アポロニアに向かって、ケイトが伝える。(お忘れかい、マクミラ様が降臨してからヴァンパイアになられたことを)
今度はユピテルが思念を返す。(それと今回のことと、いったいどういう関係があるのじゃ?)
(マクミラ様とナオミ様が闘った夜ですが、ペルセリアスの遺体が消えた理由はおそらくマクミラ様が持ち去ったのではないかと)
(なんのために?)
(少なくとも、3つの理由がこのケイトには見えます。1つ目は、闘いに勝ったナオミ様にマクミラ様は「ごほうびをあげなくては」とおっしゃいました。それはホールを丸焼きにして講演会を中止したことではなく、仲間の命をすくってやるという意味。精神は肉体の影響を受けるものです。人間に生まれ変わったマクミラ様は、知らないうちに「言霊」(ことだま)にしばられております。2つ目は、マクミラ様は慎重なお方で、むやみにヴァンパイアの仲間を増やすことはしなかった。しかし、聡明なお方なので、これはという相手を見逃すこともしない。ペルセリアスを自陣営に取り込めれば、敵陣営の戦力を同時に弱めることにもなり、一石二鳥と考えるはず。最後の理由は、・・・・・・)
(どうした?)
(アポロニアよ、お主が、銀狼、雷獣、金色の鷲、龍の神獣たちと契りをむすんで父親の違う息子たちを次々に産んだ時でも、愛に関して過剰であった我が夫アポロンの血筋のせいと考えて何も伝えなかった。だから、己の息子が母から独り立ちするかもしれぬと知っても、ショックを受けるのではないぞ)
(母上様、死んだかもしれぬペルセリアスが生きていると聞かされて、これ以上ない幸せを今、感じております。ご遠慮なくマクミラ様がペルセリアスを助けた最後の理由を、どうぞ伝えてくだされ)
(最後の理由は、マクミラ様がペルセリアスに恋をしたのではないかと思う。そう驚いた顔をするものではない。マクミラ様は、冥界で最高位の神官であらせられた時分、たしかに「誰も愛さず、誰からも愛されずに」おられた。だが、マクミラ様が唯一惹かれておられた男性が父親のヴラド・ツェペシュ将軍じゃ。“ドラクール”様が「吸い取るもの」と呼ばれるのは、ヴァンパイアだからではない。周りのものの気持ちを吸い取り、引きつけてやまない魅力のゆえにじゃ。ペルセリアスには、時折“ドラクール”様と同じオーラを感じることがあった。マクミラ様が、最初から自分の気持ちに気づいているとは思えぬ。なぜなら、一度も愛を知らぬものは、目の見えぬものが本当の色を知らぬように、自分の感情の動きに気づくこともない。だが、いったん自分の気持ちが愛と気づいたとき、二人に何が起こるかは、わしにもわからない)
そこまで聞いて、ユピテルが愉快そうに思念を発した。
(天界からは助太刀を出せずに、新しいゲームには興ざめと思っていたものが、おもしろい展開になったものじゃ。プルートゥめ、「冥界のことは冥界のものたちで始末をつける」と宣言しおったが、元天使長の助けを借りると知ってくやしがる姿が目に浮かぶようじゃ。アポロニアよ、心配は無用。道は必ず開ける! Ad astra per aspera!)
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