ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

犬の字になって過ぎた夏。

2011-08-27 16:55:50 | 
臼井吉見の「安曇野」からは、有島武郎の「或る女」、
野呂邦暢からは、井伏鱒二、庄野潤三などを、芋づる式に読んだ。
井伏鱒二の「川」は、不思議な感覚。新鮮でした。
庄野潤三の随筆は、やさしさと、ユーモアたっぷり。
家族や豆腐屋、絵画や陶磁器、
植物、昆虫の話などが題材となっている。
とくに好きだったのは、「自分の羽根」にあった
「今年のムカデ」という話の、草刈り人夫と青大将の件。

ある日、自宅の前の浄水場で人夫二人が草刈りをしていると、
その横の松の枝に青大将が巻き付いていた。
人夫の爺さんに聞くと、蛇の方を見て
さっきからああやっているという意味のことを言った。
多分、二人が草を刈ってそばまで来たので、
手近な松に上がったというわけだろう。
それは人間でいえば、家の中にいるとき、
誰かが拭き掃除に来たので、
その間だけちょっと邪魔にならないところに
よけているようなものだ、と。

いいなぁ、こういう感覚。
蛇を追い払うのでなく、やさしさにあふれている。
午前中に読んで、お昼を食べて午後からも。。
ごろりと寝転がりながら、うとうとして、
いつの間にか寝ていることもよくあった。
大の字ならぬ、手から文庫本がこぼれて、犬の字で寝ていた。
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南信の味、とりじん。

2011-08-21 13:22:19 | 
商品名は「とりじん」。
鶏肉のジンギス、という意味のとりじん。
天龍村の隣り、南信濃にある、
スズキヤという精肉店が販売していて
田舎ではけっこう人気です。
親戚の甥なども、パクつきます。

鶏肉がやわらかで、
漬け込んでいるタレも、
丁度いい甘さと辛さで、絶妙な仕上がり具合。
ピーマン、キャベツなどの野菜と
一緒に炒めて食べると最高です。
ご飯がすすみ、ビールにも合います。

いつ頃からあったか覚えてませんが、
田舎に帰ると、よく食べてました。
ほんと、クセになる味。
実家から2袋もらって帰り、食べました。
一緒にカニカマ入りポテトサラダも作りました。

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おい、カネゴン!

2011-08-18 17:02:08 | 出来事
お盆は1週間ほど天龍村に帰ってました。
実家にはエアコンがないので
東京よりむしろタイトかもしれません。
昼間はあちらも、けっこう暑い!
なので午後は濡れタオルを頭に巻いて過ごしてました。
朝晩は23~24℃くらいまで下がるので、
寝苦しいことはありませんでした。

帰ってすることは、きまって掃除。
今回は旧い母屋を中心に、もういらなくなった過去の遺物をどんどん焼却。
もう築100年近いので、いろんなところに埃がたまっていたり、
蜘蛛の巣が張っていたり、黴臭かったりと、たいへんでした。

お盆なので、同級生と飲み会でもと思っていたら、
実家の蕎麦屋の隣りに住んでいた同級生と遭遇。
35年ぶりくらいの再会なのに
オイラの第一声は「おい、かねお!」でした。
「金男」という名前で、あだ名は「カネゴン」でした。
さすがにカネゴンとは言えず、かねお!と言ってしまいましたが
呼んだら、向こうもこちらを覚えていました。

夏祭りも盛大でした。
普段は見られない若い衆がたくさん出ていました。
夜店や、昔と変わらない花火大会、
そして、全然知らない「おりしま夏海」という
演歌歌手の歌謡ショーと、盛りだくさん!

さらに、14日のNHK「ダーウィンが来た」という番組では
天龍村のブッポウソウを保護する天龍小学校の活動が
紹介されていました。頑張ってる。

〈写真 おりしま夏海ショー/花火/かねお/ブッポウソウ案内板〉

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再出発の文学、野呂邦暢。

2011-08-04 12:40:29 | 
臼井吉見の「安曇野」は第三部まで読んで、ちょっと休憩。
そのかわり、先日読んだ「昔日の客」つながりで、
野呂邦暢を読んでいる。
「昔日の客」というタイトルも、野呂邦暢にまつわる
エピソードから付けられたもので
野呂邦暢の作品に「不意の客」というのがある。

まぁそれはいいのだが、
野呂邦暢、かなり素晴らしいです。
絹のような文体で風景を描写している。うっとりします。
そして、現実の時間経過に、過去の記憶や幻想が織り込まれて
なんともいえない世界が広がります。

彼は、故郷である諫早から大学受験で京都へ出るが失敗し
三ヵ月間浪人生活をしたあと帰郷。
19歳の秋にこんどは東京へ出てガソリンスタンドなどで働くが、
20歳の春に再び帰郷。
6月から自衛隊へ入隊し北海道へ配属され、翌年除隊する。
彼の作品群は、そのころのことが濃密に書かれている。

たとえば「一滴の夏」「鳥たちの河口」などは帰郷している時期のこと、
「冬の皇帝」は東京のガソリンスタンドでのこと、
「草のつるぎ」「狙撃手」などは自衛隊時代のことを書いている。

とくに好きな作品は、故郷へ一時戻っているときの
ことを主題にしている作品だ。
「鳥たちの河口」は会社の組合問題に嫌気がさして退社し、
諫早の干潟で鳥類観察をする日々の話。
傷ついた珍鳥カスピアン・ターンを発見し保護してやる。
傷ついたカスピアン・ターンは、野呂の自己投影だと思われる。
諫早の干潟で彼は「すべてを失っても自分には河口がある」と
故郷の自然に癒され、元気をもらい立ち直っていく。
失意、失望の後に自分をリセットする、再出発の文学だ。

「日が沈むのを」という短編も美しい。
失恋した女性が、「失恋しても私にはあの夕日がついている」と立ち直る。
これも「鳥たちの河口」と同様、美しい自然に癒されて再出発する。

彼が、受験、仕事、自衛隊と、故郷を離れては
その都度帰郷することを繰り返すうちに生まれた再出発文学。
オイラも、仕事に就いていたときに短い夏休みで帰郷した際
縁側などでぼよよんと過ごし、本当にこのままこの会社にいて
いいのかと思っていたことなどを思い出した。
人生には挫折があり、そのときは周りの人がみんな偉く見えて焦ってしまうが、
じっと自分のペースで自分の人生を生きていくことが大事なのだ。

あと、「海辺の広い庭」という作品も、好きだ。
もう2回読んでしまった。


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