環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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日経の「社長100人&500社アンケート」に示された日本企業のトップの環境認識

2010-10-17 21:44:02 | 経済



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「私の環境論」の最も基本的な考えは次の通りです。

つまり、経済活動は「経済成長」という目的と共に、必ず「目的外の結果」を伴うということです。皆さんは私のこの考えを共有できますか。もし共有できるなら・・・・・


10月3日のブログで、菅首相の所信表明演説を取り上げました。首相は、解決すべき重要政策課題は「経済成長」、「財政健全化」、「社会保障改革」の一体的実現、その前提としての「地域主権の推進」、そして、国民全体で取り組む「主体的な外交の展開」の5つだと明快に述べています。

これらの「5つの解決すべき政策課題」というのは、いずれも、自民党の長期政権下で20世紀から引きずってきた問題であり、この演説によって日本が21世紀の新たな問題にほとんど対応出来ない状況にあることがはっきりしました。菅首相の所信表明演説に対するマスメディアや識者の評価は必ずしも好意的ではありませんが、私は日本がまさに「混迷状態にあること」を直視した画期的な「所信表明演説」だったと評価しています。

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ところで、10月3日の日本経済新聞が「社長100人&地域500社アンケート」の結果というのを報告しています。このアンケートは国内主要企業の社長(会長、頭取などを含む)を対象に、四半期ごとに実施しており、今回は1日までに調査、143社の回答を得たそうです。地域経済500調査は各地の有力企業、事業所、団体のトップを対象に、半年ごとに実施しており、今回は414人が回答したそうです。

このアンケート調査の結果の中に、「私の環境論」から見ると非常に興味深い企業からの回答が含まれています。先進国、新興国を問わず、経済活動の主役を担っているのは、先ずはグローバルな市場経済を支えている企業であり、続いて消費者だからです。

1つは「円高に対処するための方策」です。


国内でのコスト削減を第1に、第2に中国など新興国での現地生産の拡大が挙げられていることです。また、欧米での現地生産の拡大という回答もあります。これらの生産拠点の移転は、私の環境論では、日本企業が他国の資源やエネルギーを使い、他国に環境負荷をかけることを意味します。

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もう一つは、「菅政権で重視する経済政策」という問いに対する社長100人の回答です。


最も多かったのは法人税減税など企業の競争力向上策で、著しく低いのが環境・温暖化対策で、いかにも日本企業の回答らしいと思います。このことは日本企業の経営トップの「環境問題に対する基本認識」が21世紀に入った今なお、「公害」の域から抜けきれてないことを意味しているのだと思います。それ故、私の環境論が指摘している経済活動の結果である「経済成長」と経済活動の目的外の結果である「環境問題」の因果関係が理解できていないと言えるのではないでしょうか。

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日本とスウェーデンの企業トップの「環境問題に対する基本認識」には大きな落差があります。そして、このような調査を行い、その結果を報道する日本のマスメデイアも「経済成長」と「環境問題」の真の関係を十分理解しているとは思えません。 


今日のブログの最初の図のメッセージを私と共有していただけた方は、次の図のメッセージも私と共有していただけるでしょうか。


この図で言う「技術の変革」とは、具体的には「産業構造の変革」を意味します。20世紀のエネルギー体系をほとんど変えることなくさらなる経済成長を求めれば、CO2の排出量のみならず、その他の環境負荷も高まることは自明の理です。企業にとっては先行投資の対象を誤れば、致命的であることは言うまでもありません。企業のトップは「21世紀の経済成長」には「20世紀の経済成長」のような自由度はほとんど無いことを理解しなければならないと思います。
   

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