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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第1章−4 アポロノミカンの予言

2018-01-27 02:59:58 | 私が作家・芸術家・芸人

「1853年7月14日深夜。白い仮面を被り黄色い服をまとった男が、反清朝軍の砦に現れた。砦中を覆った緑の霧のために他のメンバーは、すべて眠りこけていた。
 なんだ、そのふざけた面はと尋ねると男は『ミルク神だ。せっかく東洋に来たのだから、波照間島の豊穣祭の仮面をつけるのも一興であろう』と答えた。

          

 後で調べたところ、ミルクとは弥勒(ミロク)が沖縄でなまったもので釈迦入滅の56億7千万年後に現出し、釈迦が救済できなかった衆生を救う来訪仏と言われている。だが、儂の前に現れたのは地獄への使者だった。『かなうなら古の皇帝が持つ龍の力を手にし、明朝を倒し清朝を復活させる英雄になりたい』と言うと、『お主は、雌伏の時を過ごしておる。だが、登竜門をくぐったお主が黒社会の守護神として畏れられるか、人々の守り神としてあがめられるかは知らぬ。それでも、あえて龍の力を持つ存在になりたいか?』と尋ねられた。
『黒社会の守護神として畏れられようと、人々から守り神としてあがめられようと大義のためなら、我が身が龍の化身となろうとも後悔はせぬ』と答えた。パラケルススは、『たとえ龍の化身となろうとも、と答えたな。よいであろう。見るがよい、儂が海底で見つけたアポロノミカンを!』と言うが早いか一冊の本を開いた。
 その瞬間、頭の中に膨大な情報が流れ込み、気付いた時には叫び声を上げ続けていた。その後、仕事を為す度に儂は人々の眼前をゆうゆうと移動する海龍となった。
 幻視の中では、自分自身が、見事なたてがみ、背びれ、鱗を持つ龍に見えた。
 落ち着きを称えたブラウンの瞳とは裏腹に数本の角と爪はするどくとがり、掌中には龍の王族が持つ御霊があった。だが、人々は儂を『凶風』と呼んで畏れた。なぜなら儂に狙われた要人は、一陣の風に襲われたように命を失ったからだ。我が両腕は、血塗られておる」
 黒龍は、ゆっくりと視線を落とした。その眉間には、ナイフで刻み込まれたような深い皺があった。
「大義を信じ、法よりも人の道理よりも組織の論理を優先してきたが、気付いてみれば賭博、売春、アヘンによって人々を苦しめる巨大黒組織を生み出し大幹部としてその中心にいる。お前はまだ犯罪に手を染めてはおらん。これから言う事を覚えておくがよい」
「お待ちください。父上の手が汚れているのなら、我の手も生まれ落ちた時より汚れているのではないですか。お側で、これからも父上のお役に立ちたいと考えております」
「師に対してバカなことを言うではない。大義が失われ、存続自体が目的化した黒組織など、汗水たらして働く堅気の血を吸って生き続ける怪物そのもの。そんな組織から抜けられなくなった儂の二の舞を踏むではない。『チョイス・イズ・トラジック』という言葉を覚えておくがよい。一度おこなった選択は、けっして取り消せないという意味だ。よいか、儂は自分なりにアポロノミカンについて調べてみた。そして、ついに我が一族に関する予言を見つけたのだ」

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