環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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緑の福祉国家16 「気候変動」への対応 ⑤ 

2007-02-03 13:00:34 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1月23日のブログで、「化石燃料の使用により大気中のCO2が増えると地球が温暖化する」というアレニウスの仮説を紹介しました。スウェーデンの化学者スバンテ・アレニウスがこの仮説を発表したのは1896年でした。

1765年のワットの蒸気機関の発明に始まる近代の技術史の展開やアダム・スミス「諸国民の冨」(1776年)に始まる経済理論の発展の歴史――リカード「経済学および課税の原理」(1818年)、ミル「経済学原理」(1845年)、マルクス「資本主義」(1867年)、ワルラス「純粋経済学要論」(1874年)、ケインズ「一般理論」(1936年)、カップ「私的企業と社会的費用」――と、「アレニウスの仮説」を今、改めて総合的に考えるのは妥当性があると思います。

110年前にスウェーデンの化学者が唱えた仮説が今、現実の問題となって、私たちに「経済活動の転換の必要」を強く迫っています。そして、この仮説を支持するかのように、ゴア・元アメリカ副大統領主演の映画『不都合な真実』(原題: An Inconvenient Truth)が2006年にアメリカで制作され、2007年1月20日から日本でも公開されています。

また、一昨日(2007年2月1日)には、地球温暖化の科学的根拠を審議する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会」会合がフランスの首都パリで開かれ、第4次評価報告書が承認されたとマスメディアが2月2日に一斉に報じています。
私たちは改めて、「技術開発」と「経済活動」「環境問題」の関係を捉え直す必要があると思います。


5.スウェーデンの二酸化炭素(CO2)規制政策の概要

つぎの図は1991年の「二酸化炭素税導入」までのスウェーデン政策の概要を示したものです。


92年、スウェーデン国会は「CO2の排出量を2000年までに90年レベルに安定化させ、その後は減少させる」というスウェーデン独自の目標をつくりました。

2001年11月に、政府が国連気候変動事務局に提出した「第3回気候変動に関する国別報告書」によれば、スウェーデンの99年の温室効果ガス排出量は、90年のレベルをわずかに0.1%上回っただけでした。このことは、この10年間のGDPが15%増えているにもかかわらず、90年代の温室効果ガスの排出量が安定化していたことを示しています。92年に国会が決めた「CO2の排出量を2000年までに90年レベルに安定化する」という目標は達成されたのです。
 
2001年11月、スウェーデン政府は新たな気候変動防止政策を発表しました。

この政策で、スウェーデンは2010年までに温室効果ガスの排出量を90年レベルの4%減(EUの割当枠では4%増が可能)を目標としています。

注目すべきは、この政策でも、森林による吸収や排出量取引などといった、京都議定書で国際的に認められた「補完的な手法」によらないで、スウェーデン国内の努力によって目標を達成しようとしている点です。具体的には、自治体の気候変動防止プロジェクトへの資金援助、国民への啓発運動、代替燃料の導入、省エネ、課税対象の転換(後述)などが挙げられています。スウェーデン自然保護協会やグリーンピース北欧などの環境NGOは、政府の政策を評価し、支持を表明しています。


 

私の環境論20 環境問題を考える際の7つのキーポイント

2007-02-03 07:34:12 | 市民連続講座:環境問題
  

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現代に生きる私たちは、動物的機能が退化してきていることを自覚しつつありますが、「動物的次元」からは逃れられることができません。20世紀後半になって顕在化した環境問題は、人間の最も根本的である 「動物的な次元」 に直接かかわる大問題なのです。

 「人間は動物である」という最も基本的な、そして、誰もが否定できない生物学的事実をすっかり忘れて、政策担当者、彼等を支える自然科学者や人文・社会科学者、エネルギー分野の専門家、環境分野の専門家、エコノミスト、ジャーナリスト、NPO、市民運動家などが難しい議論を繰り返しています。

「市民連続講座:環境問題」の締めくくりとして、環境問題を考える際に留意すべき7つのキーポイントをまとめておきましょう。


①人間
人間を忘れた環境問題は存在しない。環境問題の原因は拡大し続ける人間活動であり、その影響を受けるのもまた人間だからである。人間には心理的な弱点がある。環境問題の対応には、これらの弱点を社会システム(制度)で補わなければならない。

②経済活動
環境問題は、1月18日のブログで示したように、経済活動の拡大(資源およびエネルギーの利用拡大)の結果、必然的に生じた人類史上初めて直面する大問題であり、21世紀最大の問題であるから、「経済活動の判断基準」を早急に変更しなければならない。判断基準を変えることによって、新しいものが見えてくる。現象面の解説からは見えてこない「環境問題の本質」が見えてくる。      

③総量
資源・エネルギーの供給量/消費量、廃棄物の量/汚染の程度などの統計資料は可能な限り総量で表示することが望ましい。環境問題は総量によって決まるからである。わが国の環境関連の統計資料には国民一人当たり、原単位当たり、GNP当たり、PPM、○○年を基準とした指数など、相対量を示す統計資料が多い。

④蓄積性
廃棄物問題に代表されるように、環境問題は基本的には“蓄積性の問題”ある。したがって、環境問題の理解には単年度の統計資料では不十分である。経年変化がわかるような時系列、あるいは累積の統計資料が必要である。


⑤環境への人為的負荷
環境への人為的負荷(環境への作用)が、生態系に影響を及ぼし、大気・水・土壌・食品などを介して、人体への負荷(環境からの反作用)に収斂する。その結果、人間の生存条件が劣化する。これが環境問題の本質である。

⑥自然を支配している法則
日常生活ではほとんど意識されない「自然の法則の存在」を意識しなければならない。我々は平穏な日常生活では、重力の法則などわすれがちであるが、大地震などの自然災害に遭遇すると改めてその法則を思い知らされる。特に、生態学の法則、熱力学の法則、物質不滅の法則、重力の法則など生物学、物理学の法則が重要である。

⑦獲得した経験則
 長い人類の歴史の中で、獲得してきた様々の経験則もまた重要である。