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再び「モンテクリスト伯」を観て

2021-02-16 06:00:07 | 映画


昨日、再びDVD版「モンテクリスト伯」を観なおしました。
このDVD版の事は、2017年3月10日のブログに書いたのでした。
その時、ブログに書いた主旨は「これは失敗作だ」という事です。
失敗の最大の原因は、主演者のミスキャストという事です。



これはないでしょう。
このジェラール・ドバルデューという俳優は、
フランスではとても有名な俳優として人気があるのだとか。
だから、この人を主役にしたのでしょうが、
映画は主役俳優の良し悪しで、全てが決まってしまうという程の重みがあります。

「風と共に去りぬ」で、無名の新人女優だった、
ヴィヴィアン・リーを「彼女しかいない」と一目で見抜いた監督。
彼女を主演女優にした事が、あの映画を世界でも最高水準の成功作にしたのですね。
そういった努力をしないで、
単にフランスで有名な俳優だからといって主演にした愚行。
これこそが、折角の大作を愚作にしてしまった最大の原因です。



彼がせめて若い頃の姿だったらまだしも、これではね~。



彼は身長178センチだそうです。
映画の中で他の俳優と比べても普通かそれ以下の身長。
おまけに晩年の姿はまるでブタ。
マックス体重は恐らく120キロ以上はありそうです。
つまり彼は元々肥り易い体質なのですね。
モンテクリスト伯を演じるには、身長があと10センチは欲しい。
それもデブでは話にもなりません、長身痩躯のイメージでないとダメですね。

そういった事で、私はこの映画を決定的に失敗作の刻印を打ってしまい、
以後、全く観る気を失っていました。
しかし昨日、全編(6時間半)の大作を一気に観てしまいました。
主役が大失敗な点を除いて見直してみると、
主役以外の脇役には、かなりのレベルで(いい役者)が揃っているのです。
それがこの映画を(実に勿体ない)と感じさせます。
製作費は1998年当時で20億円だそうです。



主人公である、エドモン・ダンテスの許嫁だったメルセデスを演じるのは、
オルネッタ・ムーティーという女優です。
彼女は当時43歳でした。
ちなみに主役のジェラール・ドパルデューは50歳でした。
この女優さんは若干、暗いイメージはありますが、
ミスキャストとは言えません。かなりいいレベルです。
かなりいい味を出してると思いました。



敵役のモルセーヌ伯爵を演じるのは、
ジャン・ロシュウォール(68歳)
これは、適役です、いい役者だと思いました。



これも敵役のヴィルホール検事総長を演じるのは、
ピエール・アルディッティー(54歳)
これも適役です。
この俳優の声の良さは特にムードを盛りあげています。
彼の奥様(後に家庭内の家族を次々に毒殺する女優)
この女優が、その穏やかな表情の中に不気味さが漂い、
時としてゾッとさせられるのが、これがいいんですね。



この映画の中では特に重要人物ではないのですが、
モレル商会のモレル氏には、この人だけしか私は知らなかった俳優が出演しています。
ジャン・クロード・ブリアリ(65歳)です。



尤も私が知っている彼は若い頃のジャン・クロード・ブリアリですが。

また、敵役のダングラールの役者も素晴らしい適役ですね。
金の亡者たる面がまえが、何ともイヤらしく味があります。
彼等、敵役の息子、娘を演じる俳優に知った人など居るはずもなく、
でも彼等の親を演じる俳優に、より素晴らしさを感じます。

この物語は過去に何度も映画化され、
舞台などでも何度も演じられたみたいですが、
そんな過去にエドモントン・ダンテスを演じた俳優にはこんな人がいた様です。



ジャン・マレー。
フランスでは有名な俳優ですが、既に亡くなられています。
尤も私は彼がエドモント・ダンテスの適役とは思いませんが。





戦前を含めて、こんな俳優が演じた事もあったみたいです。



たまたまネット検索に出てきた男優にこんな方がいました。
名前など勿論しりませんが、こんな俳優だったら良かったのにね。
欧米の俳優には、私達が知らない俳優に、
こんなにも素晴らしい俳優が居るんだという方がいっぱいいるのです。

私達はアメリカ映画ばかり見せられていて、フランスの俳優など殆ど知る機会がありません。
でも、脇役にでも、これほどという名優は多いですね。
ただ主役のジェラール・ドバルデュー以外は。
この人だけが決定的にダメでした。
よりによって、何でこんなのが・・という悔しさがいつまでも許せない。

そして、映画と小説との描き方の違いも、また悔しい。
最初に復讐された陸軍中将モルセーヌ伯爵。
彼が議会で過去の悪行を暴かれ地位と名誉を失うシーンが生ぬるい。
そしてモンテクリスト伯の実名がエドモン・ダンテスだと知り、
驚愕するシーンが生ぬるい。

2番目に復讐されるヴィルホール検事総長。
3人、プラスひとり(カドルッス・これはあまり重要ではない)
3人の仇の内、最も象徴的なのが、この2番目。
彼が地位も名誉も金も家庭まで、その全てを失い発狂するシーン。
これは本では背筋がぞくぞくと本当にゾッとするシーンなんですが、それが無い。
こういった場面こそ、復讐の最大の見せ場なのに。

そして最後の、彼こそがこの復讐劇の発端となったダングラール男爵(銀行家)
彼も他の敵と同じ様に、地位・名誉・金・家族・その全てを奪われるという、
恐るべき復讐をされるのです。
残ったのは、何もかも失った孤独で貧乏な老人だったのです。
そのシーンの描き方も生ぬるい。

1998年に20億円かけたという事は、
現在だったら30億円するのかも知れません。
でも30億が100億円でもいい。
6時間半は、まだ不足です。
15時間くらいかけた、小説に忠実な映画が観たかった。

もう絶対にあり得ない事が分かっているだけに、
主演のミスキャストという最大の愚行をしてしまった、
この映画は悔しくてならないのです。



コメント
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