財部剣人の館「マーメイド クロニクルズ 第三部」配信中!「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中「第二部 完結」

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第10章—10 最大のタブー

2019-02-22 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「そうだ。冥界最大の禁忌を犯す。扉を開けただけでは魔界の住人たちが精神世界を通じて押し寄せてきてしまう。だから、こちら側からあちら側へ一方通行の裂け目を作る。そして一時的にダメージを与えた魔性と魔獣たちを一匹ずつ魔界へ送り返す」
「そんなことしたら、奴らが魔界で大暴れするわ」
「知ったことかと言いたいところだが、最高神と魔王たちの約束事を破ることになるな。さぞかしきびしい刑罰が待っているだろうな。だが、それが唯一の精神世界に下りてきてしまった奴らを追い払う手段だ」アストロラーベがマクミラの方を向いた。
「だから、今度の闘いではお前が指揮を執れ。我はヤヌスの鏡の禁断の扉を開き続けるために戦いに参加するわけにはいかぬ。もう用意はできている。ここにいる中から夢魔の夢の中に入り込むメンバーを選出する」
「夢魔の夢?」全員が、何のことかと聞き返した。
 夢魔の夢での戦い。
 深海でマーメイドと闘うこと、炎の中でサラマンダーと戦うことさえ、生ぬるく思えるほどの、それこそまさに最悪の悪夢。
 なぜなら夢魔が自由自在に舞台や戦闘相手を変えることができるのに対して、夢の中では自分自身も気が付かなかった潜在的恐怖が敵に回るからだ。夢魔が創り出した悪夢の中で死ぬことは、現実の死を意味する。心が死んでしまえば、身体だけが生き残っても何の意味もない。
「だが、心配するな。心強い援軍が向かっている」
「援軍?」
「蛇姫ライム、氷天使メギリヌ、唄姫リギスが、夢魔の夢に殴り込みをかけると聞いて、『そんな楽しそうなこと、いままで聞いたことがありませぬ。お楽しみを独り占めしようとしても、そうは行きませぬぞ』と言って現地で集合することになっている」
眠眠は、悪魔姫ドルガも援軍に加わっているよと言いたかったが、青龍から口止めされていた。
「さあ、時間がない。分担を決めておいた。軍師のマクミラは、すべての闘いで指揮を執ってもらう。まず、ゾンビーランドで待ち構えているのは、ビザード軍団とドラコムだ。ここには、将軍殿とライム、そしてミスティラに行ってもらう。
 次に、ノーマンズランドで待ち構えているのは、ジェノサイダス軍団だ。ここには、ライム、メギリヌ、リギスに行ってもらう。
 次に、ナイトメアランドで待ち構えているのは、“ジル”・シュリリス軍団とフェルミナだ。ここには、眠眠に行ってもらう。
 最後に、アポロノミカンランドで待ち構えているのは、・・・・・・夢魔に操られた孔明だ。ここにはナオミに行ってもらうが、秘密の助っ人を考えている。
 マクミラとナオミには、後で秘術を施すから不要だが、あとの連中には夢の中でも戦えるようにフロイトの指輪を手に入れてある」
「フロイトの指輪?」
皆が不思議そうに、アルトロラーベの顔を見た。
「フロイトは、実は、神の血筋を引く者だったのだ。夜な夜な無意識の底に降りていっては学んだことを、昼間に精神分析の理論として執筆していたのだ。彼が精神分析学の秘密結社を結成した際、えり抜きの弟子たちに授けた印章指輪『フロイト・オブ・ザ・リングス』こそ、精神世界に入り込む鍵なのだ」

     

ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—9 アストロラーベの決断

2019-02-18 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「よいか、攻撃には3パターンがある。奇襲攻撃、正面攻撃、相手の攻撃を受けてのカウンターだ。どんなにバリエーションがあっても、結局は3つの組み合わせに過ぎぬ。今回は奇襲攻撃をかけろ。我はお前が造ったワンダーランズが最終決戦地となると確信していた。だからありとあらゆるシミュレーションをしておいた。我が血を半分吸い尽くせ! そうすれば記憶をお前に与えることができる。半分くらい血を吸われても我は死なぬ。だが、三魔性と使い魔たちのことは想定外の部分も多い。そこは、お前の予知能力と才覚で埋め合わせろ。半分の残った血で、我はこれから冥界最大のタブー2つを犯すことになる。
 よいか、マクミラ。元神官のお前は、人間界で悪の側に立とうとしても悪い波動の連中と一緒にいると耐えられなかったはずだ。それでよいのだ。悪は定義できても善は定義できぬ。善きことは善き者のすることとしか言えぬ。なぜなら自らを守るために何かを奪うことも、敵を倒すことさえ時として善となる」
「なぜ、いまさらそんなことを・・・・・・」
「お前たちは才能と修行によって神の力を磨き上げた。それはマクミラが冥界と繋がる一族だったからだし、ナオミが海神界と繋がる一族だったからだ」アストロラーベは一息ついた。「闇の力は違う。どんな一族でも、人間でさえ、怒りと怨みに己を任せてしまえば闇と繋がるし、最終的には虜囚となる。もし『神々の血を引くもの』が闇と繋がれば、その力はまさにおそるべきものとなる。究極の選択をお前たちに迫る時が来た」
「究極の選択?」
「このまま闘っても、魔性と魔獣たちを倒すことは不可能だ。万が一勝ち目があるとしたら、無理やりお前たちの力を完全に戻すことだ。人間界に来てからの経験が、お前たちを成長させていれば、さらに可能性は高まるかもしれぬ」
「わたしの覚悟はできている」マクミラが答えた。
「アストロラーベ、私も望むところ」ナオミも続く。
「冥界最高のネクロマンサーと呼ばれた私だ。お前たちを目覚めさせる秘術も心得ている。だが、それをすればお前たちは今のままではいられない」
「それは、いったい?」ナオミが言った。
「究極の秘技、最後の瞬間までその結果を伝えるのはやめておこう。後悔するかも知れぬぞ」
「後悔は絶対しない。可能性がありながら試さずに魔性のものたちの思い通りさせたら、それこそ後悔する」マクミラが言う。
「善き人間たちを助けるはずだったのに、これまで何もできなかった。だが、これこそ私の究極の使命の気がする」ナオミも言う。
「よいか、魔性たちもあれだけ強大になってはもう消滅させるのはムリだ。強い闇の力に守られているからな。万が一勝ち目があると言ったのは、もう一つの秘技を行い魔界との扉を開ける」
「魔界との扉を開ける!? いったいどうやって?」
 青白いマクミラの顔面が、さらに蒼白になった。
「ヤヌスの鏡を使う」
「そんな・・・・・・それはヤヌス神以外には禁じられた行為」

     

ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—8 せまる魔性たちとの闘い

2019-02-15 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 デトロイトの最高級ホテル、マリオット・アット・ザ・ルネッサンスセンターのスィートで、冥界メンバー、海神界縁のメンバー、天界縁のメンバーによる会議が始まった。
 アストロラーベが語ったのは、驚くべき話だった。
 ミシガン山中の4つの「悪夢と恐怖のテーマパーク」である、ゾンビーランド、ノーマンズランド、ナイトメアランド、アポロノミカンランドが、三魔性ビザード、ジェノサイダス、“ジル”・シュリリスに乗っ取られてしまったのだ。
「でも、なんでそんなことが? 定期連絡でも、そんなことまったく聞いてなかったのに」マクミラが言った。
「マクミラ、最後にミシガン山中に行ったのは?」アストロラーベが答える。
「一ヶ月前だわ」
「それなら、相手に無限の準備時間を与えたのも同じこと」夢の話ならまかせておいてとばかりに、眠眠が語りだす。「夢の中では、時間の流れの長さがまるで違う。シュリリスが、テーマパークの連中を虜にしてしまったんだ。魔性たちが人間界に降臨するには、マクミラの兄妹たちみたいに最高神から肉体を持つ許しを得るか、人間に取り憑くか、どちらかをする必要がある。でも夢を操るだけなら、精神世界にいるままでもできる」

     

「いったいテーマパークで何が起こったの?」
「さまざまな秘技を使って連中を魔性たちの配下に変化させてしまった。ゾンビー・ソルジャー計画で肉体的な変化のコントロール技術はすでにあったから、魔法の力で精神的な変化も同時に行ったことまではわかってる」
「肉体と精神の両方の変化・・・」普段はおそれというものを知らないマクミラだったが、なぜか背筋が寒くなった。
「魔性たちは、ミシガン山中で育てた精鋭たちをテロリストに仕立て上げて、世界中に災いの種をばらまこうとしている。民族対立、資源対立、宗教対立、国境対立、世界中に対立はあふれかえるほどだ。奴らは、今、微妙に不利な立場の側に核兵器どころか、それ以上に強力な武器をばらまいて世界を混乱の渦に放り込む狙いだ」アストロラーベが、計っていたかのように割り込んだ。
 すでに具体的な案は、アストロラーベの頭の中にあった。
「ナオミが参加してくれたことで準備はそろった。明日にも、テーマパークに総攻撃をかける。だが、今度の指揮を執るのは我ではない。マクミラだ」
 マクミラが反対した。それは、あまりに突然だったからだ。
「そんな、わたしはまだ戦いの式を取ったことなど一度もないわ」
「お前は、心の奥底では軍師になることを知っていたし、望んでいたはずだ。必ず名軍師になれる。覚えておけ。勝利のためなら、どれだけ批判されようと非情に徹することだ。だが、同時に駒を無駄死にさせないことも考えるのだ。


ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ


コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—7 意味分かんない!?

2019-02-11 06:20:34 | 私が作家・芸術家・芸人

「どっちの質問から答えようか。やっぱ最愛の人から? う〜んと、まず自己紹介遅くなりました。コンミンの妹の眠眠です。アッ、あなたからは『こうめい』と日本語読みで呼ばれてるんだった。でも、家族は中国語読みでコンミンと呼んでます」
「答えになってない。最愛の人だなんて・・・一度も言われたことないし」

     

「ナオミ、あまり日本人の格闘家男子分かってないね。最初にコンミンのこと、やっつけちゃったよね。コンミン、ずっと気にしてたんだよ」
「そんな昔のことにこだわるなんて・・・」
「コンミンは最初からナオミをいいなと思ったし、付き合えば付き合うほど好きになった。でも、自分を負かした相手に告白するなんて沽券に拘わる」
「意味分かんない!」
「眠眠にも意味分かんないけど、コンミンの頭の中では意味が通ってた。しかも、ナオミを助けるチャンスでもボロボロで、いいところ見せられなかった。だから・・・・・・」
「だから?」
「修行することにした。友情、努力、勝利だね。仲間と一緒に修行して、いつかナオミよりはっきり強くなって告白するつもりだった。完全なバカだよね。妹の目から見ても。でも、コンミンらしいと思わない?」
「・・・・・・」
「やっぱ意味不明? さあ、おしゃべりはもうやめて本題に入ろうよ。日本からアメリカくんだりまで来た訳を話さなくちゃ」
 ナオミが眠眠のはだけたチャイナ服を引っ張ってひきおこすと、背中から胸にかけての真紅の龍のタトゥーが見えた。
「おしろい彫りなの。ふだんは見えない」
「今日は熱くなった、ということね」
「なんで知っているの。ああ、前にコンミンと同じことがあったんだ」
 気がつくと、周りが拍手をしてくれていた。
 アルトロラーベが言う。「生身の身体にしてはたいしたものだな」
 スカルラーベが言う。「いつかお二人さんと戦ってみたいものだ」
 マクミラだけは、いったい何をしてるんだかとあきれ顔だった。

     
ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へにほんブログ村
人気ブログランキングへ
コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—6 孔明の妹

2019-02-08 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 一匹の深紅の龍が、ナオミを睨み付けていた。
 孔明によく似た見事なたてがみ、背びれ、鱗を持っていた。美しいブラウンの瞳が、龍が雌であることを語っていた。
 マーメイドの感覚がよみがえってきたナオミは、易々と龍の攻撃をかわすことができた。だが相手もスムーズな動きをするので、打ち込んでも拳や蹴りを当てることができない。初めての相手のはずなのに、旧知の相手と組み手をしているような錯覚に陥った。
 そうだ。あの時は、孔明の逆鱗に触れてしまったんだった。
 孔明をつかまえて離さない憤怒を弾き飛ばすために、たしか・・・・・・
記憶がよみがえってきたナオミは、弓を引き絞るポーズを取ると、生体のエナジーをため込んだ。次に、身体を一回転半させて、得意の後ろ回し蹴りでミドルキックを打ち込む。あの時は、孔明にふしぎな表情が浮かんで、信じられないようなスキができた。同じように、蹴りを放った。
今回は、ナオミの後ろ回り蹴りを予測していたように、赤龍も全身を一回転させて回り蹴りで対抗してきた。4年前は、マーメイドの蹴りが決まって孔明の身体が数メートルも先のコンクリートの壁に打ち付けられた。
だが、今度は相打ちだった。
 幻視が終わった。ナオミはシャトル左端に弾き飛ばされていたが、チャイナ服の可憐な少女も右端に弾き飛ばされていた。

     

 立ち上がったナオミが近寄ると、彼女の顔色は人形のようになっていた。
 その時、頭の中に祖母トーミの声が聞こえた。
 ナオミよ、この龍、身体は眠っておるが、魂は起きてもおる。
 今は、動くためのエネジーが弾き飛ばされた状態じゃ。
 おばあさま・・・・・・本当にお久しぶり。
 ナオミよ、今宵はあまり時間がない。再び、トーミの声が聞こえてきた。
 ほんの少しでよい。この目を開いたまま夢を見ているお嬢ちゃんに、おまえのライフ・エナジーを打ち込むんじゃ。
 わかったわ。ポンと軽く肩を小突くようにすると、眠眠の目の焦点があった。
「ありがとう」
「ありがとう?」
「さすが、お兄ちゃんの最愛の人。試しがいがあったよ」
「最愛の人? 試しがい?」


ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—5 赤龍対マーメイド

2019-02-04 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 通称「デトロイト・メトロ」と呼ばれるこの空港は、年間利用者三千万人を超えるアメリカでも有数の空港の一である。6つの主要滑走路に158のゲートを有し、デルタとスピリット航空のハブ空港となっている。2つのターミナルは、国際線の乗り入れと国内線の乗り換えでつねにごった返しているが、一つはエドワード・H・マクナマラ・ターミナル、もうひとつはノース・ターミナルである。
 エドワード・H・マクナマラ・ターミナルには、3つのコンコースがあり、Aコンコースには南北1.6kmの直線状で中央にフードコートと旅客を搬送するトラムがある。トラムは、北、中央、南の3駅を持っており、約3分で結んでいる。AからB, Cコンコースへは、照明が時間とともに様々に変化する「光のトンネル」で連絡されている。
 赤、青、黄、緑、橙等の七色のような灯りがめまぐるしく変化し、まるで虹の回廊といった雰囲気を醸し出している。
 特別シャトルに入った瞬間、ナオミは殺気を感じた。
 なんだろう、これ? 隙のない殺気なのに、なんだかなつかしい。
 このオーラは、たしか・・・・・・

 あの時は、一匹の真紅の龍が3匹の神獣たちと演武をしていた。しなやかな肢体の銀狼。背後が見えないほど巨大な雷獣。そして所狭しと飛び回る金色の鷲。
はるか昔、ネプチュヌス宮殿でゆうゆうと移動する海龍を見た記憶があるが、これほど見事なたてがみ、背びれ、鱗を見たことがなかった。落ち着きを称えたブラウンの瞳と裏腹に数本の角と爪はするどくとがり、掌中には龍の王族だけが持つ御霊があった。
 振り返った龍の目が、ナオミのところで止まった。幻視からさめると、そこにはドラゴンの刺繍が入ったチャイナ服に身をつつんだ男がいた。

     

 だが、なつかしさに浸っている暇はなかった。
 左側からゆらりと飛びけりが襲ってきたが、かろうじて交わすことができた。次に、右から同じように飛びけりが襲ってきた。
 これは、孔明と彼の祖父だけが使いこなせるという龍神拳。
 だが、微妙に違う。まるで夢遊病者のようなゆらりとして動き。
 ナオミは、腕をまず交差させると、次にゆっくりと右腕を立て左腕を腰だめにして防御の姿勢を取った。
 今度も幻視が始まった。


ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ


コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—4 ウェルカム・ツー・モータウン!

2019-02-01 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「赤龍のおじいちゃんからエアメールをもらったはずね。祭青龍氏とヌーヴェルヴァーグ財団の間には昔から深いつながりがあるの。今はくわしい話をしている時間はたしかにない。だから単刀直入に言わせてもらう。わたしたちもテーマパークの支配権を取り戻さなくてはいけない事情がある。あなたとは一時休戦協定を結んで、今回のところは共同戦線を張りましょう。だけど、その前に『光のトンネル』を一周してきてもらいたいの」
「光のトンネル?」
「この条件は私からではなく、祭青龍氏からよ。あなたが『光のトンネル』を無事一周して来られれば、わたしたちと一緒にテーマパークにお連れするわ。感謝してほしいものね。トラムはAコンコースだけしか走らないから、特別にAからBとCを経由してAに戻ってくる特別シャトルを走らせてあげる」
「そんなことができるの?」
「ヌーヴェルヴァーグの財力がどれだけあると思っているの? 今回は、特に祭氏からの依頼もあるし、この程度は朝飯前。フッフッフッ、楽しみにしているがよい」
「なんだか楽しそうな話ね」ナオミはもう興奮と期待に胸を弾ませている。
「ウエルカム・ツー・モータウン!」マクミラがめずらしくはしゃいで言った。
 ナオミとケイティは、コンコースにすべりこんできたシャトルカーゴに乗り込んだ。

     

 モータウンとは、自動車を意味するモーターと街を意味するタウンを組み合わせて作られた造語である。デトロイトは、かつての世界最大企業GMを初めとする、Gig 3と呼ばれるアメリカの大手自動車企業が本社を持つと同時に、音楽の街でもあった。
 デトロイトが生んだ「モータウンサウンド」は、世界中で大ヒットを記録した。
 スティービー・ワンダー、ダイアナ・ロス、80年代最大のスター、マイケル・ジャクソンもジャクソンズ時代に、モータウンからデビューしている。
 ナオミとケイティがトラムに乗り込むと、海賊版込みで1億1千万枚というギネスブック認定の世界最高売り上げを記録したLP、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のイントロが流れ出した。
 ジャッジャーン、ジャジャジャン・・・・・・

     
ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—3 いざ、ミシガンへ!

2019-01-28 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 何これ? 
 意味不明にもほどがある。いったい全体、私にどうしてほしいの・・・・・・
 そう思った時、便せんの下にもう一枚便せんがあることに気づいた。
 便せんの下の便せんには、こうあった。

ナオミ殿
 孔明の祖父の青龍と申します。
 夢魔がこんなメモが残されていきおった。

コーネリアスはあずからせてもらったわ♥
ミシガン山中で会いましょう♡
どうぞお仲間もご一緒に♥
『惹き付けるもの』ミホシム

     

 コーネリアスとは、孔明のことじゃ。そして、この場所は魔女のマクミラが作った4つのテーマパークのことじゃと思う。
 どうか、孫の眠眠と一緒に孔明を助けてはくれまいか?     祭青龍

 ナオミに迷いはなかった。だが、パートナーには許しを請わなくては。
「決勝戦を辞退してミシガンに行きたいの!」手紙を見せてケイティに頼み込んだ。
「もちろん、かまわない。だけど条件が一つ」
「どんな条件でも飲むわ。それは何?
「私も一緒に行くわ」
「ケイティ・・・・・・私がトラブルに引きつけられるマーメイドとわかって言ってるの?」
「マクミラがらみなら、クリストフだっているでしょ?」
 そうか・・・それならケイティもおいてはいけない。ナオミは、しぶしぶ承諾した。
 全米ディベート選手権決勝戦の結果が棄権によって決まるなど、前代未聞の大事件になりそうだった。それでも、ナンシーがとってくれた飛行機チケットのおかげで、二人はすぐ旅立つことができた。
 デトロイト・メトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港に降り立った瞬間、ナオミはマクミラの強い波動を感じた。
 マクミラも、同様だった。
 二人が同時につぶやいた。「あいつがいる・・・・・・」
 ナオミとケイティが気づくと、到着ゲートにはマクミラ、アストロラーベ、スカルラーベ、ジェフの四人が出迎えていた。
「久しぶりね。相変わらずの美しさね」ナオミが、マクミラに話しかける。
「ありがとう。でも、私は盲目だからお世辞は返せないと言わなかったかしら?」
「お世辞なら、ケイティに。前回、彼女は闘いの場に居合わせなかったから」
「カンザスの闘いから5年、精神世界の闘いから3年。時の経つのは早いものね」
「無駄話をしてる時間はないわ。わたしは、孔明を助けにあなたご自慢のミシガン山中のテーマパークに行きたいの? パスポートは、ここでいただけるのかしら?」
「条件次第ね」
「条件?」


ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へにほんブログ村
人気ブログランキングへ
コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—2 孔明からの召集令状

2019-01-25 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「私たち、この試合勝てますよね?」ナオミが不安を隠すように言った。
 いつもなら、もちろんよと戻ってくる返事がなかった。
「マウスピークス先生、もしかしてあなたの判定では負けですか?」
「ナンシーと呼んで・・・・・・あなたに手紙が来ているの」
「手紙?」
 それは、不吉な真っ赤なエアメールだった。
「ナオミ、日本からのエアメールよ」
 もしかして、孔明! 
 ナオミは、ひったくるように手紙を受け取って封を切った。

ナオミへ
 元気か? 
 もしお前がこの手紙を読んでるなら、オレはちょっとトラブっているってことだ。じいちゃんがどうしても書いておけっていうもんで、しかたなくこの手紙を書いている。
 お前に黙って日本に戻ったことは悪かったと思っている。
 だが、誰もアポロノミカンの予言には逆らえないことは知っているだろ?

  白面の神が黒い龍と出会う刻
  呪われた風が生まれて、多くの命が失われ
  失われた多くの命が、新たな強大な国を生み出す
  黒い龍が青い龍を日が昇る国に送り出す刻
  三角形のパワースポットがその命を守り
  白い龍が生まれ、その家族の命は残酷な運命によって失われて
  青い龍が紅い龍を育てる刻
  操るものが、銀狼の夢に現れ
  天罰を与えるものが、雷獣の夢に現れ
  引きつけるものが、深紅の龍の夢に現れ
  踊り回るものが、目覚めたまま夢見る娘の夢に現れる刻
  鏡が反転して、闘いが始まり
  再び妃が現れ、五人の夢魔が無意識の底に消える刻
  『夢見るもの』が目覚めの刻を迎え
  祭一族の呪いが解ける

 例によって例のごとく、予言の意味はよくわからない。だけど、祭一族の一員としてオレは日が昇る国に戻らなくてはならなかった。
 心配するな。またお前に会える日まで、オレは絶対に負けない。  孔明


     


ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ


コメント

第三部闘龍孔明篇 第10章—1 全米ディベート選手権決勝

2019-01-21 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 1996年3月24日の日曜日。ナオミとケイティのチームは聖ローレンス大学を代表して、ノースキャロライナの名門私立ウェイクフォレスト大学にいた。第50回記念全米ディベート選手権に参加していた。
 もしもその年の絶対的優勝候補ノースウエスタン大学を負かすチームがあるとするなら彼女たちだろうと、人々は噂した。他の強豪校もノースウエスタンや聖ローレンス大学と当たることがあれば、一泡吹かせてやろうと「隠し球」を用意していた。
 全米ディベート選手権の歴史上、最も有名な隠し球は、1979決勝で前年度の覇者ノースウエスタン大学と対戦したハーヴァード大学が“ニューケース”と呼ばれる、そのシーズンで一度も使っていない肯定側の案を提示した事件がある。想定外のケースを出された大本命のノースウエスタン大学は、5対0で決勝を落とした。それ以降、強豪チームは全米ディベート選手権でのニューケース対策もしなくてはいけなくなった。
 通常、ディベート大会は金土日曜日の3日をかけて週末に行われることが常である。金土曜日に各4試合の計予選8ラウンドが行われ、日曜日の決勝ラウンドに成績上位16チームが勝ち進む。
 しかしながら、シーズン最後であり同時に最高の権威を持つ全米ディベート選手権だけは異なったシステムを取る。まず木金曜日に各3試合が行われ、土曜日に2試合が行われた後、まず予選全体を通じて8戦全勝、7勝1敗、6勝2敗のチームを選抜し、さらに5勝3敗のチーム同士による追加予選1ラウンドを土曜日夕方に行い決勝に進む16チームを決定するのである。
 この年の予選ラウンドは、包括的な宇宙開発を進めるというケースで圧倒的な強さを誇ったテキサスの古豪ベイラー大学が8戦全勝、本命ノースウエスタン大学が7勝1敗、対抗馬の聖ローレンス大学が6勝2敗の成績を残した。
 ナオミとケイティは、日曜日の準々決勝で火星探検計画を提唱するジョージタウン大学をカウンタープランで下した。準決勝では、ダートマスカレッジとのアイヴィーリーグ対決を制したハーヴァード大学と対戦後、ヤキモキしながら審査結果を待っていた。
 ここで勝利すれば、別ブロックの準決勝カンザス大学対ノースウエスタン大学の勝者との決勝戦に駒を進めることになるのであった。
 ついに、ここまで来たわ。
 ショーン、ジョーディ、待ってて。最高の試合で私たちの4年間を締めくくってみせる。ナオミは、心の中でつぶやいた。
 その時、コーチのナンシー・マウスピークスが青ざめた顔で近寄ってきた。

     


ランキングに参加中です。はげみになりますのでクリックして応援よろしくお願いします!

     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へにほんブログ村
人気ブログランキングへ



コメント