環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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年度末にあたって、改めて日本経済を支える基本条件の確認と 「日本の効率化」とは

2008-03-28 10:48:34 | 経済
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日本の年度末にあたって、21世紀の日本の環境問題を考えるときに、私たちが把握しておかなければならない日本特有の主な条件を挙げておきます。それは日本経済が制約を受ける社会的・地理的条件です。大変不思議なのは、このような前提を忘れた議論ばかりが行われていることです。


★日本経済が制約を受ける地理的・社会的条件

●日本は世界第2位の経済活動をしている経済大国であること。90年代、日本は世界のGDPの総和=約30兆ドルの16%に相当する4.8兆ドル=約500兆円をつくりだす経済活動を行なっていた。日本の2006年の名目GDPはおよそ4.3兆ドルで90年代とほぼ同じであるが、BRICs(ブラジル、ロシア、中国およびインド)などの新興国の経済規模が拡大したため世界全体の経済規模は拡大しており、日本の占める割合は9.1%に低下した。

先進工業国第2位の人口大国であること。2005年、約1億2770万人、世界人口の約2.0%、2004年にピークを迎え、以後減少傾向にある。

国土と可住面積の狭さ(約37万平方キロメートルの国土)、約343人/平方キロメートル(2005年)の人口密度の濃さ

これらの3条件は、経済的な視点から見れば「大きな国内市場」を意味するとともに、スケールメリットによる効率化を生むことになりますが、環境問題の視点から見れば「環境負荷の増大」と「人体の負荷増大」を意味することは、すぐにおわかりいただけると思います。さらに、厳しい3つの条件があります。

●原材料の約30%、エネルギーの約90%を海外に依存している。

この100年間で日本のエネルギー消費が下がったのは、第1次世界大戦と昭和大恐慌、第2次世界大戦、70年代の石油危機のときしかない。

●食糧自給率が40%を切り、先進国中最低。





★日本の「効率論」で忘れてはならない大前提

ところで、日本の企業人、エコノミスト、政策担当者の多くはこれまで日本の経済パフォーマンスを語るとき、「効率の良さ」を挙げてきましたが、これには次のような大前提があることを忘れてはなりません。

平穏時あるいは予想される範囲の近未来しか想定していないこと。あらかじめ準備していたことを遂行する時には、日本の官僚機構、企業、学校などの既存の組織はきわめて有効に働くが、事前に想定された範囲を超える出来事(大事故や大きな自然災害など)が起こるとシステムが機能しなくなる。 

常に健康な成人を想定していること。社会を構成するのは老若男女である。それぞれに健康なものもいれば、そうでないものもいる。日本の制度は健康な成人に焦点を当てた「強者の論理」に基づくものである。
 
これらの前提に立てば、生産、物流コストをぎりぎりまで切り詰め、「効率化」を図ることが可能となりますが、安定した社会やインフラの整備、自由な企業活動を保障するとともに、国民の健康、生活、財産の安全を確保するには、さらにコストがかかるはずです。社会全体のコストを考えることが重要です。




★「経済成長一辺倒」の20世紀、「21世紀の方向性」が見えない日本



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経済、エネルギー、環境の関係



小渕恵三内閣のもとにつくられた「経済戦略会議」に、当時の経済企画庁長官であられた堺屋太一さんに請われて、メンバーに参加した竹中平蔵さんは、小泉内閣では経済財政政策・金融担当大臣を務められました。皆さんは、次に示した竹中さんのお考え「経済が2%成長できるということは、35年後に所得水準が2倍、親から子どもの世代にかけて、生活水準を2倍にできるという夢の経済」を同評価しますか。





下の図は、2006年10月に当時の自民党幹事長であられた中川秀直さんが上梓した「GDP1000兆円 上げ潮の時代」(講談社)の「はじめに」です。先に紹介した竹中さんの発想そのものといってよいような文章が出てきます。ただし、こちらは竹中さんの「経済が2%成長できるということは・・・・・」ではなくて、「名目4%成長で成長していけば・・・・・」です。


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日本は今、まさに20世紀の価値観とは異なる21世紀社会への転換期を迎え、その方向性が見えず苦悩しているところです。




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