秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6) 価格:¥ 609(税込) 発売日:2009-03-05 |
上巻を読んでから1ヶ月半。ようやく下巻を読んだ。
はっきり言って、主人公の小鳩は嫌いだ。ゼロ年代男性主人公の典型。実はこの下巻でそこから逸脱していくが、それでも彼への評価は変わらない。
上巻同様、新聞部の新しい部長となった瓜野と小鳩が交互に一人称視点の主人公を務めている。小鳩の言うところの「小市民」に過ぎない瓜野は愚かな存在だ。頭も回らない。自分勝手だ。それでもそんな瓜野の方が小鳩よりも遥かに好感が持てる。
これまで小鳩は「小市民」でありたいと望んでいた。「小市民」たちを蔑みながら。この巻で、自分が「小市民」のままでいられないとはっきりと自覚する。「小市民」は「小市民」でありたいなんて望まないのだから当然だ。
本書に漂う嫌な空気。それは、愚かな「小市民」を見下す視線。読み手もまたそれを共有している。
読者が「小市民」ではない側に立ち、「小市民」をあざ笑う構造。小鳩と共感することはその構造に従うこと。それが透けてしまうから、楽しめない。
小鳩に対して「何様のつもり?」と言いたくなるのは、私が「小市民」だからだろう。だが、私にはそれしか言葉が見つけられない。
これまでに読んだ米澤穂信の本の感想。(☆は評価/最大☆10個)
『春期限定いちごタルト事件』(☆☆☆☆)
『夏期限定トロピカルパフェ事件』(☆☆)
『秋期限定栗きんとん事件〈上〉』(☆)
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