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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

緑の福祉国家34 新しい化学物質政策の策定③ 化学物質政策ガイドライン  

2007-05-04 06:28:23 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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「環境の質に関する15の政策目標」に掲げられた「有害物質のない環境]という目標を達成するために、21世紀に向けた「新しい化学物質政策ガイドライン」が制定されています。

このガイドラインは、製造者が健康や環境に悪い影響を与えない製品を開発することを促し、また、化学物質を扱う際の具体的な目標を提供するものでもあります。

政府は、これらのガイドラインの10~15年以内の実現をめざすとともに、2003年に化学物質政策と規制手段についての再評価を行ないました。政府はこれらのガイドラインに従って、他国とも協力して、化学物質政策の目標達成に努めることになります。



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緑の福祉国家33 新しい化学物質政策の策定② 有害物質のない環境  

2007-05-03 06:00:32 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1999年4月28日、国会は政府が提出した 「環境の質に関する15の政策目標」 を承認しました。このなかに、「有害物質のない環境]という目標があります。




この目標を達成するために21世紀に向けた新しい「化学物質政策ガイドライン」が制定されています。明日、このガイドラインの概要を紹介します。



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緑の福祉国家32 新しい化学物質政策の策定① 2つの判断基準  

2007-05-02 09:23:38 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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「健康に有害」あるいは「環境(生態系)に有害」な化学物質を製品に使うのは、むろん好ましいことではありません。化学物質を合成するときには、この2つの基準に照らして、適当かどうかを判断する必要があります。


日本の環境省によれば、この2つの判断基準のうち、2002年の時点で「OECD加盟25カ国のうち生態系保全を考慮していないのは日本だけ」だそうです(毎日新聞2002年9月13日付)。

判断基準が変われば、今まで見えてこなかった問題が見えてきます。 

ちなみに、1973年に成立したスウェーデンの「健康および環境に有害な製品に関する法」には、その名が示すように、最初からこの2つの判断基準が盛り込まれていました。この法律は85年の「化学製品法」を経て、99年1月1日施行の「環境法典」に統合され、環境法典の「第14章 化学製品およびバイオ・テクニカル生物」に引き継がれました。





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緑の福祉国家31 「福祉国家」から「緑の福祉国家」への転換政策の検証  

2007-05-01 08:34:30 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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今年1月11日から始めた「市民連続講座:緑の福祉国家①」では、スウェーデンにおける20世紀の「福祉国家」(人にやさしい社会)から21世紀の「緑の福祉国家」(人と環境にやさしい社会)」への転換プロセスをフォローしています。


そして、1月21日から、次の4つの主な転換政策を検証して来ました。

(1)気候変動への対応(国際的な対応) 
 
(2)オゾン層保護への対応(国際的な対応) 

(3)税制の改革:課税対象の転換

(4)エネルギー体系の転換:原発を新設しない・脱石油 


明日から、次の4つ主な転換政策を検証して行きます。

(5)新しい化学物質政策の策定

(6)廃棄物に対する製造者責任の導入 

(7)持続可能な農業、林業、漁業

(8)都市再生(都市再開発) 



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緑の福祉国家30 エネルギー体系の転換⑨ スウェーデンの「バイオ燃料に関する基本認識」

2007-04-30 12:09:39 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンは欧州の最先端を行く「バイオ燃料の先進国」です。その意味では世界最先端の国とも言えます。「エネルギー体系の転換政策」の最終回として、スウェーデンの「バイオ燃料に関する基本認識」をまとめておきます。

スウェーデンのバイオ燃料に関する研究、実用化には長い歴史があります。オイルショック後の1975年に自動車の石油依存から脱却するため、メタノールとガソリンの混合燃料の実用化試験を開始しました。現在のエタノールとガソリンの直接混合燃料はその延長上にあります。

また、4月28日のブログ「政府の2050年のエネルギー・シナリオ」に見られるようにバイオエネルギー・シナリオ」でさえも、再生可能エネルギーが大幅に見込まれているわけではないことです。このことは長年の議論を通してバイオ燃料の有効性と限界を十分認識しているからだと思います。

下の2つの図は1980年代にスウェーデンで議論されていたバイオ燃料に関する要点をまとめたものです。現在、バイオ燃料の導入に当たって国際社会で議論されていることがスウェーデンでは15~20年以上前に議論されていたことがわかります。

例えば、上の図の「1年生植物」の項には、 「食用に供しない穀物」の利用が提案されていますし、下の図では実用化前の課題として「森林と農地の利用の問題」が提起されています。







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緑の福祉国家29 エネルギー体系の転換⑧ 気候変動への有効な対応策 

2007-04-29 08:44:22 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンが考える「エネルギー体系の転換」は、日本ように再生可能エネルギーを増やして現在のエネルギー消費量を維持・拡大するのではなくエネルギー消費量自体を減らし、原発や化石燃料を、段階的に再生可能エネルギーで置き換えていくという大変挑戦的な行動計画です。

1980年3月に行われた「原発に関する国民投票」の結果を踏まえた同年6月の国会決議に端を発した脱原発の努力は、現在でもその方向性については変わりませんし、将来も変わりないと思います。しかし、将来の方向性については、スウェーデンの国民と政府が決めることです。政治の決断が重要です。

化石燃料については、「2020年までに化石燃料からの脱却」という方向性が打ち出されました。

「脱原発」と「化石燃料からの脱却」という方向性は、地球規模の環境問題である「気候変動」にも大きな影響を与えるでしょう。次の図はCO2の削減の有効な手法を示したものです。スウェーデンは国内のCO2を削減するためには、「原発」、「森林」、「排出量取引」には期待していませんが、この問題は国際的な問題ですので、EUのプログラムの中で「排出量取引」に参加しています。


これまで紹介してきた「エネルギー体系の転換」に合わせて行ってきた様々な試みが、 「CO2排出の抑制」「経済成長(GDPの成長)」の達成という日本が手本とすべき一つの方向性を示しています。




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緑の福祉国家28 エネルギー体系の転換⑦ 政府の2050年のエネルギー・シナリオ

2007-04-28 08:31:42 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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昨日ご紹介したスウェーデン電力研究所(ELFORSK)の2050年のエネルギー・ビジョンに加えて、1999年4月に公表された政府の報告書に提示されているエネルギー・シナリオというのがあります。

京都議定書が制定された97年を基準年とし、2050年のエネルギー供給とエネルギー需要を考慮した「省エネルギー・シナリオ」、「バイオマス・シナリオ」、「風力シナリオ」の三つのシナリオが描かれています。


①いずれのシナリオも、基準年である97年に比べて、エネルギーの供給および需要がともに大きく減っている のが特徴です。

②どのシナリオでも、水力は現状維持であり、原発はなく、化石燃料も大きく抑制されています。

③そして、注目してほしいことは再生可能エネルギーも大幅に見込まれているわけではないこと です。

つまり、再生可能エネルギーを増やして現在のエネルギー消費量を維持・拡大するのではなく、エネルギー消費量自体を減らすことが、シナリオの描き出す未来図なのです


加えて、エネルギー部門の2050年の環境目標も提示されています。




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緑の福祉国家27 エネルギー体系の転換⑥ 電力研究所の2050年のエネルギー・ビジョン 

2007-04-27 07:22:53 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1996年4月、スウェーデンの電力会社の研究機関である電力研究所(ELFORSK)は「スウェーデンの持続可能な発電システム 2050年のビジョン」と題する報告書を公表しました。

94年の電力消費量138TWh(実績)が2050年には130TWhになると想定し、この想定量をどのように供給するかを検討したものです。ビジョンに示された電力体系は原発への依存なしに化石燃料を最小限にして達成可能で、このシナリオに基づいてCO2、二酸化硫黄、窒素酸化物の削減の可能性も試算されています。






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緑の福祉国家26 エネルギー体系の転換⑤ 10年前の1996年の状況 

2007-04-26 07:03:48 | 市民連続講座:緑の福祉国家

 
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しかし、「世界で最も安全性の高いスウェーデンの原発を意図的に廃止し、水力発電も現在より増やさない」とするスウェーデンには、「原発や化石燃料を使用する火力発電は、緑の福祉国家の電源としてふさわしくない」という科学的判断に基づいた明確な政治的判断があります。

「緑の福祉国家」を支えるエネルギーの転換政策は、「1996年9月17日の首相の施政方針演説」を背景に、1997年および2002年6月に国会で承認されたエネルギー政策に基づくものです。 

そこで、1996年当時のスウェーデンの「エネルギー構成」と「エネルギー政策」の概要を確認しておきましょう。比較のために、日本の状況を添えておきます。 

日本の一次エネルギーに占める再生可能エネルギー(水力+自然エネルギー)の割合が5%弱であるのに対し、スウェーデンのその割合は30%強となっています。また、日本の発電の化石燃料の割合が53%であるのに対し、スウェーデンの発電の化石燃料の割合は5%です。

10年経った今、両国のエネルギー政策の結果を検証しますと、スウェーデンの転換政策が着実に進展しているのに対し、日本のエネルギー政策はガイドラインの②で破綻している ことがわかります。ここに掲げた目標「CO2排出量を1990年レベルに抑制」が現在では8%増となっています。


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緑の福祉国家25 エネルギー体系の転換④ 水力発電の新規拡張の禁止 

2007-04-25 08:26:11 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデン政府は国の脱原発を含むエネルギー転換政策のなかで、水量豊富な北部の未開発の4河川を電源開発(ダム開発)の対象にしていません。

日本原子力産業会議の招きで90年5月に来日したスウェーデン・エネルギー庁のハンス・ローデ長官は、東京で開催された「スウェーデンのエネルギー政策に関する講演会」で、「北部4河川の周辺環境は、スウェーデンのみならずヨーロッパ全体に残された自然という観点から保全されなければならない」と述べ、一国のエネルギー政策のために貴重な自然を破壊することは避けなければならないという認識を示しました。

この考えは、他国からの圧力によるものではなく、スウェーデン国民の自らの判断による選択であり決定だったのです。17年近く年経った現在でも、この考えは国民に支持されています。 

スウェーデンではバルセベック原発の2基を廃棄した時点で10基の原発(39%)と水力(55%)で電力の94%を供給していました。現在は原発の基数は10基で変わりませんが、原発の出力をあげて運転していますので、原子力と水力の割合がやや変動してそれぞれ45%、50%程度になっています。

一次エネルギーの30%強が再生可能エネルギー(水力、バイオマス、風力など)で、再生可能なエネルギーによるいっそうのエネルギー体系の転換が図られています。

次の図は10年以上前のデータですが、スウェーデンに関する限りは現在と変わりません。このデータは、当時、東京電力の副社長(原子力担当)の加納時男さん(現参議院議員)が1995年9月にロンドンで講演したときに使われたデータです。スウェーデンの電源構成が他の先進工業国と大きく異なっていることがおわかりいただけると思います。合計の数字が100に満たない部分が化石燃料による火力発電と考えてよいでしょう


地球温暖化防止対策や酸性雨対策のために、「CO2や二酸化硫黄、窒素酸化物を出さない発電システム(発電燃料に占める非化石燃料率が高い発電システム)」という日本の判断基準ではスウェーデンの発電システムは理想的な発電システムといえるでしょう。



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緑の福祉国家24 エネルギー体系の転換③ GDPと一次エネルギー消費のデカップリング

2007-04-24 11:26:30 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンのエネルギー体系の転換プログラムは1980年3月の「原発に関する国民投票の結果」とそれに基づく同年6月の国会決議にさかのぼります。この時の転換プログラムは冷戦体制下における福祉国家スウェーデンが「脱原発をめざす一国だけのエネルギー政策」で、昨日のブログで書いたように、政治主導の段階的廃止計画でした。

しかし、緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)を支えるエネルギーの転換政策は「緑の福祉国家の実現」というビジョンを掲げた1996年9月17日のぺーション首相の施政方針演説に基づき策定され、1997年および2002年6月に国会で承認されたエネルギー政策に基づくものです


★電力開発の変遷

脱原発政策は国の「現在の電力状況」および「将来の社会のあり方」に直結します。そこで、スウェーデンの考え方を知る上で電力開発の変遷を概観します。次の図は電力開発の推進力の変遷をまとめたものです。1990年以前とそれ以降の推進力に大きな相違があることがおわかりいただけるでしょう。


次の図は前図に示した電力開発の推進力の変遷に合わせて、行われてきた「エネルギー分野の環境への配慮」をまとめたものです。ここでも日本のエネルギー分野の環境への配慮と大きな相違があることがおわかりいただけるでしょう。

ここで重要なのは「④エネルギーの総需給量の圧縮」です。その結果、上の図にも書かれていますように、最終エネルギー消費は1970年から97年までの27年間ほとんど横ばいでした。この間、GDPは着実に成長しています。


★「GDP」と「一次エネルギー消費」のデカップリング

下の図は「GDP」と90年代の好調なスウェーデン経済を支えた「最終エネルギー消費」の推移の関係を示しています。

この図はスウェーデン統計局が作成し、公表した図です。1996年までしか表示されていませんが、スウェーデンエネルギー庁の資料で足りない部分を補えば、最終エネルギー消費の部門別割合は産業部門では70年の41%から2000年の39%へ減り、民生部門では44%から36%へ減りましたが、運輸部門は15%から23%に増えました。

ここに、「GDP」と「一次エネルギー消費」のデカップリングの実現の兆候を見ることが出来ます。これらの事実は「経済」と「環境」はトレード・オフの関係にあるとするこれまでの通説が必ずしも正しい説ではないことを示唆するものです。
 
このことは、スウェーデンの将来のエネルギー政策を考えるうえで重要です。スウェーデンのエネルギー政策に対する論理は明快です。21世紀にめざすべき「緑の福祉国家」は、現在の市場経済システムを維持・拡大する方向にはあり得ないので、現在の市場経済システムを支えている原子力や化石燃料は「緑の福祉国家」を支えるエネルギー体系にはふさわしくないというものです。



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緑の福祉国家23 エネルギー体系の転換② 原発廃棄 「政治主導」から「電力会社主導」へ

2007-04-23 04:32:02 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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2002年3月15日、スウェーデン政府は新たなエネルギー政策を発表しました。このなかで、原発の段階的廃止をめぐって新しい考え方が提案されました。これまでの政治主導による原発の段階的廃止ではなく、政府が電力会社と交渉・契約し、電力会社に市場原理に即した自由な形で原発廃止を促進させる方法です。

この方法では、原発を保有する電力会社がそれぞれ、政府と交渉し、原発による発電総量(限度)を決め、その範囲で電力会社が自主的に廃止ペースと原子炉の廃止順序を決め、原発を段階的に廃止していくことになります。政府と契約した原発の発電総量に達した時点で、原発による発電を停止して、原子炉を廃止します。

この方法には、原発廃止の最終期限がわからないという難点はありますが、政府や国民にとっては、原子炉廃止にともなう巨額の賠償金の支払いが不要になること、電力会社にとっては政治的に不安な要素が少なくなる、という利点があります。
 
1979年の米国スリーマイル島原発事故を契機に、80年3月の「原子力に関する国民投票」の結果と、それに基づく同年6月の「国会決議」に端を発したスウェーデンの「原発の段階的廃止計画」は、今回の新方針により事実上「政治主導」から「電力会社主導」に変わったことになります。

政治主導の段階的廃止計画は、冷戦体制下における福祉国家スウェーデンの一国だけのエネルギー政策でしたが、この20年間に国際情勢は一変しました。スウェーデンは1995年1月1日にEUに加盟し、97年には「電力自由化のEU指令」が発効しました。その結果、電力自由化が進展して、電力市場や電力網は拡大し、もはや一国のエネルギー政策を一国の事情だけでは決定できないほど、国際情勢は変わってしまったのです。

原発の段階的廃止計画の「政治主導」から「電力会社主導」への転換は、国際社会の潮流の大変化という現実を背景とした、スウェーデンの現実的な新たな政策の進展といえるでしょう。



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緑の福祉国家22 エネルギー体系の転換① 原発を新設しない・脱石油

2007-04-22 07:17:15 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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一昨日再開した「市民連続講座 スウェーデンの挑戦:緑の福祉国家」シリーズは2月6日以来、2ヶ月半以上中断後の再開ですので、この講座に途中から参加した方々には再開を始めたテーマの位置づけがおわかりにならないかも知れません。

そこで、このシリーズのテーマの位置づけをはっきりさせるために、1月21のブログ「緑の福祉国家11 緑の福祉国家を実現するための主な転換政策」 に掲げた図を再掲します。


一昨日、昨日のブログのテーマはこの図の「(3)税制の改革:課税対象の転換」に相当します。ですから、今日のテーマは「(4)エネルギー体系の転換:原発を新設しない・脱石油」です。そして、今後(5)~(8)のテーマを順次検証していきます。なお、「(1)地球温暖化防止への対応(国際的な対応)」「(2)オゾン層保護への対応(国際的対応)」はすでに検証済みです。

さて、それでは今日のテーマ「エネルギー体系の転換:原発を新設しない・脱石油」に入ります。

国内政策のなかでとくに重要なのは、エネルギー体系を転換する政策です。エネルギー体系が変わることにより、技術体系が変わってくるからです。
 
1980年6月、スウェーデン国会は、同年3月に実施された国民投票で過半数を占めた、建設中の原子炉を含む12基すべてを使用するという結果を踏まえて、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という国会決議を行ないました。
 
その後、紆余曲折を経て、1997年6月10日に国会で承認された「1997年のエネルギー政策」で、2010年までにすべての原発を廃棄するという最終期限は公式に撤廃されましたが、12基の原子炉すべてを段階的に廃止するという国会決議は、現在でも堅持されています。
 
このことは、2005年7月22日にアップデートされた持続可能な開発省のホームページの「エネルギー政策」の項で、「原子力は計画された方法で責任を持って段階的に廃棄されなければならない」と記されていることからも明らかです。

1999年11月30日にバルセベック原発の1号機(出力約60万キロワット)が閉鎖されました。政治的な判断で、順調に稼動している民間の原発を廃炉としたのは、世界で初めてのケースです。バルセベック原発1号機の閉鎖後の12月29日、ABB社(すぐれた原発技術を有するスウェーデンの原発会社ASEA・ATOM社を買収した)は、すべての原発関連事業を英国の原発技術会社BNFLに売却することを決めたと発表しました。
 
2005年5月31日、バルセベック原発2号機(出力約60万キロワット)が閉鎖のために停止されました。これにより、シードクラフト社の保有する原発はなくなりました。

スウェーデンの脱原発政策を理解するのに、4月10日から始めたシリーズ「原発を考える」 が参考になるでしょう。



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緑の福祉国家21 税制の改革 ② バッズ課税・グッズ減税の原則

2007-04-21 10:25:58 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンは、1990年の税制構造改革(税制のグリーン化)で、課税対象の転換の第一歩を踏み出した、ヨーロッパ初の国(世界初の国)となりました。

この税制構造改革で、

①二酸化炭素税(CO2税):1991年1月1日施行
②二酸化硫黄の排出税:  1991年1月1日施行
③窒素酸化物の排出税:  1991年1月1日施行 

が新たに導入され、所得税率と法人税率が引き下げられました。その結果、スウェーデンの法人税率は、次の図に示したように、経済協力開発機構(OECD)加盟29カ国中、最低(1999年時点で28%、日本は40%台)となっています。 



20世紀には、ほとんどすべての国が「個人の労働による所得」に対して所得税を、「企業活動による所得」に対して法人税をかけてきました。このことは、繰り返し述べてきた、 「日常の経済活動が環境問題の主な原因である」という事実からすれば、環境破壊によって得た利益に対して、所得税や法人税をかけていたことになります。

このような現実を直視し、スウェーデンでは21世紀最大の問題である環境問題の解決への有効な「社会科学的な対応」の一つとして、「課税対象の転換」が真剣に検討されてきました。20世紀はグッズ(労働など「良いもの」)への課税で国家財政がまかなわれてきましたが、21世紀にはバッズ(汚染物質の排出行為など「悪いもの」)へ、課税対象をシフトしようとするものです。これは「バッズ課税・グッズ減税の原則」と呼ばれています。
 
課税対象の転換は、21世紀の税制を先取りする新しい試みとして期待されています。税制構造の変革は、産業界をエコロジカルで持続可能な開発へ向かわせる原動力となる可能性を秘めているからです。

つい最近まで、政府税制調査会長を務められた一橋大学学長・石弘光さんは、「環境経済・政策学会 年報第9号 環境税」(東洋経済新報社 2004年12月28日)で、北欧型の環境税を、次のように評価しておられます。




ちなみに、日本の環境税導入の議論は結果的には、いまだに90年代とあまり変わらない議論を続けているようです。3日前の日本経済新聞が次のように報じています。




日本の困った問題は、90年代に比べて、二酸化炭素の排出量が大幅に増加したという現実があり、この1ヶ月の間にIPCCが地球温暖化に関する最新の厳しい報告書を発表した現在でもなお、議論が審議会の委員の間で対立していることです。環境税導入を巡っては、日本とスウェーデンの間には16年の落差があります。

大変な事実を目の前にしてもいまなお、好ましいと考えられる対応策が審議会の委員の間で合意できないのは委員の資質もあるでしょうが、強固な縦割り行政と組織の論理が常に優先し、ものごとの本質への対応が少なく、現象面への対応が多い日本の伝統的な手法に問題があるのではないでしょうか。

日本の経済学者やエコノミスト、政治家の多く、それに政策担当者は、現行の税制のもとで「景気が回復すれば、税収(法人税/所得税)が上がり、財政が好転する」と考えていますし、企業経営者の多くは「景気が回復すれば、環境保全への投資を増やす」と考えているようです。

しかし、日本のこの考えは20世紀の考えそのままで環境問題の本質を考えると、このようの考えを早急に改める必要があると思います。 

 

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緑の福祉国家20  税制の改革① 課税対象の転換へ

2007-04-20 21:18:03 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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「市民連続講座 スウェーデンの新たな挑戦:緑の福祉国家」シリーズは2月6日の「緑の福祉国家19 オゾン層の保護への対応 ②」 以来、2ヶ月半以上にわたって中断していましたが、今日から再開します。今日のテーマは緑の福祉国家(エコロジカルに持続可能な社会)に向けた「税制改革:課税対象の転換」です。

スウェーデンは、日本や米国のような直接税中心の国ではありません。むしろ、税収の多くは付加価値税(日本で言う消費税)などの間接税によるもので、国税としての所得税は、一部の高額所得者にだけ単一税率(95年に20%から25%へ)で課税しているにすぎない「間接税国家」です。
 


★付加価値税(日本で言う消費税)

スウェーデンの付加価値税は、次の図に示したように、1960年に「取引高税」として4.2%の税率で導入され、90年には25%(食料品は12%、書籍は6%、このほか医薬品などには軽減税率が適用され、住宅は非課税)で世界最高水準となり、現在に至っています。



★1990年の税制構造改革

1990年6月、スウェーデンの国会で、税制改革法案が可決されました。この法案は92年のEC統合(実際には95年にEU加盟)を意識しながら、これまでに築き上げてきた「高度福祉国家」を21世紀に向けて立て直すことをめざす画期的なものでした。

新しく成立した新法では、全体の約85%にあたる年収18万クローナ(当時は1クローナ約25円、約450万円相当)未満の国民には、所得税として30%の「地方所得税」だけが課税されるものでした。それ以上の収入のある「高額所得者」は、これに加えて20%の国税を払うことになりました。法人税は52%から30%に減税されました。


★その後の増税

スウェーデンは財政再建のために、「歳出の削減」と「増税」を実施しました。歳出の削減と同時に、景気回復のために経費の中身を次の4分野に大きく転換させました。

①教育への投資
②IT(情報技術)インフラの整備
③環境政策
④強い福祉

そして、増税です。スウェーデンの所得税は大多数(全体の約85%)の国民が納税する「地方所得税」と高額所得者が納税する「国の所得税」からなっています。95年から「地方所得税」の税率は30%+200クローナと若干増税され、高額所得者に課税される「国の所得税」の税率は20%から25%に引き上げられました。

この政策が実り、2000年以降、スウェーデンは好調な経済を背景に、上記の4つの分野でめざましい進展を遂げました。その成果は国際機関が公表する様々な分野の国際ランキングでトップ5に入っています。


★高い税金に対する国民意識

日本では、スウェーデンの福祉政策は「高福祉高負担」として知られていますが、スウェーデンでは、高い税金はすべて国民に還元されるのが当然と考えられており、福祉や医療だけでなく、義務教育から高校、大学、成人学校に至るまで教育費もすべて無料で、落ちこぼれても一生涯でやり直しがきく教育体制が原則となっています。

そのせいだと思いますが、国民にアンケート調査を行ってみると、税金が安くなるよりも医療・福祉・教育システムが整備されている方がよいという回答がえられるのです。

ちょっと古い資料で、しかも字が小さくて恐縮ですが、日本の電通総研・余暇開発センター編「世界23カ国 価値感データブック」(同友館 1999年10月発行)の中に、「増税容認」と「もし仮に戦争が起こったら、国のために戦うか」という問に対する回答があります。いずれの回答でも、スウェーデンと日本の位置が対極にあることが示唆されていて興味深いと思いました。



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