ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

徳富蘆花「不如帰」。

2011-03-29 10:59:01 | 
徳富蘆花の「不如帰」を読んだ。
明治31~32年に国民新聞に掲載された小説。
結核小説の草分けでした。

悲哀の主人公・浪子は、
川島武男のところに嫁入りして幸せに暮らしていたが
結核を患い、逗子で療養することになる。
時代は日清戦争に突入す。
武男の母である姑は、そんな浪子の結核が武男にも伝染して、
川島家が断絶しかねないと心配になり、離縁させる。

武男はそんなことが起きているとは知らずに戦争から戻り、
浪子が離縁させられて実家へ戻っていることに落胆する。
結局、浪子は帰ることなく、病死してしまう。不如帰。
また当事者二人が知らないところで離縁させられるという、
不条理きわまりない設定で
それだけでも当時の読者は、はらはらして読んだのだろう。

ところで当時、結核は不治の病だった。
結核に罹った悲しい運命の浪子と武男の純愛は、
そんな病気を乗り越えて、
離縁されてもお互いに思い合う気持ちが美しい。
一方、二人の愛よりも、川島家の将来を心配する
武男の母の考えも、理解できなくはない。
なんとも切ない小説だった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 猫さらい。 | トップ | やはり霊気はある、高尾山。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事