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英国で中学校を探す その1




夫はアホかというほど超ポジティブな人物だ。
英国移動に関してもいい面ばかりを強調し、すべて上手く行くと信じて疑わない。例えマイナス要因に出くわしても、それは何らかの良き理由があってと考える。

一方わたしは深刻に悩んだりはしないが、最悪の場合を並べ立ててみせたり、裏の理由を考えたがるタイプだ。

この点で話が全く噛み合ず、イライラさせられる(笑)。


ラッキーだったのは「リロケーション会社」がついてくれていることだ。この会社は転勤や駐在にともなう移動一切の面倒を見てくれる。家選び、引っ越し業務、学校選び、保険、税金、ビザ、弁護士...等々すべて。


わたしたちがまず依頼したのは11歳の娘が9月から通う中学校選びだった。
英国の中学校進学は熾烈だと聞いているのに、たった2ヶ月でいい学校に入れるのか?



学校選び

ごく簡単に説明すると、ベルギーは私立公立共に幼稚園から大学まで、また課外の音楽学校や芸術学校を含めて一切の授業料が無料だ(まあそれでベルギーの財政は破綻しているわけだが)。
学区制も入学試験も学校偏差値もなく、自分の好む学校に誰でもいつでも入学できる。ただし入学してからは試験が頻繁に課され、一定のレベルが達成できなければ(十分にヘルプは受けられる)落とされる。
学校に対する評価は口コミか実際に訪問して判断を下す。

英国も公立校は無料である。しかしグラマースクールなどの優良な学校が相対的に極少なく、また学区制がある。
私立は親の負担が莫大だが、質が高く良い校が多い。入学試験など選抜試験が課せられる。
学校の評価は公然と数値化される。


英国の大学教育まで射程に入れてにわか勉強をはじめたのはいいが、
GCSEとかIGCSEって何のこと? 6th Form? Aレベル?
英国のシステム複雑!
(ご興味がおありならここeikokutabi.comさんに簡潔に説明あり)


わたしがまず参考にしたのは、ファイナンシャルタイムズの中学高校ランキング2011年度版だ。
イングランド全域のすべての中学高校2000校以上が、高等学校レベル教育修了資格であるAレベルのA*/A取得率を元にランキングされている。このAレベルの得点によってどの大学に入れるかが決まってくるので、World's Best Universitiesなどに常連の一流大学を目指す生徒(もちろん親)の手引きとなるよう中学高校名がクールに数値化/視覚化されているのだ。

例えば2011年版には、日本人もよく知るイートン校が13位、ハロウ校が39位にランキング。
また100位中、公立は20校のみ(うち19校がグラマースクール)。残る80校はすべて私立。

もちろんこういうランキングだけが学校の良し悪しを決めるのではない。それでもわたしがこのリスト他にこだわったのは、娘が英国のシステムに「遅れて参入する者」であるからに他ならない。


わたしたちがリロケーション会社の担当者に出したリクエストは、
「(選抜/試験がすべて去年終了しているという理由から)学校探しが難しく、居住地は学校が決まってから決めるしかないようである。このリストで50位以内、譲って100位以内にランキングするロンドン市内と郊外の学校の空きを探して欲しい。公立私立にはこだわらない」だった。

孟母、だ。



6月一杯は何の動きも見られなかった。
公立も私立も入学生選抜や入学試験は去年終わっていて、当然入学手続きなども完了。「偏差値が高く、音楽やスポーツにも優れた良い学校」はどこも定員いっぱいだ。

リロケーション会社の担当者が、上位50位/100位までの学校やコネ先に毎日しつこく連絡し、空きが出たかキャンセルが出たか確認しまくってくれたのにもかかわらず、空きはどこにもなかった。
特に公立は学区制があり、英国に住所がないと希望も出せず、公平さを追求するゆえ例外が認められないなどの理由から絶望的だとアドバイスされた。

もっと下位の私立には空きがいくつか出たが、下位の学校に行かせるくらいならばインターナショナルスクールにやるか、ベルギーの寄宿舎に入れるかという手もあるので、とにかく粘った。

と、7月に入り、わたしも担当者もあせり始めた。学校が夏休みに入るからである。



そんな7月4日、ランキング上位50校以内に入る私立女子校に「空きがひとつ出た」という連絡があった。


HPでその女子校の情報を閲覧したところ、教育理念、ランキング、雰囲気、さらには芸術やスポーツ面への取り組みと達成度、また外国人の生徒が何割かいるなど、かなり理想に近いと分かった。難を言えばロンドン市内ではないというロケーションの問題と、日本の私立が割安と感じるほどに学費が高いことくらいか。


学校側は2日後に面接と入学試験を受けに来いと言う。
試験科目はIQテスト、算数、小論文、面接3回。当然すべて英語。一夜漬けでは無理だ。

娘は英語はぺらぺらだが、学校等で授業を受けた経験がなく、「形容詞」や「立方体」や「沸点」など教科書用語(?)を知らない。それを理由に、英語と科学の試験は免除された。その分、内申書が重視されるとのことだった。こういう融通が利くのは私立ならではだ。


その2日間はとにかく小論文の書き方を叩き込んだ。面接の準備にもなるからである。
過去問を参考にしながら、全体に起承転結が必ずあり、文章の最初に「読み続けたい」と思わせる書き出しがあること。「しかし」や「なぜなら」を繰り返さない、「おもしろい」や「美しい」という単語は使わず、どのようにおもしろいか、どのように美しいかを書くこと。長文が要求されたら経験談を織り交ぜると自然に長くなることなどをふまえつつ、

「ブルージュという街について、今まで訪れたことのない人にその魅力を説明して下さい」
「あなたの趣味は」
「達成したこと/一番うれしかった瞬間」
「変化/引っ越しについて」
「迷子になった子ども(フィクションで)」

などのお題をホテルのライブラリーやドローイングルームで練習した。


娘は未知の国の未知の学校への不安、夏休みに入ってからも猛勉強をさせられることなどに不満をならべたてたが、外国の学校を訪問できるチャンスはめったにない、この一校だけでも見に行こう、何事にもオープンマインドで、もしいやならベルギーの寄宿舎に入ろう、などとなだめすかし、あっと言う間に2日は経った。
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