財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−1 パフォーマンス開演迫る(再編集版)

2021-01-18 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 パフォーマンス・フェスティバルの当日の夕方。
 ニューヨーク社交界の大物や現地在住の芸能人たちが、次々にヌーヴェルヴァーグ・タワーの特設会場に集まってくる。
 ある一団が、入場口で係員ともめていた。タキシード姿の紳士や社交服で着飾った貴婦人にまざって、きたないジャケットやジーンズ、スニーカー履きのティーンエイジャーたちの姿は、場違いもいいところだった。
「おい、ここはお前らのような連中の来るとこじゃない」
「なんだと! 俺たちは正式に招待されたんだ」
 トニーに率いられたタイ系ストリート・ギャングと、ロッコに率いられたイタリア系ストリート・ギャングであった。真夏の夜に冥界を抜け出した魔界の住人に襲われたところをマクミラに救われて以来、ファンクラブのように彼女を慕うようになっていた。マクミラに諭されて以来、犯罪に手を染めるよりも生業に就くようになり、夜中にたまにマクミラに出会うと声を掛け合う仲になっていた。彼らは、マクミラから正式に送られた金文字で書かれた招待状を持っていた。マクミラが、つきあっていて気分の悪い極右団体関係者は、一人も呼んでいなかった。逆に、無鉄砲で礼儀知らずでも、無邪気で打算とは無縁なストリート・ギャングたちがだんだん好きになっていた。
 騒ぎを聞きつけて、ジェフが駆けつけてきた。
「どうした? 何を騒いでいる」
「会長、この連中が招待されたとか、とんでもないでまかせを・・・・・・」
「でまかせじゃない。皆さんは、娘の友人だ!」
「えっ!」
「すぐにお席にご案内するのだ。トニーとロッコだったね。失礼した。私はマクミラの父ジェフ。今日は、来てくれてありがとう」
 トニーが機嫌を直して言う。「わかればいいのさ。さあ、みんな席につくぞ」
 ジェフが小声で言う。「ちょっと待ってくれないか?」
「おじさん、まだなんか用?」
「君たち、まさか銃なんて・・・・・・持ってきてないだろうね?」
「ちょっと待って」トニーとロッコが仲間を集める。
「ん〜、俺以外にも何人かマイクロ・ウージー持ってきてる奴がいるな」二人が口を揃えて、言った。
 ジェフはめまいがした。「あ〜、もう持ってきてしまったものはしかたがない。今日のところは、私を信用して預けてくれないか?」
 一瞬、躊躇したが、トニーとロッコが顔を見合わせた。「おじさんには助けてもらったからな」
「ありがたい。ちょっと奥へ」
 ジェフは、クロークルームから出て来たトニーのTシャツに書かれた文句を見て、卒倒しそうになった。そこに、「俺が死んだら天国に行くぜ。なぜなら生きているうちに地獄を見たから」(I will go to heaven, because I am in hell while alive!)、と書いてあったからだ。
 かぶりをふりながら、ジェフが言った。「とにかく早く席に着いてくれ!」


ランキングに参加中です。クリックして応援よろしくお願いします!
     にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
               人気ブログランキングへ



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。