財部剣人の館「マーメイド クロニクルズ 第三部」配信中!「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中「第二部 完結」

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第2章-3 ヤヌスの鏡と3人の魔王

2018-02-26 05:02:17 | 私が作家・芸術家・芸人

 バキーン!
 巨大な骨が割れたような、銃弾でも発射したような音がしてヤヌスの鏡に禍々しい魔界の扉が映し出された。その文様は、まるで双頭の蛇がとぐろを巻いたようにも、三首の龍がのたうち回るようにも見える。
 中心には、髑髏顔の魔人たちのうごめく姿が映し出されている。
         
     

 怨み、ねたみ、そねみ、憤怒、自惚れ、嫉妬、誰にでもある感情の数々。
 そうした暗い感情は、見るものを虜にする妖しい魅力も持っていた。
 暗い感情は自らにぶつけられれば最悪だが、いったんその闇に取り込まれてしまえば甘美で無限の暗い力を与えた。
 心の闇にとらわれその闇に落ちた、かつては人間だったものたちがうごめく空間。他者に災いを為し、光が進むことを嫌うものたちの住む空間。
 かつての大魔王サタンが支配していた時代の「力がすべて」は終わりを告げ、今や魔界は支配者の地位を狙うものたちの権謀術数うずまく世界となっていた。

 魔界の支配者たちが鏡に映し出された扉の向こうに現れた。
(ユピテルよ。何千年振りか、顔を合わせるのは?)「支配を望むもの」名なき魔王が地底から伝わってくる思念を発する。誰も信用できぬ魔界では、呪いをかけられぬために高位になればなるほど真の名を隠す。漆黒のマントに顔が隠れてその表情はうかがい知れない。
(名なき魔王よ。今、我らが顔を会わすまで六千六百六十六の時が経っておる。)ユピテルは魔界の指導者と対峙しても動揺を示すことはない。
(再び顔を合わせる日が来ようとは、夢にも思わなんだわ)
(今回の事態。神界と魔界の意思疎通無しには、いかなることが起こるか誰にも見通せぬ。いや、いかなることが起こっているかも見えぬと呼ぶべきか?)

(・・・・・・)名なき魔王の側近「怒るもの」声なき魔王は、思念を発することが出来ない。声なき魔王は、天界との闘いでコミュニケーションを取るためのすべての術を失った。
 すべての生きとし生けるものに対する憎しみが、フツフツと伝わって来る。
 声なき魔王のおそろしさは、見当違いの怒りを溜め込んで一気に爆発させるところであった。まるで歩く火薬庫どころか、歩く核弾頭のような存在。
(非常事態に至った責任を、プルートゥ、どう落とし前をつける?)
 もう1人の側近「かくすもの」姿なき魔王の思念が冥主に向けられた。聞くものの精神を逆なでするような思念であり、思念を受けること自体が相手の気力を萎えさせる。
 姿なき魔王が、ここで「責任」という言葉を使ったのには説明がいる。マクミラたちが魔女たちと闘った時、冥界の軍師アストロラーベは「時空変容ミラージュの儀式」を執り行った。
 秘技は、闘いに666の時を与えたが一つ誤算があった。


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第三部闘龍孔明篇 第2章-2 3つの鏡

2018-02-23 00:58:59 | 私が作家・芸術家・芸人

 神々の世界に3枚の知られたる鏡あり。
 精神体がそのままの姿を取る神々の世界では、鏡はうわべを取り繕う化粧のためのものではなく、さまざまな秘術を行うための神聖な道具であった。
 第1番目の鏡が、浄玻璃(じょうはり)の鏡である。
 冥主プルートゥが管理しており、亡者の生前のすべての行いを映し出す鏡で過去の記録が蓄積されている。仏教では、閻魔大王によって嘘をついた亡者が動かぬ証拠を突きつけられて舌を引き抜かれる絵で知られる。
 第2番目の鏡が、月日貝の鏡である。
 海主ネプチュヌスが管理しており、月食の日にのみ未来を映し出す鏡だが、使うものの命を半分に縮めるためにめったに使用を許されない。月食の晩にロゼワインを月日貝の鏡にかざせば、人間に未来を見る望みをかなえてくれるという伝説があるが真偽のほどはさだかではない。
 今、大広間にあるのは第3番目の鏡である。
 天主ユピテルが管理し、通常、オリンポス神殿に仕舞われているヤヌスの鏡は、前後を見通す二つの顔を持つ守護神ヤヌスの名にちなんでいる。彼の守る門の扉は、平時には閉ざされており戦時にのみ開かれるのが慣習である。同時に、ヤヌスの鏡は天界と魔界をつなぎコミュニケーションを取ることができる通信装置でもあった。
 だが、それはとてつもなく危険な行いであった。

 ヤヌスの鏡の右に、海主ネプチュヌスが水球体の中に鎮座する。気のせいか、顔色が青ざめて見える。
 隣には、海神界最高位の神官アフロンディーヌが控える。美の女神の名を与えられた、天界、海神界、冥界を通じて最高の美女とたたえられた顔は、例によってベールに隠れて見えない。
 左には冥主プルートゥが、半透明の暗黒の球体中に鎮座する。いつもの不敵な顔が、こころなしか緊張して見える。
 隣には、冥界の貴公子の渾名を持つ冥界最高のネクロマンサーであり、軍師でもあるアストロラーベが控える。
 ユピテルが、会議の開始を伝えた。
(皆の者、これより魔界との相談ごとを開始する)思念と同時に激しい雷鳴が天界中に響き渡る。(ヤヌスよ、魔界につながる扉を映し出すがよい)
 ヤヌスが、うなずくと扉を開く呪文を唱え始める。
          
         

 太古からの約束事
 神界と魔界の禁断の扉
 一度開けば神界のすべての理を流しさるやもしれぬ扉
 一度つながれば魔界のすべての闇を輝かすやもしれぬ扉
 天主ユピテル、海主ネプチュヌス、冥主プルートゥの求めにより
 あえてのぞくことを今、願うなり
 魔界の支配者たちよ
 我が呼びかけに応じて
 ヤヌスの鏡に禁断の扉をしばし映し出したまえ
 神界と魔界の支配と破滅の諍い(いさかい)をしばし忘れたまえ
 神界と魔界の禁断の扉を開きかりそめに我らに語らう機会を与えたまえ


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第三部闘龍孔明篇 第2章-1 四次元空間エリュシオンのゆがみ

2018-02-20 09:04:24 | 私が作家・芸術家・芸人

 太陽に遠く映るその影が黒点として知られる四次元空間エリュシオン。
 ここは「光の眷属」でなければ、瞬時に蒸発してしまいかねない光と灼熱の空間。その空間にゆがみが生じ始めていた。
 エリュシオンのゆがみは光のパワーのゆがみ。それは、いやおうなしに光と闇のパワーバランスのくずれを意味していた。
 いつもならのんびり飛び回る極楽鳥の錦鶏鳥と銀鶏鳥が、ただならぬ雰囲気を感じて宿り木から離れようとしない。

          

 大広間で、「天翔るもの」ユピテルが怒りのオーラを発散していた。
 うっかり近づこうものなら、ユピテルを熟知した神官でも命の保障はない。
 黄金の光につつまれた全身から四方八方に発せられる雷鳴と稲妻こそ、ユピテルを最高神中の最高神ならしめている秘密。たとえ神々でもユピテルの電撃をまともに受ければ粉々に飛び散り、その存在は永久に失われる。
 それでも天界の親衛隊長で「継ぐもの」アポロニアは、ユピテルの隣でりりしい姿を見せている。
 海神界と冥界の最高神までが、「天翔るもの」ユピテルの支配するオリンポス神殿に呼びつけられていた。「揺るがすもの」海主ネプチュヌスは水を支配し、「裁くもの」冥主プルートゥは火を支配する。だが水は高熱を苦手とし、火は流水や氷を苦手にする。ネプチュヌスとプルートゥがそれぞれ弱点をかかえているのに対して、ユピテルの雷撃だけは業火をなぎ倒し流水を蹴散らす万能の兵器であった。

 天界の最高神たちが魔界の王たちと、数万年振りの相談ごとを始めていた。
 数億年にわたる争いを繰り広げた天界と魔界には休戦協定が結ばれており、特別な機会を除いては厳しく交流が禁じられていた。
 数千年前、大将軍“ドラクール”に率いられた冥界親衛隊に敗北を喫した魔界は、形の上では冥界の指揮下におかれることになった。
 しかし、魔界には一種の自治権が認められており、あくまで独立国の形態を取っていた。そのため、神界と魔界の最高指導者同士が会うことは容易でなく、万が一にも相手側に攻撃の口実を与えたり弱みを見せたりすることがあれば、新たな争いの誘因になりかねなかった。
 仮に天界と魔界が争えば、天主ユピテルと冥主プルートゥが争って地球滅亡の手前まで行った第一次神界大戦どころではない宇宙そのものの破滅の可能性さえあった。そのため、双方が相談事を持つときは直接に顔を合わせるのではなく、ある鏡の儀式が執り行われることになっていた。


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第三部序章と第1章のバックナンバー

2018-02-16 00:25:23 | 私が作家・芸術家・芸人

 財部剣人です! おかげ様で、前回で第三部第1章が終わりました。今、第6章まで書き上げて、第7章のエピソードも3つ書いたところです。だいだい第二部が第一部の1.5倍の長さなのですが、第三部は最終的に2倍くらいの長さになりそうです(^。^;)。

 なんとか週に2回アップのページは守っていきたいと思っているので、今後とも応援よろしくお願いいたします! 特に、ランキングサイトのバナーをクリックしていただけると励みになります。来週からは、第一部と第二部にもあったお約束の「神々のディベート」が始まります。どうか請うご期待!

「第三部闘龍孔明篇 序章」

「第1章−1 茨城のパワースポット・トライアングル」
「第1章−2 チャイニーズフリーメーソン 洪門」
「第1章−3 「海底」の秘密」
「第1章−4 アポロノミカンの予言
「第1章ー5 太古の龍」 
「第1章-6 神獣たちの闘い」
「第1章-7 龍神対孔明」
「第1章-8  龍が再び眠る時」
「第1章-9 精神世界へ紛れ込む魔性たち」


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 第一部と第二部がお読みになりたい方は、以下のリンクをクリックしてください。

  

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」

「第二部 第4章−1 ミシガン山中」
「第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス」
「第二部 第4章−3 不条理という条理」
「第二部 第4章−4 引き抜き」
「第二部 第4章−5 血の契りの儀式」
「第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン」
「第二部 第4章−7 走れマクミラ」
「第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕」
「第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ」

「第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱」
「第二部 第5章−2 全米ディベート選手権」
「第二部 第5章−3 トーミ」
「第二部 第5章−4 アイ・ディド・ナッシング」
「第二部 第5章−5 保守派とリベラル派の前提条件」
「第二部 第5章−6 保守派の言い分」
「第二部 第5章−7 データのマジック」
「第二部 第5章−8 何が善と悪を決めるのか」
「第二部 第5章−9 ユートピアとエデンの園」

「第二部 第6章−1 魔女軍団、ゾンビ−ランド襲来!」
「第二部 第6章−2 ミリタリー・アーティフィシャル・インテリジェンス(MAI)」
「第二部 第6章−3 リギスの唄」
「第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ」
「第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する」
「第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究」
「第二部 第6章−7 支配する側とされる側」
「第二部 第6章−8 プルートゥ、再降臨」
「第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ」
「第二部 第6章ー10 さかさまジョージからのファックス」

「第二部 第7章ー1 イヤー・オブ・ブリザード」
「第二部 第7章ー2 3年目のシーズン」
「第二部 第7章ー3 決勝ラウンド」
「第二部 第7章ー4 再会」
「第二部 第7章ー5 もうひとつの再会」
「第二部 第7章ー6 夏海と魔神スネール」
「第二部 第7章ー7 夏海の願い」
「第二部 第7章ー8 夏海とケネス」
「第二部 第7章ー9 男と女の勘違い」

「第二部 第8章ー1 魔女たちの二十四時」
「第二部 第8章ー2 レッスン会場の魔女たち」
「第二部 第8章ー3 ベリーダンスの歴史」
「第二部 第8章ー4 トミー、託児所を抜け出す」
「第二部 第8章ー5 ドルガとトミー」
「第二部 第8章ー6 キャストたち」
「第二部 第8章ー7 絡み合う運命」
「第二部 第8章ー8 格差社会−−上位1%とその他99%」
「第二部 第8章ー9 政治とは何か?」
「第二部 第8章ー10 民主主義という悲劇」

「第二部 第9章ー1 パフォーマンス開演迫る」
「第二部 第9章ー2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!」
「第二部 第9章ー3 太陽神と月の女神登場!」
「第二部 第9章ー4 奇妙な剣舞」
「第二部 第9章ー5 何かが変だ?」
「第二部 第9章ー6 回り舞台」
「第二部 第9章ー7 魔女たちの正体」
「第二部 第9章ー8 マクミラたちの作戦」
「第二部 第9章ー9 健忘症の堕天使」

「第二部 第10章ー1 魔女たちの目的」
「第二部 第10章ー2 人類は善か、悪か?」
「第二部 第10章ー3 軍師アストロラーベの策略」
「第二部 第10章ー4 メギリヌ対ナオミと・・・・・・」
「第二部 第10章ー5 最初の部屋」
「第二部 第10章ー6 ペンタグラム」
「第二部 第10章ー7 ナオミの復活」
「第二部 第10章ー8 返り討ち」
「第二部 第10章ー9 最悪の組み合わせ?」

「第二部 第11章ー1 鬼神シンガパウム」
「第二部 第11章ー2 氷天使メギリヌの告白」
「第二部 第11章ー3 最後の闘いの決着」
「第二部 第11章ー4 氷と水」
「第二部 第11章ー5 第二の部屋」
「第二部 第11章ー6 不死身の蛇姫ライム」
「第二部 第11章ー7 蛇姫ライムの告白」
「第二部 第11章ー8 さあ、奴らの罪を数えろ!」
「第二部 第11章ー9 ライムの受けた呪い」

「第二部 第12章ー1 ライムとスカルラーベの闘いの果て」
「第二部 第12章ー2 責任の神の娘」
「第二部 第12章ー3 リギスの戯れ唄」
「第二部 第12章ー4 唄にのせた真実」
「第二部 第12章ー5 アストロラーベの回想」
「第二部 第12章ー6 勝負開始」
「第二部 第12章ー7 逆襲、アストロラーベ!」
「第二部 第12章ー8 スーパー・バックドラフト」
「第二部 第12章ー9 さかさまジョージの魔術」

「第二部 最終章ー1 魔神スネール再臨」
「第二部 最終章ー2 ドルガのチョイスはトラジック?」
「第二部 最終章ー3 ナインライヴス」
「第二部 最終章ー4 ドルガの告白」
「第二部 最終章ー5 分離するダニエル」
「第二部 最終章ー6 ドルガの回想」
「第二部 最終章ー7 ドルガの提案」
「第二部 最終章ー8 ドルガの約束」
「第二部 最終章ー9 ドルガの最後?」

「第二部 エピローグ 神官マクミラの告白」


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第三部闘龍孔明篇 第1章-9 精神世界へ紛れ込む魔性たち

2018-02-13 02:35:38 | 私が作家・芸術家・芸人

(ついに昔年の怨みをはらす時が来たぞよ)結界を切り裂いたかぎ爪の持ち主、両性具有の魔性ビザードが思念を発した。
「虚無をかかえるもの」ビザードは、男も女もゾクゾクさせる美貌、たくましい体躯、そして敵の命を奪うのに瞬時も躊躇しない残忍さを持っていた。
 七色の虹を映す鎧には七通りの武器が隠されていると言われるが、行動を共にする魔性たちさえ、どのような武器なのかはわからない。
 魔界で、女たちから「虚無の王子」、男たちから「虚無の王女」と呼ばれた心の闇はいったい何処から来て何処に向かうのか。
 足下にはいつも側を離れぬ魔獣ドラゴムがからみついている。ヘラクレスに退治された9頭の水蛇ヒュードラと悪龍が交わって誕生した魔界最強の獣。一つの首を切り落とすと二つの首が生まれるため、めったなことでは殺せない。

(ようやく精神世界に抜け出したぞ)次に、魔界の秩序を乱し居場所がなくなったリーダー格の魔性「殲滅しつくすもの」ジェノサイダスが思念を発した。(魔界で受けた怨み、人間界を支配することではらしてやろうではないか)
 彼は、内に暗黒星雲を取り込んだ鎧に身を包む。鎧は、すべての攻撃を吸収し同じ攻撃を何万倍にも拡大して返すことができる。
 だが、真に恐ろしいのは見つめられたものを自由にあやつる魔眼であった。
 実力者を次々と籠絡し、あと一歩で絶対支配者の地位に手が届くところだったが魔王たちの返り討ちにあってこれまで逃走の旅を続けていた。

(精神世界なら我が庭のようなもの)「誘いをかけるもの」で夢魔の女王“ジル”・シュリリスが配下の黒不死鳥フェルミナの頭をなでながら、妖しい微笑を浮かべた。(魔界だけではなく天界にも一泡吹かせてやりましょう)
 シュリリスは、かつて男性の夢魔インキュバスと女性の夢魔サキュバスを束ねる立場であった。彼女自身、エロチックそのものを具現化した姿と言われるが、相手によってその理想の姿を取るために真の姿は誰にも分からない。いったんキレると相手を容赦なく切り裂くことで知られる。また、サキュバスが集めた夢精精子を使ってインキュバスは女性を妊娠させられる。そうして生まれた夢魔たちを配下に一大帝国の設立を目指しているとも言われる。

     

(まず、やることがある)ジェノサイダスが思念を発した。
(トリックスターとなりつつある魔神スネールの探索ですね)
 シュリリスが答える。
(スネールが取り込んだ狂気を、こちらに感じます)
 ビザードが答えると飛び立った。魔性二人が、それに続いた。


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第三部闘龍孔明篇 第1章-8  龍が再び眠る時

2018-02-09 11:11:57 | 私が作家・芸術家・芸人

 竜巻が過ぎ去った上空には、怒りのおさまった龍神が浮かんでいた。
(礼を言わねばならぬようだな)
「礼にはおよばない。逆鱗に触れられた痛みは知っている」
(やはり・・・・・・お主も地上に降りた龍であったか)
「この場は、これでおさめてくれるか?」青龍が話しかける。
(久しぶりに力を使って疲れたわい。また、長い眠りに戻るとしよう)
「ありがたい。もう二度と竜泉を刺激しないと約束しよう」
(老師よ。それだけではない)
「それだけではない?」
(この聖地の結界がゆるむだけの気の乱れが生じておる。おそらく魔界と精神界が短時間つながってしまったのじゃ)
「なんと・・・・・・」
(なぜ魔界と精神界がつながったかはわからぬが、これだけで済むとは思えぬ)
「忠告ありがたくいただいておく」
(さらばじゃ)
 龍神は雲中に姿を隠すと、一筋の落雷となって地中に戻ってしまった。

     

「さあ、屋敷に帰るとするか」人間の姿に戻った孔明たちに青龍が話しかけた。
「じいちゃん、今の話は・・・・・・」
「すべては屋敷に戻ってからじゃ。だが、しばらくは働いてもらうぞ」
「ヘッ?」
「見るがよい。自慢の屋敷がぼろぼろじゃ」
「でも、じいちゃん、この辺りは液状化現象で地盤がぐしゃぐしゃで・・・・・・」
「お兄ちゃ〜ん」
 その時、皆が見る方向に孔明の妹、眠眠の姿が現れた。

 魔界と精神世界が短時間だがつながってしまった理由は、1994年のクリスマスまでさかのぼる。
 精神世界におけるマクミラたちと魔女たちとの闘いが終わりを告げた時、アストロラーベが「時空変容ミラージュの儀式」を閉じる呪文を唱えた。

 大いなる時よ、再びその歩みを始めよ
 大いなる時よ、しばしの眠りを解き
 大いなる時よ、我らを元の世界に戻すがよい
 大いなる場よ、再びその動きを始めよ
 大いなる場よ、しばしの眠りを解き
 大いなる場よ、我らに人間界への帰還を許すがよい
 メギス、ライム、リギリヌ、アストロラーベ、スカルラーベ、マクミラ、ミスティラ、そしてすべての神界に所縁あるものたちよ
 いざ、我とともに人間界へ戻り行かん!

 彼は安心のあまり気づかなかった。
 儀式が終わる際、666分間のタイムリミットをコンマ6秒すぎたことに。そのわずかな瞬間、魔界と精神世界を隔てる隙間にするどいかぎ爪がのぞいた。閉じようとする結界が引き裂かれて、3人の魔性と2匹の魔獣が現れた。


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第三部闘龍孔明篇 第1章-7 龍神対孔明

2018-02-06 11:39:28 | 私が作家・芸術家・芸人

 チャックを飲み込んだ竜巻に土塊やなぎ倒された樹木や岩が吸い込まれて、銀狼どころかあっという間にドロネズミのようになってしまう。
 巨大な岩がチャックの頭にぶつかり、意識が薄れて行く。
 チャックを救おうと雷獣姿のビルがハリネズミ状になった背中から刺を発射するが、多重竜巻に守られた龍には一本も届かない。
 逆に、降り出したアラレや雹に恐れをなしてビルは丸くなってしまう。
「この龍は、俺が眠らせる!」
(人間よ、龍神に闘いを挑むとは百年早い)
「百年経ったら、俺はもう死んでる。お前は齢数万年のくせに、まるで子供のように寝起きの悪い悪龍ではないか」
 人間の姿のまま孔明が演舞を始めた。
 背中にあざやかな真紅の龍の入れ墨が浮き上がった。
 右手が振られると光りが生まれ、足をあげると虹が空気を切り裂いた。
 移動するにつれて、闘気が渦を巻きだした。
 ハッ〜〜!
 斬風拳の気合いと共に新たな渦巻きをチャックが巻き込まれている渦巻きに叩き込む。二つの渦がせめぎ合いを起こし勢いが変化して、チャックの身体が飛び出してくる。
「ビル、いつまでも丸くなってないでチャックを頼むぞ!」
 孔明の叫びを聞いてビルが飛び出して、全身の毛を寝かせてまるで羽毛ベッドのやわらかさでチャックを受け止めた。
 横目でチャックの安全を確認すると、孔明が龍神を睨みつけた。
 いまや龍神は、牙をむき全身からどす黒い怒りのオーラをまとっていた。

     

 龍が息を吸い込んだ次の瞬間、紅蓮の炎を吐き出した。
 竜巻火災の旋風がたちまち数個、孔明を取り囲んだ。
 火災旋風は、ぐんぐん迫って来る。
「なかなか楽しくなって来たな。ナオミと闘った時を思い出すぜ・・・・・・」
 だが、俺もあれから成長しているぜというセリフは噛み殺す。
 ハッ〜〜!
 孔明は気合いをかけると、十字に組んだ腕を左右に伸ばし掌で火災旋風を押さえ込む。
 一瞬、龍神が不思議そうに首を傾げた。
 ハッ〜〜!
 孔明が目を閉じながら、今度は火災旋風をつかむ仕草をした。
 次の瞬間、カッと見開いた。
「たまには自分で味わってみな」
 言うが早いか、火災旋風を龍神に叩き付けた。同じ作業を繰り返して、すべての火災旋風を叩き付ける。龍神は、自分が吹き出した炎に包まれて苦しみのたうちまった。
 黙って見ていた孔明が、左肩あたりに両手を組むと、再び気合いを入れた。
 ハッ〜〜!
 F5レベルの竜巻を発生させると、思いっきり上空の龍に向けて叩き付けた。
 周りにいた者が宙に浮き上がるほどの強烈な上昇気流が発生した。


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第三部闘龍孔明篇 第1章-6 神獣たちの闘い

2018-02-03 10:58:18 | 私が作家・芸術家・芸人

 地鳴りが収まると、突然、噴砂と噴水が地面のあちこちで始まった。続いて、多重竜巻が起こった。
 中心にスーパーセルと呼ばれる積乱雲が生じて、強い上昇気流と下降気流が生まれた。上昇気流領域では、下降気流層に乗り上げた暖かく湿った空気が上昇する。時に地上10から15キロにまで達する強力な上昇気流は、積乱雲の発生に必要であり、この過程で空気中の水蒸気が凝固して雲が生まれる。
 下降気流領域では、集中豪雨が降っている。雨は大気中で蒸発する時に気化熱を奪い下層を冷すと自身の重さで大気を押し下げるために、下流気流が増強される。激しいダウンバーストに伴い、強い雨が降り続けるだけでなくアラレや雹が降る。
 龍は、すべてをなぎ倒し上空に吹き上げる上昇気流とすべてを押し流す集中豪雨と、当たれば大けがをさせるアラレや雹をあやつれた。
 神獣たちの特訓がパワースポット内の竜泉を刺激して、龍を目覚めさせてしまったのだった。
「チャック、ビル、油断するな!」孔明が怒鳴った。
 次の瞬間、霞ヶ浦の水が竜巻によって数十メートルもわき上がった。
(我が眠りを覚ましたのは誰じゃ?)全員の頭の中に、雷鳴のような思念が響き渡った。(銀狼、雷獣、ほう、龍の血を引く者までいるか・・・・・・)
「眠りをさまたげたことはあやまる。この場は、この老体に免じて矛先をおさめてはくれぬか?」青龍が龍に語りかけた。
(ならぬ! 数千年間の我が眠りをやぶった報いを受けるがよい。奴らも力を試したくてウズウズしているようじゃ)
「ちょうどいい。龍相手にレインボー・スクラッチを試せるなんてめったにない」チャックが銀狼のままで言うが早いか、崖を駆け上がった。
 次の瞬間、七色の虹と化したチャックは、するどい爪で龍に襲いかかった。
 最初の一撃が、レッド・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、傷跡が切り裂かれる。
 第二撃が、オレンジ・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、傷跡が閉じなくなる。
 第三撃が、イエロー・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、全身がマヒする。
 第四撃が、グリーン・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、動けなくなる。
 第五撃が、ブルー・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、血潮が沸き上がる。
 第六撃が、インディゴ・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、出血が止まらなくなる。
 最後の一撃が、パープル・スクラッチ。
 引っ掻かれた相手は、血糊が吹き出す。

 七つの連続攻撃を受けた相手は全身の血を失って、シリウスの勝ちどきを薄れ行く意識の中で聞くことになる。だが、さすがのレインボー・スクラッチも龍の固い鱗にはじかれて傷一つつけられない。
 最後の一撃は、最悪の結果をもたらした。
 パープル・スクラッチが、「龍の逆鱗」に触れたのであった。
 中国の伝説では、龍は81枚の鱗を持つが(81は多くの数の象徴にすぎず)、実際には数千枚の鱗を持つ。龍はあごの下に逆向きの鱗が一枚だけ生えており、触れられると激怒すると言われている。
 数百の獣が同時に叫んだかのような声が上がった。
 充血した龍眼が銀狼を睨んだ瞬間、家さえ浮かべるF4レベルの竜巻に包まれて数十メートル上空に吸い上げられた。
     
     


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