財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第1章ー5 太古の龍

2018-01-29 15:53:21 | 私が作家・芸術家・芸人

「白面の神が黒い龍と出会う刻
 呪われた風が生まれて、多くの命が失われ
 失われた多くの命が、新たな強大な国を生み出す
 黒い龍が青い龍を日が昇る国に送り出す刻
 三角形のパワースポットがその命を守り
 白い龍が生まれ、その家族の命は残酷な運命によって失われて
 青い龍が紅い龍を育てる刻
 操るものが、銀狼の夢に現れ
 天罰を与えるものが、雷獣の夢に現れ
 引きつけるものが、深紅の龍の夢に現れ
 踊り回るものが、目覚めたまま夢見る娘の夢に現れる刻
 鏡が反転して、闘いが始まり
 再び黒い龍が現れ、五人の夢魔が無意識の底に消える刻
 『夢見るもの』が目覚めの刻を迎え
 祭一族の呪いが解ける

 予言は実現されねばならぬ。
 否、必ず実現する運命にあるものと言うべきか。
 いったい、後半部分が何を言っているのかはわからぬ。
 しかし、前半部分はわかる。儂は悪行によって蓄財した金を使って、お前のために日本の彼の地、筑波に広大な屋敷を用意した。今宵より我らはもう親でもなければ子でもない。師でもなければ弟子でもない。我らが呪われた一族のことは忘れて赤い龍を育てるために全力をつくせ。だがその前に、青龍、お前に息子が生まれたなら、白龍(パイロン)と名付けるがよい。白龍とその家族には残酷な運命が待っていることを覚悟せよ。せいぜい彼らをかわいがってやるがよい。生活には困らないだけの金は日本に用意してある。儂も一緒に来られないかだと? 無理を言うものではない。すでに言ったように、我が両手は血にまみれておる。どんなに洗っても落とすことのできない穢れた血に。おそらく儂の行く先には地獄が待っている。それこそ因果応報というものだ。儂とお前とお前の息子には不幸が待ち受けている。だが、曾孫の代に呪いが晴れるのであれば儂は本望じゃ」
 これが、現世でかわした青龍が黒龍と最後の会話であった。

 青龍が黒龍との別れを思い出していた時、上空に黒雲が湧き出て来た。
 その中心に、渦を巻きながらその正体を示しつつあった。
「聖地の結界が乱れるとは、不可思議なり」青龍がつぶやいた。
 人類の歴史は、この聖地に始まった。
 数億年前、宇宙から到来した神々はこの地で宇宙を駆けめぐる翼を休め、人間の祖先と最初の交流を持った。彼らのDNAに刻み込まれた集団的記憶は、神話として世界中に伝播することとなった。
 究極の聖地、茨城県南部のパワースポット・トライアングルは巨大な結界として破壊的なパワーの発動を数百年間も許さなかったはずであった。
 少なくともこれまでは。



「いかん、太古の龍が目覚めるぞ」
 地鳴りが始まり、地面が揺らぎ始めて液状化現象が始まった。
 液状化は、巨大な河川の近くや埋め立て地などの砂が多く含まれ地下水位の高い場所で起きやすい。こうした地層内では、通常、結びついているはずの砂の粒子が地震などのきっかけによってバラバラになる。
 その結果、地下水中に粒子が浮いた液体状態になり、地表の割れ目から砂や水が噴出したり建物が沈んだり傾いたりする。


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第三部闘龍孔明篇 第1章−4 アポロノミカンの予言

2018-01-27 02:59:58 | 私が作家・芸術家・芸人

「1853年7月14日深夜。白い仮面を被り黄色い服をまとった男が、反清朝軍の砦に現れた。砦中を覆った緑の霧のために他のメンバーは、すべて眠りこけていた。
 なんだ、そのふざけた面はと尋ねると男は『ミルク神だ。せっかく東洋に来たのだから、波照間島の豊穣祭の仮面をつけるのも一興であろう』と答えた。

          

 後で調べたところ、ミルクとは弥勒(ミロク)が沖縄でなまったもので釈迦入滅の56億7千万年後に現出し、釈迦が救済できなかった衆生を救う来訪仏と言われている。だが、儂の前に現れたのは地獄への使者だった。『かなうなら古の皇帝が持つ龍の力を手にし、明朝を倒し清朝を復活させる英雄になりたい』と言うと、『お主は、雌伏の時を過ごしておる。だが、登竜門をくぐったお主が黒社会の守護神として畏れられるか、人々の守り神としてあがめられるかは知らぬ。それでも、あえて龍の力を持つ存在になりたいか?』と尋ねられた。
『黒社会の守護神として畏れられようと、人々から守り神としてあがめられようと大義のためなら、我が身が龍の化身となろうとも後悔はせぬ』と答えた。パラケルススは、『たとえ龍の化身となろうとも、と答えたな。よいであろう。見るがよい、儂が海底で見つけたアポロノミカンを!』と言うが早いか一冊の本を開いた。
 その瞬間、頭の中に膨大な情報が流れ込み、気付いた時には叫び声を上げ続けていた。その後、仕事を為す度に儂は人々の眼前をゆうゆうと移動する海龍となった。
 幻視の中では、自分自身が、見事なたてがみ、背びれ、鱗を持つ龍に見えた。
 落ち着きを称えたブラウンの瞳とは裏腹に数本の角と爪はするどくとがり、掌中には龍の王族が持つ御霊があった。だが、人々は儂を『凶風』と呼んで畏れた。なぜなら儂に狙われた要人は、一陣の風に襲われたように命を失ったからだ。我が両腕は、血塗られておる」
 黒龍は、ゆっくりと視線を落とした。その眉間には、ナイフで刻み込まれたような深い皺があった。
「大義を信じ、法よりも人の道理よりも組織の論理を優先してきたが、気付いてみれば賭博、売春、アヘンによって人々を苦しめる巨大黒組織を生み出し大幹部としてその中心にいる。お前はまだ犯罪に手を染めてはおらん。これから言う事を覚えておくがよい」
「お待ちください。父上の手が汚れているのなら、我の手も生まれ落ちた時より汚れているのではないですか。お側で、これからも父上のお役に立ちたいと考えております」
「師に対してバカなことを言うではない。大義が失われ、存続自体が目的化した黒組織など、汗水たらして働く堅気の血を吸って生き続ける怪物そのもの。そんな組織から抜けられなくなった儂の二の舞を踏むではない。『チョイス・イズ・トラジック』という言葉を覚えておくがよい。一度おこなった選択は、けっして取り消せないという意味だ。よいか、儂は自分なりにアポロノミカンについて調べてみた。そして、ついに我が一族に関する予言を見つけたのだ」

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第三部闘龍孔明篇 第1章−3 「海底」の秘密

2018-01-22 08:44:14 | 私が作家・芸術家・芸人
「これから話すことは我が一族の呪われた運命についてじゃ。だが、お主なら呪いを断ち切ってくれると信じておる」
「呪い! いったい、どのような?」
「儂は殺手として、数えきれないほどの命を殺めて来た。明朝復活こそならなかったが、最後の君主制国家の清を打倒して共和制国家である中華民国の樹立に成功した。その後、多くの洪門の幹部たちが、新政府に取り入り正当政府の要人となった。だが、悪魔に魂を売り渡した儂にはそんな資格などありはしなかった」
「すべては、大義のためだったのでは?」
「もちろんだ。だが、仲間と信じていた連中は革命が成就したとたん掌を返すように殺手の儂に冷たい視線を浴びせかけ、あまつさえ切り捨てようとした。儂はすべてを恨むようになった。裏切った仲間たち、己の運命、さらに世の中のすべてを。誰からも畏れられる存在になると決心した儂に残された場所は、黒社会だけだった。そして、呪いは『海底』を見てしまったことから始まった」
「海底?」
「別に海に潜ったわけではない」
 黒龍がニヤリと笑った時、彼の顔は黒社会の大立て者に見えた。
「儂は『海底』と呼ばれる組織の極秘情報を記した会簿を見られる立場にいた。『海底』という名の由来は、日本人を母に持つ海賊、鄭成功の孫が1683年に洪門に関する秘密を鉄箱に入れて海中深く沈めたからだ」

          

「そこに、何が書いてあったのですか?」
「加盟組織の名称や構成、入会方法、裏切り者への罰、秘密のコミュニケーション手段などだ。『海底』は大幹部だけが所有を許されていたため別称『金不換』、金に換えられないものとも呼ばれていた。非合法組織への参加自体、この国では命がけなのだ。権力者に知れば命の保証はない。そのため、さまざまな隠語やサインを発達させる必要があった。まず手の動き、次に隠語に気づけば、面識無き会員同士でも、誰が大義に命をかける兄弟で、何を求めているか分かる。兄弟同士と分かれば、怨みや因縁があっても水に流される」
「なぜ『海底』の呪いが、我が一族にだけにかかったのですか? 他の幹部も、見ることができる立場にあったのでは?」
「奴らが見たのは1848年『海底』を発見した漁師から郭永奏が手に入れたもの。儂が太平天国の最中に見せられたのはパラケルススと名乗るものが持つ『裏海底』だ。あやつは、アポロノミカンとか呼んでいたが・・・・・・」


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第三部闘龍孔明篇 第1章−2 チャイニーズフリーメーソン 洪門

2018-01-18 04:40:20 | 私が作家・芸術家・芸人
 一匹目の神獣は、レインボー・スクラッチと呼ばれた爪から繰り出される技で百万を越える冥界のギデオンを引き裂いた、かつての天界の光の軍団長「光り輝くもの」シリウス。輝く毛並みの銀狼の姿に戻って、崖を飛び降りると、岩から岩へ取り移りながら攻撃を仕掛ける。
 現世では、アメリカ人のチャック・ハーベック。額が猿のように張り出し、狼のように細い目をしているが、人なつっこい顔をしている。
 もう一匹は、ボールライトニングという技を持ち、半径1キロの敵を全滅させる電撃を発する、かつての天界の雷の軍団長「対抗するもの」アンタレス。ハリネズミのような毛におおわれた雷獣の姿に戻り、シリウスに向けて雷撃を発する。
 現世では、アメリカ人のウィリアム・シャルダン。
縦横幅が変わらない太った姿に、ヒッピーの生き残りのような服装を見て、将来ノーベル賞候補になる天才であると見抜いたものはいなかった。
 この場にいるはずのかつての天使長で「率いるもの」ペルセリアス、金色の鷲の姿はない。人間の姿では、プラチナブロンドのベルギー人、クリストフ・ボールデン。女たらしのプレイボーイだったが、現在は、ヴァンパイア、ダニエルとなってマクミラと共にニューヨークに暮らしている。
 かつての真紅の龍で「舞うもの」コーネリアスは、人間の姿のまま二匹の訓練を見守っている。現世では、中国人の祭孔明だが、聖ローレンス大学ではナオミと日本からの留学生として出会っている。
 1991年のナオミたちとマクミラ率いるゾンビー・ソルジャー軍団の闘い後、チャックは目覚めないままでは足手まといになるばかりで、なんとかしたいとずっと考えていた。勉強に専念するようになっていたビルも、チャックの熱意に誘われて、孔明に同様の相談を持ちかけた。
 孔明の隣には、白いヒゲをたくわえた祖父、祭青龍が立っていた。
 齢百才を越えた身体は筑波下しが吹けば飛ばされそうだが、中国武術界にその人ありと知られた「チンロン」祭青龍と知るものは、ほとんどいない。
 チャックとビルを目覚めさせることが目的の修行が、広大な庭で始まった。
 すでに目覚めている孔明が竜巻を起こし、その中から脱出したり、流れ落ちる滝に飛び込んで、滝壺から上がったりなど常人であれば生死に関わる訓練に明け暮れた2年間であった。
「二人とも、ようやく目覚めたようじゃ」
「休学して、じいちゃんと眠眠と一緒に修行に励んだかいがあった」孔明が、時々、修行に参加する妹の名前に触れた。
「だが、お前たちのおかげで自慢の庭が悲惨な姿になってしまったよ」青龍は、すっかり形を変えてしまった滝、崖、浮き島を眺めた。「ここ数日、気の乱れを感じる。聖地の結界がゆるみ始めておる。何かの前触れでなければよいが・・・・・・」

 1993年夏、聖ローレンス大学4年になった3人はナオミに黙って、日本にいる祭青龍の下で修行をする旅に出かけた。
 青龍の父「ヘイロン」黒龍は、明朝(1368-1644)末期から清朝(1644-1912)初期にかけて、武装闘争をおこなったチャイニーズフリーメーソンと呼ばれる秘密結社“洪門”(ホンメン)の殺手(ころしや)であった。

          
  
 清朝末期に洪門は瓦解が始まっており、各地方における犯罪組織化が進んだ。香港の黒社会“三合会”(トライアッド)大幹部であった黒龍は、太平天国の乱(1853)や、親友孫文と共に辛亥革命(1911)など歴史の裏側で暗躍した英雄の一人であった。清打倒と明復活を目的に、要人を次々、龍神拳で血祭りに上げていたのである。
 黒龍は齢60才を前にようやく授かった孫のような息子、青龍には、自分と同じ人生を送らせたくないと考えた。青龍は、父であり武芸の師匠である黒龍との最初の別れの場面を思い出していた。


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第三部闘龍孔明篇 第1章−1 茨城のパワースポット・トライアングル

2018-01-14 06:51:28 | 私が作家・芸術家・芸人

 太古の時代から神話と伝承の宝庫、茨城県南部。
 筑波山、鹿島神宮、竜ヶ崎がパワースポット・トライアングルを形成する。
 最初のスポットが、標高871メートルの男体山、877メートルの女体山の二つの峰を持つ坂東無双の名獄、筑波山である。筑波神社は、本殿奥の出世稲荷に向かす階段の側に御神水がわき出しており、森からの気を融合させる。かつて、修験者の修行場として栄えた場所であり、史上最大の陰陽師、安倍晴明はここで狐と人の間に生まれ、後に京に上ったと言われる。
 第二のスポットは、日本の武芸発祥の地、鹿島である。霊峰パワーが満ちる鹿島神宮敷地内の要石は、地震を引き起こすナマズの頭を抑えていると言われ一帯に強いエネルギーを発している。剣聖塚原卜伝は鹿島神宮の神官卜部覚賢の家に生まれ、その後、塚原城の塚原安幹の養子となった。実父から鹿島中古流刀術を、養父から天真正伝神道流を学び、鹿島神宮に籠もり霊感を得て開眼し、これに創意工夫を加え「一の太刀」(ひとつのたち)という剣術を編み出し、流派を新当流と称した。
 最後のスポットが、竜ヶ崎である。平安時代末期、この地に任ぜられた地頭が鎌倉時代に源義経の姻戚であったことから領地の没収後に龍崎という氏を称したことが由来とされている。だが、この地に天界から龍が降って以来、しばしば竜巻が起こるようになって「龍が真っ先に現れる地」がなまったのが真の由来である。
 日本では、F1(秒速33〜49メートル)、F2(同50〜69メートル)規模の竜巻がほとんどで、F3(同70〜92メートル)規模の竜巻は過去に4例があったに過ぎない。しかし、八岐大蛇退治で知られる須佐之男命を奉る八坂神社が竜の力を封印する以前は、家が宙に浮かび車がミサイルのように飛ばされるF4(同93〜116メートル)や、発生すれば未曾有の壊滅的被害を生じさせると言われるF5(同117〜141メートル)規模の竜巻さえ、しばしばこの地に起こったと言われる。

          

 トライアングル中央に位置する日本で二番目に巨大な湖、霞ヶ浦。
 その畔に、ひっそりたたずむ屋敷がある。
 屋敷の持ち主は、祭青龍(チンロン)。
 まだ若者時代に日本に移り住み、すでに数十年を過ごしている。国際金融筋では知らぬ者の無い大物華僑であり、彼が資金を動かすと日本全体の相場が動くとさえ言われている。
 だが、その私生活は謎につつまれている。
 庭には、小高い丘に加え崖や流れ落ちる滝まであった。普段は深い霧に包まれて人々に知られることもないが、今宵は神獣同士が争いを繰り広げていた。正確には、争いに見えただけで二匹の神獣は修行を行っていた。


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第三部闘龍孔明篇 序章

2018-01-09 04:13:11 | 私が作家・芸術家・芸人


     闇の中にも光はある
     曇った眼で、闇を見てはならない
     光の中にも闇はある
     利口すぎる眼で、光を見つめてはならない
     光と闇は
     対立を生むが
     たがいがたがいに依存している
     ちょうど右足の歩みが
     左足の歩みに依存しているように
     ——石頭和尚

     世の中で最もしなやかなものは
     世の中の最も堅いものを貫通する
     無は隙間のないところに入り込む
     ここで私は、行動のない行動の価値を知り言葉のない教えの価値を知る
     行動のない行動の価値に匹敵できるものは世の中に何もない
     ——老子

     とつぜん、目がさめて自分を見れば、
     おのれの姿に戻っていたのでおどろいた
     いったい自分は、蝶になる夢を見ている人間だったのか
     ひょっとすると自分は、人間になる夢を見ていた蝶であったかもわからない
     蝶と自分との間には存在の別がある
     それは、人が絶え間ない変容と呼ぶものである
     ——荘子





プロローグ

 俺の名は、孔明。
 どうやら地上に落ちてきた龍らしい。「らしい」というのは、天界時代の記憶がないからだ。
 しまつの悪いことに逆鱗に触れられると、今でも龍になってしまう。だが、己が龍になったときの記憶は残っていない。

          

 失われた記憶があるというのは、幸せなのか、不幸なのか?
 人生は、希望と絶望がいつも同じ船に乗っている。
 うっかりすると、絶望に目を奪われそうになる。だが、気がつかないだけで希望はいつでもすぐそばにいるのだ。
 師宣わく、「迷いをすてよ」。よく聞く言葉だ。
 だが、迷いをすてるには、まず迷わなければならない。
 それどころか、迷うことでしかわからないことも多いはずだ。
 最初から迷いのないものに何を知ることができる?
 迷って、迷い抜いて、たどり着いたものにこそ、価値があるのでは?
 これまで、俺は神々のゲームに巻き込まれて来た。
 ナオミという元海神界のマーメイドで、共に闘う仲間も出来た。
 マクミラという元冥界の神官で、ヴァンパイアのライバルも出来た。
 だが神々のゲームは、アポロノミカンをめぐる争いから、宇宙のバランスさえこわしかねない“絶対悪”をめぐる争いへと変わっていってしまった。
 あまり自分のことは語ってこなかった俺だが、最後の闘いではじいちゃんや妹まで関わる闘いになりそうだ……
 なに、自分のことさえわからぬお前に、争いに関わる資格があるのか? おそらく、ないだろう。
 だが、自分さえわからぬ龍が、流れる雲のごとく運命を捜してみるのも、一興ではないか? じいちゃんと妹との荒修行で、仲間たちと俺も天界時代の姿を取り戻す術を得た。
 トラブルに引き寄せられるマーメイド、ナオミも共に“絶対悪”との闘いに加わってくれた。マクミラとその眷属たちも意外な形で関わった。
 ほう、俺たちの闘いの話を聞いてみたいとは酔狂な奴。
 だが、こんな晩には仲間たちとの記憶が甦ってくる。ナオミやマクミラほどうまく語れるかどうかわからないが、せっかくの長い夜だ。
 くだらないことを考えるより先に、さあ、今宵の物語を始めよう!


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第三部闘龍孔明篇の主要登場人物及びあらすじ

2018-01-03 22:14:25 | 私が作家・芸術家・芸人

 語り部の財部剣人です。「マーメイド クロニクルズ第三部 闘龍孔明篇」を待っている内に待ちくたびれてしまった人多いですよね、と昨日のブログで書いたらなんと1月2日のアクセス数、閲覧数236回、訪問者数122人いただきました!
 本当にありがとうございます。すごく励みになります。百人を超えるのは、かなり乗って書いたエピソードでないとないので2〜3ヶ月後と言わず、第三部の再開早めようという気になりました。

          

 以下に第三部のストーリーの予告と主要登場人物を載せておきます。再開に、請うご期待!

第三部ストーリーの予告

「神々のゲーム」が進んだ結果、神界と魔界のバランスにゆがみが生じていた。魔界反乱軍の魔性たちが、四人の魔女たちとマクミラを中心とする冥界軍団との闘い直後の隙をついて、精神世界に逃げ出したのである。「殲滅しつくすもの」ジェノサイダス、「誘いをかけるもの」“ジル”・シュリリス、「虚無をかかえるもの」ビザードは、魔界と神界の約束事を破って、人間共の夢の完全支配。あやつらの夢をすべて悪夢に塗り替え、戦乱と混沌、狂気と憎悪、嫉妬と愛欲の世界にすることを狙っていた。人間の夢すべてが悪夢になれば、魔界と天界はつながり、中立地帯の精神世界は戦闘地帯となり人間たちは破滅への道を歩む。神々は魔界と協力して、魔性たちを征伐する新たなゲームを始めることを決定した。マーメイドのナオミは、いったいどう闘いにからんでいくのか? またヴァンパイアのマクミラとその兄弟妹たちは? 目覚めていなかった天使たちは、魔性との闘いでどんな役割を演じるのか? 闘いの行方を左右する「絶対悪」の存在はどうなっていくのか? 数々の謎をはらみながら、アポロノミカン「究極の予言」に向かって最後の闘いが始まる。


第三部主要登場人物

冥界関係者
プルートゥ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「裁くもの」で冥主
ケルベロス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3つ首の魔犬。「監視するもの」で
                  キルベロス、ルルベロス、カルベロスの父
ジュニベロス ・・・・・・・・・ キルベロス、ルルベロス、カルベロスの変身した姿
ヴラド・“ドラクール”・ツェペシュ ・・ 親衛隊の大将軍。「吸い取るもの」で
        人間時代は、「串刺し公」とおそれられたワラキア地方の支配者
アストロラーベ ・・・・・・・・・・・・・・ ヴラドとローラの長男で、親衛隊の軍師。
                            「あやつるもの」
スカルラーベ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次男で、親衛隊の将軍。「荒ぶるもの」
マクミラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同長女で、人間界に送り込まれる冥界最高位の
                   神官でヴァンパイア。「鍵を開くもの」
ミスティラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次女で、冥界の神官。「鍵を守るもの」
ジェフエリー(ジェフ)・ヌーヴェルバーグ・ジュニア … マクミラの育ての父
悪魔姫ドルガ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 死の神トッドの娘で「爆破するもの」。
            マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人
氷天使メギリヌ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 悩みの神レイデンの娘で「いたぶるもの」。
            マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人
蛇姫ライム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 闘いの神カンフの娘で「酔わすもの」。
            マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人
唄姫リギス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 責任の神シュルドの娘で「悩ますもの」。
            マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

海神界関係者
ネプチュヌス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 海主。「揺るがすもの」
トリトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ネプチュヌスの息子。「助くるもの」
シンガパウム ・・・・・・・・・・ 親衛隊長のマーライオン。「忠義をつくすもの」
アフロンディーヌ ・・・・・・ シンガパウムの長女で最高位の巫女のマーメイド
ナオミ ・・・・・・・ 同末娘で人間界へ送り込まれるマーメイド。「旅立つもの」
トーミ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミの祖母で齢数千年のマーメイド。
ケネス ・・・・・・・・・ 元ネイビー・シールズ隊員。人間界でのナオミの育ての父
夏海 ・・・・・・・・・・・・ 人間界でのナオミの育ての母。その後、ニューヨークに
ケイティ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミのハワイ時代からの幼なじみ

天界関係者
ユピテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「天翔るもの」で天主
アポロニア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの娘で親衛隊長。「継ぐもの」
ケイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの未亡人。「森にすむもの」
ペルセリアス ・・・・・・・ 同三男で天使長。「率いるもの」で天界では金色の鷲。
                         人間界ではクリストフ
墮天使ダニエル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ マクミラの「血の儀式」と
             神導書アポロノミカンによって甦ったクリストフ
コーネリアス ・・・・・・・・・・・・・ 同末っ子で「舞うもの」。天界では真紅の龍。
                             人間界では孔明

人間界関係者
祭黒龍 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 秘密結社“洪門”の殺手で孔明の曾祖父
祭青龍 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 華僑の大立て者で孔明の祖父
祭眠眠 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 孔明の妹で「夢見るもの」

魔界関係者 
ビザード ・・・・・・・・・・・・・・・・ 魔界反乱軍の魔性で、『虚無をかかえるもの』
ドラゴム ・・・・・・・・ 水蛇ヒュードラと悪龍が交わって誕生した魔界最強の獣
                           ビザードの使い魔
ジェノサイダス ・・・・・・・・・・・・・・ 魔界反乱軍の魔性で、『殲滅しつくすもの』
“ジル”・シュリリス ・・・・・・・・ 魔界反乱軍の魔性で、『誘いをかけるもの』。
夢魔の女王
フェルミナ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ リリム配下の黒不死鳥
「絶対悪」 ・・・・・ 誕生の秘密はまだ誰も知らないが、今回の闘いの鍵を握る


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謹賀新年&第三部闘龍孔明篇の誓い

2018-01-02 06:36:45 | 私が作家・芸術家・芸人
 語り部の財部剣人です。今、イギリスに来ています! こちらは今が元旦です。いつも応援ありがとうございます。もう「マーメイド クロニクルズ 第三部」を待つのは待ち疲れたという方も多いと思います。

          

 ですが、最近、ある精神科医の先生と知り合いになってニョキニョキとインスピレーションが湧いてきて、もうすぐ第6章が完成しそうです。2〜3ヶ月の内には、また戻ってこれらそうです。全体としては12章建てを考えているので、それでも半分ですが(^。^;)。

 思えば2002年にひと夏で「マーメイド クロニクルズ 第一部 神々がダイスを振る刻」を書き上げ、2000年代後半に二年近くかけて「第二部 冥界の神官が愛を知る刻」を書き上げてから、「第三部 闘龍孔明篇」は数年間棚ざらし状態でした。その間、第一部幻冬舎からの出版や第二部の修正版のアップなどもありましたが、最終ゴールまでの骨格がようやく固まりつつあります。クロニクルズのはずがエピック化してきていますが(苦笑)、なんとかがんばって完結篇を終わらせたいと思っております。

 どうかそれまで第一部と第二部をお読みになってお待ちください。今後の展開に請うご期待!

  

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」

「第二部 第4章−1 ミシガン山中」
「第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス」
「第二部 第4章−3 不条理という条理」
「第二部 第4章−4 引き抜き」
「第二部 第4章−5 血の契りの儀式」
「第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン」
「第二部 第4章−7 走れマクミラ」
「第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕」
「第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ」

「第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱」
「第二部 第5章−2 全米ディベート選手権」
「第二部 第5章−3 トーミ」
「第二部 第5章−4 アイ・ディド・ナッシング」
「第二部 第5章−5 保守派とリベラル派の前提条件」
「第二部 第5章−6 保守派の言い分」
「第二部 第5章−7 データのマジック」
「第二部 第5章−8 何が善と悪を決めるのか」
「第二部 第5章−9 ユートピアとエデンの園」

「第二部 第6章−1 魔女軍団、ゾンビ−ランド襲来!」
「第二部 第6章−2 ミリタリー・アーティフィシャル・インテリジェンス(MAI)」
「第二部 第6章−3 リギスの唄」
「第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ」
「第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する」
「第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究」
「第二部 第6章−7 支配する側とされる側」
「第二部 第6章−8 プルートゥ、再降臨」
「第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ」
「第二部 第6章ー10 さかさまジョージからのファックス」

「第二部 第7章ー1 イヤー・オブ・ブリザード」
「第二部 第7章ー2 3年目のシーズン」
「第二部 第7章ー3 決勝ラウンド」
「第二部 第7章ー4 再会」
「第二部 第7章ー5 もうひとつの再会」
「第二部 第7章ー6 夏海と魔神スネール」
「第二部 第7章ー7 夏海の願い」
「第二部 第7章ー8 夏海とケネス」
「第二部 第7章ー9 男と女の勘違い」

「第二部 第8章ー1 魔女たちの二十四時」
「第二部 第8章ー2 レッスン会場の魔女たち」
「第二部 第8章ー3 ベリーダンスの歴史」
「第二部 第8章ー4 トミー、託児所を抜け出す」
「第二部 第8章ー5 ドルガとトミー」
「第二部 第8章ー6 キャストたち」
「第二部 第8章ー7 絡み合う運命」
「第二部 第8章ー8 格差社会−−上位1%とその他99%」
「第二部 第8章ー9 政治とは何か?」
「第二部 第8章ー10 民主主義という悲劇」

「第二部 第9章ー1 パフォーマンス開演迫る」
「第二部 第9章ー2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!」
「第二部 第9章ー3 太陽神と月の女神登場!」
「第二部 第9章ー4 奇妙な剣舞」
「第二部 第9章ー5 何かが変だ?」
「第二部 第9章ー6 回り舞台」
「第二部 第9章ー7 魔女たちの正体」
「第二部 第9章ー8 マクミラたちの作戦」
「第二部 第9章ー9 健忘症の堕天使」

「第二部 第10章ー1 魔女たちの目的」
「第二部 第10章ー2 人類は善か、悪か?」
「第二部 第10章ー3 軍師アストロラーベの策略」
「第二部 第10章ー4 メギリヌ対ナオミと・・・・・・」
「第二部 第10章ー5 最初の部屋」
「第二部 第10章ー6 ペンタグラム」
「第二部 第10章ー7 ナオミの復活」
「第二部 第10章ー8 返り討ち」
「第二部 第10章ー9 最悪の組み合わせ?」

「第二部 第11章ー1 鬼神シンガパウム」
「第二部 第11章ー2 氷天使メギリヌの告白」
「第二部 第11章ー3 最後の闘いの決着」
「第二部 第11章ー4 氷と水」
「第二部 第11章ー5 第二の部屋」
「第二部 第11章ー6 不死身の蛇姫ライム」
「第二部 第11章ー7 蛇姫ライムの告白」
「第二部 第11章ー8 さあ、奴らの罪を数えろ!」
「第二部 第11章ー9 ライムの受けた呪い」

「第二部 第12章ー1 ライムとスカルラーベの闘いの果て」
「第二部 第12章ー2 責任の神の娘」
「第二部 第12章ー3 リギスの戯れ唄」
「第二部 第12章ー4 唄にのせた真実」
「第二部 第12章ー5 アストロラーベの回想」
「第二部 第12章ー6 勝負開始」
「第二部 第12章ー7 逆襲、アストロラーベ!」
「第二部 第12章ー8 スーパー・バックドラフト」
「第二部 第12章ー9 さかさまジョージの魔術」

「第二部 最終章ー1 魔神スネール再臨」
「第二部 最終章ー2 ドルガのチョイスはトラジック?」
「第二部 最終章ー3 ナインライヴス」
「第二部 最終章ー4 ドルガの告白」
「第二部 最終章ー5 分離するダニエル」
「第二部 最終章ー6 ドルガの回想」
「第二部 最終章ー7 ドルガの提案」
「第二部 最終章ー8 ドルガの約束」
「第二部 最終章ー9 ドルガの最後?」

「第二部 エピローグ 神官マクミラの告白」


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