環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

景気動向指数と長時間労働

2007-02-19 16:10:35 | 経済


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★景気動向指数

内閣府は毎月初旬に「景気動向指数」を発表します。今月は2月6日に発表されました。2月7日の朝日新聞によりますと、「鉱工業生産指数」と「大口電力使用量」は過去最高を記録、景気回復が順調に続いたことを裏付けたそうです。

この図と類似の図を1月23日のブログ「環境と経済は切り離せない」で取り上げ、「環境への配慮がまったくない」と指摘しました。そして、その図が21世紀の経済活動を判断するのにふさわしくないので、新たな指標を創設する必要があることを明らかにしました。

さて、上図をご覧下さい。あり得ないことですが、もし、皆さんひとり1人の努力が実って電力が見事に節電され、その上さらに、大口電力の使用量が減少するような事態が生じたとしたら、上図の○は●となり、「景気動向指数」ではマイナスと評価されることになるでしょう。

上図を追認するように、電力10社全社が増収となっています。景気回復の影響で各地の産業用需要が伸び、家庭用もオール電化の普及などで堅調だったのがその理由だそうです。

★長時間労働

また、2月8日の朝日新聞には「会社員の10人に1人が夜10時過ぎまで残業している。
先進国の中で飛び抜けて長い」という興味深い記事があります。「日本の労働基準法は労働者を保護するため1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないと定めている。つまり、残業は原則は禁止なのだ。違反には懲役もある」と書いてあります。

この記事には興味深い図が添えられていますが、「残業時間と労働者の分布」と「週50時間以上労働している就業者の比率」の2つの図を紹介します。



もしかすると皆さんは、これらの情報は労働分野の問題であって、環境問題とは関係ないと思われるかも知れません。しかし、私の環境論では、1月21日のブログ「人間の生存条件の劣化」で示したように、経済活動を媒体として労働分野の問題と環境問題は密接に関連しているのです。その証拠に一番上の図には「所定外労働時間指数」(製造業)という項目があるではありませんか。

大変興味深いのは、労働時間について、日本とスウェーデンが対極に位置していることです。

このように、景気回復のために「大口電力使用量」が増えること、「時間外労働」が増えることなどはいずれも20世紀の発想による「経済成長」の域を出ていません。はたして、このような時代遅れの経済指標によって「21世紀の日本の経済」を判断することが望ましいのでしょうか。

「社会の変化」と「知識の拡大」に対応して判断基準が変わっていかなければ、本来、見える筈のものも見えず、わかる筈のものもわからなくなってしまいます。


企業の目的は「利潤追求」、ほんとうだろうか?

2007-02-19 10:57:06 | 市民連続講座:環境問題


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今日の市場経済社会では、商品やサービスを組織的・計画的に運営し、販売しているのは企業です。企業は徹底的な市場調査を行ない、消費者の形にあらわれていない欲望まで見つけ出し、それを商品化しています。ですから、先進工業国では、企業が環境問題に最も大きな役割を演じていることは明らかです。

消費者は市場にあふれる商品やサービス群のなかから、個人の必要や要求に基づき、商品やサービスを選択し、購入しているにすぎません。大量消費・大量廃棄を推し進めているのは、大量生産をしている企業であることも明らかです。

日本最大の広告会社・電通のPRセンターがつくった「戦略十訓」はよく知られているところです。この戦略に象徴される「大量消費・大量廃棄」のすすめは、きれいで購買意欲をそそる美しいキャッチ・コピーに形を変えて消費活動を助長し、ついに日本を米国に次ぐ「世界第二の経済大国」にまで押し上げたのです。


経済拡大に成功した当時の日本の企業経営者の多くは、「われわれはもはや世界に学ぶものはない」などと豪語していました。

一般に、企業の目的は「利潤追求」だといわれていますが、ほんとうでしょうか。利潤追求は市場で企業がどれだけ顧客を創造したかの尺度にすぎません。そうでなければ、なぜ、赤字企業は赤字経営のままでも存続し続けようとするのでしょうか。


企業の本来の目的は、「顧客の創造」だと思います。顧客を創造する目的で企業が行なうことは「マーケティング(市場開拓)」「イノベーション(技術革新)」です。企業はマーケティングとイノベーションによって「自己の持続・存続・発展」を求め、利潤を上げ、納税し、雇用創出などの形で社会に貢献しているのです。