財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−5 ルールは変わる(再編集版)

2020-06-29 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 未だ何人も訪れたことがなく、今後も誰も訪れないであろう西インド諸島とアゾレス諸島の狭間、インド洋「バミューダトライアングル」。  
 その2万里を越える海底に、四次元空間につながる海主ネプチュヌスの城がある。
きらめく宝石のように飾り立てられた100の部屋は、マーメイド、マーライオン、セイレーンなど、海主の眷属たちの住処。陽の光さえ届かぬ深海底にひっそりとたたずむ城の回りでは、赤、青、黄、緑、オレンジにかがやく魚、エイ、鮫たちが泳ぐ。
 水龍とマーライオンが戦う姿が描かれた広間では、青みがかった白銀の髪をなでるネプチュヌスが黙りこくっている。
 彼のマリンブルーの眉毛がわずかな海流に揺れた時、ネプチュヌスが思念を発した。(一同のもの、面をあげよ)
 海神界の親衛隊長シンガパウムの一族が、呼び寄せられていた。
「忠義をつくすもの」でマーライオンの勇者シンガパウムと、「うらなうもの」でとびきりの英知に恵まれた今は亡きマーメイドの妻ユーカの娘たちを神々の中で知らぬものはいない。
 長女アフロンディーヌは、祖母や母の後を次いで最高位の巫女。
 天主ユピテルの玄孫ムーに嫁いだ次女アレギザンダーは、セイレーン3姉妹にもおとらない美しい歌声を持ったマーメイド。
 海主ネプチュヌスの玄孫レムリアに嫁いだ3女ジュリアは、気象をあやつりシンガパウムと共にマーメイドながらネプチュヌスの親衛隊員。
 冥主プルートゥの玄孫アトランチスに嫁いだ4女サラは、やさしい性格。
 姉妹の内、5女ノーマだけがこれまで人間界に行き、不幸な晩年をおくったと言われている。本来なら、この場にいるはずの末娘ナオミは、すでに人間界に送り込まれており姿がない。
 中央に呼び出された親衛隊長シンガパウム、巫女アフロンディーヌ、祖母トーミが朝焼けの光をはらんだ豪奢な色のドレスを着てひざまずいていた。他の姉たちも、その後ろにかしこまっている。
(今宵の話は、人間界に行ったナオミについてではない。だが、まんざら関係ない話でもない。ドルガ、メギリヌ、ライム、リギスの四人が脱獄した。目的は、マクミラへの復讐じゃ)
 ネプチュヌスが、トーミに顔を向けた。
(四人は、早晩必ずトラブルを起こす。さすれば、ナオミはトラブルに引き寄せられていく)
 トーミが、慎重に思念を送り返す。(ゲームのルールはどうなりますのじゃ? 四人は、ゲームとは直接の関わり合いはないはずでは)
(そこに思い当たるとは、さすがじゃな。最高神の議論の結果、海神界と天界からは助太刀は送らぬことになった。助太刀を送れるのは冥界だけじゃ。ただし・・・・・・)


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹(再編集版)

2020-06-26 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 だが、ここでも我の愛への呪いは生きていた。マクミラは、まるで我のイヤな部分だけを受け継いだかのような冷たい、だが美しい娘に成長した。ミスティラは、まるでひた隠しにしてきた我の弱い部分だけを受け継いだかのような、だがやさしい娘に成長した。
 マクミラとミスティラを見ていると、自分のイヤな部分を見せつけられているようで、どうしても愛することができなった。
 アストロラーベとお主は、ずっと不思議に思っていたであろう。
 なぜお主たちが人間界から来た父の証である、とがった犬歯を持たぬか。
 その理由は、お主たちが行方不明となったコロネウロス様以外いないと思われていた最高神プルートゥ様の息子であるからじゃ! いつもアストロラーベが帽子を目深にかぶっているのも、とがった犬歯がないことを見られぬため。骸骨顔のお主の場合は、しみじみ顔を見られることもなかったので誰にも気づかれなかった。
 マクミラとミスティラは、ずっと不思議に思っていたであろう。
 なぜ兄たちが無事にうまれながら、妹たちが生まれ出る時にだけ、マクミラがサラマンダーの巣の炎を引き受けて盲目にならねばならなかったのか。
 その理由は、マクミラとミスティラは父が人間界から来たものであったために、完全な神の身体を持つお主たちのように炎に耐えることができなかったのじゃ! 冥界最高位の神官であるマクミラはすべてを見通しているはずじゃ。だが、愚痴一つこぼさぬマクミラに不憫さを感じながらも、この母は愛することができなかった!
 最後に言っておく、スカルラーベよ。
 愛はうまくいっているときには、これ以上ない幸せを与える。
 だが神々でさえ、一度手に入れた愛を失えば、死体にとりすがって泣き叫ぶあわれな人間になってしまう。
 我がお主に言えるのは、ひとつだけじゃ。
 いつかお主にも愛を知って欲しい・・・・・・
 我は、愛を呪ったために愛の女神より呪いを受けた。
 もしもお主に愛する相手が見つかれば、呪いはとけるやも知れぬ)
 思念を発した後、千年以上も生きたスカルラーベの記憶の中でたった一度だけローラがひしと抱きしめてくれた。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−3 閻魔帳(再編集版)

2020-06-22 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

          

 まだプルートゥ様への未練は断ち切れなかったが、人間界から来たとは思えぬオーラになぜか惹きつけられた。大将軍殿と思念を交わすようになって、秘密はアポロノミカンのせいとわかった。「串刺し公」と呼ばれたほどの情け容赦もない戦歴は、本来、無間地獄に落ちるほどの罪状にもかかわらず、同時に人民のために一片の私心も持たずに治世を行った大将軍殿はミノスにも審判不可能であったのじゃ。
 閻魔帳には、“ドラクール”ことヴラド・ツェペシュは冥界にて魔族たちと戦うべしと書かれていた。その時は、まさか将来、我と婚姻の議を執り行うことや親衛隊の大将軍にまで出世すると予測したものは誰もおらなんだ。
 だが、話はそれだけではなかった。
 プルートゥ様が略奪婚によってペルセポネと契りをむすんだ時、我はすでにお主たち兄弟の卵を産んでいたのじゃ! サラマンダーの卵は、数十年から数百年の時を経てかえることが多い。大将軍殿と婚姻の議をむすんでから生まれたお主たちを、まさか大将軍殿以外の子であると疑うものは誰もおらなんだ。
 アストロラーベは、まるで恋いこがれ愛したころのプルートゥ様の魅力的なところだけを取り出したような美丈夫の神に生まれついた。
 スカルラーベよ・・・・・・お主は、まるで兄とは似ても似つかぬ姿に、がさつだが強靱な神に生まれついた。
 だが、プラスとマイナスの磁力のようにプルートゥ様の面影を持つお主たちを・・・・・・裏切られたはずの相手の面影を持つお主たちを我は溺愛したのじゃ。
 そうと知りながら、大将軍殿は何も言わずまるで本当の息子のようにお主たちをきびしく、だが愛情を持って育ててくれた。
 大将軍殿とは、数千年にわたって冥界にやって来た悪魔ども退治をおこなった。最初は二人で。その内にお主たち兄弟と。最後には、我はより才にめぐまれたマクミラに道をゆずった。
 そうじゃ。
 マクミラとミスティラの父だけが大将軍殿なのじゃ。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−2 ローラの告白(再編集版)

2020-06-19 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

          

(母と大将軍殿(註、ヴラド・ツェペシュはかつて冥界の大将軍)以外、誰も知らぬことじゃが、兄弟姉妹で一番不幸な将軍には知る権利があるやも知れぬ。これから言うことは他言無用。愛に「呪い」をかけたのは、我じゃ。我の「燃やし尽くすもの」という名は、サラマンダーの女王だからなのではない。愛を燃やし尽くす定めゆえについた名なのじゃ)ローラは遠くを見る目つきをして続けた。(あれは数千年の昔。我はプルートゥ様の寵愛を受け有頂天であった。サラマンダーの女王から冥界の王妃へ! これ以上ない夢を見ていた。だがプルートゥ様は我を捨てて、あの美しいがおとなしいだけが取り柄のペルセポネを選ばれた。我は呪った。我が君を、我が運命を、そして愛のすべてを。
 その後、大将軍殿と婚姻の議をおこなったのは、あてつけ婚だったのじゃ・・・・・・)
(あてつけ婚?)
(愛を知らぬお主には、わからぬか・・・・・・いや、あてつけなどは女にあっても、男にはないものか。終わった愛にこだわり続けることができるのが男なら、まだ愛する相手がありながら別の相手と恋することができるのが女というもの。誇り高きサラマンダーの女王が、人間界から来た大将軍殿を選んだ理由はもうプルートゥ様に未練などないと自分自身と周りに示すためでもあったのじゃ。
 あれは、大将軍殿が冥界に来た日であった。
 人間界から冥界に来た魂は、ミノス、ラダマンティス、アイアコスの審判を受ける。アジアから来た魂はラダマンティス、ヨーロッパから来た魂はアイアコスの審判を受ける。そして彼らが審判を下せない時は、ミノスの出番となる。
 ワラキアから来た大将軍殿にアイアコスは判決を下せなかった。
 そこで、ミノスの審判を受けることになった。人間界での罪が重ければ重いほど、ミノスの尻尾によって何重にも身体がからまれてそれだけ深い地獄に落ちる。だが大将軍殿の身体には何度試しても、ミノスの尻尾はからむどころかはじき飛ばされるだけであった。
 ミノスは、途方に暮れて火の川ピュリプレゲドンの中にいた我に相談した。普段は「プルートゥ様の市(まち)」の建物の劫火の番をしていたが、その頃の我はプルートゥ様に裏切られたショックで市をさまよっていることが多かった。怪物メデゥーサと出くわさないようにだけは注意していたが・・・・・・
 ミノスは、プルートゥ様の閻魔帳を見せてもらえるよう頼んできた。
 その前に、気まぐれから我はミノスの尻尾をはじく魂を見てみることにした。
 一目見た時、大将軍殿の偉丈夫ぶりに惚れ込んだ。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第3章−1 スカルラーベの回想(再編集版)

2020-06-15 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人


 スカルラーベがおそれながらと名乗り出る。(お待ちください。今度こそ私にも機会をお与えください)筋骨隆々とした体躯がふるえている。
(お前もか?)プルートゥが応じる。(魔女たちの力を考えればアストロラーベが加勢しても必ず勝てるとは限らぬ。よし、短気を直す修行をしてまいれ。ただし、お主らがマクミラとミスティラを助けられるのは人間界時間で三ヶ月とする)
 スカルラーベは、なんとしても人間界に行かねばと感じていた。「愛」の名の下に決定がなされた以上、己が眷属にかけられた呪いをとくためにも。

 ある日、ローラとスカルラーベは思念を交わした。
 何人にも弱みを見せないどころか、この偉丈夫に弱みがあるなどとは信じるものさえいないスカルラーベが泣き笑いをしていた。
(クッ、クッ、クッ・・・・・・)
 通りすがったローラはただごとでないと感じた。(将軍よ(註、スカルラーベは冥界親衛隊の将軍)、いかなることじゃ? )
 マクミラとミスティラ姉妹には冷たくとも、アストロラーベとスカルラーベ兄弟を溺愛するローラは見逃さなかった。
(これは、とんだところを)
(何か誰にも言えぬ悩みでも・・・・・・)
(悩みではござらぬ。ただ、我が身の呪いを考えるとおかしかっただけで)スカルラーベは、苦笑いを浮かべた。
(もしやローラ様なら、我ら兄弟姉妹の呪いのわけをご存じか)
(呪い?)
(わらい話としてお聞きくださいますか。我らは「愛」に呪われてはおりませぬか?)
 ローラが一瞬間青ざめた。(なぜ、そのように考える?)
(軍師殿(註、アストロラーベは冥界親衛隊の軍師)は、神界中の女に愛されながら唯一愛することを拒む美の女神にちなむ名を持つ相手を思い続ける。このスカルラーベ、女なら誰でもよいと思っているのにすべての女が御免と思う。マクミラは、誰よりも美しく生まれながら誰も愛さず自分が氷結地獄に送り込んだ悪鬼ども以外は誰からも愛されぬ。ミスティラは、誰からも愛されるものを持ちながら愛に縁がない。四者四様、愛に関しては見事に不幸ではござらぬか)
(スカルラーベよ、呪いは・・・・・・呪いは、母のせいじゃ)
(な、なんと!?)


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マーメイド クロニクルズ第二部再編集版 序章〜第二章バックナンバー

2020-06-12 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

 

第二部のストーリー

 マーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うことができるのか? トラブルに引き寄せられる運命のナオミは、どう関わっていくのか? 第一部で残された謎が、次々明らかになる。

冥界関係者

プルートゥ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「裁くもの」で冥主

ケルベロス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3つ首の魔犬。「監視するもの」でキルベロス、ルルベロス、カルベロスの父

ヴラド・“ドラクール”・ツェペシュ ・・ 親衛隊の大将軍。「吸い取るもの」で人間時代は、「串刺し公」とおそれられたワラキア地方の支配者

ローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ドラクール”の妻で、サラマンダーの女王。「燃やし尽くすもの」

アストロラーベ ・・・・・・・・・・・・・・ ヴラドとローラの長男で、親衛隊の軍師。「あやつるもの」

スカルラーベ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次男で、親衛隊の将軍。「荒ぶるもの」

マクミラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同長女で、人間界に送り込まれる冥界最高位の神官でヴァンパイア。「鍵を開くもの」

ミスティラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次女で、冥界の神官。「鍵を守るもの」

ジェフエリー(ジェフ)・ヌーヴェルバーグ・ジュニア … マクミラの育ての父

悪魔姫ドルガ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 死の神トッドの娘で「爆破するもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

氷天使メギリヌ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 悩みの神レイデンの娘で「いたぶるもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

蛇姫ライム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 闘いの神カンフの娘で「酔わすもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

唄姫リギス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 責任の神シュルドの娘で「悩ますもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

海神界関係者

ネプチュヌス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 海主。「揺るがすもの」

トリトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ネプチュヌスの息子。「助くるもの」

シンガパウム ・・・・・・・・・・ 親衛隊長のマーライオン。「忠義をつくすもの」

アフロディーヌ ・・・・・・・・ シンガパウムの長女で最高位の巫女のマーメイド

ナオミ ・・・・・・・ 同末娘で人間界へ送り込まれるマーメイド。「旅立つもの」

トーミ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミの祖母で齢数千年のマーメイド。

ケネス ・・・・・・・・・ 元ネイビー・シールズ隊員。人間界でのナオミの育ての父

夏海 ・・・・・・・・・・・・ 人間界でのナオミの育ての母。その後、ニューヨークに

ケイティ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミのハワイ時代からの幼なじみ

天界関係者


ユピテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「天翔るもの」で天主

アポロニア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの娘で親衛隊長。「継ぐもの」


ケイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの未亡人。「森にすむもの」

ペルセリアス ・・・・・・・ 同三男で天使長。「率いるもの」で天界では金色の鷲。人間界ではクリストフ

墮天使ダニエル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ マクミラの「血の儀式」と神導書アポロノミカンによって甦ったクリストフ

コーネリアス ・・・・・・・・・・・・・ 同末っ子で「舞うもの」。天界では真紅の龍。人間界では孔明


「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第2章−8 愛とは何か?(再編集版)

2020-06-08 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人



(なんじゃ?)
(ほとんど戦闘能力を持たぬミスティラを送り込んでも、足手まといにはなっても助っ人にはほど遠いかと)
(それでは誰が適任と申すか?)
(妹の汚名をそそぐは兄の使命かと)
(うるわしい兄妹愛よのう)
 愛か? またしても、ここで・・・・・・思わずアルトロラーベが、独り言の思念をつぶやく。

 例によって何かよからぬことを思いついたのか、プルートゥが意地の悪そうな笑みを浮かべている。
(ローラよ、愛とはなんじゃ? 満足のいく答えをしたならばアストロラーベの願いをかなえてやろうではないか)
 沈黙を守っていたサラマンダーの女王ローラが思念を返す。
(わたくしに・・・・・・愛とは何かと、問いまするか?)
(そうじゃ、あえてお主に問うておる。「愛するとは、お互いに見つめ合うことはなく一緒に同じ方向を見つめること」などと、戯言はまさか言うまいな?)
(サン=テグジュペリとか申す、元飛行機乗りの作家のセリフですね。一緒に同じ方向を見ている振りをして別のことを考えているよりは、まだお互いに見つめ合っている方がマシでしょう。たとえ憎みあっていたとしても・・・・・・)
(我が問い、冥界中の反対を押し切り“ドラクール”との婚姻を決めたお主ならば答えることができよう)
 やりとりを聞いて、冥界の住人たちの背筋が凍り付く。
 なぜならばローラがヴラド・ツェペシュとのちぎりを結ぶ前、彼女とプルートゥが恋人同士だったことを知らないものはいなかったから。しかし、なぜローラが最終的にヴラド・ツペシュを選んだ理由を知るものも、それを知ろうとするものもいなかった。
 誇り高いローラは、投げかけられた質問に答えられない恥辱よりも勇気を持って進むことを選んだ。
(いいでしょう。 愛とは?
 シェイクスピアとかもうす作家は、『真夏の夜の夢』で、
 「恋は目ではなく、心でみるもの」といったそうですが。
 愛とは、論理や倫理にはけっして当てはまらぬもの。
 愛とは、喜怒哀楽のどれにも似て、どれとも非なるもの。
 愛とは、すべてを奪うもの。だが、奪うことでなにかを与える。
 愛とは、苦しめるもの。だが、苦しめることで歓喜を与える。
 愛とは、すばらしきもの。だが、すばらしきがゆえに破滅にみちびく。
 愛とは、貴きもの。だが、貴きがゆえにはかなくうつろいやすい。
 愛とは、愛し合うものがいるときは誰もその価値を知らず、失って初めてどれほど大事であったかを知る)
 周りの予想を裏切って、プルートゥが付け加えた。
(そして、愛におぼれたものは相手の醒めることを知り、
より少なく愛するものがつねに勝利を収めるか・・・・・・
 愛などこれまで考えたこともなかったが、つい戯れ言につられてしまったわ。よいであろう。褒美にアストロラーベの降臨、認めようではないか)
 その時、スカルラーベが思念を発したことはローラには幸運であった。
 そうでなければ、いつもなら炎に照り映えて威厳にあふれる顔が血の気がひき青ざめたところを見られていただろう。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ(再編集版)

2020-06-05 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 いつも不機嫌なプルートゥの顔が、なぜか機嫌よさそうに見える。
(これより我が名にかけて、ミスティラの裁きをおこなう。アストロラーベよ、代理の神官として神事を執り行うがよい)
 ミスティラをかわいがっているアストロラーベに、この役は酷であった。
 しかし、マクミラ無き今、最高位の神官の地位をついだミスティラを裁けるものなど、元神官の経験を持ち、冥界親衛隊の軍師役の彼以外にはなかった。
 実の兄によって妹が裁かれる場面に、プルートゥは興味津々だった。
(ミスティラ殿、何か言い残したいことは?)
 ミスティラが、はかなげでかよわいが、きっぱりとした思念を伝える。
(アストロラーベ様、何も申し上げることなどございません。一刻も早く罰を受け、我が眷属にこれ以上の恥をかかせずにすませたいと願うのみ)かわいらしい顔に不釣り合いな“ドラクール”の眷属の証、鋭い八重歯がキラリと光る。
(殊勝な心がけである)
 頭が暗い闇になっているために、青白いドクロの面をかぶっている死神タナトスに、アストロラーベが思念を送った。(魂百万裂きの刑を執行せよ!)
 もはやミスティラの運命は風前の灯火と、誰もが思った時。
 ミスティラの首を落とすため持ち上げられた大鎌の動きが、止まった。

          

 何かが、ミスティラの両手の間にいることに気づいた。
 最初、それが何か誰にもわからなかった。
 八咫烏(やたがらす)のやや子であった。
 さらにミスティラの周りに、吸血コウモリや黒猫、ジャッカルなどのファミリア(使い魔)たちが集まってきていた。吸血コウモリと黒猫は悲しみの声を上げ、ジャッカルは悲嘆の叫びを上げ、八咫烏は血の涙を流した。次々と、冥界中のファミリアたちが処刑場に集ってきて、元々暗い冥界の空が真っ暗闇になりつつあった。
 彼らの意図は、はっきりしていた。
 ミスティラの助命嘆願である。
 冥界の住人なら、絶対に逆らうなど想像することさえかなわぬプルートゥの決定に命がけで反対の意志を示していた。
 誰にも情け容赦のない死刑執行人タナトスさえ、途方に暮れていた。
(ファミリアたちに好かれていることが幸いしたか・・・・・・愚か者に冥界中のファミリアを殉じさせるわけにはいかぬ。処刑は中止とする!)プルートゥが面倒そうに、思念を送る。
 それまで一切の表情を示していなかった父ヴラド・ツェペシュの顔に、安堵の表情が浮かんだような気がした。
(だが、ミスティラよ、無罪放免とはいかぬぞ! 後であの時、魂百万裂きの刑になっておけば楽だったと思うかもしれぬ。最高神会議で、マクミラに助太刀を送ることになった。冥界からは、お主が行くがよい!)
(ありがたき幸せに存じます。プルートゥ様のご厚情に感謝いたします)
 数百万のファミリアたちが、ミスティラの無事を知りよろこび、周りを駆け回り飛び回っている。ミスティラは、処罰をまぬがれたことよりファミリアたちへの感謝と敬愛するマクミラのところに行ける喜びに胸がいっぱいになった。
(よろこぶのは、まだ早い。人間界で肉の姿を持つ存在となれば、精神体なればこそ途方もなく長い時を生きられるお前らも、1日ごとに60日分の歳を取り、1年ごとに60年の歳を取る。限られた期間内に魔女たちを取り除かねば、人間界で100年と経たずに朽ち果てる。その覚悟はできているのか?)
(もちろんでございます)
(おそれながら、プルートゥ様、私めに願いの議がございます)アストロラーベが思念を発した。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第2章−6 アストロラーベの回想(再編集版)

2020-06-01 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

(我が足下にひざまずくがよい。これよりミスティラの裁きをおこなう)冥界中にプルートゥの思念が響き渡った。
 呼びつけられたのは、ミスティラの父で「吸い取るもの」“ドラクール”こと、かつての大将軍ヴラド・ツェペシュ、さらに母で「燃やし尽くすもの」サラマンダーの女王ローラ。いつも通りヴラド・ツェペシュと並ぶときは、美しい人間の女性の姿を取る。
 居並ぶは、彼らの長男で親衛隊の軍師「あやつるもの」アストロラーベ、次男で「荒ぶるもの」大将軍スカルラーベであった。魔女たちによって鍵を壊された牢獄から抜け出した魔物たちを退治したばかりとあって、アストロラーベの漆黒のマントと軍服はボロボロになっている。スカルラーベのドクロで作られた鎧も傷だらけであった。
 四人とも責任感が強くプライドも高いだけに、ミスティラの裁きに抗弁する気はなかった。ここに至っては、見事に死に花を咲かせよという態度であった。少なくとも表面上は・・・・・・
 アストロラーベだけは、過去を振り返りミスティラの不憫を感じていた。姉マクミラに勝るとも劣らぬ才能を持ちながら、力を開花させることもなく、魂を切り裂かれ宇宙空間の藻くずとなろうとしている妹・・・・・・
 その時、彼は、海神界一の美女とうたわれた恋人アフロンディーヌとの別れの場面を思い起こしていた。



(アフロンディーヌよ、別れの決意は変わらぬかの?)
(何もおっしゃらないでくださいませ。心変わりをしたわけでは、けっしてございません。どうか海神界最高位の巫女に専心するという決断をゆるがせないでくださいませ。わたしには亡き母ユーカ様のように愛に応えながら、同時に役職を務めるだけの器ではなかっただけでございます。会いたいと思っても、もう会えないだけで、アストロラーベ様への愛には何の変わりもございませぬ)
(・・・・・・)
(なんと悲しい瞳をされるのですか。その瞳は何を見ているのですか、それとも何も見えなくなっているのですか。せめて最後に何か思念を伝えてください)
(我は、もはや伝えるべき思念を持たぬのだ。もし悲しみがわが双眼に宿っているなら、その悲しみを永遠に宿らせよう。教えてくれ。理想の相手に出会い、愛を一度手にしながら失うこの苦しみ、悲しみ、やり切れなさ・・・・・・すべては我が人間界から来た父を持った呪いなのか? もし何かの呪いならば、かけられた呪いを解く鍵はあるのか?)
(・・・・・・)
(どうした?)
(ご存じないのですね?)
(何のことだ?)
(呪いは、「人間界から来た」お父上のせいではございません。呪いは、・・・・・・)
(もしや、それは我が父が・・・・・・)
(いけませぬ、その先は。たとえ考えるだけでも! ただ、わたしがお伝えできますのは、ミスティラ様が「鍵」ということだけ)
(我が妹、ミスティラが!?)
(「鍵を守るもの」という名は、宝物殿の鍵の番人という意味ではございません。鍵を握るものという意味なのです。ミスティラ様ご自身こそ、アポロノミカンのすべての謎を解き明かす「鍵」なのです。これ以上は・・・・・・巫女の座についたわたしには、海神界のためにすべてを見届ける使命がございます)
(アフロンディーヌ、会いたいと望んでも、もうかなわぬ美しき巫女よ。これ以上は何も聞かぬ。神々に来世があるかは知らぬが、もしもすべてがカオスに戻るのならば、せめて同日同時刻に共に死にたいもの。もしもコスモスが達成されるのならば、その時こそ冥界に嫁いだお主と永久に生きようぞ)


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