開のフランス映画です。
 大道芸人(歌手、流行りの歌を街角で歌って、集まった人々を合唱に誘い、歌詞の付いた楽譜を1フランで売っています)の移り気なルーマニア人の女性に対するはかない恋を描いています。
 トーキー作品なのですが、台詞は極力押さえて、詩的な映像と軽やかな音楽で表現しているので、無声映画とトーキーの過渡期の趣があります。
 フランスを中心に流行した芸術活動の「詩的リアリズム」の作品のひとつに位置付けられます。
 パリの裏町に生きる市井の人々の暮らしが、生き生きと描かれています。
 撮影所に作られたパリの裏町のセットがすごくリアルで、それだけでも一見の価値はあります。

巴里の屋根の下 [DVD]
アルベール・プレジャン,ポーラ・イルリ
ファーストトレーディング
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中村能三「解説」サキ短編集所収

2020-01-25 16:51:34 | 参考文献
 著者によると、欧米ではサキはO・ヘンリーと並び称されるほどの短編小説の名手として知られているそうです。
 「最後の一葉」や「賢者の贈り物」などの、いかにも日本人好みの心暖まる作品で知られるO・ヘンリーは日本でも昔からかなり読まれていて、中学時代の私にとっても好きな作家の一人でした。
 一方、サキの皮肉や風刺に満ちた作品群は、この本が1958年に出るまでは、ほとんど紹介されていなかったようです。
 ただし、そのころに出版されたグレアム・グリーンの「サキ傑作集」もその後日本で出版されて、私が初めてサキの短編群を読んだのはそちらだったような気がします。
 高校二年にの夏休みに、現代国語の教師の挑発にのって、夏休み中に百冊本を読破したときの一冊でした(他の記事に書いた「子どもと文学」もその一冊でした。
 夏休み中も開いていた高校の図書室(今考えると、異常なほど蔵書が充実していました)で、弓道部の練習帰りにむさぼるように読みました。
 著者も述べているように、135編にものぼるサキの短編の中で、もっとも優れたものを選ぶのは難しい話ですが、有名なのは「平和的玩具」か、「開いた窓」あたりではないでしょうか(詳しくは、それぞれの記事を参照してください)。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
新潮社

 
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サキ「盲点」サキ短編集所収

2020-01-23 17:40:54 | 作品論
 ありふれた料理人ではないという理由で、大伯母の遺産相続人になった甥が持ってきた彼女の兄を殺害した犯人の決定的な証拠の手紙を、あっさりと暖炉にの火にくべて隠滅してしまった狂的な食通の貴族が描かれています。
 サキの作品の特徴として、こうした極端にデフォルメされた人物がよく登場しますが、それゆえに現在でも古びない人間の本質(良くない方の)がとらえられているのかもしれません。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
新潮社
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サキ「七つのクリーム壺」サキ短編集所収

2020-01-22 17:22:10 | テレビドラマ
 盗癖があると思われる親戚が泊まりに来たときに、自分たちの銀婚式への贈り物を盗まれないように注意しすぎて、かえって自分たちがその人の物を盗んだことになってしまうはめになる夫婦の話です。
 オチを含めて掌編としては良くできているのですが、親戚中に同姓同名がいたり、銀婚式の時に銀の贈り物をする風習など、ある時代のイギリス固有の風俗がストーリーに利用されているので、この作品も賞味期限切れのようです。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
新潮社
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サキ「七つのクリーム壺」サキ短編集所収

2020-01-22 17:21:24 | テレビドラマ
 盗癖があると思われる親戚が泊まりに来たときに、自分たちの銀婚式への贈り物を盗まれないように注意しすぎて、かえって自分たちがその人の物を盗んだことになってしまうはめになる夫婦の話です。
 オチを含めて掌編としては良くできているのですが、親戚中に同姓同名がいたり、銀婚式の時に銀の贈り物をする風習など、ある時代のイギリス固有の風俗がストーリーに利用されているので、この作品も賞味期限切れのようです。
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サキ「ラプロシュカの霊魂」サキ短編集所収

2020-01-21 15:46:51 | 作品論
 非常にケチな友人が、わずか2フランの主人公への貸し金(主人公が巧妙に仕組んで、絶対にお金を貸さない友人に貸せさせたので、それをうらんで死んだとも読めます)を残して急死します。
 それ以来、彼の霊魂は、主人公がその2フランを金持ちに寄付する(つまり意味のない使い方をさせる)まで、まとわりつくという、かなり滑稽な設定の掌編です。
 アイデアは面白いのですが、2フランを寄付する適当な相手を見つけるプロセスが、現在の読者にはなかなか理解が困難なので、作品としての賞味期限が過ぎてしまっているのかもしれません。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
新潮社


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斉藤栄美 作、岡本 順 絵「ふしぎなおるすばん」

2020-01-21 08:33:21 | 作品論
 主人公の男の子が、一人でおるすばんをする絵本です。
 全体が「しりとり」になっていて、ページを開くたびに何が現れるか楽しみになる工夫が凝らされています。
 作中の「しりとり」は「しりとり→りんご→ごりら→らくだ→だちょう→うし→しろくま→まんとひひ→ひでお(主人公)→」と続き、最後に素敵なオチがついています(それは、読んでのお楽しみ)。
 作者は、シリアスなリアリズム作品、ラブコメなどのエンターテインメント作品、この作品のような絵本など、多彩な作品群を書き分ける豊かな才能に恵まれています。

ふしぎなおるすばん (えほんはともだち)
クリエーター情報なし
ポプラ社
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サキ「ある殺人犯の告白」サキ短編集所収

2020-01-20 09:07:01 | 作品論
 人妻に不倫を拒否されて自暴自棄になった男が、偶然出くわした顔がめちゃめちゃになった死体の男(交通事故によるものと思い込んでいました)になりすまして、出奔します。
 しかし、その死体が殺人事件によるものと判明して、皮肉にも自分自身を殺した罪で捕まり死刑になります。
 題名どおりに大半がモノローグなのでサスペンスに欠けますし、ラストのオチもサキとしてはいまいちです。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
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サキ「おせっかい」サキ短編集所収

2020-01-19 18:18:32 | 作品論
 領地の境界線争いのために長年の宿敵だった二人の領主が、偶然のいたずらで、山の中で倒れてきた大木の下敷きになって身動きがとれなくなります。
 なかなか来ないそれぞれの部下たちを待つ間に、二人は争い事の馬鹿馬鹿しさを悟って和解します。
 大勢の足音が近づいてきます。
 しかし、それはどちらの部下でもなく、狼の群れでした。
 この思わずゾッとさせられるオチの鋭さが、サキの真骨頂でしょう。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
新潮社
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シュガーラッシュ:オンライン

2020-01-19 17:31:54 | 映画
 2012年のアニメ映画の続編で、2018年に公開されました。
 古いアーケードのレーシング・ゲームの登場人物で、凄腕レーサーのお姫様、ヴェネロぺが、ゲーム機の操作ハンドルが壊れて消滅する(あるいは別のゲームに引き取られる)ピンチに、インターネットオークションのイーベイで操作ハンドルが売らていれることを知り、他のアーケードゲームの悪役だった親友のラルフとともにインターネットの世界に行って、それをゲットするまでの活躍を描いています。
 ストーリー自体は、性別も体の大きさも性格もまるで違う二人の友情の破たんと再生を描いた他愛のない物ですが、インターネット、WiFi、インターネットサイト(ネットオークション、オンラインゲーム、動画サイト、検索サイトなど)などを非常にうまく視覚的に描いていて、かつてコンピュータの内部の世界を視覚的に描いたSF映画の「トロン」を彷彿とさせます(製作者には「トロン」へのオマージュの気持ちもあるらしく、「トロン」のアーケードゲームもちょっとだけでてきます。オマージュと言えば、ラストシーンでは、映画「キングコング」へのオマージュも感じられます)。
 インターネット世界のいい所だけでなく、負の部分(互いに競い合わせて必要以上に値をつり上げるネットオークション、不必要なサイトへ誘い込むポップアップ広告、お金を稼ぐためのくだらない動画ばかり(アメリカでも猫と赤ちゃんが一番多いようです)の動画サイト、ユーザーがのめりこみすぎる危険なオンラインゲーム、課金アイテムの売買、人をディスることしかしない投稿欄、バグによるトラブル、コンピューター・ウィルスの恐ろしさなど)も描いてうまくバランスを取っていますが、そこはエンターテインメント作品なので負の部分はサラリと触れているだけです。
 案外、この映画の人気を一番支えているのは、豪華すぎるわき役陣かもしれません。
 ディズニー映画の人気キャラクターが多数(スターウォーズやトイ・ストーリー、くまのプーさんなど)出演していて、中でも、ヴェネロぺとお姫様つながりで、白雪姫、シンデレラ、アナ、エルサ、ラプンツェル、モアナ、オーロラ、アリエル、ベル、ポカホンタス、ジャスミンなどのディズニー映画のお姫様キャラが総動員されていますので、女の子(その映画が封切られたころの昔の女の子たちも含めて)の観客にはたまらないでしょう。

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サキ「セルノグラツの狼」サキ短編集所収

2020-01-18 09:36:58 | 作品論
 今は没落した古い家柄のセルノグラツ家の最後の末裔である老女が死ぬときに、伝説どおりに城の周囲に狼が集まって遠吠えをします。
 サキの作品の中では、ラストの切れ味はもうひとつですが、ホラー的な味わいのある小品です。

サキ短編集 (新潮文庫)
中村 能三
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男はつらいよ

2020-01-17 14:35:18 | 映画
 1969年に公開された、言わずと知れた日本を代表する人情喜劇映画の第一作です。
 恥ずかしながら初めて見たのですが、この第一作にシリーズの成功要因のすべてが入っていることに驚かされます。
 能天気な風来坊(当時、こうした人たちはフーテンと呼ばれていました)の寅さん、しっかり者だがけなげなはかなさを秘めた妹のサクラ、いかにも下町らしい世話好きなおいちゃんとおばちゃん、いかにも実直な勤労青年でサクラと結婚して義理の弟になるヒロシ、泰然とした雰囲気を持つ帝釈天の御前様、おっちょこちょいだが好人物の町工場のタコ社長といった主要なレギュラー登場人物はもちろん、寅さんがフラりと現れて、その時その時の旬の美人女優が演じるマドンナ(この作品では、光本幸子が演じる御前様の娘)に片想いして、失恋して去っていくという作品のパターンまでが、ここで確立されています。
 それにしても、渥美清も、倍賞千恵子も、前田吟も、みんな若々しい魅力に溢れています。
 寅さんファンのお叱りを覚悟で言えば、これから続く全50作にわたるシリーズはこの第一作の自己模倣にすぎないのかもしれません。
 もちろん、このシリーズは、テレビドラマの「水戸黄門」などと同じく、「偉大なるマンネリ」なのですが。
 この作品が、1969年に公開されたことも非常に象徴的です。
 小熊英二「1968」の記事にも書きましたが、当時は70年安保をめぐって、保守と革新が鋭く対立して政治的に混乱していた時期なのですが、国民の大多数を占める庶民は、この映画で描かれたような世界で暮らしていたのです。
 私は当時中学三年生で、この映画の舞台の葛飾柴又の隣の足立区千住で暮らしていた(路線は違いますが、同じ懐かしい京成電車が走っていました)ので、この映画で描かれた世界(よく下町と表現されますが、本当の下町は神田や浅草あたり(中央区や台東区)で、葛飾区や足立区は場末という表現が正しいでしょう。私は小学校と中学校は越境入学で台東区の上野に通っていたので、両者の違いを身を持って体験しています)がいかにリアルであるかは実感をもって保証できます。
 こうした政治と国民生活の遊離が、いわゆる55年体制を経て、今でも続いているのでしょう。
 そして、この人気映画シリーズが、その一つの象徴だと言ったら、言い過ぎでしょうか。

男はつらいよ HDリマスター版(第1作)
山田洋次,森崎東
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「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」国立新美術館

2020-01-09 18:19:58 | 展覧会
ウィーンモダン展図録 クリムト シーレ 世紀末への道 国立新美術館
ノーブランド品
ノーブランド品


 19世紀末から20世紀初頭におけるウィーンの芸術(絵画だけでなく、建築、工芸、デザイン、ファッション、家具、日用品なども)が、伝統的な様式からモダーンな様式に変わっていく様子が、年代を追いながら要領よくまとめられています。
 ウィーン・ミュージアムが改装中とのことで、これだけのまとまった展示がウィーンへ行かなくても見られるのは、非常にラッキーです。
 副題には、日本でも人気のあるクリムトやシーレが掲げられていますが、この展示会(あるいはこの時期の芸術運動全体)において、もっとも重要な人物は、建築家のオットー・ヴァーグナーでしょう。
 展示を順番にじっくりと見ていくと、彼の出現の前後で様式が伝統からモダーンに変わっていったことがよくわかります。
 彼が伝統的な建築だけでなく絵画にも、建築の手法を取り込んだことにより、ウィーンの芸術は、いわゆる職人技から、創作理論を持った芸術運動に変貌しています。
 これは、ル・コルビュジエ(その記事を参照してください)の場合とまったく同様です。
 児童文学の世界でも、かつての「現代児童文学」(定義などは他の記事を参照してください)は、良し悪しは別として創作理論がありました。
 実作と理論(評論)が両輪として存在していたわけです。
 しかし、現在の児童文学の世界では、「本になる、ならない」「売れる、売れない」だけが唯一の価値基準で、実作をリードするような創作理論は存在しません。
 つまり、今の児童文学は、芸術活動というよりは経済活動の一部として存在していると言えます。
 
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