環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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 元祖 脱ダム宣言?

2007-02-09 11:24:33 | 原発/エネルギー/資源
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昨日の朝日新聞によりますと、01年に「脱ダム宣言」を発表した田中康夫・前長野県知事が建設を中止した県営浅川ダム(長野市)について同県は、治水のみを目的とした「穴あきダム」を建設する方針を決めた、長野県の「脱ダム宣言」は事実上、撤回されることになる、と報じています。

この記事を読んで、16年前のスウェーデンの「エネルギー政策」の議論に示されたスウェーデンのダムに関する分かり易い認識を思い出しましたので、紹介しましょう。

スウェーデンでは、1987年の「天然資源法」(98年成立、99年1月1日施行の環境法典に統合された)によって「ダム開発」が自然保護の観点から禁止されています。スウェーデン政府は「国の脱原発を含むエネルギー転換政策」の中で水量豊富な北部の未開発の4河川を電源開発(ダム開発)の対象にしていません。
   
日本原子力産業会議の招きで90年5月に来日したスウェーデン・エネルギー庁のハンス・ローデ長官(当時)は、5月15日に東京で開いた「スウェーデンのエネルギー政策に関する講演会」で、89年暮れに同庁が公表した「環境に適合するエネルギー・システム」と題する報告書(下図)に基づいて講演しました。
   


この報告書は2015年を目標にしたエネルギー・シナリオで、大前提は「いずれのシナリオも原子力は全廃、化石燃料の削減、水力は今後新規拡張しない」という厳しいものです。このことは最終エネルギー消費の削減(さらに、このことはエネルギー供給量の削減)を意味します。  

同長官は「北部4河川の周辺環境はスウェーデンのみならずヨーロッパ全体に残された自然という観点から保全されなければならない」と述べ、一国のエネルギー政策のために貴重な自然を破壊することは避けなければならないという認識を示しました。

この考えは他国からの圧力によるものではなく、スウェーデン国民の自らの判断による選択であり決定だったのです。この考えは16年経った現在でも国民に支持されています。

石垣島の空港建設工事に関連して、世界的に貴重な資源といわれる白サンゴの保全をめぐる議論や長良川の河口堰の是非論を見るにつけ、貴重な自然に対するスウェーデンと日本の考えの相違に大きな落差を感じざるを得ません。