財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!「第二部 再配信中」

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−3 トーミ(再編集版)

2020-08-31 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 夢が始まったのは、カンザスの早い夏が始まった6月上旬だった。
「ナオミや、元気かい? よろこぶがよい。わしもプルートゥ様の元へ行く日が近づいたようじゃ」
「それって、おばあさまが亡くなるってことでしょ! よろこんだりなんて、できないわ。ずっと生きていて欲しかったのに」
「おやおや、亡くなるなんて、人間の使うような言葉を使うじゃないよ。魂は不滅じゃ。わしにも生まれ変わりの時期が来たのじゃ」
「生まれ変わり?」
「そうじゃ。しばらくは霊界で過ごし、その後、転生するのじゃ。わしは神々のように果てしない時を生きたいとは思わないし、これまでの数千年間は十分すぎるほど長かったわい」
「おばあさまに、もう連絡は取れなくなるの?」
「まず人間界で守護霊として過ごして、いつかどこかで生まれ変わる」
「そうしたら、おばあさまに会えるの?」
「さあ、プルートゥ様の閻魔帳でものぞき見ればわかるかも知れんが、どこに行くかわかってしまっては興ざめじゃわい」

 いつも、そこで夢は覚めるのであった。
 湾岸戦争以来、ケネスからは学費と生活費分の小切手が海軍から送られてきたが、たまに電話が来るだけで会っていなかった。
 ケネス以外に家族と言える存在を持たないナオミは、ケイティに誘われてハワイに1週間帰っただけで、例によって7月は高校生向けディベート・セミナーの講師を務めて過ごした。
 2年前はお子ちゃま相手に3週間も過ごすなんて地獄だと思ったが、段取りが分かってきてトラブルにもスムーズに対応できるようになった。なにより高校生たちが「この人がカンザスの竜巻娘の一人か」と憧れの眼差しで見てくれるので、言うことを素直に聞くようになったのも大きかった。
 
 1993年8月、ナオミはディベート部の先輩ゴードン・ガーフィンケルと部室の前でばったり出会った。ゴードンはカリフォルニア出身で高校生時代には2人チーム制政策論争ディベートではなく、資料を使わない1対1でスピーチスキルを中心に勝負するリンカーン・ダグラス式ディベートでならしていた。聖ローレンス大学に進学後は政策論争ディベートにも対応して、昨年ナオミたち同様に全米選手権ベスト8まで進んだ優秀なディベーターだった。
 9月からの新シーズンには、4年生としてキャプテンを務めることになっていた。ゴードンの牛乳瓶の底のようなめがねの奥の目が、ニコニコしていた。
「やあ、ナオミ、おめでとう!」
 前年度全米選手権ベスト8のことなら昔すぎるし、ナオミにはおめでとうと言われる心当たりがなかった。


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−2 全米ディベート選手権(再編集版)

2020-08-28 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 マクミラが極右組織に接触して以来、メンバーのレベルの低さに辟易していたのとは対照的に、ナオミはリベラルで知性的、つきあっていて気持ちのよい人々に囲まれていた。
 全米トップクラスの大学で上位の成績を取るディベーターたちは、卒業後、法科大学院やコミュニケーション学部大学院への進学を目指すものも多かった。彼らの中には、卒業後に政治家や大学教授、裁判官や検事になるものも多い。たとえば、1976年に3年生で全米選手権を制したロバート・“ロビン”・ローランドは、ノースウエスタン大学で修士、母校カンザス大学で博士号取得後、同大学コミュニケーション学部教授になり学部長を務めた。また、パートナーのフランク・クロスは、ハーバード大学法科大学院を最優秀等の成績で卒業し、名門テキサス大学法科大学院及び経営学大学院兼任教授になっていた。
 全米選手権の優勝を毎年のように争う顔ぶれは、ほぼ決まっていた。全米中から秀才を集めるハーバード大学(1993年時点で優勝6回)、卒業生基金による潤沢な予算を持つダートマス・カレッジ(同6回)、社会科学系の名門ジョージタウン大学(同2回)、コミュニケーション研究の名門ノースウエスタン大学(同6回)、全米一のディベート部監督ドン・パーソン博士を擁したカンザス大学(同4回)、南部の強豪ベイラー大学(同3回)などが常連校であった。
 ナオミのディベートコーチのナンシー・マウスピークスも、パーソン博士の弟子で、大統領選テレビディベートの研究で博士号を取得していた。
 この年、ナオミたちは「アメリカは耐用年数の過ぎた宇宙衛星を放置しており、地上に落ちてきた宇宙衛星が害を引き起こす可能性があるため、自動的に安全な場所に落ちるような対策を取るべきだ」というケースを論じて、旋風を巻き起こした。モデル並の抜群の容姿のケイティとキリッとした顔立ちのナオミが、早口で議論を展開すると相手チームの顔色が変わり、シーズン途中からは「カンザスの竜巻娘たち」と綽名されるようになった。
 残念ながらダートマス・カレッジ4年生チームとの準々決勝戦で、「宇宙廃棄物は『米国内』という定義に合わないために、ケースには論題適合性がない」という議論を出されて4対1で負けてしまった。彼らは、「米国内」とは「米国領土内」の意味であり、たとえ宇宙空間の廃棄物に問題があったとしても「今回の論題が定義する範囲外である」と論じた。論題適合性は、肯定側によって提示された「論題定義外のケース」が認められるならば、否定側はすべてのケースを準備しなければならず公平性が確保されなくなるため、これを落とせば肯定側が自動的に星を落とすと考えられることが多い論点である。
 全米選手権優勝チームは4年生が多いが、高校4年間ディベートを経験している学生が多いこともあり3年生が優勝することもめずらしくはない。しかし、2年生は優勝どころか決勝戦まで進むことがまれで、ナオミとケイティが聖ローレンス大学代表として、ベスト8まで進出したのは大健闘と言えた。
 だが、ナオミを悩ませたのはディベートの結果ではなく、繰り返し夢枕に現れる祖母トーミの姿だった。


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第5章−1 ナオミの憂鬱(再編集版)

2020-08-24 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 1992年9月から翌年4月にかけて、ナオミは聖ローレンス大学2年目をディベート部の活動にどっぷりつかって過ごした。
 アメリカでは、大学対抗の政策ディベート大会シーズンは9月の北アイオワ大学大会で幕を開ける。一つの山場が11月のシカゴ近郊ノースウエスタン大学のオーエン・クーン記念大会であり、その次の山場がクリスマス直前に開かれるロスでの南カリフォルニア大学大会である。
 年が明けて、2月に開かれる南部のウェイク・フォレスト大学ディキシー大会を経て、3月のカンザス大学ハート・オブ・アメリカ大会で招待制大会が終了すると、そのシーズンの通算成績のよかった大学による年間最大のイベント、4月の全米ディベート選手権に備えることになる。
 ディベート部に所属する学生は、一つの論題を9ヶ月にわたってリサーチし、資料を作成し、ほぼ毎週末各地の大会に参加して過ごす。1992年秋から翌春にかけての論題は、「米国内における有害廃棄物の投棄から生じるすべての危害は製造者の責任とするべきか?」であった。
 政策論題はさまざまなケースを含んでおり、有害廃棄物の定義に関し、現在はもちろん過去や将来の可能性まで、私企業の産業廃棄物から政府関連施設から出る廃棄物までのすべてをリサーチする必要があった。ディベート大会には、木曜日夜に飛行機や大学院生のアシスタントコーチたちが運転するヴァンで会場となる大学近くのホテルに乗り込む。コミュニケーション学部の大学院生たちは、「芸は身を助ける」見本でディベートコーチをすると授業料免除の特典がつく。金土曜日の2日間で、肯定側、否定側各4試合の計8試合の予選の審査員をしなければならないため、人並み以上の体力がないとコーチは務まらなかった。一度トーナメントに出かけると、週末がつぶれるため厳しい大学院の授業の予習や課題をこなす知力も求められることは言うまでもない。
 大会に参加する学部生にとっても、予選ラウンドは1試合2時間近くかかる試合を1日4試合する体力勝負の側面もある。予選8試合で5勝3敗以上の成績をおさめたチームは、日曜日にトーナメント方式の決勝ラウンドに進む。通常、16チーム以上が決勝ラウンドには参加するため、朝9時に開始しても、決勝戦が真夜中にいたることもめずらしくはない。決勝ラウンドで、肯定・否定側のどちらを取るかはコイントスによって決まるが、すでに予選ラウンドで対戦していた場合、逆のサイドを取るというルールがある。
 肯定側は、証拠資料に基づき政策のメリットを論じることで論題の採択を提唱する。採択の拒絶を提唱する否定側には、主に3つの戦略上の選択肢がある。一つ目が、肯定側が提唱する政策はメリットを達成できないと証明すること。二つ目が、肯定側のメリットを上回るデメリットが生じると論じること。三つ目が、肯定側のメリットを上回るようなメリットを得られる相互に排他的なカウンタープランと呼ばれる代案を提示することである。「相互に排他的」とは、簡単に言えば「同時に採択できない」という意味である。肯定側が首都をワシントン特別行政区からニューヨークに移転すべきだというプランを提出した時、否定側がニューヨークよりもロサンゼルスのようが移転先としてよいと論じることが一例である。同時に二つの都市に首都を移転することはできないので、肯定側のプランと否定側の代案は相互に排他的となる。それ以外の戦略として、肯定側のケースが論題の要求に見合わないと論じる「論題適合性」もあるが、通常、上記3つの戦略と組み合わされる場合が多い。


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイドクロニクルズ第一部 序章〜エピローグのバックナンバー

2020-08-23 14:33:54 | 私が作家・芸術家・芸人

  
 財部剣人です! おかげさまで第二部序盤の再配信も終了しました。来週からは、第二部中盤の再配信を始める予定です。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

「マーメイド クロニクルズ」第一部 神々がダイスを振る刻篇あらすじ

 深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人 間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナオミの助太刀には天使たちがつくことになる。人間界に送り込まれたナオミ は、一人の人間として成長していく内、使命を果たすための仲間たちと出会う。一方、盲目の美少女マクミラは、天才科学者の魔道斎人と手を組みゾンビー・ソルジャー計画を進める。ナオミが通うカンザス州聖ローレンス大学の深夜のキャンパスで、ついに双方が雌雄を決する闘いが始まる。

海神界関係者
ネプチュヌス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 海主。「揺るがすもの」
トリトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ネプチュヌスの息子。「助くるもの」
シンガパウム ・・・・・・・・・・ 親衛隊長のマーライオン。「忠義をつくすもの」
ユーカ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第一次神界大戦で死んだシンガパウムの妻
アフロンディーヌ ・・・・・・ シンガパウムの長女で最高位の巫女のマーメイド
アレギザンダー ・・・・・・・・・・ 同次女でユピテルの玄孫ムーの妻のマーメイド
ジュリア ・・・・・・・・ 同三女でネプチュヌスの玄孫レムリアの妻のマーメイド
サラ ・・・・・・・・・・ 同四女でプルートゥの玄孫アトランチスの妻のマーメイド
ノーマ ・・・・・・ 同五女で人間界に行ったが、不幸な一生を送ったマーメイド
ナオミ ・・・・・・・ 同末娘で人間界へ送り込まれるマーメイド。「旅立つもの」
トーミ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミの祖母で齢数千年のマーメイド。
ケネス ・・・・・・・・・ 元ネイビー・シールズ隊員。人間界でのナオミの育ての父
夏海 ・・・・・・・・・・・・ 人間界でのナオミの育ての母。その後、ニューヨークに
ケイティ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミのハワイ時代からの幼なじみ
ナンシー ・・・・・・・・・・・・・・・・ 聖ローレンス大学コミュニケーション学部教授

天界関係者
ユピテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「天翔るもの」で天主
アスクレピオス ・・・・・・・ 太陽神アポロンの兄。アポロノミカンを書き下ろす
アポロニア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの娘で親衛隊長。「継ぐもの」
ケイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの未亡人。「森にすむもの」
シリウス ・・・・・・・・・・・・・・ アポロニアの長男で光の軍団長。「光り輝くもの」
               で天界では美しい銀狼。人間界ではチャック
アンタレス ・・・・・・・ 同次男で雷の軍団長。「対抗するもの」で天界では雷獣。
                            人間界ではビル
ペルセリアス ・・・・・・・ 同三男で天使長。「率いるもの」で天界では金色の鷲。
                         人間界ではクリストフ
コーネリアス ・・・・・・・・・・・・・ 同末っ子で「舞うもの」。天界では真紅の龍。
   人間界では孔明

冥界関係者
プルートゥ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「裁くもの」で冥主
ケルベロス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3つ首の魔犬。「監視するもの」で
  キルベロス、ルルベロス、カルベロスの父
ヴラド・“ドラクール”・ツェペシュ ・・ 親衛隊の大将軍。「吸い取るもの」で
       人間時代は、「串刺し公」とおそれられたワラキア地方の支配者
ローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ドラクール”の妻で、サラマンダーの女王。
「燃やし尽くすもの」
アストロラーベ ・・・・・・・・・・・・・・ ヴラドとローラの長男で、親衛隊の軍師。
                            「あやつるもの」
スカルラーベ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次男で、親衛隊の将軍。「荒ぶるもの」
マクミラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同長女で、人間界に送り込まれる冥界最高位の
神官でヴァンパイア。「鍵を開くもの」
ミスティラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次女で、冥界の神官。「鍵を守るもの」
ジェフエリー・ヌーヴェルヴァーグ・シニア ・・・パラケルススの世を忍ぶ仮の姿
ジェフエリー(ジェフ)・ヌーヴェルヴァーグ・ジュニア … マクミラの育ての父

「第一部序章 わたしの名はナオミ」

「第一部第1章−1 神々のディベート」
「第一部第1章−2 ゲームの始まり」
「第一部第1章−3 シンガパウムの娘たち」
「第一部第1章−4 末娘ナオミ」
「第一部第1章−5 父と娘」
「第一部第1章−6 シンガパウムの別れの言葉」
「第一部第1章−7 老マーメイド、トーミ」
「第一部第1章−8 ナオミが旅立つ時」

「第一部第2章−1 天界の召集令状」
「第一部第2章−2 神導書アポロノミカン」
「第一部第2章−3 アポロン最後の神託」
「第一部第2章−4 歴史の正体」
「第一部第2章−5 冥界の審判」
「第一部第2章−6 "ドラクール"とサラマンダーの女王」
「第一部第2章−7 神官マクミラ」
「第一部第2章−8 人生の目的」

第一部 第3章−1 ドラクールの目覚め

第一部 第3章−2 仮面の男

第一部 第3章−3 マクミラ降臨

第一部 第3章−4 マクミラの旅立ち

第一部 第3章−5 海主現る

第一部 第3章−6 ネプチュヌス

第一部 第3章−7 マーメイドの赤ん坊

第一部 第3章−8 ナオミの名はナオミ

第一部 第3章−9 父と娘

第一部 第3章−10 透明人間

 

第一部 第4章−1 冥主、摩天楼に現る

第一部 第4章−2 選ばれた男

第一部 第4章−3 冥主との約束

第一部 第4章−4 赤子と三匹の子犬たち

第一部 第4章−5 一難去って・・・

第一部 第4章−6 シュリンプとウィンプ

第一部 第4章−7 ビッグ・パイル・オブ・ブルシュガー

第一部 第4章−8 なぜ、なぜ、なぜ

第一部 第4章−9 チョイス・イズ・トラジック

第一部 第4章−10 夏海の置き手紙 

 

第一部 第5章−1 残されし者たち

第一部 第5章−2 神海魚ナオミ

第一部 第5章−3 マウスピークス

第一部 第5章−4 マウスピークスかく語りき

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第一部 最終章−6 悪夢の行方

第一部 最終章−7 アルゴス登場

第一部 最終章−8 死闘の終わり

第一部 エピローグ

 


  

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

ランキング参加中です。はげみになりますので、以下のバナーのクリックよろしくお願いします!
    にほんブログ村 小説ブログ SF小説へにほんブログ村
人気ブログランキングへ

     財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館) - にほんブログ村

コメント

マーメイド クロニクルズ第二部(再編集版)序章〜第四章バックナンバー

2020-08-21 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「第一部 神々がダイスを振る刻」をお読みになりたい方へ

第二部のストーリー

 マーメイドの娘ナオミを軸とする神々のゲームを始めたばかりだというのに、再び最高神たちが集まらざるえない事態が起こった。神官マクミラが人間界に送られた後、反乱者や魔界からの侵入者を閉じこめた冥界の牢獄の結界がゆるんできていた。死の神トッド、悩みの神レイデン、戦いの神カンフ、責任の神シュルドが堕天使と契って生まれた魔女たちは、冥界の秩序を乱した罪でコキュートスに閉じこめられていた。「不肖の娘たち」は、彼女たちを捕らえたマクミラに対する恨みをはらすべく、人間界を目指して脱獄をはかった。天主ユピテルは、ゲームのルール変更を宣言した。冥界から助っ人として人間界に送られるマクミラの兄アストロラーベとスカルラーベ、妹ミスティラは、彼女を救うことができるのか? トラブルに引き寄せられる運命のナオミは、どう関わっていくのか? 第一部で残された謎が、次々明らかになる。

冥界関係者

プルートゥ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「裁くもの」で冥主

ケルベロス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3つ首の魔犬。「監視するもの」でキルベロス、ルルベロス、カルベロスの父

ヴラド・“ドラクール”・ツェペシュ ・・ 親衛隊の大将軍。「吸い取るもの」で人間時代は、「串刺し公」とおそれられたワラキア地方の支配者

ローラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“ドラクール”の妻で、サラマンダーの女王。「燃やし尽くすもの」

アストロラーベ ・・・・・・・・・・・・・・ ヴラドとローラの長男で、親衛隊の軍師。「あやつるもの」

スカルラーベ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次男で、親衛隊の将軍。「荒ぶるもの」

マクミラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同長女で、人間界に送り込まれる冥界最高位の神官でヴァンパイア。「鍵を開くもの」

ミスティラ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 同次女で、冥界の神官。「鍵を守るもの」

ジェフエリー(ジェフ)・ヌーヴェルバーグ・ジュニア … マクミラの育ての父

悪魔姫ドルガ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 死の神トッドの娘で「爆破するもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

氷天使メギリヌ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 悩みの神レイデンの娘で「いたぶるもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

蛇姫ライム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 闘いの神カンフの娘で「酔わすもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

唄姫リギス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 責任の神シュルドの娘で「悩ますもの」。マクミラに恨みを晴らそうとする四人の魔女の一人

海神界関係者

ネプチュヌス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 海主。「揺るがすもの」

トリトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ネプチュヌスの息子。「助くるもの」

シンガパウム ・・・・・・・・・・ 親衛隊長のマーライオン。「忠義をつくすもの」

アフロディーヌ ・・・・・・・・ シンガパウムの長女で最高位の巫女のマーメイド

ナオミ ・・・・・・・ 同末娘で人間界へ送り込まれるマーメイド。「旅立つもの」

トーミ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミの祖母で齢数千年のマーメイド。

ケネス ・・・・・・・・・ 元ネイビー・シールズ隊員。人間界でのナオミの育ての父

夏海 ・・・・・・・・・・・・ 人間界でのナオミの育ての母。その後、ニューヨークに

ケイティ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ナオミのハワイ時代からの幼なじみ

天界関係者


ユピテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「天翔るもの」で天主

アポロニア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの娘で親衛隊長。「継ぐもの」


ケイト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アポロンの未亡人。「森にすむもの」

ペルセリアス ・・・・・・・ 同三男で天使長。「率いるもの」で天界では金色の鷲。人間界ではクリストフ

墮天使ダニエル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ マクミラの「血の儀式」と神導書アポロノミカンによって甦ったクリストフ

コーネリアス ・・・・・・・・・・・・・ 同末っ子で「舞うもの」。天界では真紅の龍。人間界では孔明

「第二部 序章」

「第二部 第1章−1 ビックアップルの都市伝説」
「第二部 第1章−2 深夜のドライブ」
「第二部 第1章−3 子ども扱い」
「第二部 第1章−4 堕天使ダニエル」
「第二部 第1章−5 マクミラの仲間たち」
「第二部 第1章−6 ケネスからの電話」
「第二部 第1章−7 襲撃の目的」
「第二部 第1章−8 MIA」
「第二部 第1章−9 オン・ザ・ジョブ・トレーニング」

「第二部 第2章−1 神々の議論、再び!」
「第二部 第2章−2 四人の魔女たち」
「第二部 第2章−3 プル−トゥの提案」
「第二部 第2章−4 タンタロス・リデンプション」
「第二部 第2章−5 さらばタンタロス」
「第二部 第2章−6 アストロラーベの回想」
「第二部 第2章−7 裁かれるミスティラ」
「第二部 第2章−8 愛とは何か?」

「第二部 第3章−1 スカルラーベの回想」
「第二部 第3章−2 ローラの告白」
「第二部 第3章−3 閻魔帳」
「第二部 第3章−4 異母兄弟姉妹」
「第二部 第3章−5 ルールは変わる」
「第二部 第3章−6 トラブル・シューター」
「第二部 第3章−7 天界の議論」
「第二部 第3章−8 魔神スネール」
「第二部 第3章−9 金色の鷲」

「第二部 第4章−1 ミシガン山中」
「第二部 第4章−2 ポシー・コミタータス」
「第二部 第4章−3 不条理という条理」
「第二部 第4章−4 引き抜き」
「第二部 第4章−5 血の契りの儀式」
「第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン」
「第二部 第4章−7 走れマクミラ」
「第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕」
「第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ」


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−9 四人の魔女、人間界へ(再編集版)

2020-08-17 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 最初は、煉獄界の入り口に開いた小さな四つの点に見えた。
 だんだんと、人間界に近づくにつれて四羽の巨大なチョウに見えた。
 秩序を乱した罪で閉じ込められていたが、冥界からの脱獄を果たした四人の魔女たちであった。
「爆破するもの」悪魔姫ドルガは、翼竜の羽を持っており羽ばたきの度に小さい竜巻が起こる。ドルガを救うことには、父親で死の神トッドの嘆願があった。
「いたぶるもの」氷天使メギリヌは、美しい16枚の黒い羽を持っている。その気高さとサディストとしての内面は、遠縁にあたるかつての天使長ルシファーと大魔王となったサタンの両面を表していた。
「酔わすもの」蛇姫ライムは、母で「遠くへ飛ぶ女」エウリュアレ譲りの青銅の腕と黄金の翼によって誰よりも力強く、遠くまで飛べた。だが、怒りに身をまかせて変身すれば、顔にイノシシの牙を見せ、髪が蛇になり、口からは長い舌が垂れ下がる。その姿を見たものは、誰であっても血も凍る恐怖によって石に変わってしまうが、普段はネプチュヌスの愛人であった美しかった頃の叔母メデゥーサにうり二つ。
「悩ますもの」唄姫リギスは、芸術の才があり、優雅にコウモリのような羽を動かす。得意技は、空中に浮遊しながらの精神攻撃で、さすがのマクミラもあやういところでリギスには不覚を取るところであった。
 六百年の長きにわたって極寒地獄コキュートスに閉じこめられた後、彼女たちをとらえたマクミラへの復讐と大魔神スネール復活に双眼は燃えていた。

(マクミラへの怨み、いかにはらしてくれようか)ドルガが思念を発する。
(ドルガ様、怨みをはらし最高神たちの鼻をあかす一石二鳥、いや追求の手をもつぶす一石三鳥の手がありますぞ)メギリヌが思念を返す。
 ライムが質問の思念を送る。(なんじゃ、それは?)
 リギスが代わって答える。(アポロノミカンでありんすな・・・・・・)
 メギリヌが同意する。(その通り。マクミラは、ミシガン山中に「悪夢と恐怖」のテーマパークを作った。第1の建物では不老不死研究。第2の建物では軍事兵器研究。第3の建物では精神世界研究。最後の建物では魔術研究とアポロノミカン探索を担当させた。すでに不死者軍団は、マーメイドの小娘と天使連合との闘いで壊滅的な打撃を受けたようだ。だが、責任者の魔道とかいう奴には、つけこむスキがありそうだ。スネール様の眠っておられるニューヨークに行く前に、様子をうかがっておこうじゃない?)
 リギスが思念を送る。(ニューヨークには邪悪なエネルギーが渦巻いてありんすが利用するには、我らの能力はまださびついてありんす。腕ならしに、まずアポロノミカンを手に入れてみてはどうでありんすかえ?)


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−8 堕天使ダニエル生誕(再編集版)

2020-08-14 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 マクミラがいない間もクリストフは、死んだように眠っていた。
「インフォームド・コンセント無しだが、覚悟はよいな?」アポロノミカンを開くと言った。「さあ、目を見開いて見るがよい! このまま行ったきりで、くやしくないのか?」
 クリストフは、ピクリともしない。
「一瞬でいい、目を開けよ!」
 それでも動きはない。意を決して、今度は右手首にマクミラが“ドラクール”の眷属の証である鋭い牙を突き立てた。
 血が、再びクリストフにしたたり落ち始める。
「行くんじゃない! カモン、帰ってこい!」
 その時、呼びかけに答えるように薄くクリストフの目が開いた。
「よし、見るがよい。アポロノミカン!」
 その瞬間、天界にいた頃の人格、人間界に来てからの人格、マクミラの血によって生まれたヴァンパイアの人格のすべてを隔てる壁が一気に崩壊した。
 さらにアポロノミカンが語りかける膨大なメッセージがクリストフの頭の中に入ってきた。
 ア〜〜!
 クリストフの叫び声は永遠と思われるほど長い間、ゾンビーランド中に響き渡った。
 マクミラが、ようやく凄みのある微笑みを浮かべた。
 その時、アポロノミカンの思念が伝わってきた。(マクミラよ、ついに『鍵を開くもの』になったな。儂が持ち主に選ばれることはない。儂が常に持ち主を選ぶのじゃ。祖父パラケルススがいつも仮面をつけていたのは、伊達や酔狂ではない。あの仮面は、アポロノミカンの中身を見ないように両眼がふさがっていたのじゃ。儂を自由に持ち歩けるようになるまでには、あやつでさえ数十年を要した。いきなり儂を使えるとは、さすがはマクミラよ。今後は、お主が儂の管理をするがよい)
 かつての天使長で金色の鷲ペリセリアス、人間界でクリストフとして育った男は、堕天使に生まれ変わった。着ていた服に残っていたイニシャルがCだったため、マクミラはDで始まるダニエルと名づけた。男は堕天使に変身しても、セラフィムだった名残で6枚の美しい羽を持っていた。
 ただし、呪われたヴァンパイアの血のせいか、かつて白かった羽は真っ黒に変わっていた。失われたクリストフの残滓にマクミラの「輸血」とアポロノミカンによって生じた人格がまざって混乱したが、だんだんマクミラのパートナーとしての新しいアイデンティティが生まれてきていた。
 こうしてダニエルは、ニューヨークに行き彼女の任務に手を貸すことになった。それをジェフが心から喜んだことを、マクミラは知らなかった。


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−7 走れマクミラ(再編集版)

2020-08-10 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

(ヴラドの娘か? ほう、パラケルススの義理の孫でもあるのか。他の者ならそう簡単には持ち出させぬところだが、お主との因縁に免じて許してやるとするか。だが、ぞんざいな扱いをしたならば一生後悔することになるぞ)
 マクミラは、生まれかわってから初めてゾッとした。父を死よりツライ目に会わせた元凶を手にし、思わず投げ捨てたい気持ちをおさえつけて、ゾンビーランドで彼女の待つ男ためにきびすを返した。
 古びた一冊の本とは思えぬほど、アポロノミカンは重かった。大量の血を流したためもあったが、まるで重力にあらがうかのように歩みが重かった。数百年を越える歴史と人々の感情を吸収したアポロノミカンには信じられないほどの重量があった。
 心配したキル、ルル、カルが、目を閉じたまま声をかける。
 マクミラが、空元気を出して答える。「何のことはない。これくらい」
 しかし、一歩一歩足取りは遅くなるばかりであった。
 その時、アポロノミカンが思念を発した。
(なんじゃ。パラケルススは、お前に緑の霧のことも伝えていなかったのか? まったく世話の焼ける小娘じゃ)
 マクミラの周りに緑色の霧が立ちこめると、突然、アポロノミカンの重量を感じなくなった。いつのまにか3匹の子犬たちは、うとうととし始めている。
(よいか、アポロノミカンを持ち歩く時は、儂に緑の霧を起こさせるのじゃ。そうすれば重量が軽くなるだけでなく、ターゲット以外のものを眠らせることができる)
「か、かたじけない! お主、もしかして聞き捨てによらずよい本ではなのか・・・・・・」
 マクミラが走り出そうとすると、アポロノミカンが再び思念を発した。
(あわてるな。特殊ガラスケースごと運ぶのじゃ。ターゲットに儂を見せた後、どうするつもりじゃ? すぐにしまわないといかんぞ。その場にいあわせたものすべてを発狂させるのは、あまり気分のよいものではないからな)
 マクミラは、アポロノミカンと交流しながら不思議な気分だった。
 父の経験した「この世の地獄」のきっかけを作ったアポロノミカンを恨みに思ってきたが、この本自体はそれほど悪じゃないかも、という考えが浮かんだ。だが、今はそんなことを考えている時じゃない、と思い直した。
 ゾンビーランドに向かって全力疾走を始めた。それでもマクミラの周りを大量の緑の霧は追ってきた。
 クリストフが横たわるゾンビーランドの部屋に飛び込んだ。


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−6 神導書アポロノミカン(再編集版)

2020-08-07 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「アポロノミカン!?」
「たいへんな時間がかかりましたが、神導書の修復はほぼ終わっております。神導書を見たもののほとんどが発狂するか人間以外に変化してしまうため、取り扱いには最高度の注意を要します。ですがマクミラ様なら・・・・・・」
「盲目の我になら、何かが起こる心配はないか! だが、この男は耐えられるだろうか?」
「オーラから判断して、おそらくこの男も天界から送り込まれたゲームの一部。そうであれば、アポロノミカンの衝撃も乗り切れる可能性大です。それにこの状態では・・・・・・もはや、他に打つ手はないかと」
「わかったわ」言うが早いか、3匹をしたがえると部屋を飛び出した。
 一人残されたジェフは、つぶやいた。
「ついにマクミラ様にも愛する男が現れた。ご本人は、まだ意識されておられないが、あのあわてようにまちがいはない。父親のオーラを感じさせるあの男の命、なんとか救ってやりたいものだが・・・・・・」

 マクミラが生まれる前から、散逸した神導書はジェフの父ヌーヴェルヴァーグ・シニアの手によって、少しずつ回収されていた。他の研究所とは違って、アポロノミカン・ランドは完全オートメ化されていた。神導書は、不可視化された特殊ガラスケースに納められており、どうしても開かなくてはいけない時だけ、羊の皮で作られたマジックハンドによる遠隔操作がおこなわれていた。
 関係者で唯一、セキュリティ・チェックがフリーパスのマクミラは、通路をひたすら走った。途中で気がついて、キル、カル、ルルの3匹に声をかけた。
「いいかい、ここから先は目をつぶっておくんだよ」
 ウ〜、ワン! 3匹がそろって返事をした。
 マクミラは、アポロノミカン・ランドでも最高レベルの警備体制を取る通称「禁断の部屋」に足を踏み入れた。部屋は常に暑すぎず寒すぎず、本にとって最適な湿度に保たれていた。
 あせる気持ちを抑えて、マクミラはゆっくり特殊ガラスケースをはずした。ヴァンパイアの特徴の一つ、鋭い爪が神導書に触れた瞬間、トクンと血流の音がした。
 次の瞬間、マクミラは脳天まで突き抜ける衝撃を感じた。
 マクミラが、盲目の自分はアポロノミカンの影響を受けずにすむと思っていたのはあまかった。影響が小さいだけでつかんだ瞬間からアポロノミカンは、強力なメッセージを直接、彼女の脳に語りかけてきていた。


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     blogram投票ボタン

コメント

マーメイド クロニクルズ 第二部 第4章−5 血の契りの儀式(再編集版)

2020-08-03 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「魔道、いやマッド抜きで、これだけ損傷を受けた患者を救えるのですか?」ジェフは途方に暮れたように言った。
「現代医学の力など、端から当てにする気はないわ。さあ、ひさびさに祭祀を執り行うとするか」マクミラがハスキーボイスで続ける。
 腕まくりをしようとした時、3匹がワンと一声吠えた。
「我としたことが・・・・・・まず血を吸わなくては」青白い顔がなぜか赤らんだ。
 するどい牙をクリストフの首筋に突き立て、わずかに残った血流を探し当てる。安堵の表情が浮かぶが、儀式に十分な血を吸えたかは確信がなかった。
「いざ、“ドラクール”一族の契りの儀式を始めん。この者、我らとの縁ありや。もしも前世よりのなんらかの縁あるならば、黄泉がえり我が眷属とならんことを願う。もしもなんの縁もなかりせば、プルートゥ様の元へと向かい裁きを受けるがよい」
 マクミラが左手首に自ら鋭い牙を突き立てた。
「我が腕より流れ落ちる血、この者の体内を駆けめぐらんと欲す! 流れ落ちる血、この者に“ドラクール”一族の眷属にふさわしい魂と身体を与えんことを祈らん! 流れ落ちる血、この者に呪いと祝福を与えんと欲す!」
 たちまち静脈が破れて、真っ赤な血がしたたり落ち始めた。
「以前、言ったわね。我は、ヴァンパイアの身内を増やすことには慎重だと。だが、この男を救うのは正しいことだと確信がある」
 焼け焦げたステーキどころか、暖炉の中の燃えさしのようになったクリストフの身体が、マクミラの手首からの血を受けて変化を起こし始めた。
 ドクン、ドクン、・・・・・・
 マクミラの血がクリストフの身体に落ちる度に、ヤケドした皮膚に赤みが戻り、心拍を停止していた心臓の鼓動が戻ってきた。
 かすかにだが、ウッ、ウッと呻き声が聞こえた。
 マクミラがつぶやく。「まだ完全には細胞が死んでいなかったようだね。もしそうなっていたら精神を作り替えることもできないし」
 必死の形相は、さながら「フランケンシュタイン計画」を進めていた当時の魔道であった。
 だんだんとクリストフの回復のスピードが遅くなっていく。それでもマクミラは血を垂らすことをやめない。
 あまりに多量の血を見てジェフが心配になる。「マクミラ様、それでは血液のほとんどを流してしまいます。どうぞ、私の血もお使いください」
「ダメよ。儀式の途中で血を変えるなんて・・・・・・ましてや、お前のワインブレンドの血では効き目があやしい」
「こんな時に、ご冗談を・・・・・・」
 いつもの青白い顔がさらに青白くなって、マクミラがうめく。
「たしかに冗談を言ってる時じゃないわね。我がオリジナル・ブラッドをもってしても、これ以上はなんともしがたいか・・・・・・」
 考え込んでいたジェフが思い切って言う。「マクミラ様、奥の手を使われては」
「奥の手?」
「アポロノミカンです」


ランキングに参加中です。クリックして応援お願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へにほんブログ村
               人気ブログランキングへ
     

コメント