三人は、屋上へ直行する高速エレベータに飛び乗った。
エレベータを飛び出したジェフは、かつて見た悪夢を思い出した。
目の前で時空間がゆがみ、裂け始めていた。
星空が消え去って、景色が真っ暗になる。
バキバキと焚き火に爆竹を投げ込んだような音を立てて裂け目が渦巻き、冷たい炎が吹き出す。子供の絵本にあるファイヤー・ドラゴンが、夜空に浮かび上がった。口から紫の煙をあげるドラゴンの背に乗るのは、おそろしく不機嫌な顔をした紅色に燃えたつ髪をした男。
(マクミラよ、人間時間ではかなりの時間がたったが、元気そうじゃな)
3人の頭に思念が、ガンガンこだました。
「おひさしゅうございます、プルートゥ様。こちらでは思念が使えませぬ。言葉・・・・・・人間の伝達手段で失礼いたします」
ダニエルが訊ねる。「誰だ、こいつ?」
(我は冥主じゃ。ペルセリアス、お主、記憶を失っておるのか?)
(ペルセリアス? それが俺の名前なのか?)
(そうじゃ。だが、今は時間がない。ゲームのルールが変わるのじゃ! くわしいことは、直接聞くがよい。三人よ、降臨せよ!)
次の瞬間、インフェルノがファイアー・ドラゴンの口からタワー最上階の中央にはき出された。炎の中から、マントを羽織った三人の姿が浮かび上がった。
(マクミラよ、新しいゲームの期限は降誕祭までとする。助っ人たちと、せいぜいゲームに勝てるようがんばるのじゃぞ)
現れたときと同じ音を立てて、ドラゴンと共にプルートゥが時空間の裂け目に吸い込まれていく。しばしの静寂の後、彼らのオーラを感じて、マクミラがニヤリとする。彼女のハスキー・ボイスが闇夜に響いた。
「お兄様たち、ミスティラ、おひさしぶり」
肩幅が広く筋肉質のアストロラーベが、セクシーな声で答える。「マクミラよ、ひさかたぶりだな。元気でいたか?」
「初めてお兄様の声を聞きました。わたしは、元気でございます」
筋肉のかたまりで2メートル近くはあろうかという大男のスカルラーベが、いかにも無骨な声で言う。
「マクミラよ、俺が来たからには何も心配するな」
ミスティラが、申し訳なさそうに言う。
「お姉様、今回は・・・・・・」
「みなまで言うな。冥界の牢獄を抜け出した魔物たちから話は、すでに聞き出してある。わたしの人間界での父ジェフと」マクミラはなんと紹介するか、ちょっと考えてから言った。「堕天使のダニエル」
アストロラーベが、長男らしく挨拶する。
「アストロラーベと申す。ヌーヴェルヴァーグ殿には、マクミラがお世話に。ダニエル殿は、血の儀式を受けておられるようですな」
「ジェフとお呼びください。アストロラーベ様とお会いできて光栄です」
次に、ダニエルが尋ねる。
「昔、どこかで会ってないか?」
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