財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第1章−2 深夜のドライブ(再編集版)

2020-04-20 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「マクミラ、今夜はどうするんだ?」ハーレーダビットソンFXSTSスプリンガ-・ソフテイルをフルスロットルで走らせる堕天使ダニエルが声をかける。
「セントラルパークに! 禍々しいオーラがふくれあがりつつあるわ」キルベロス、カルベロス、ルルベロスの3匹が合体した魔犬ジュニベロスにまたがったマクミラが深夜の幹線道路を逆走しながら怒鳴るように答える。
 このところマクミラはダニエルと一緒の真夜中の魔物狩りが日課になっていた。どうしたわけか、最近、冥界時代に牢獄に閉じこめたはずの魔物たちが人間界に下りてくるようになっていた。
 狩られるのは性に合わない、マクミラは狩られるより狩る側にまわろうと考えた。カンザスでの闘い以降、目覚めつつある力をもてあましており心と身体の両方が闘いを望んでいた。
 いったん闘いだすとザコ相手ではもの足りない反面、危険な連中が人間界に来ると困ったことになる予感もしていた。だが、最凶の囚人たちは最高度に厳重な牢獄に閉じこめられているはずであった。マクミラの後を継いで最高位の神官になった妹ミスティラを信用したいと思った。だが、冥界からの脱獄者が続く現状を考えると、結界がゆるまぬように祭祀をとりおこなうだけでなく残留思念で牢獄をきちんと維持できているか不安になった。

 二人が到着した時、目の前で十数人の若者たちが叫びながら殺し合っていた。ナイフを持った者もいれば拳銃を乱射している者もいた。生まれつき盲目のマクミラには彼らの肌の色はわからなかったが異人種ストリート・ギャング団どうしの争いだった。



 ジュニベロスにまたがったマクミラがパチーーンと指を鳴らした。
 命知らずだがまだ少年のあどけなさを残したギャングたちが振り返る。
「ケガしないうちにお家へお帰り」マクミラが、ハスキーボイスで叫んだ。「ここは、あぶないわ」
「何様のつもりだ?」一方のグループのボスらしいタイ系の少年が魔犬を見て震える声で答える。「仲間が抗争事件で五人も撃たれたんだぞ。そっちこそ引っ込んでいてもらおう」
「ジュニベロスを見てビビってるようじゃ、これから起こることに耐えられそうもないわね。夜遊びをやめてとっととお帰り!」
「こっちだって、はい、そうですかってわけにはいかないんだ。あんたらが噂の化け物コンビか?」イタリア系で整った顔立ちのやはり一方のリーダーらしい少年が答える。
「聞き分けのない坊やたち。狂気があぶない奴を呼び寄せるのがわかっていないんだから」マクミラは背中から真っ赤な二本の鞭を取り出した。「無知な子供たちを、鞭でビビらすとするか」(“Let me whipcrack crackpots.”)
「マクミラ、俺がやろうか?」ダニエルがバイクに乗ったまま尋ねる。「手加減できるか?」
「大丈夫よ。ただ、あまり時間がないけど・・・・・・」
 今度は指ではなく鞭をパチーンとならすとマクミラが言った。「めんどうだ。両方いっぺんにかかっておいで!」
「なめんじゃねー」イタリア系美少年が叫ぶとナイフが宙を飛んだ。
 タイ系の少年のマイクロ・ウージーからも同時に銃弾が発射された。


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