環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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G8開幕、成長の手法:米国は「景気回復」、欧州は「財政再建」、それでは、スウェーデンは、日本は?

2010-06-27 22:04:17 | 経済
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6月26日の朝日新聞が25日、カナダのトロント郊外のムスコカで始まったG8の会議の初日に「各国の経済成長を持続させることが重要だとの認識で一致した。その手法を巡っては、財政出動による景気刺激策の継続を主張する米国と、財政再建を優先したい欧州の間で意見が分かれた。」と報じています。

この両者の間に、2020年度までに健全化させる「財政運営戦略」と、環境やエネルギー、介護などの産業を生かした雇用創出でデフレ脱却を図る「新成長戦略」との両立を強調した日本があるとの図式です。

この記事を読んだときに、すぐ思い出したのはちょうど20年前不況の時期に、欧州(ドイツおよびフランス)と日本、スウェーデンの行動でした。今回の状況下で参考になるかどうかはわかりませんが、経済の門外漢である私には類似の図式に見えますので、当時の状況を振り返っておきましょう。

90年代初めの不況は深刻な財政赤字の悪化を招き、スウェーデン経済に著しい打撃を与えました。1991年から93年にかけて、日本と同じような原因による「バブル崩壊」を経験したスウェーデンは、「経済のマイナス成長」「高失業率」「GDPの12%を超える財政赤字」「経常収支の大赤字」の四重苦に苦しみました。

事態を改善するためにスウェーデン政府は、野党との協力のもとに綿密なプログラムを組み、強い福祉を訴え、「歳出の削減」と「増税」を実施した結果、「景気回復」と「財政再建」を同時に解決するとともに、四重苦を克服したのです。迅速で大胆な公的資金の投入により、不良債権問題は1年で解消し、投入された公的資金も1996年にはほぼ全額返済されました。
 
この間の事情を、神野直彦さん(当時、東京大学経済学部教授)の著書『二兎を得る経済学――景気回復と財政再建』(講談社+α新書、2001年)を参考に再現してみます。

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「20世紀から21世紀への峠を、スウェーデンは『自信と楽観主義(confidence and optimism)』とともに越えた。スウェーデンの『予算説明書』は、そう胸を張って宣言している。これに対して日本は、20世紀から21世紀への峠を、『不安と悲観主義』とともに越えるしかなかった。この対照的な相違は、『人間を信頼した国』と、 『人間を信頼しなかった国』との相違だということができる」。
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スウェーデンと日本を鮮烈で対照的な表現で活写した神野さんはこの著書のなかで、世紀の変わり目に先進工業国が直面した「景気回復」「財政再建」を二匹の兎にたとえ、90年代の日本、ドイツ、フランス、スウェーデンの対応を財政学の立場から分析し、比較検討しておられます。それぞれの国が、それぞれの異なる社会制度のもとで、それぞれの選択をした結果、現在に至っている状況がわかり、たいへん興味深いものです。神野さんの分析を要約すると、次のようになります。




日本は景気回復という「一兎」を追ったが一兎をも得ずであった。ドイツ、フランスは財政再建という「一兎」を追い、一兎を得た。スウェーデンは景気回復財政再建という「二兎」を追い、二兎を得た。

1992年から知識集約的産業の成長を倍増させ、産業構造を転換させた。世界最強の「IT国家」をめざし、ストックホルムをして「IT首都」とまで賛美させる産業構造の転換こそ、スウェーデンが景気回復にも財政再建にも成功した鍵なのである。

90年代後半以降のスウェーデン経済のパフォーマンスを、「景気回復」という一兎から見ると、「一般財政収支の対GDP比」「GDPの推移」「一人当たりのGDPの推移」「経済活動指数」「失業率」「株価」「政策金利」「国債の格付け」「国際競争力」などのデータでは、きわめて好調です。
 
もう一つの「財政再建」という一兎についてはどうでしょうか。『中央公論』が2004年11月号で、「特集 国家破綻の足音」を組み、そのなかで、榊原英資さん(当時・慶應義塾大学教授、元財務官)は、「日本の財政悪化は政治の再編成を招くか」と題して米国の格付け機関S&Pが、現状のままの財政制度が将来も維持されたときの25カ国の累積財政赤字(一般政府累積赤字対GDP比率)を試算した表を掲げています。

 
これを見ますと、2000年のスウェーデンが55%(日本144%)、2030年が21%(日本399%)、2050年が59%(日本718%)。日本の状況は右肩上がりで、試算対象国のうち最悪です。欧米が判断基準としている累積財政赤字が60~70%であることを考えると、日本の深刻さが理解できるはずです。上の表から作成したのが次の図です。



そして、最新のスウェーデンの状況と欧州の状況を次の記事から知ることができます。

★景気回復


★財政再建 


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