財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−6 勝負開始(再編集版)

2021-05-28 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 アストロラーベが気を取り直して言う。
「唄姫よ、鏡をはりめぐらして我が半透明の槍を使った秘技を封じたつもりか? だが、透明になれば鏡があろうとなかろうと私の姿を見ることはできないぞ」
「何もわかってはいないでありんすな、冥界の軍師」リギスが応じる。「鏡を用意したのは、秘技ファントム・パラダイスを使うためでありんす」
 リギスが、高々と両腕を高く上げた。
 ファントム・パラダイス! 
 リギスの全身が光につつまれた次の瞬間、そこにいたのは数千の鏡に写ったマクミラだった。

「妹の姿になれば、このアストロラーベが気後れするとでも思ったのか?」
「バカなことを、お兄様」リギスが、マクミラのハスキーボイスで答える。「闘ってみれば、そんなことが狙いでないのはすぐにお分かりいただけます」
「よかろう。魔術には魔術で応じるが礼儀。そちらがシェイプ・シフターなら、こちらは奥義ボーダー・クロッシングで応じるとしよう」
 そこまで言うと、アストロラーベが呪文をとなえ始めた。

   あなたの悪夢が私の夢になる
   私の悪夢があなたの夢に
   いざ、つむぎだす言葉によって呪いを払わん
   冥界の神官の姿を取った歌姫よ
   我が妹マクミラの姿を借りたリギスよ
   私を闘う芸術家と思っているのか
   いや、そうではないのだ
   私は闘う芸術そのものにならん
   奥義ボーダー・クロッシング!
 
 呪文をとなえながらアストロラーベが半透明の槍をゆらゆら動かすにつれて、その姿が半透明になっていく。その姿が、今にも完全に透明になろうとした時。マクミラの両手に握られた真っ赤な鞭が、一閃した。
 バチーーン。
 鞭の先が、何かを捕らえた。アストロラーベの肩であった。
 ファントム・パラダイスを使っている時のリギスは自分以外になれるだけでなく、その能力まで自分のものにできる。リギスは、マクミラの心眼によってアストロラーベの居場所を感じていた。鞭が当たった肩が裂けて、冥界の業火が吹き出していた。まさしく、マクミラの編み出した必殺技ピュリプレゲドン・フィップであった。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−5 アストロラーベの回想(再編集版)

2021-05-25 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「やはり責任を感じていたか」アストロラーベが言った。「シュルド殿が叱責を受けたのは、お主のせいではない。シュルド殿からは娘を救ってやってくれと頼まれているのだ。闘いを止めて、降参するつもりはないか、リギスよ」
「おろかでありんす・・・・・・自由を求める歌姫に道理を説くとは。冥界の貴公子ではなく、冥界の詭弁士とでも名前を変えてはどうでありんすか?」
「挨拶だな。よかろう。久々の闘い、もしやこれが最後になるやも知れぬ。道理を説くのは、勝負の後とすべきであったな」

 はたして何百年ぶりだろうか、戦士として闘うのは?
 不安と期待感で、全身の体毛が逆立ってくるのがわかった。
 同時に、リギスの魔力の強さを感じて、心の警戒警報が大きな音を立てて鳴りだしていた。しかし・・・・・・不思議だ。おそろしいほどの闘気を感じながら、殺気を感じない。もしやリギスは魔女を気どっているだけか? あるいは、純粋に闘いの楽しみを求めているだけか?
 大将軍ヴラド・ツェペシュの下で闘っていた時、アストロラーベは闘うことを禁じられてしまっていた。父と交わした思念を、今、思い出していた。魔女たちにこだわりを語らせておきながら、自分自身のこだわりについて語ることは彼の美学が許さなかった。

(アストロラーベよ。お前は、闘いには向いておらぬな。いや、無能と言っているわけではない。それどころか、儂の言いたいことは真逆)ヴラドは、一呼吸置いた。(軍師としてたぐいまれなる才に恵まれ、戦士としての資質もまたけた外れ。だが、闘いに美学を持ち込もうとする。簡単に勝てる相手にあえて全力を尽くさなかったり、実力伯仲の相手にも芝居がかった手を使ったりする。半透明の槍を使えば無敵なくせに、この間の魔神との闘いの最中には炎のバラを飛ばし無用な危険を侵している。冥界の貴公子などと呼ばれて、いい気になっているのではないか。勝負に挑んでは、戦士はつねに鬼神であるべき。じゃが、しょせんお前は鬼神にはなれん。闘いに夢中になり、すべてをかけられるスカルラーベに今後の闘いはまかせるがよい。お前には今宵をかぎりに闘いを禁じる。闘いを芸術と考えるお前は、みにくい勝利よりも美しい敗北を選びかねぬ。父には、わかっておるぞ。それほどまでに、アフロンディーヌとの別れがつらかったか? わざと危ない橋を渡って、死に場所を求めているな。何も伝えたくないか・・・・・・よいであろう。今日の話の本題はそこではない。よいか。軍師としての闘いは、自分自身が闘うより何倍も何十倍もツライ。指揮した軍を勝たせて当たり前、負ければすべての責を負う。それだけではない。一人の犠牲もなしに圧勝しても、軍師は楽でよいと陰口を叩かれる。よいか、叩きたいものには叩かせておけ。冥界は、いつかの日か想像もできない危機を迎える。その時、勝利を収めるためにはレベルの違う軍師が必要じゃ。軍師は孤独だが、それで犠牲を最小限にできるなら安いもの。そして、その役をこなせるものはお前以外にはおらぬ)


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−4 唄にのせた真実(再編集版)

2021-05-21 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

     

 ガシャーン!
 リギスが歌い終わった瞬間、天が裂けて土煙にガラスの破片が降ってきた。破片は、あっというまに数千の鏡となって散らばった。

「アストロラーベ。土煙空間で有利に勝負を展開するつもりだったのでありんしょうが、こちらも鏡地獄で対応させていただくでありんす」
「よいのか? 鏡はお主の本当の心も映してしまうかも知れぬぞ」
「どういう意味でありんすか?」
「お主が『悩ますもの』になったのは、父であられる責任の神シュルド殿へのコンプレックスであろう。もう呪縛から解き放たれても、よい頃ではないか?」
「大きなお世話でありんす。冥界の貴公子と呼ばれても、未だに振られたマーメイドに操を立てている軟弱者に言われたくはないでありんす」
「挨拶だな。私のことはなんと思われてもかまわないが、お主が『悩ますもの』になった由来には興味がある。お主の気まぐれには何か一本筋が通っている(There is a method in her madness.)。お主が唄姫で冥界の道化師ならば、ひとつ歌って聞かせてはくれまいか。それとも、お題をもらうのは苦手か?」
「よいでありんす。死に行く相手を楽しませてやるのも、一興でありんす」

   ラララ〜、責任の神は働きもの
   いつでも人間たちに責任感を与えていた
   責任感に悩む者だけが
   世の中を動かすことができる
   責任感に悩まぬ者は
   冥界でそのツケを払わせられる
   悩むことで、苦しむことで、人間たちを成長させていた

   ラララ〜、責任の神は恋に落ちた
   美しいが誰にも愛を与えぬ堕天使との
   悩むことを知らぬ堕天使マーサとの
   初めての愛に責任の神は夢中になった
   そして堕天使マーサはふたりの
   愛の結晶歌姫リギスを生み出した
   責任の神は、娘の唄を聞くことで、いつも疲れをいやしてた

   ラララ〜、責任の神はついてない
   いつのまにか人間たちは変わってしまった
   責任を与えても他人に転嫁するものばかり
   責任感はどこにもなくなった
   責任を与えれば与えるほど善人ばかりが苦しむ
   責任転嫁をすることで悪人ばかりがさかえる社会

   ラララ〜、責任の神はおかしくなった
   仕事をすればするほど、おかしくなった
   どうしてよいかわからずに愛を求めたが
   愛する堕天使マーサは見つからなくなった
   せめて娘の癒しに救いを求めたが
   放蕩娘はコミュートスに落とされていなくなった
   こうして責任の神は自らの無責任さに耐えられずおかしくなった
   だからもう人間たちは、悩むこともなく、好き放題


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−3 リギスの戯れ歌(再編集版)

2021-05-18 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

     

 実は、冥界の川の水には膨大な脳内物質が含まれていたのであった。
 ピュリプレゲドンの水の成分は、恐怖を感じる「闘争か逃走の物質ノルアドレナリン」と怒りを起こす「興奮物質アドレナリン」。その水が身体に入った相手は、恐怖と怒りに引き裂かれて燃え上がる。ステュクスの水には、落ち着きをもたらす「癒しの物質セロトニン」と恍惚感をもたらす「脳内麻薬エンドルフィン」が大量に含まれている。その水が身体に入ると、落ち着きと恍惚感に引き裂かれた味方は痛みを感じなくなった。アケロンの水には、ひらめきを起こす「記憶と学習の物質アセチルコリン」と「不安と恐怖を換気する物質ノンアドレナリン」が含まれている。その水が身体に入ると、ひらめきと恐怖に引き裂かれて相手は命が燃え尽きた。レテの水には眠気の「睡眠物質メラトニン」と快感を引き起こす「幸福物質ドーパミミン」が大量に含まれていた。その水が入ると、眠気と幸福感の中で相手は過去の記憶が失われるのであった。

 リギスが言った。「まだフェスティバルは中途でありんす。第六幕、漆黒の闇を写す黒色の海は、冥王プルートゥの支配の始まり。魔神の超能力によって闘いは、精神界に場を移すはずでありんす。精神体となった両陣営は、本来の超能力を使って死闘を繰り広げるでありんす。観客の数は減ったけど、お客は楽しませないといけないでありんす」
 リギスが、オルフェウスの竪琴を取り出して歌い出した。

   ラララ、鏡よ、鏡
   いにしえの魔女は、この世の中でもっとも美しいのは誰と問いを発した
   だが、いったいお前に誰がもっとも美しいと決めることができるのか?
   ラララ、鏡よ、鏡
   この場にいる魔女の中で、誰がもっとも美しいかと聞いてみようではないか
   だが、いったい誰がもっとも美しいと決める権利を持っているのか?
   ラララ、鏡よ、鏡
   美しさなど、うつろいやすい外見にすぎず永遠など幻なのではないか
   だが、お前はそれでも今の美しさを自分が映すと言い張るのか?
   いいだろう
   逢わせ鏡の合わせ鏡
   無限回廊に映し出される現人の現身
   何が真実なのか
   何が幻なのか
   永久に言い張り続けるがよい


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−2 責任の神の娘(再編集版)

2021-05-14 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「第三の部屋へ移動しよう」アストロラーベが、土煙あふれる部屋に皆を誘う。
「誰が私の相手をしてくれるのだ?」
 ドルガが答える。「冥界最高のネクロマンサーで『あやつるもの』アストロラーベには、冥界の道化師で『悩ますもの』リギスとの魔術対決と行こう。準備はよいか?」
「待ちかねていたでありんす。冥界時代の力が使えぬマクミラより、アストロラーベは数倍歯ごたえある相手。リギス一世一代の歌声をお聞かせするでありんす」
 責任の神シュルドの娘リギスは、その竪琴の音色が神々や神獣さえ虜にしたオルフェウスの遠縁。オルフェウスには、アポロンの落とし子という噂があり、アストロラーベにとってもたやすい相手ではなかった。
 全員が部屋に入ると、目を開けていられないほどの土煙が荒れ狂っていた。「見届け人がこれでは困ろう」アストロラーベが右の掌を向けると、彼らの回りだけ土煙がおさまりカプセルにおおわれたようになる。
「よいのでありんすか? エネルギーをずっと使うことになるでありんすえ」リギスが皮肉に言う。
「なんの。残留思念を使えば、一瞬で事足りる」
「さすが、女にもてるはずでありんす。だが、忘れてはいないでありんすな? この闘いの貢ぎ物は、お主の妹ミスティラ」
「念を押すまでもない」

 マクミラは思った。
 兄アストロラーベと闘おうとは、命知らずのおろか者。
 アストロラーベの必殺技はただ一つ、半透明の槍。本当の強者は一つの技しか使わない、使えない、使う必要がない。プルートゥから、かぶると透明になる兜を直々に賜ったアストロラーベは、冥主の許可を得て兜をつぶして半透明の槍を作った。
 槍は、二つの点でおそれられていた。一つは、槍を動かすとアストロラーベの姿が透明になるだけでなく、本当にアストロラーベの気配が消えてしまう。彼自身が語らないため理由はわからないが、槍の力で短時間なら異次元に移動できるではないかと噂されていた。
 第二に、半透明の槍には不思議な力があり、突き刺されると冥界の四つの川の水が注ぎ込む。それぞれ異なった効果を持っており、ピュリプレゲドンの水が入ると相手の身体が燃え上がり、ステュクスの水が味方に入ると攻撃に対し恐れ知らずになり、アケロンの水が入ると短時間で相手の命が失われ、レテの水が入ると相手の記憶が失われた。アストロラーベの持つ半透明の槍は、「鬼に金棒」どころか一つで「弁慶の七つ道具」と言えた。


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−1 ライムとスカルラーベの闘いの果て(再編集版)

2021-05-11 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 石になったスカルラーベが、ゆっくりとだが動いていた。
「お前は不死身を呪いと考えているようだが、俺などずっと生きながら死んでいた。というよりも死にながら生きていたというか」喋りにくそうにそう言うと、身構えた。「元々、俺は骸骨の鎧の方が本体で、筋肉は見せかけだった。それが石に変わろうと、どれだけの違いがあるのだ。さあ、二回戦といこうか」
 大鎌を振り回そうとしたスカルラーベが、ふと気がついた。
 蛇姫ライムの顔が光っていた。涙が彼女の顔を覆っていたせいだった。
「オオ、ついに見つけた。変身後の顔を見ても死なせずにすむ相手を・・・・・・」そう言うと、ライムはスカルラーベに抱きついた。「誰にも殺させない、スカルラーベ殿。嫌われてもよい。我が、これからずっとあなたを守る!」
 ライムの涙が、石になったスカルラーベの鎧にポタポタとかかった。すると、激しい七色の光が起きた。光が消えると、禿頭に骸骨顔だったはずのスカルラーベが、冥界の貴公子と呼ばれた兄アストロラーベに勝るとも劣らぬ美丈夫に変身していた。
「スカルラーベ殿、その顔は・・・・・・」
 ライムに言われて、初めて気づいたスカルラーベが手を顔に当てる。「呪いが解けたのか、母ローラの受けた愛の呪いが・・・・・・」
 立ち会い人たちには、いったい何が起こったのか理解不能だった。
 すべて計算づくのアストロラーベだけが、したり顔でながめている。
「悪魔姫よ、どうする? 闘いを続けさせてもよいが、どうやらライムには、闘いを続ける意志はないようだな」
「この勝負は引き分けでよいであろう。スカルラーベが何と言うかは知らぬが」
 アストロラーベが尋ねた。「将軍殿、どうする?」
「闘いの間、ずっと思っていた。ライムほど、正直な心を持った女はいない。そして、変身する前も変身した後も、これほど美しい女を俺は知らない」
「よし、不満はないな。この勝負は痛み分け。ミスティラの運命は、自らに委ねる。ライムの運命も、また自らに委ねる」
 マクミラは思った。
 さすがアストロラーベだ。冥界一の軍師で、魔法使いで、裁判官でもある。そっと話しかけた。「兄上様、ここまでの展開を読んでいたのでしょう」
「このような結果は、正直まったく予想していなかった(totally unexpected)。だが、解けたのはスカルラーベの呪いだけでない。蛇姫ライムの呪いも解けたのだ。おそらく闘いの最中、スカルラーベの目は涙でいっぱいだった。涙でぐしゃぐしゃになったスカルラーベの目には、変身後でもライムは美しいままに映っていたに違いない・・・・・・なあ、マクミラよ、愛とは何だと思う?」
「軍師殿とも思えぬ質問を、よりによってこんな時・・・・・・そんなもの定義する価値もない」
「お前らしいな。マクミラ、私はこう思う。愛とは、相手に同じ気持ちになってもらえるなら、その他すべてにきらわれてもかまわないという願い。そして、私もお前もスカルラーベも、それを手に入れているんじゃないか」
「・・・・・・」
 気がつくと、スカルラーベが第一の部屋よりも早く勝負をつけたおかげで残り時間は333分間だった。


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マーメイド クロニクルズ 第二部再編集版 序章〜第11章バックナンバー

2021-05-07 06:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」

「第二部 第4章−1 ミシガン山中」
「第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス」
「第二部 第4章−3 不条理という条理」
「第二部 第4章−4 引き抜き」
「第二部 第4章−5 血の契りの儀式」
「第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン」
「第二部 第4章−7 走れマクミラ」
「第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕」
「第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ」

「第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱」
「第二部 第5章−2 全米ディベート選手権」
「第二部 第5章−3 トーミ」
「第二部 第5章−4 アイ・ディド・ナッシング」
「第二部 第5章−5 保守派とリベラル派の前提条件」
「第二部 第5章−6 保守派の言い分」
「第二部 第5章−7 データのマジック」
「第二部 第5章−8 何が善と悪を決めるのか」
「第二部 第5章−9 ユートピアとエデンの園」

「第二部 第6章−1 魔女軍団、ゾンビ−ランド襲来!」
「第二部 第6章−2 ミリタリー・アーティフィシャル・インテリジェンス(MAI)」
「第二部 第6章−3 リギスの唄」
「第二部 第6章−4 トリックスターのさかさまジョージ」
「第二部 第6章−5 マクミラ不眠不休で学習する」
「第二部 第6章−6 ジェフの語るパフォーマンス研究」
「第二部 第6章−7 支配する側とされる側」
「第二部 第6章−8 プルートゥ、再降臨」
「第二部 第6章−9 アストロラーベ、スカルラーベ、ミスティラ」
「第二部 第6章ー10 さかさまジョージからのファックス」

「第二部 第7章ー1 イヤー・オブ・ブリザード」
「第二部 第7章ー2 3年目のシーズン」
「第二部 第7章ー3 決勝ラウンド」
「第二部 第7章ー4 再会」
「第二部 第7章ー5 もうひとつの再会」
「第二部 第7章ー6 夏海と魔神スネール」
「第二部 第7章ー7 夏海の願い」
「第二部 第7章ー8 夏海とケネス」
「第二部 第7章ー9 男と女の勘違い」

「第二部 第8章ー1 魔女たちの二十四時」
「第二部 第8章ー2 レッスン会場の魔女たち」
「第二部 第8章ー3 ベリーダンスの歴史」
「第二部 第8章ー4 トミー、託児所を抜け出す」
「第二部 第8章ー5 ドルガとトミー」
「第二部 第8章ー6 キャストたち」
「第二部 第8章ー7 絡み合う運命」
「第二部 第8章ー8 格差社会−−上位1%とその他99%」
「第二部 第8章ー9 政治とは何か?」
「第二部 第8章ー10 民主主義という悲劇」

「第二部 第9章ー1 パフォーマンス開演迫る」
「第二部 第9章ー2 パフォーマンス・フェスティバル開幕!」
「第二部 第9章ー3 太陽神と月の女神登場!」
「第二部 第9章ー4 奇妙な剣舞」
「第二部 第9章ー5 何かが変だ?」
「第二部 第9章ー6 回り舞台」
「第二部 第9章ー7 魔女たちの正体」
「第二部 第9章ー8 マクミラたちの作戦」
「第二部 第9章ー9 健忘症の堕天使」

「第二部 第10章ー1 魔女たちの目的」
「第二部 第10章ー2 人類は善か、悪か?」
「第二部 第10章ー3 軍師アストロラーベの策略」
「第二部 第10章ー4 メギリヌ対ナオミと・・・・・・」
「第二部 第10章ー5 最初の部屋」
「第二部 第10章ー6 ペンタグラム」
「第二部 第10章ー7 ナオミの復活」
「第二部 第10章ー8 返り討ち」
「第二部 第10章ー9 最悪の組み合わせ?」

「第二部 第11章ー1 鬼神シンガパウム」
「第二部 第11章ー2 氷天使メギリヌの告白」
「第二部 第11章ー3 最後の闘いの決着」
「第二部 第11章ー4 氷と水」
「第二部 第11章ー5 第二の部屋」
「第二部 第11章ー6 不死身の蛇姫ライム」
「第二部 第11章ー7 蛇姫ライムの告白」
「第二部 第11章ー8 さあ、奴らの罪を数えろ!」
「第二部 第11章ー9 ライムの受けた呪い」


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マーメイド クロニクルズ 第二部 第11章−9 ライムの受けた呪い(再編集版)

2021-05-03 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

     

 スカルラーベが身構えた。
 まるで目の前の空気をつかもうとするかのように、交差して突きだしたスカルラーベの両手がブルブルと震えている。だんだんと、その爪が青白い光を帯びてゆく。すると巨大な岩でもひっかくように後ろ側へ、その爪が今度はゆっくり左右に開きながら引っ張られていく。
 ムッ、まずい。
 アストロラーベは、呪文をつぶやくと立会人たちを守るための思念バリアを張った。彼らを囲む半透明の幕が、ギリギリのタイミングで現れた。
 次の瞬間、スカルラーベが叫ぶと引っ張られていた腕の掌を返して目の前の空気を前方上空へ引き裂いた。
 秘技スーパー・バックドラフト!
 たちまち回りの空気が吸い込まれるようになくなって、ライムの姿が真空中に囚われたように見えた。次に、ライムを中心として強大なコロナが誕生した。
 バックドラフトは、火事現場で見られる現象であり、ロン・ハワード監督のシカゴの消防士たちを描いた同名のハリウッド映画で有名になった。
 酸素を消費しつくした密室空間に蔓延した可燃性ガスに、新鮮な空気が急に入って爆発的炎が引き起こされる現象である。通常の爆発でも千度を越えるが、スカルラーベの創り出す超バックドラフト空間では一万度を越える高熱を発して、中心にいたものは最悪の場合、異次元空間にまではじき飛ばされてしまう。
 ドッカーン! 
 大音響の後、一面が炎に包まれた。精神世界と分かっていても、アストロラーベの思念バリアで守られていても、立会人たちも自らが照り焼きになりかねないほどの熱気を感じた。
 まるで巨大新星がスーパーノヴァを起こしたようであった。しばらくは光の流れのせいで見にくかったが、だんだんと中心部に何かがいるのが見えて来た。
 まるで閉じられた黄金の二枚の羽に包まれた、巨大な椋鳥のように見えた。椋鳥がゆっくり羽を開くと、蛇姫ライムの姿が中に現れた。
 羽がやや黒ずんだ印象を受けるが、顔には傷一つ付いていない。
「秘技などとたいそうなことを言うので、今度こそ死ねるかもしれないかと思ったが・・・・・・しょせん、たわごとか」そこまで言うと、ライムが怒りの表情に変わった。「さあ、他の者どもはしばらく目を閉じておくがよい。スカルラーベ、覚悟はよいか。本当の秘技を見せてやろうではないか。トータリー・アンエクスペクテッド!」
 ライムの顔が、瞬時にして青銅に変わりイノシシの牙を見せて、髪のすべてが蛇になり、口から長い舌が垂れ下がった。その姿を見たものは血も凍る恐怖に石に変わってしまい、一生を物言えぬ存在に変えてしまう・・・・・・はずだった。すでに美しい蛇姫の姿に戻ったライムが、唖然と立ちつくしていた。


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