平井和正先生に捧ぐ〜財部剣人の館「マーメイド クロニクルズ第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中「第二部 」完結

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的な世界観で人魚のナオミとヴァンパイアのマクミラが戦うバトルファンタジー

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マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−3 不条理という条理(再編集版)

2016-12-30 00:00:07 | 私が作家・芸術家・芸人
 勘違いしたものが優秀なものの足をひっぱるなどということはありえない神々の世界を知っているマクミラには、人間界の状況は全く理解しがたかった。まるで人間界においては、「不条理が条理」であるかのようだった。
 そうした時、マクミラは人間界に送られる場での冥主プルートゥの父への質問を思い出した。
(人間どもの魂と思いを交わすたびに、不思議に思う。あやつらは、なんのために生まれ、なんのために生きるのか。神に愛され才能を開花させた者は、芸術家や導くものとしてその名を残す。だが、多くは現世的な成功を求めて争い、他人をけ落としてでも、上を目指す一生を送る。生存競争が自然の摂理だとしても、なぜ他の生物を殺し、搾取し、飾り立てるのか? なぜ他の動物と共生する道を探らず、破壊の道をひた走るのか? なぜ野辺の草花に目を向けようとはしないのか? なぜ競争をし、優劣をつけるのか? なぜ個性を尊重しようとはしないのか? なぜ肌の色の違いや、自然の恵みをめぐって殺し合うのか? なぜ助け合い、お互いを尊敬しないのか? 知れば知るほど、人間がわからなくなる。生きること自体が目的と、うそぶくやからもいる。しかし、それは誤りじゃ。たかだか百年の寿命しかもたず、70を過ぎれば身体が不自由になり、80を過ぎれば判断能力の劇的衰えを経験する。それでは苦しむために生きるようなものではないか。「なぜ人間は生きるのか?」冥界に来た哲学者や教祖と呼ばれる者共の誰も、答えを出せなかった。答は、人間一人一人にかかっているとしか言えぬのか、ドラクール?)
 そのために日本の芥川龍之介が書いたという『蜘蛛の糸』を読んだ時には、この寓話は人間界の比喩ではないかと思った。
 地獄で苦しんでいた極悪人の犍陀多がかつて蜘蛛を助けたことを釈迦が思い出して、極楽から一本の蜘蛛の糸を垂らして救ってやろうとする。しかし、上っていた細い一本の糸に数限りない罪人たちもよじ登り始めた時、犍陀多が「これは自分のものだ、降りろ」と叫んだとたんに蜘蛛の糸が切れてしまうという話である。
 なぜなら底辺にいるものは、自分より上に行こうとするものを、そうはさせじと引きずり下ろそうとするのが常である。釈迦のようにすでに高い位置にあるものだけが、「細い一本の糸を垂らして」他人を引き上げてやろうとする。だがそれも地獄の底辺で苦しむ亡者たちのじゃまによって、挫折することが多いのだが。
 神々の世界においては、嫉妬や中傷があったとしても、誰かの能力が過大評価されたり過小評価されたりすることはなく、真の実力が認められたし能力のあるものは常に一目置かれた。そのために、嫉妬や中傷が誰かの行動原理になることはなく、そんな暇があったら努力をすることが当たり前だった。
 ところが、人間界では努力して上を目指すよりも、他人を引きずり下ろす方が手っ取り早いとか、それが最優先だと信ずるものも多かった。
 優秀な人間にとっても全体にとっても不幸なことには、嫉妬や中傷に血道を上げる輩が力を持った時に、誰かが愚行を批判することは不可能だった。
 なぜなら、そんなことをすればとばっちりを受けることがはっきりしていたからだった。さらに、おかしなことには自らが所属する分野の努力を放棄した人間は、他の分野ですでに権威を獲得した人間にすり寄ることも多かった。畑違いであれば、自分のみじめさを直視する危険をおかすこともないからである。
 マクミラは、「その人がすごいのはわかるが、あなた自身はどうなのだ?」と問いたい気分だった。ドロドロした波動の人物と一緒にいると、精神状態だけでなく体調まで悪くなるために、人間を知れば知るほど気分が重くなった。
 同時に、自分の考えに気づいて愕然とすることもあった。
 ん、何を悩んでいる? 
 まるで立場が逆ではないか。ナオミではあるまいし! わたしの立場では、ひどい人間が主導権を握って優秀な人間たちに仕事をさせずに絶滅の方向へ向かえばよいのだから、人間のおろかさをよろこぶべきなのだ!


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