ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

月並みがいい、谷崎潤一郎「細雪」。

2013-01-26 14:52:40 | 
谷崎潤一郎の「細雪」を読んでみました。
関西方面は詳しくないので、
京阪神の地名やホテルの名前、
料亭の名前等が書かれていても
臨場感があまりわきませんでしたが、
一気に読んでしまいました。

「細雪」は、船場生まれで芦屋育ちの
斜陽しかけた上流階級の名家「蒔岡家」の四姉妹と、
義兄たち、そして娘、女中、恋人などの日々が
淡々と描かれています。

物語は三女の雪子の見合い話と、
四女の妙子の恋愛などを中心にして進展します。
雪子の見合い話は知人の紹介などで何度も持ち上がるが
そのたびにいろんな理由で破綻し
一緒に暮らす二女の幸子夫婦は気をもみます。

四女の妙子は、手に職をもっているキャリアウーマン。
自由奔放に生きて、しかも恋愛は波瀾万丈。
駆け落ちをしたり、身分不相応のカメラマンと親しくしたり
あげくの果てに素性も知らないバーテンダーと付き合います。

どこにでもあり、どこの家にでも起こるような出来事の話ですが
次はどんな展開になるのかと気になってページをめくっていました。
また、全編に、京阪神の四季折々の自然風景、
伝統、文化、芸能、風俗、慣習などが
ちりばめられていて堪能しました。

なかでも姉妹と義兄が毎年の恒例行事としている
春の京都での花見のシーンは、
目の前に桜の花びらが散ってきそうなほど美しく描かれていました。

幸子はここで、毎年家族で行ってきた花見を来年もできるか、
家族みんながそろって行ってきた恒例行事を来年も同じように行えるか、
そんな心配をしていたけど、
家族恒例の行事を毎年欠かさず行うことがいかに大切なことかと感じました。

 * *

また、とくに好きな場面は、
幸子が夫に、何の食べ物が好きかと聞かれて「鯛やわ」と答える件。
愛するもの、好きな物が、ごく普通で月並みなものなので夫は笑う。

さらに幸子は、古今集の昔から桜の花に関する和歌が
昔はなんと「月並み」な歌かと読んできたが
年をとるにつれて昔の人の花を待ち、花を惜しむ心が
決して「風流がり」ではなく、
身に沁みてわかるようになった、と書かれている。

「魚なら鯛、花なら桜」という月並みなことを言うが、
「月並み」こそ永遠不滅のものであることに気づかされました。

文末にあった解説を読んだら、
誰かが「月並みの美学」と評していたが、
まさにそのとおりだと思いました。

幸子が月並みなものを好きだと言って夫が笑ったように
ややもすると「月並み」はマイナスイメージの言い方に聞こえるけど
月並みでどこが悪い!と思います。
「月並み」は、日本古来からの長い時間と歴史、
人々の感情が凝縮して誕生したもので、これこそ日本の文化だと思います。

 * *

物語の最後は、結局雪子は見合いが纏まり、
華族である人のもとへ嫁いで行くが、
解説には、何度も見合いをする雪子は
「竹取物語」を彷彿させるとも書かれていました。
東京へ嫁いで行くシーンで終わるのは、
そういう意味でいうと「月へ帰って行くかぐや姫」だったのだろうか。

また、読者とくに男性読者は、何度も見合いをして
嫁いでいったほうがいいと思う一方、
どこかで嫁がないでくれ、
永遠に無垢でいてくれという願いを抱くとあり、
それもその通りだと、強く共感してしまいました。 ^ ^
コメント (2)
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2013、新春。

2013-01-07 13:40:35 | 出来事

今年も年末年始は、故郷で過ごしました。
笹子トンネル事故で行きは片側1車線の国道20号線の
笹子トンネルを通って行きましたが、
トンネルは狭いし、トラックの量はおびただしく
排気ガスでけっこう霞んでいました。

年末は、恒例のプチ同窓会を実家の蕎麦屋でやりました。
タブレットを持って行ったので
ユーチューブで好きな歌を聞きながら
飲んでいました。

天龍村では、村民向けの広報をTVで見られます。
そこで昨年の秋に行われた「昇龍まつり」の様子や
昨年、天龍小学校がTVの「ナニコレ珍百景」に
出たことなどを知りました。
バランスボールに座って授業を受けるというものでした。

年が明けて、TVで映画「大鹿村騒動記」が放映されました。
天龍村と同じような急峻な山間風景が
スクリーンに映し出されていました。
鹿肉料理の食堂では、日本酒の「喜久水」を
飲んだりして妙にうれしかったです。
前半はけっこう面白かったけど、後半は歌舞伎のシーンが長く、
それが終わるとあっという間に
エンディングになったような気がしました。
それと、主題歌が清志郎だとは知りませんでした。

映画では、鹿が飼われていたけど
オイラの村でも、人家のそばまで下りてきて、
農作物を物色しています。
夜中に窓を開けると
ヒューン、ヒューンと鳴いています。

実家にも、わずかながら山があるけど
山だけでなく、そこに暮らす動物や鳥、昆虫なんかも
飼っていると思うと、なんだかわくわくしてきます。

こう思うようになったのは、川端康成の「山の音」を読んで、
たしか家の上を鳶が飛び回るところで
あれはうちの山に棲んでるうちの鳶だ、
というような描写(うろ覚え)があって、
あっそうかと思ったからです。

おみやげは、天龍村で作っている「ゆず果汁」を買いました。
東京へ戻るときは、中央道笹子トンネルが対面通行になっていました。
今年も、よろしくお願いします。


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