環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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IPCCの第4次報告

2007-02-04 15:36:41 | 温暖化/オゾン層


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地球温暖化の科学的根拠を審議する「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の第1作業部会の会合が2007年2月1日にフランスのパリで開かれ、「第4次評価報告案」を承認したと、新聞各紙が報じています。報告書では、温暖化が確実に進み、人間活動による温室効果ガス排出が要因の可能性がかなり高いことを確認し最終的には90%を超す確率であることを示す「人為起源の可能性がかなり高い」と表現した、とのことです。

ここでは、この事実を報ずる2007年2月2日付けの朝日新聞の記事を掲載しておきます。この資料は今後、各国で温暖化政策を議論するときの最も重要な基本資料と位置づけられるものです。







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京都議定書の採択から半年たった1998年6月、EUは環境大臣理事会で、地球温暖化防止京都会議で合意された「EU全体でCO2など温室効果ガスの8%削減」を具体化するために、国別分担の排出量新配分で基本合意しました

この新配分でEUは、スウェーデンに「1990年比で4%の温室効果ガスの排出量増加」を認めていますが、これは、スウェーデンが「1970年以降およそ30年間にわたって、CO2の排出量を少しずつ削減してきた実績」と「原発の段階的廃止」をめざす計画を保持していることに配慮したからです。


6.スウェーデンの二酸化炭素総排出量の推移

それでは、70年代~90年代までのCO2排出量の推移を見ておきましょう。スウェーデン・エネルギー庁の資料によれば、CO2の総排出量は1970年以降、88年まで少しずつ減少し、88年以降現在まで、ほぼ横ばい状態が続いていることがわかります。ただし、運輸部門はわずかですが増加傾向にあります。




CO2が減少した理由は、70年代の「石油ショック以降のエネルギー政策」にあります。原油と石油製品の総エネルギー供給量に占める割合は、1970年の77%から88年まで少しずつ減少し、88年以降の横ばい状態を経て、2000年には33%まで減少しました。過去30年間の石油製品の消費は、原子力とバイオマスで代替されました。エネルギーの転換がなされたのです。現在は,石油製品の54%が運輸部門に供給されています。

ここで注目すべき事実は、スウェーデンでは産業部門もCO2削減に努力し、民生部も、運輸部門も努力していることです(その努力にもかかわらずやや増加の方向にありますが)。一方日本では、政策担当者や企業、エネルギー関係者によれば、生産部門は努力し、CO2を削減しているが、民生部門、運輸部門は大幅に増加し、日本全体のCO2増加に大きく寄与している、と説明されています。
 
2001年11月に、政府が国連気候変動事務局に提出した「第3回気候変動に関する国別報告書」によれば、スウェーデンの1999年の温室効果ガス排出量は、90年のレベルをわずかに0.1%上回っただけでした。

このことは、この10年間のGDPが15%増えているのに、90年代の温室効果ガスの排出量が安定化していたことを示しています。1992年に国会が決めた「CO2の排出量を2000年までに90年レベルに安定化する」という目標は達成されたのです。
 
2004年2月19日付の朝日新聞は、2001年時点の主要国の温室効果ガス排出量の削減実績を伝えています。これによると、スウェーデンは京都議定書の目標値の「4%増」に対し、この時点ですでに90年比「3.1%減」となっており、京都議定書の国別目標に到達した「世界最初の国」となったのです。

そして、2006年11月6日の毎日新聞はスウェーデンの2004年の温室効果ガスの排出量が90年比「3.5%減」であったと報じています。


また、国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書2004」では、先進工業国のなかで1人当たりのCO2排出量が最も少ないのはスウェーデンで、5.3トンで、日本は9.3トンでした。




私の環境論21(最終回) 50年後のビジョンを考える際に必要な経験則

2007-02-04 08:15:43 | 市民連続講座:環境問題
  

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今回で、「私の環境論」をひとまず終了します。このシリーズの終わりに当たってみなさんにお尋ねします。

私の環境論は、後者の立場に立っています。ですから、現時点では、多くのみなさんと意見を異にするかも知れません。

「いまとなっては間違った前提に基づき、『持続的な経済成長』というビジョンから抜け出すことのできない経済学者やエコノミストの言説を無批判に受け入れるのではなく、『資源・エネルギー・環境問題』に配慮した、自然科学者の明るくはない未来予測に、耳を傾ける必要があるのではないか」というのが、私の環境論の根底にある認識です。

小泉政権が掲げ、安倍政権が継承している「持続的な経済成長」は、当面はやむを得ないとしても、明るい「21世紀社会」を私たちに約束してくれるものでしょうか。規制緩和は「行き詰まった日本経済拡大の打開策」としてではなく、「21世紀の持続可能な社会」を構築するための有効な手段として認識し、その必要性を大合唱しなければなりません。

また、地方主権(分権)の推進も同様です。21世紀の「持続可能な社会」と「それを支えるエネルギー体系」について、今、真剣な議論が日本で起こらなければおかしいと思います。今ほど素人の「直感」と「知恵」が求められているときはありません。企業人や学者、政策担当者はそれぞれの組織の立場を離れて、一生活者として、自分たちや自分たちの子どもや孫が生きるはずの「21世紀の社会」のあるべき姿を考えて欲しいと思います。

科学的知見が必ずしも完全ではなくても、私たちが生まれながらに持っている「知恵」「これまでに獲得した経験則」と、そして、「自然法則」を拠り所に、想像力を十分に働かせて、21世紀の社会を論理的に考えてみようではありませんか? 明るい未来は、私たちの選択にかかっているのですから。

私が提供できる「経験則」には、次のようなものがあります。

①動物としての機能退化(進化?)はあるが、21世紀も人間は 「動物的次元」 を捨てきれない。
②「21世紀の社会」の方向性を示唆する芽は現在の社会にある。
③物をつくるには原料、水、エネルギー、労働力などが必要である。生産工程からは「製品」と共に、必ず、「廃棄物」と「廃熱」が出る。生産はこれらのうち、最も少ない要因に縛られる。
④すべての製造物には寿命がある。製造物は時間の経過と共に劣化し、最終的には「廃棄物」となる。すべての製造物は「使用・廃棄物過程」でエネルギーを要求する。
⑤新技術、新政策の導入には「リードタイム」が必要である。
⑥現在の決断(決定)が「数10年後の社会の状況」を原則的に決めてしまう。
⑦「自然法則」にしゃにむに挑戦するよりも、「人間がつくった社会システムや産業経済システム」を変更することのほうが容易である。
「治療よりも予防」、「対策ではなく政策」 を重視しなければならない。“先延ばし”をすればするほど治療(対策)に要する社会的なコストは高くなる。

21回の講義をもう一度最初から続けて読んでいただく「私の環境論」と、私が考える環境問題の概要を体系的に理解していただけるでしょう。あとはみなさんの努力で、情報を収集し、ご自分で考えてみてください。そうすれば、どなたでも、私たちが直面している「21世紀最大の問題:環境問題」の議論に参加し、積極的に議論をすることができると思います。

次回から、これまでの「私の環境論」を基礎として、環境分野や日本の社会で起こっている様々な現象的な問題や話題に対して私の考えをお伝えし、みなさんの参考に供したいと思います。