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花のたより☆山のふみ~青森県立名久井農業高等学校~

農業と環境の研究グループ「チームフローラフォトニクス」と弟分である「ハンターズ」の取組みを紹介します!

幻のテキスト

2020年02月13日 | 
ここに「食農科学」というテキストがあります。
でも文科省にはこのような科目はありません。つまりこれは学校設定科目。
2000年、今から20年前に前任校で仲間と手作りした科目でありテキストなのです。
この科目は昭和初期ごろまで続いていたこの地域の食や風習を体験することで
その背景にある地域の暮らしや文化を学ぼうという
かなりチャレンジした内容でした。ところが生徒には大評判。
手植えの田植えはもちろん、大根を栽培しては寒い中、洗って干したり。
さらにその食材を使ってさまざまな郷土料理を再現して行く学習は
自然の移り変わりを肌で感じられとてもダイナミックでした。
人気の秘密はまだあります。郷土料理を指導してくれるのは、なんと地元のおばあさん。
なべっこだんご、豆しとぎ、そばもち、漬物などの作り方を
手取り足取り教えてくれるのです。学習は秋になるとさらに展開します。
現在の地域特産の食材を使って新しい創作郷土料理を作り
たくさんの先生方を審査員として招き、コンテストを開催するのです。
確か、その時使ったお皿も地元の陶芸家の協力で自分たちで作ったもの。
選択した食材の理由、料理の名前などを女子ならではの
明るく楽しいプレゼンテーションが大会を盛り上げたものです。
そして最後は1年間、郷土料理を指導された地域の皆さんを招き
教わった料理を自力で披露する「披露宴」を開催し、食や文化の伝承を誓ったものでした。
最近は家におばあさんがいない家庭も多いので、この食と農を通したふれあいは
生徒もおばあさんにとっても、とても楽しいものだったようです。
農業経営シミュレーション、起業チャレンジなど
いろいろな学校設定科目を作ってきましたが、この科目は地元メディアはもちろん
全国版の雑誌でも紹介されるなど大きな反響を呼びました。
しかしこの学科はすでに閉科。したがってこの科目も消えてしまいました。
数年前、当時の教科書がないかと家庭科の先生から問い合わせがありましたが
なぜか現物もデータもみつからず、要望に応えられずにいました。
そころが先日、なんときれいな状態の幻のテキストが2冊も発見されました。
あれから20年、地域の風習が消えかけている今こそ、復活させたい科目です。
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干し柿

2020年02月09日 | 
スーパーマーケットに行くと「あんぽ柿」など
県外の大きな干し柿が並んでいます。
しかしこの地域の柿は小ぶりの「妙丹柿」。
南部柿ともいわれるこの柿は、渋柿のため
昔から主に干し柿に加工して食べられてきました。
ご覧のとおり、小さな果実なので、串に5個もついています。
ねっとりして甘い妙丹柿の干し柿は美味しいと有名で
毎年、柿をむいて軒先に干す作業が地域の冬の風物詩として紹介されます。
その際、必ずテレビに出るのはこの南部町。まさに妙丹柿の産地なのです。
しかしかつてフローラが行なった調査では
干し柿を食べる人はめっきり減っています。
というか昔と違い、甘い食べ物がたくさんあるからか
柿そのものを食べなくなっているのです。
ここ数年間、まったく食べたことがないという人もかなりいます。
食用として栽培されてきた在来種は、食べる人がなくなり、
人の管理が入らなくなるとあっという間に消える運命にあります。
おそらく全国にも消えてしまった在来種はあるかもしれません。
貴重な生物資源を守るために、みんなで積極的に食べよう。
かつてフローラが提案した「食いしん坊の自然保護」が思い出されます。
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冬のりんご

2020年02月08日 | 
収穫の秋からだいぶ経った今、
暦の上では春になりましたが、まだまだ外は冬です。
信号機研究チームのRED SIGNALS が昨日記録した最低気温は氷点下11度。
日中でも氷点下2〜3度ですが、これが暖かく感じるほどです。
そんな環境の中、果たして直売所では今、何が販売されているのでしょうか。
興味があったのでちょっと覗いてみました。
するとやはりありました。「りんご」です。
さすがはりんご王国青森県。
でも秋とはちょっと違っています。
90%ぐらいが赤いりんご。黄色はわずかしかありません。
品種名を見るとほとんどが「ふじ」。
日本のりんごでは最も美味しいといわれる品種は
日持ちもするので、お店の主役となっています。
また酸素を減らし、二酸化炭素を増やした倉庫で保存する
CA貯蔵が普及しているので、10月ごろに収穫された
シナノゴールドなど黄色い品種も数こそ少ないのですが
シャキシャキの状態で並んでいます。
冬こそ健康維持機能のあるりんごをぜひ食べてもらいたいものです。
さて今日から2日間、環境活動の全国大会が開催されます。
ハンターズは東北代表として今朝、東京の国連大学を目指します。
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干し菜汁

2020年02月05日 | 
昔は冷蔵庫やビニールハウスがないため
冬場に新鮮な野菜を食べることは難しいものでした。
そこで考えられたのが干し菜。
カブや大根などを漬物にする際、
出てくる余分な葉を軒先で干して作りました。
昔はヤマセでお米がとれなかった南部地方では、津軽藩と違って貧しく
殿様といえどもお米が食べられなかったと伝えられています。
「南部殿さま ボタ餅好きで 夕べ七皿 今朝八皿
南部よいとこ 粟めし稗めし のどにひっからまる干菜汁」
旧南部藩地域に伝わる「とらじょ様」という歌です。
ここでも干し菜汁が出てきます。
きっと殿様も食べていたかもしれません。
この干し菜、からっからに乾燥させるだけなので
今でも誰でも作ることができます。
水で戻し、味噌汁の具にするだけですが、乾燥野菜は栄養分が凝縮しています。
懐かしい味なので、ぜひまた食べてみてはいかがでしょうか。
さて明日は農業クラブの検定。2年生は全員バスに乗って終日青森市です。
今日は久しぶりに朝から粉雪が降っています。
一生懸命取り組んだのに、風邪や寝坊で欠席しないよう注意しましょう。
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お汁粉じゃない

2020年01月22日 | 
これはお汁粉ではありません。
「なべっこだんご」という青森県の三八地方から岩手県北部の郷土料理で
お餅の真ん中が凹んでいるため、おへそのように見えることから
「へっちょこだんご」などとも呼ばれています。
昔、この地域は冷涼多湿のヤマセという風が流れむ地域で
お米がとれませんでした。そこで先人の日常食はアワやヒエなどの雑穀。
そのため、このだんごもモチキビなど雑穀で作られ
農仕舞いの膳に並んだといいます。
また時には、お米で作る場合もありました。
現在の三八地方で目にする「なべっこだんご」は
雑穀ではなく、なぜかすべてお米で作るものばかり。
いったいなぜ雑穀は消えて、お米だけが残っているのでしょう。
先人が貴重なお米を使って作る理由は、もちろん神様へのお供えだから。
11月24日の大師講様(弘法大師)の年取り、
1月に農神様を迎える日、そして小正月など神様にお供えする際に
ここぞとばかり貴重なお米を使ったのです。
白いお米で作ったお餅は日頃の雑穀生活では味わえないとても美味しいもの。
子供達はとても楽しみにしていたといわれています。
したがっておそらく農業技術が進化し、手軽にお米を手に入れられるようになった今、
美味しいお米で作るだんごだけが残ったのではないかと思われます。
さてこの「なべっこだんご」。お汁粉と同じような作り方をしますが
お餅の食感がまったく違います。コシがあるのです。
理由は煮えて浮き上がってきたお餅を冷水でしめるため。
そのためお餅はベタベタすることはなく、かみごたえがあり、とても美味しいのです。
インターネットやYoutubeで作り方が紹介されているのでぜひ作ってみてください。
お米のとれない地域が生んだ自慢の郷土料理です。
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