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世界を震撼させた5日間――グリムグリモア最終インプレッションPART 2

2007年05月08日 20時22分04秒 | アニメ・コミック・ゲーム

最後にシナリオとキャラクターについて書いておく。完全ネタバレなので、クリア後に見ることをお勧めする。なお、内容は反転表示かコピペして見て欲しい。

【シナリオについて】

○魔王カルヴァドスとその後

カルヴァドスはガンメル、ルジェと共に強大な力を持つ石「賢者の石」を作り上げた。更に、ソロモン王直筆の小さな鍵というグリモアによって悪魔ギムレットを呼び出し契約した。そして、彼は魔王として君臨した。
だが、ガンメルとルジェによって魔王は倒され、魂の器に封印された。また、ギムレットもガンメルのペンダントに封じ込められた。

「賢者の石」はカルヴァドスの居城であった銀の星体の塔のどこかに隠されていた。魔女ルジェは石を求め、王国は彼女の最愛の弟子にその師を殺すように命じた。彼女は死後も塔を彷徨い、カルヴァドスの弟子シャルトリューズをライオンの姿に変える呪いを行ったりした。

○危機の始まり

きっかけは錬金術師シャルトリューズが天使の霊素を元に究極のホムンクルスを作り上げたことだった。アマレットの誕生が悪魔を刺激し、封じられていたギムレットまでも目覚めようとし始めた。
これに危機を感じたガンメルはルジェの弟子オパールネラと共にギムレットを倒す計画を立てる。それはルジェが作った悪魔を滅ぼす魔法陣を使ってのものだった。
一方、ガンメルらの動きを察知したカルヴァドスも動き出す。密かに潜入させていた魔王派の少女マルガリタに魂の器を壊すように命じた。ギムレットが滅ぼされる時を狙って。

○リレ・ブラウと時の牢獄

この塔に来てわずか5日目にしてこの破滅と遭遇した少女リレ・ブラウ。だが、その窮地に彼女は賢者の石の加護を得る。それが何故過去へ戻ることだったのかは不明だが、彼女は記憶と経験、そしてグリモアを持ったまま過去へと遡った。
この時、賢者の石の力が発揮されたことが無かったことにならないよう、賢者の石の元にもう一人のリレが束縛されることとなった。繰り返される5日間とは別に存在するこのリレだけが年を取っていく。

5日間という時間の枷の中でリレは仲間の命を救い、魔王と悪魔を打ち滅ぼし、この時の牢獄から脱するという3つの目的を果たす必要があった。例え前の二つをやり遂げても時の牢獄から抜け出せなければまた振り出しに戻る。
しかも、その元凶である賢者の石にたどり着いても石を壊せなければ全てを忘れてまた初めからやり直すこととなってしまう。その際に石の元に束縛されるリレが入れ替わることもあった。

何十年、何百年もの繰り返しの中で記憶は何度も何度も打ち消された。だが、魔法使いとしての経験は少しずつ積み上げられて行った。その成果こそが、ゲーム本編だ。だから、この物語はマルチエンディングにはなり得ない。石を壊して明日を取り戻すか、また全てを忘れて振り出しに戻るかの二者択一となっているのだから。

【キャラクターについて】

○リレ・ブラウ

彼女は何故少女か?
この作品のヒロインはアマレットだ。そのアマレットを助けるのがリレ。だったら正統的な物語ではリレは少年(青年)であるはずだ。
彼女が少女である最大の理由はセールス的な事だろう。アトリエシリーズなどと同様にこの手のゲームでは少女が主人公のケースが多い。実もふたも無い話だが、最初から性別は決まっていたのだろう。
もうひとつ挙げるとすれば、アマレットの関係に男女の仲のような世俗な雰囲気を排除したいという思惑があったのではないか。

リレは知りえた情報の範囲内で可能な限り最善の行動を取る。設定的には既に多くの試行錯誤がなされ、最適解がゲームのストーリーになったと言う事もできるが、プレイヤーからすると時についていけないこともある。アマレットに対する振る舞いもそんな印象が強い。
ゲーム内で語られていることは必要最小限の内容といった感があり、多くの要素は想像力で補わなければならない。それは作り手の狙いでもあるのだろうが、もう少し多様な側面があれば良かったと思う。

○アマレット

天使の霊素を持つ究極のホムンクルス。2度リレの目の前で自らの命を犠牲にして彼女を救った。自らの存在意義を求め、そのために命を犠牲にすることも厭わない。
愛を欲したが、彼女の創造主シャルトリューズは研究に生きる男であり、愛を知らない男だった。愛を与えたリレに従い、シャルトリューズの元を去る。
無垢の象徴のような存在として、強く印象に残るキャラクターだ。

○オパールネラ

ルジェの弟子であり、師を敬愛している。度し難いほどに。一方、シャルトリューズへの愛に生きる女でもある。
100年近く生きているにも関わらずこの愚かさは哀しいほど彼女を女として描いている故だ。アマレットに対する残酷さや、ハイラムを受け入れた後に姿を若返らせた辺りもそうした印象を更に強めることとなった。

○シャルトリューズ

愛よりも研究に生きる錬金術師。と言うよりも研究バカと呼ぶべきだろう。
今回の危機の原因は彼だが、それを反省している様子は微塵も無い。カルヴァドスを素晴らしい先生と称するあたりもそんな彼らしい一面だ。
周りすら見えずひたすら研究に没頭する彼はある意味で男の象徴でもある。獅子という勇ましい姿もそれを強調している。だが、アマレットを失うなど彼の愚かさもまたよく描かれている。

○アドヴォカート

ガンメルと契約している悪魔。メフィストフェレスとして名を馳せた悪魔だ。
教師として生徒に黒魔術を教えたり、質問に答えたりはするが、彼らの命を助けようなどとは全く思わない。この作品で傑出して上手く描かれたキャラクターだ。
叡智を持つ者だが、悪魔ゆえに彼は人を救うのではなく堕落せしめる存在。それでも単純な悪ではなく、興味ゆえにリレを導く存在たらしめる。
この物語が勧善懲悪に陥らないのは彼のキャラクター性に因っていると言えるだろう。一方で、この世界の解説役として作り手が上手く利用している面もある。

○マルガリタ

使い魔というよりも監視役のシャーリーと共に魔王復活のために送り込まれた少女。火炙りにされる事を恐れて言いなりとなっている無知の象徴的存在。
リレが来た最初の日の夜に星の精霊のグリモアを盗み出そうとするなど非常に行動的。5周のうち4回魔王の封印を解くことに成功しているあたりは凄いと言うべきか。

○バティド

リレがヒロインなら彼がヒーローだったはず…。だが、ヒロインがアマレットとなった途端に影が薄くなってしまった。隣国のスパイという設定も残念ながら生きているとは言いがたい。
最初のリレとの出会いからどこかで会ってないかと感じるように、ループの存在を感じている数少ないキャラクターなのだが、その辺りでも特に進展が無く終わってしまった。

○ハイラム

リレとは敵対することが多かった。オパールネラを追い続けるだけの存在でしかなかった王国の第三王子。
実はゲーム内では語られなかった設定に、皇后の存在がある。ガンメルは皇后の火遊び云々のことを言うし、ハイラムは皇后にガンメルから密使が来たと語っている。これが何を指すかゲーム内では明らかになっていない。

○ルジェ

日本一ソフトウェアのSRPG『ソウルクレイドル』にも出ているキャラクター。原典はこちらで、この物語の後に別の世界へと赴いて行ったことになっている。
登場も後半だし、霊だからかかなり壊れた印象を受けるキャラクターだ。非常に力ある魔法使いだが、奔放さや傲慢さがオパールネラとは全く異なるタイプの女っぽさを形作っている。

○ガンメル

魔王を倒した偉大な魔法使いだが、あまり賢者という印象を持たない。危機への対応に追われるあまり周りの動きを把握できていない感じがする。
シャルトリューズの呪いを調べさせて欲しいと言うあたりに彼にも研究に目がくらんでその影響が見えないそんな一面があることを窺うことができる。
アドヴォカートとのやりとりは絶妙だが、その分悪魔にいいところを持っていかれたキャラクターと言えるかもしれない。

ストーリーがリレ中心であり、エピソードも多くはないので全員が等しく描かれているとは言えない。アドヴォカートやアマレットが印象的なキャラクターとなっているのに対し、ハイラムやバティドは影が薄い存在で終わってしまった。この辺りももう少し厚みが欲しかったと言えるところだ。
ただそれでも各キャラクターの個性は引き出せているし、想像力で補う余地を残しているとも言える。セリフを積み上げて描いているだけに、よく練られたシナリオであることは間違いない。ゲーム性とマッチしているかどうかについては疑問の余地もあるが、作り手の意欲は伝わってくる。

繰り返しになるが、ゲーム全体としてはボリュームに欠ける点や説明不足な部分もあるが、質の高い作品だ。RTSというジャンルのせいで評価されないとしたらとても残念だ。プレイする上でRTSだからクリアできないということはほとんどないだろう。だが、PART 1で触れたように、そうしたRTS部分がシナリオ進行の足かせと感じてしまいがちになるのも事実だろう。戦闘も決して出来が悪いわけではないのだが、その関係性はこのゲームに限らずゲームというジャンルの抱える問題だろう。このゲームは出来がいいがゆえにそれが顕著化している。

埋もれて欲しくない作品だけにかなりプッシュしてきたが、この熱意がどれほど伝わったか。このブログやFan Siteでの文章の未熟さが残念に感じるところだ。この場ではこれでひとまず書きたいことは全て書いたつもりだ。間もなく同じヴァニラウェアから『オーディンスフィア』も発売される。その作品にもこれほど熱中できればと祈っている。

攻略情報、質問や交流などあれば、『グリムグリモアFan site』で(しかし、芸の無い名前をつけてしまったものだ(汗)。