財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!(再編集版)

2021-01-22 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 小さいトラブルはあったが、パフォーマンス・フェスティバルの準備は着々と整いつつあった。会場右側のバルコニー席には、ドワイトに招待されたマリア、ケネス、ナオミと幼なじみのケイティの四人が座っていた。
 マクミラが楽屋で竜延香の香りに気がつき、ナオミが客席で麝香の香りに気がつき、同時に言った。
「あいつの匂いがする」
 いやがおうにも緊張感が高まってきていた。
 ナオミが、パンフレットを開くとキャストの一覧表が目に入った。

   第一の魔女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ “ザムザ”
   第二の魔女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ “シェラザード”
   第三の魔女・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ “ユリア”
   マーメイド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 夏海・コパトーン
   太陽神コロナ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ダニエル・ラモント
   太陽神アストローネ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ヴォリネン・ザイキス
   太陽神スカラローネ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ヨキネン・ザイキス
   月の女神・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ “ティラミス”
   サソリの仮面・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ジョージ魔道
   冥界からの助っ人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ マクミラ・ヌーヴェルバーグ

 第一幕「明けの黄金色に輝く海は、海洋神ネプチュヌスの支配の始まりの刻」が始まった。最初の魔女役ザムザに取り付いたリギスが、扇状の翼イシスウィングを開いて登場した。イシスとは、古代エジプトの豊穣と受胎の女神の名である。暗い「太古の廃墟」(“Ancient Ruins”)をバックに、幻惑的なシミーを踊りだす。ベリーダンスの衣装は、裾の広がったフレアータイプだった。真紅のヘッドピース、トップス、アームス、パンツで統一している。他の女性ではケバケバしくなりそうなほどの飾りや腕輪をしているが、派手な顔立ちに相まって気にならない。それどころか、流れるように腕や指先、腰、首が動くのを見ていると女性客でもうっとりする。
 最初の曲が終わると、悩ましい声で次の曲をリギスが歌い始めた。

   明けの海は、黄金色に輝く
   だが、魔神に呪われた城は砂に埋もれたまま
   海主ネプチュヌスよ
   遙かかなたの氷の世界から来た我らは
   どうすればよいのか?
   都の城は、廃墟のままなのか?
   だが、海主は何も答えてはくれぬまま
   眠りについた魔神スネールよ
   望むものは何なのか?
   都の城は、何も答えてはくれぬまま

 次に、「オムオム」(“Om Om”)をバックに二人目の魔女役シェラザードに取り付いたライムが踊り出す。リーフスカートで決めている。エメラルド・スパンコールで統一されたブラとスカートが、動く度に燦めきを放つ。ライトがあたると、思わず観客からため息がもれる。頭を四方に垂らす度に髪飾りが妖艶にうねる。腰からお腹にかけては、見事なタトゥーが入っている。うごめく蛇にも見えるタトゥーが、左右の骨盤のあたりから胸に向かって入っている。元々、得意なアイソレーションが、そのせいで二重三重に魅力的になっている。器用にシミターと呼ばれる剣を、頭の上にのせたままで後ろに倒れると、今度はゆっくりと腹筋の力で起き上がる。
 実は、ライムのタトゥーは本物でなくボディ・ペインティングだった。ベリーダンサーは、普段から節制に節制を重ねて、身体の切れや肌の艶にいたるまで、つねにベスト・パフォーマンスを心がける。そのために、本物のタトゥーを入れて身体を「傷物」にすることは少ないし、ボディ・ペインティングを、その日の気分や曲に合わせて入れることがほとんどである。ダンサーによっては、ファッションでおへそにピアスを入れたりする。

          


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