めちゃくちゃに走ったのかと思われたが、いつの間にか五芒星形の傷跡が残っている。追われた振りをして、マンモス魔神を星の中央におびき寄せる。
ハッ!
飛び上がると、ヒビが入りかけた氷に乗ったマンモス魔神の上に飛び乗る。ミシミシと氷が裂けて、重みでマンモス魔神が雄叫びを上げながら沈んでいく。多勢に無勢の時の鉄則2「相手の欠点を利用せよ」。
だが、ナオミも勢いあまってマンモス魔神と共に水中に沈んでいく。
メギリヌが、再びオーケストラの指揮者のように手を動かして強大な氷柱を引き寄せると、ナオミが沈んだ部分にたたき込んだ。続いて、別の氷柱をたたきこんだ氷柱に組み合わせると強大な十字架が完成した。それはまるでナオミの墓碑銘のように、たたずんでいた。
「口ほどにもない。まるで歯ごたえがないではないか」メギリヌがうそぶく。「氷の下で一生を終えるがよいわ」
ふとマクミラが気づくと、足下のキル、カル、ルルがうなりをあげている。
そうか、闘いたいんだね。いい、ジュニベロスに変身してから行くんだよ。考えが通じたように、まるで冥界の父ケルベロスに届けとばかりに一声大きく吠えると、それまで三匹だった子犬たちが三首の魔犬ジュニベロスに変身した。極寒のせいなのか、いつもと違ってシベリアンハスキーのような見事な体毛を備えている。
やるじゃないか。油断するんじゃないよ。マクミラがつぶやく間もなく、父親を傷つけたサディストめがけてジュニベロスが飛び出した。
だが、立ちはだかったのはジャガー魔神だった。
このまま行けば、真っ正面からぶつかりあうと思われた時。ジュニベロスが、口から炎の息を吐き出した。ジャガー魔神が、ひるんだ隙に喉元に食らいつく。あっけなくジャガーの首がくびれて、原型をとどめなくなる。
ジュニベロスが、そのままメギリヌに向かっていこうとした時だった。
厚いはずの氷をやぶって、ナオミが飛び出してきた。
油断していたまさかり魔神は、真下からの攻撃を受けてまっぷたつに割れた。それぞれを左右のアイス・アックスに引っかけると、数回転させて勢いをつけるとロケット魔神に向かって投げつける。ナオミのアイス・アックスボンバーを受けて、ロケット魔神も粉々に崩れしてしまう。
多勢に無勢の時の鉄則3「一対一の状況に持って行け」。
「お待たせ。私はマーメイドだから、どんなに冷たくても水に入ると元気を取り戻す。水中に入ったおかげで、真下からの攻撃も可能になった。礼を言うわ」
「フフ、小手試しは終わり。お前の戦闘能力など、取るに足らぬと分かったわ。マニフェスト・ディザスターの真の力を見せてくれる」
メギリヌの16枚の羽が羽ばたきを開始した。
それまでとは比較にならないほどの冷気が、回りに吹き荒れる。しだいに、それは雪嵐となり視界ゼロになる。同時に、いままでせいぜい厚さ数十センチだった氷が一気に数メートルにもなった。
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