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男装の麗人・川島芳子

2021-02-04 15:25:31 | 歴史






男装の麗人・川島芳子(よしこ)と聞いて、どれだけの人が知っているでしょう?
戦前と戦中の日本と中国を舞台として活躍した女性ですから、
殆どの人は名前すら聞いた事はないかも知れません。

私は、子供時代にその名前を母から聞かされました。
母は娘時代に中国の奉天駅(ほうてん)で、川島芳子を見た事があるそうです。



その頃の川島芳子の人気は絶大で、
それは日本の若い女性が、宝塚の男役スターに憧れるのと同じだったみたいです。



川島芳子の父親は粛(しゅく)親王。清王朝の血を引く皇族でした。
彼女の本名は、愛新覚羅、顴珅(あいしんかくら・けんし)
(厳密には名前のけんしの文字は違う)
漢名は金壁輝。その他にもいくつかの名前を持っていました。
1907年~1948年(享年40歳)

愛新覚羅の名前は、以前、ブログに書いた、
「天城山心中、天国へ結ぶ恋」の、愛新覚羅慧生(あいしんかくら、えいせい)が居ましたね。
彼女も清王朝の血縁でした。
川島芳子の父には何人かの愛人と、20人くらいの子供がいました。
芳子もその子供の一人でした。
清王朝の血縁、一族はきっと沢山いるのでしょう。
現在、日本に何人もの愛新覚羅姓の人達が住んでいます。

1913年(大正2年)
父親の粛親王は川島浪速(なにわ)と義兄弟の契りを交わし、
娘を養女に差し出します。
その時、父親は川島に「君に玩具を進呈する」と言ったそうです。
1915年、芳子は来日し川島家に入ります。
芳子は8歳、川島浪速は47歳でした。







川島浪速は、当時、大陸浪人と言われた人種でした。
大陸浪人・・日本の大陸進出に係った民間活動家。
彼は満蒙独立運動の先駆者でした。
(満州、蒙古を日本の勢力圏とする運動)
川島浪速は戦後に亡くなりますが、日本と中国を股にかけ、
民間人と軍人と、外国人らの間を上手く立ち回って、かなりの資産を築きました。

浪速は若い時に罹ったマラリアの治療が不充分で、
年々耳が悪くなり、晩年は殆ど聞こえなくなりました。
そういったイライラがあった為でしょうか、
浪速は幼い芳子に手を付けたみたいです。
事情に詳しい人に言わせると、「彼等は血の繋がりはない、
しかし、あれは近親相姦だ」と嫌悪感覚えたそうです。
私も母から「そういった事だったみたいよ」と、聞かされました。
きっと最大の原因はそれだったのでしょう、
芳子は17歳の時にピストル自殺未遂事件を起こします。
その後、彼女は断髪し男装する様になりました。



1927年、21歳の芳子は、
24歳の蒙古族のカンジュルシマブと結婚しました。
しかし、この結婚は長くは続きませんでした。
芳子が家を出てしまったのです。





1930年(昭和5年)芳子は日本軍人の田中隆吉と知り合います。
田中は戦後まで生き残り、最終的な階級は少将でした。
彼等はすぐに男女関係になり、田中は芳子の語学力、明晰な頭脳、行動力を買い、
スパイ工作の世界へと芳子を引きずり込んで行きました。

田中とは別れる事になったのですが、
日本に帰った芳子は、昭和の天一坊と言われ、
30代の若さで数十億円を儲けた相場師と一緒になったりと、
華やかさから縁の切れない生活を送っていました。

彼女がどの程度スパイ行為を働いたのかは、分かりませんが、
日本と中国を行き来し、中国人、日本人、外国人、軍人、民間人と、
持ち前の行動力で動き回ったのかもしれません。



芳子は東洋のマタハリと言われました。
第一次大戦でパリを中心にしてスパイ行為を働いたとしてフランス軍に捕まり、
死刑となったオランダ人のダンサーです。

しかし、段々と彼女の存在はうとまれるようになります。
戦争が終わると彼女はスパイ行為で中国に逮捕されました。
裁判には何千人という傍聴希望者で溢れたそうです。
彼女の人気は全く衰える事は無かったのです。





彼女は、死刑を回避しようと、自分は中国人ではなく日本人だと、
川島浪速に戸籍を求めたりもしましたが、
1948年(昭和23年)3月25日に、
北平第一監獄(北京なのでしょうか?)で、銃殺されました。
享年は40歳。

辞世の句ではありませんが、彼女が若い頃から好んでいた句があります。

家あれども 帰り得ず
涙あれども 語り得ず
法あれども 正しきを得ず
冤(えん)あれども 誰かに訴へん

生まれた血筋ばかりはどう仕様もない。
生まれた時代も、どう仕様もない。
時代と戦争に翻弄されるがままで、本当に気の毒ですね。
やはり、人間は普通が一番いいのかも知れません。


コメント
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