芥川龍之介を卒業したら
堀辰雄へ行くのが、どうやら一般的らしい。
芥川龍之介を読み終え、
気分は大正時代から昭和初期に至り、
ここからまた明治時代に戻って、
森鴎外、谷崎潤一郎あたりを読もうと思っていたが、
なんだか堀辰雄を読みたくなってきた。
堀辰雄は「美しい村」「風立ちぬ」しか読んでいないが
この際、代表作を踏破しようと
芥川龍之介の死を題材にした「聖家族」をはじめ、
「ルウベンスの偽画」「燃ゆる頬」「麦藁帽子」あたりを読んでみた。
芥川龍之介の「軽井沢日記」を読むと、
「8月4日。晴。堀辰雄来る。暮れに及んで白雨あり。
犀星、辰雄と共に軽井沢ホテルに赴き、
久しぶりに西洋風の晩餐を喫す」などと在る。
なんでも、室生犀星が、芥川龍之介に
紹介して以来、親交を深めたらしい。
「聖家族」は、実在した人をモデルにした小説らしい。
偏理(堀辰雄自身)、九鬼(芥川龍之介)、
細木夫人(芥川龍之介の晩年の愛人・片山広子)、
夫人の娘・絹子(堀辰雄が想いを寄せていた人・宗瑛)
との宿命的な四角関係を描いている。
「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。」
という書き出しの一文は有名らしい。
たしかにどこかで聞いたような。
細木夫人が、九鬼の告別式に参列するところからはじまり
そこで夫人は20歳の偏理に出会い、死んだ九鬼を感じる。
と同時に、娘の絹子も偏理が気になりはじめる。
細木夫人と絹子のふたりが、偏理に心を奪われる。
偏理は、絹子を意識するようになり
絹子との距離をどうとっていいか迷うが
しばらく離れていようと旅に出る。
偏理は、小さな海辺の町へ行く。
うす暗い海岸には、貝殻、海藻、死んだ魚など
おびただしい漂流物があり、死の匂いが漂っている。
それは、あたかも芥川龍之介の小説
「蜃気楼」の中をさまよっている感覚だ。
堀辰雄自身、芥川龍之介の死の淵を
疑似体験しているようだ。
そして、波に洗われている一匹の死んだ犬を見ていたら
「生」への鼓動が高まってくるのを感じる。
一度死の淵を見てから、生まれ変わっていく。
それは、師と仰ぐ芥川龍之介の死を受け入れたうえで
新しく作家人生を歩んでいこうとする決意宣言でもある。
また小説のなかで、偏理(堀辰雄)が、
九鬼(芥川龍之介)の弱さについて語っているところがある。
芥川龍之介は、自分の弱さを見せまいとして
芸術性を徹底的に追求し「人工の翼」で飛んだが、落下してしまった。
人生がポキンと折れてしまったわけだが
堀辰雄は、そんな人間的な「弱さ」を隠さずに
素直に表現したいと書いている。
自分の弱さを表に出すことで、生きる強さを得たともいえる。
I shall be released/真島昌利&友部正人
http://www.youtube.com/watch?v=8g_BPxn4KJA&feature=related
堀辰雄へ行くのが、どうやら一般的らしい。
芥川龍之介を読み終え、
気分は大正時代から昭和初期に至り、
ここからまた明治時代に戻って、
森鴎外、谷崎潤一郎あたりを読もうと思っていたが、
なんだか堀辰雄を読みたくなってきた。
堀辰雄は「美しい村」「風立ちぬ」しか読んでいないが
この際、代表作を踏破しようと
芥川龍之介の死を題材にした「聖家族」をはじめ、
「ルウベンスの偽画」「燃ゆる頬」「麦藁帽子」あたりを読んでみた。
芥川龍之介の「軽井沢日記」を読むと、
「8月4日。晴。堀辰雄来る。暮れに及んで白雨あり。
犀星、辰雄と共に軽井沢ホテルに赴き、
久しぶりに西洋風の晩餐を喫す」などと在る。
なんでも、室生犀星が、芥川龍之介に
紹介して以来、親交を深めたらしい。
「聖家族」は、実在した人をモデルにした小説らしい。
偏理(堀辰雄自身)、九鬼(芥川龍之介)、
細木夫人(芥川龍之介の晩年の愛人・片山広子)、
夫人の娘・絹子(堀辰雄が想いを寄せていた人・宗瑛)
との宿命的な四角関係を描いている。
「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。」
という書き出しの一文は有名らしい。
たしかにどこかで聞いたような。
細木夫人が、九鬼の告別式に参列するところからはじまり
そこで夫人は20歳の偏理に出会い、死んだ九鬼を感じる。
と同時に、娘の絹子も偏理が気になりはじめる。
細木夫人と絹子のふたりが、偏理に心を奪われる。
偏理は、絹子を意識するようになり
絹子との距離をどうとっていいか迷うが
しばらく離れていようと旅に出る。
偏理は、小さな海辺の町へ行く。
うす暗い海岸には、貝殻、海藻、死んだ魚など
おびただしい漂流物があり、死の匂いが漂っている。
それは、あたかも芥川龍之介の小説
「蜃気楼」の中をさまよっている感覚だ。
堀辰雄自身、芥川龍之介の死の淵を
疑似体験しているようだ。
そして、波に洗われている一匹の死んだ犬を見ていたら
「生」への鼓動が高まってくるのを感じる。
一度死の淵を見てから、生まれ変わっていく。
それは、師と仰ぐ芥川龍之介の死を受け入れたうえで
新しく作家人生を歩んでいこうとする決意宣言でもある。
また小説のなかで、偏理(堀辰雄)が、
九鬼(芥川龍之介)の弱さについて語っているところがある。
芥川龍之介は、自分の弱さを見せまいとして
芸術性を徹底的に追求し「人工の翼」で飛んだが、落下してしまった。
人生がポキンと折れてしまったわけだが
堀辰雄は、そんな人間的な「弱さ」を隠さずに
素直に表現したいと書いている。
自分の弱さを表に出すことで、生きる強さを得たともいえる。
I shall be released/真島昌利&友部正人
http://www.youtube.com/watch?v=8g_BPxn4KJA&feature=related